「餃子の王将」社長射殺、直接証拠なし 工藤会系組員裁判、どう判断

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河原田慎一 茶井祐輝
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 12年前の冬の早朝。東証1部上場(当時)の企業トップが本社前で射殺されるという、衝撃的な事件が起きた。

26日に京都地裁である初公判。事件・裁判のポイントを五つに分けてお伝えします。

どんな事件だったのか?

 亡くなったのは、「餃子(ギョーザ)の王将」を展開する「王将フードサービス」(京都市山科区)の社長だった大東隆行さん(当時72)。2013年12月19日午前5時46分ごろ、車を運転して出社してきた直後、拳銃で腹や胸を4発撃たれた。

 京都府警は捜査本部を設置し、事件直後に現場付近でたばこの吸い殻を採集するなどの捜査を進めた。

 14年4月、現場から約2キロ離れた場所でオートバイとスクーターが見つかった。オートバイのハンドル部分からは銃を撃った際に残る「硝煙反応」が確認された。

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逮捕・起訴・裁判までの経緯は?

 事件発生から9年後。捜査を続けていた府警は、福岡刑務所に服役していた男の逮捕に踏み切る。特定危険指定暴力団工藤会系組幹部、田中幸雄被告(59)。殺人と銃刀法違反の容疑だった。田中被告は、福岡市で大手建設会社の従業員らが乗った車を銃撃したとして、実刑判決を受けていた。

 大東さんの事件と田中被告をつないだのは、現場付近で採集したたばこの吸い殻だった。捜査関係者によると、吸い殻の付着物をDNA型鑑定したところ、被告と一致するものがあった。また、事件当時は雨で路面がぬれていたが、たばこの火は水にぬれて消えた可能性が高いこともわかったという。

 硝煙反応が残されたオートバイとスクーターは、事件2カ月前の同じ日に、京都府内で盗まれたものだった。近くの防犯カメラには、田中被告の知人が所有する久留米ナンバーの軽乗用車が映っていた。

 事件前、現場周辺の防犯カメラに不審な男の姿が映っており、最新の技術を用いて男の歩き方の特徴を鑑定した。その結果、田中被告と同じとみて矛盾はないとの結果も得られたという。

 これらはいずれも、田中被告の事件とのかかわりを間接的に推測させる「状況証拠」でしかない。犯行時の目撃証言や使用された拳銃といった、犯行と結びつける直接的な証拠は出ていないが、京都地検は状況証拠を精査して22年11月に起訴した。

 逮捕から3年。26日に京都地裁で田中被告の初公判が開かれる。

立証のハードルは?

 弁護人によると、田中被告は「やっていないし、指示もされていない」などと述べているという。被告側は裁判で無罪を主張する方針だ。

 元裁判官で法政大学法科大学院の水野智幸教授は、被告が犯行日時に現場にいたというためには、近い時間に被告がたばこを捨てたことを証明しなければならないと指摘する。「それを証明できたとしても犯人であるとまでは言えず、検察側にとって難しい裁判になる」とみる。

 犯行と直接結びつける証拠が全くないケースとして、水野教授は一つの裁判をあげる。和歌山県田辺市の資産家で「紀州のドン・ファン」と呼ばれた野崎幸助さん(当時77)が殺害されたとする事件だ。

 野崎さんの元妻が殺人罪などに問われたが、和歌山地裁で開かれた裁判員裁判は24年12月、元妻が野崎さんを殺害したとするには「合理的な疑いが残る」と判断し、無罪判決を言い渡した。

 水野教授は「『合理的な疑い』が排除されるための(検察側の)立証のハードルは高い」と指摘する。

なぜ裁判員裁判の対象外に?

 殺人事件は裁判員裁判の対象…

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この記事を書いた人
河原田慎一
ネットワーク報道本部
専門・関心分野
公共交通、イタリア文化、音楽