ここ数年の為替相場の形式的な値動きをみると、2022年の年初には1ドル=114円台で推移していたが、その後急速に円安が進行し、24年夏には一時1ドル=160円台になった。2024年後半からは、円高への揺り戻しがみられている。
一体為替相場はどのように動くのだろうか。短期的に値動きを予測できるはずはない。もしできたら為替相場で誰もがもうけられるからだ。
それでは中長期的には値動きはどうか。それなら、もっともらしい理論はある。為替相場といっても、その本質は円と他の通貨(例えば米ドル)との交換比率だ。交換比率は、究極的には二つの通貨の量の比に落ち着くはずだ。そこで、円とドルについてそれぞれのマネタリーベースの比をみてみよう。
驚くほどに、実際の為替レートをフォローしている。特に、日本が資本取引の自由化を終え、いわゆるダーティ・フロートから脱した1985年のプラザ合意以降、きれいに今日までの為替レートの動きを説明している。プラザ合意以降、米国の金融当局が強烈な緩和措置を取ったリーマンショック以降の数年間を除くと、ほぼ完璧に実際の為替レートをトレースしている。
この「理論」からみると、2022年の半ばごろから、マネタリーベース比からの理論値と実際の為替レートの乖離(かいり)率が10%を超えて円安方向に振れている。
この乖離率(%表示)について、リーマンショック後の一時期を除くと、平均2・3、標準偏差15・5だ。つまり、乖離率が30%を超えるのは極めて珍しい。
実際、373の月次データの平均のうち、22しかない。これも、2024年以降に集中している。その意味では、ここ2年間がやや従来の傾向から逸脱してるといえる。
本コラムで書いてきたが、円安は日本経済の成長率が高まるという歴史的事実がある。これは、古今東西「近隣窮乏化」として自国通貨安は自国経済に有利だが、他国経済には不利となることで知られている。各国や国際機関でもマクロ経済モデルでも、その効果は数量的に確認されている。そのため、自国通貨安について他国から文句が来るのであれば対応が必要だが、文句がないなら放置し、国益を追求した方がいい。
円安の弊害は輸入価格高であるが、それを上回る財政収入メリットがあるので、物価高にすればいい。ただし、歴史的にみても、そろそろ自然反転の円高になりそうだから、通貨当局が「口先介入」するかもしれないころともいえる。
(たかはし・よういち=嘉悦大教授)