安全保障法制関連法案の審議が国会で続く中、この国の将来を左右する問題に自分たちなりに向き合おうとしている大学生がいる。街へ出て、集団的自衛権の行使や自衛隊の海外での武力行使について道行く人に賛否を聞いて回る。声高に主義主張を唱えるでも、激論を交わすでもなく、それでも岐路に立つ平和の歩みがおぼろげに浮かび上がってくる。
夕暮れの横浜駅西口。手製のパネルを胸に抱え、雑踏の中、若者が若者に声を掛けていた。
「だって、中国や北朝鮮が攻撃してきて反撃できないのはまずいよ。集団的自衛権は必要でしょ」
20代の男性は「賛成」にシールを貼った。
大学生が口を開く。
「いや、日本への攻撃には今でも個別的自衛権で反撃できるんですよ」
「え? そうなの」
街頭でシール投票を呼び掛けているのは県内の学生でつくる「ぼくらのみらい憲法プロジェクト」。実行委員長で神奈川大経営学部2年の加藤有紗さん(19)は「思いのほか大勢の人が答えてくれる。実際に会話をしてみると、集団的自衛権のことを詳しく知らない人も多いとも感じる」と話す。
発足はことし3月。「憲法改正」「憲法解釈の変更」という言葉を耳にするようになり、「憲法も安全保障の問題も私たちの未来に直結している問題。みんなで考えたいと思った」。プロジェクトの発起人、神奈川大経営学部4年の中村和行さん(22)は言う。「テニスサークルに入ったこともあったけど、しっくりこなかった。大学なんだから社会に興味がある学生はいるはずだ、と」
まずは同世代の声を聞くことから始めようと街へ出た。シール投票の質問は二つ。
〈集団的自衛権を行使することに反対? 賛成?〉
〈自衛隊が海外で武力行使をすることに反対? 賛成?〉
最初の質問に「賛成」と答え、次の質問に「反対」と答えるケースが少なくない。
そこで種明かし。
「実は、集団的自衛権の行使と海外での武力行使は同じことなんです。分かりづらいですが」
知らされぬまま、知ろうとしないまま、転機を迎えている戦後70年の現実をそうして知っていく。
メンバーは現在11人。最初は緊張で声掛けもままならなかったが、イベント告知のチラシを自然に手渡し、立ち話で意見を交わせるようになってきた。
中村さんはどこまでも穏やかに笑う。「僕らはごく普通の学生。政治に関心を持って活動している姿を街中で目にして、考えるきっかけになれば」
学生が政治のことを語って感心されるような社会を変えるための一歩-。
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プロジェクトでは31日、集団的自衛権について考えるイベント「そうだったのか!集団的自衛権」を西公会堂(横浜市西区岡野1丁目)で開く。午後2時~6時。フォトジャーナリストの森住卓さんや弁護士の林祐介さんが講演するほか、シール投票の結果を公表し、討論する。問い合わせは、同プロジェクトのメール(mirai.kenpo@gmail.com)。