2025年11月27日(木)

【岸本加世子 我が道6】西城秀樹さん自宅に“お呼ばれ”も 耳を疑うような“うれしいこと”を…

[ 2025年11月6日 07:00 ]

79年の日本レコード大賞で熱唱する西城秀樹さん。早すぎる死は残念でなりません
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 月に1度のペースで生放送の回ができたTBSドラマ「ムー一族」ですが、こんなおかしなエピソードがありました。もう時効でしょうから披露しちゃいますね。

 当時、既に古希を過ぎていたベテランの伴淳三郎さん。生放送の時は「風邪をひいて寝ている」とか「帰省している」という設定が多くなりましたが、そうじゃない時は…。

 例えば茶の間のシーン。柱や壁、ちゃぶ台の上の小皿にまでセリフの書かれた、いわゆる“カンペ”を貼り付けているんです。それなのに、それを知っていた由利徹さんや左とん平さんが勝手に剥がしてしまって…生放送中なのにおかしくって涙が出ました。

 デビュー作でのこんな体験、そして素晴らしい方々との共演もかない、幸せなスタートを切れたといまさらながら感謝しています。でも、私は毎日が精いっぱい。余裕なんて全くなく、日々与えられたことをこなすのに必死でした。

 そして同じ事務所の所属とはいえ、西城秀樹さんは大スター。わたしも次第に忙しくなってきたので、お会いできる機会も多くはありませんでした。それでもたまにはご自宅に呼んでいただいたりしたんですよ。

 「この家にあるもの、みんな持ってっていいよ。欲しいものがあったら」

 耳を疑うようなうれしいことを秀樹さんが言ってくれたこともありました。ずうずうしくも私は「ゴミ袋をください」とおねだりしてました。とても紙袋じゃ足りないと思ったからです。「貴金属でもいいんですか?」と聞くと「いいよ」と言うので、遠慮なく頂戴してきました(笑い)。

 秀樹さんは2018年5月16日に急性心不全のため63歳の若さで永遠の眠りにつきました。残念でなりません。

 「ムー」「ムー一族」と途切れることなく仕事が入ってきたので、私は通っていた明治大学付属中野高校定時制を中退しました。昭和の50年代、その頃は「芸を取るか、学業を取るか」を迫られる時代でしたし、勉強があまり好きじゃなかったこともありましたから(笑い)。

 19歳になった1979年12月に封切られた久世光彦さんの初監督映画「夢一族 ザ・らいばる」にも出演。これがスクリーンデビュー作となりました。睡眠口座を巡り、80歳近い老サギ師と20代の若いナンパ師の交流を描いたコメディーで、森繁久弥さんと郷ひろみさんの共演も話題を呼んだ作品です。

 ドラマや映画で久世さんに鍛えられる一方で、私が「間違いなく一番影響を受けた方」と言い切れるのが樹木希林さん。真っさらな素人の時に、一番間近で私を見てくださり、そしていろいろ指導してくださいました。

 ◇岸本 加世子(きしもと・かよこ)1960年(昭35)12月29日生まれ、静岡県島田市出身の64歳。77年、テレビドラマ「ムー」で女優デビュー。以降、テレビ、舞台、映画、CMなどで幅広く活躍。ドラマ「あ・うん」、舞台「雪まろげ」、北野武監督の映画「HANA―BI」「菊次郎の夏」など代表作多数。著書に小説「出てった女」、エッセー「一途」など。

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