〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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俺ギガントライナーに乗ってきたから知ってるけど今年はスズミの二着目くるよ


酒泉君がジュリのお手伝いをするだけの話

 

 

 

「……料理を教えてほしい?」

 

「は、はい!」

 

 

愛清さんの手作り弁当の容器を返す為に仕込み前の食堂に向かってみれば、そこには牛牧さん一人だけがあたふたしながら作業をしていた

 

食材に命が宿っていないところを見るにまだ調理を開始する前のようだ

 

 

「別に構わんけど……愛清さんはどうしたんだ?」

 

「その……先輩は本日急に体調を崩してしまいまして……」

 

「え!?だ、大丈夫なのか!?」

 

「最後に熱を測った時は37℃ピッタリだったので微熱だとは思うのですが……悪化したらマズイのでセナさんにお願いして保健室まで連れていってもらいました」

 

 

俺の知らん間にそんな事に……溜まっていた日頃の疲れが爆発してしまったのだろうか

 

食堂で暴れる馬鹿共を俺がもっと早く制圧出来ていればと自責の念に駆られるが、今は落ち込んでるよりも目の前で困っている牛牧さんを助けなければ

 

 

「つってもなぁ……あんまこういう事言いたくないけど、ぶっちゃけ今から牛牧さんの料理をまともなレベルにするより俺が全部作った方が解決策としては現実的だと思うぞ?」

 

「うっ……そ、それは分かっていますが……でもぉ……」

 

「……何か理由でもあんのか?」

 

 

この状況で動くパンケーキを増産するのは流石に不味いと思い、自分の意見をハッキリと牛牧さんに伝えてみる

 

すると牛牧さんは酷く落ち込んだ表情で厨房にある調理器具の数々を見つめながら語り出した

 

 

「食堂が開いてる日のフウカ先輩はいつも多忙です、その理由は生徒の皆さんからの要望の多さや食堂で暴れ出す人達の対処など様々ですが……主な原因は人手の少なさです、私は料理のお役に立てていないので……」

 

「お、おう……それでこれ以上足を引っ張るまいと俺に料理を?」

 

「このままじゃ駄目なんです、ずっとフウカ先輩に頼りっぱなしで給食部を名乗り続けるなんて……」

 

 

自らを鼓舞する様に両手を握る牛牧さん、おそらく彼女はただ純粋に愛清さんの助けになりたいだけなのだろうが……

 

 

「厳しい事を言うようだけど、牛牧さんの料理スキルを改善させるのは殆ど不可能に近い事だ。ましてや今日の昼までになんてな……今日は大人しく食堂を畳んだ方が賢明だろ」

 

「そ、それは……その通りだと思います、でも────」

 

「────だが!これでいい!」

 

「……は、はい?」

 

 

愛清さんだっていつまでもゲヘナ学園に居てくれる訳じゃないんだ、牛牧さんだって一人立ちしなければならない時がいずれ訪れる

 

その成長を自らの意思で遂げようというのだからそれは立派な心意気だろう

 

 

「ただし!俺の指導は厳しいぞ?途中で弱音を吐いても知らないからな?」

 

「だ、大丈夫です!最後までついて行きますので!」

 

「よく言った!先ずは食材の準備からだ!」

 

 

 

調理開始の宣言をしろ!磯野!

 

調理開始イイイイイイイ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、それじゃあ牛牧さん!今日のメニューはなんだ?」

 

「えっと……今日はベーコンエッグです!」

 

 

おお、良かった……簡単に作れるやつだ

 

もし今日の食堂メニューが作るのが大変な料理とかだったら余計に難易度が上がるところだった

 

まあ、つっても学校の食堂で出るもんだったらそんな時間を掛けたメニューは入れないだろうしそこまで心配する必要も無かったか

 

 

「よし、じゃあまずは油を引いて目玉焼きだけシンプルに焼いてみろ」

 

「は、はい!」

 

 

ごく普通の目玉焼きの作り方、半熟とか両面焼きとか特に気にせずそのまま焼くだけ

 

ある程度銀鏡……げふんげふん、白身が固まってからフライパンに水を入れ、牛牧さんが蓋を乗せてから数十秒

 

 

「出来ました!」

 

「キシャアアアアアアアアアア!!!」

 

 

 

目玉夜鬼

捕獲レベル・1

 

 

「なんでさ」

 

 

牛牧さんが蓋を開けると同時に姿を現す、真ん中の目がギョロギョロと動いているモンスター

 

どうして焼いて蒸して開けただけで化け物が出てくるんですか?

 

 

「ノッキン!」

 

「ギャッ!?」

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

「ああ、問題無い」

 

 

俺の顔目掛けておもいっきり飛び付こうとしてきやがったので目の真横に指をぶっ指して咄嗟に無力化させる、なんか黄色い液体が飛び散ったけど多分血じゃなくて黄身だと思う

 

しっかしまあ……こんないきなり躓くとはなぁ……牛牧さんの産み出すグルメモンスターとは何度も戦ってきたけど、調理工程を間近で見たのは初めてだったので改めて驚愕した

 

 

「ご、ごめんなさい!ただ焼いただけなのにこんな事になるなんて……!」

 

「き、気にしないでくれ……悪いのはこんな力を与えやがった世界の方だから……」

 

 

世界よ、何故牛牧さんにこんな運命を背負わせた?彼女はただ、その善意と熱意で誰かに手料理を食べさせようとしているだけなのに

 

普通のメシマズ属性じゃ駄目だったのか?どうして錬金術師属性まで付け足したんだ?

 

 

「……気を取り直して次だ次!次はベーコンを焼いてくれ!これに関してはもう生焼けでも焦げててもいいからとにかく〝完成〟させるんだ!」

 

「わ、わかりました!」

 

 

油を拭き取り、また新たに油を足す牛牧さん

 

フライパンにベーコンを乗せると、ジュージューパチパチと油が弾けるような音が小さく聞こえてきた

 

ただ焼くだけ、蓋をするのはベーコンエッグを作る時だけでいい、今はベーコン単体を焼かせているのだから

 

それにこの方法なら完成するまでの工程がちゃんと見えるから、どこで失敗したのかを学べる────

 

 

 

「ガグルァアアアアアアア!!!」

 

 

 

ベーコング

捕獲レベル・3

 

 

 

「だからなんでさ」

 

「ごめんなさいぃ……」

 

 

 

気づけばフライパン一個分の大きさに成長した人型ベーコンがゴリラの様にドラミングしていた

 

馬鹿な、俺の目を持ってしてもモンスター化の原理を解き明かせなかったというのか!?直前まで一切の変化が無かったぞ!?

 

「ガルァ!!!」

 

「ノッキン!」

 

「グゲェ!?」

 

 

今度は腹に殴りかかってきたので首元を親指で強く押し込んで無力化させる

 

ちなみにこのベーコンもさっきの目玉焼きも後で美味しくいただくつもりです、勿体無いからね

 

 

「うぅ……どうしてこんな事に……」

 

「あ、諦めるな!次は汁物だ!まずは味噌を溶くところから……!」

 

 

 

 

 

 

 

「フシュー……フシュー……」

 

 

 

 

 

味噌死僂

捕獲レベル・4

 

 

 

 

「ナイフ!(物理)」

 

「フギャアアアア!?」

 

「なんで!?なんで味噌汁がスライムになるのぉ!?」

 

「ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」

 

「ええい!次は漬物だ!沢庵を切ってくれ!」

 

「は、はい~!」

 

 

 

 

「ブルァアアアアアアア!!!」

 

 

 

ダーク・アン

捕獲レベル・2

 

 

 

 

 

「フォーク!(物理)」

 

「ブギャアアアアアア!?」

 

「沢庵を切っただけなのに……一瞬で暗黒物質に……!?」

 

「ごめんなさいいぃぃぃ!」

 

「ま、まだだ!サラダを盛るだけならどうだ!?」

 

 

 

 

 

サラ・アマデュラ

捕獲レベル・6

 

 

 

 

「繊切りにされた野菜達が繋がって……蛇に……!?」

 

「きゃあ!?た、助けてください~!」

 

「ふ、ふふふ……」

 

 

世界よ……そこまでして牛牧さんに美味しい料理を作らせたくないというのか

 

良いだろう、メシマズ設定なんて幾らでも盛ればいいさ。だがな……貴様らが何度も牛牧さんに涙を流させるというのなら、俺は何度でも牛牧さんに料理を作らせてやる

 

これは試練だ、牛牧さんに掛けられた呪いに打ち勝てという〝試練〟と俺は受け取った

 

覚悟しろよ……蛇擬き……!

 

 

「聞かせてやろう、俺のフルコースを……冥土の土産にな」

 

 

推し空崎さんとの〝出会い〟……それが俺のフルコースの〝前菜〟だ、全てはあれから始まった……

 

ブルアカのオープニング画面……それがフルコースの〝スープ〟……最初に流れた映像は死んだって忘れないだろう

 

〝魚料理〟は……初めて見た空崎さんのメモロビ

 

フルコース〝肉料理〟は……今でも膝に残る、空崎さんが乗ってきた時の感触……その体温

 

俺のフルコース"メイン"は…いつも…いつだって…俺に優しく微笑んでくれた…空崎さんの"笑い顔"…それが俺のメインディッシュ

 

そしてどんな時も…こんな俺の味方をしてくれた…決して忘れない…空崎さんの"励まし"…それが俺のフルコースの"サラダ"…

 

こんな脆い肉体を……常に守ろうとしてくれた……空崎さんの"愛情"…それが俺の"デザート"…

 

 

 

「ギギャアアアアアアアアアアア!!!(ロリコンがあ!!!)」

 

「ノッキン!ノッキン!サラダノッキン!」

 

 

 

山を食えハルナ、海を食えハルナ、釘を食えハルナ

 

世はグルメ時代……未開の味を探求する時代!

 

 

「ゲギョギュルロロロロロロ……」

 

 

……流石にゲテモノすぎてキツイかも、ちゃんと食うけど

 

 

 

 

 

 

──────────

 

 

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──────

 

 

 

 

 

 

「うぅ……また失敗です……」

 

 

落ち込んで項垂れている牛牧さんの前には俺が激戦を繰り広げた多くのグルメモンスター達が、幾つかは絶命しており残りは全員意識を失っている

 

途中から作風が変わって急に某ハンティングゲームっぽいモンスターも出てきたけどあまり気にしない事にした

 

 

「……こうなったら最後のプランだ。牛牧さん、ビニール手袋はあるか?」

 

「は、はい。棚に入っていますが……」

 

「それを二重に巻いた後、更にキッチンミトンも着けてくれ。三重の手袋越しに調理すればワンチャンなんとかなるかもしれん……!」

 

「わ、わかりました!」

 

 

名付けて三重の極み、もし食材モンスター化の条件が牛牧さんが直接食材か調理器具に触れる事ならばこの方法で防げるかもしれない

 

……これで無理だったとしてもあと一つ作戦が残されている、その方法は牛牧さんに申し訳ないしあまり使いたくないけど

 

 

「で、では……いきます!」

 

 

恐る恐る卵を割り、フライパンに入れる牛牧さん

 

焼いて、水を入れて、蒸して、ちょっとだけ時間を置く

 

最後に火を止めてフライパンの蓋を開ける、そうして出来上がったのは────

 

 

 

 

「プギュブルアアアアアアア!!、」

 

目玉夜鬼(原種)

捕獲レベル・8

 

「……」

 

「……ノッキン」

 

「ピギッ!?」

 

 

最初のより目の数が増えている目玉焼きが完成していた

 

顔に飛び掛かってきたのでとりあえずさっきと同じ方法で無力化しておいた

 

 

「……そんなぁ」

 

「……ま、まあ……人には得意不得意があるっていうしな」

 

 

目から涙を流しながら悲しみに暮れる牛牧さん、この人が一体何をしたというのか

 

何故こんな目に遇わされなければならないのか、何故普通に料理させてもらえないのか、何故変身後に頭が痛むのか

 

その答えは一つ、私にもわからん(無能)

 

……仕方ない、こうなったら本当に最後の手段だ

 

 

「なあ、その……一応、もう一つ考えがあるんだけどさ……」

 

「ほ、本当ですか!?私は一体何をすれば……」

 

「えっと……お、俺の手を牛牧さんが操るっていうか……」

 

「操る?」

 

「例えば味噌汁を作るなら俺がお玉を持つから、牛牧さんはお玉を持ってる俺の手を掴んでゆっくりかき混ぜるっていう……」

 

 

俺が牛牧さんの操り人形に徹する事で、間接的に牛牧さんに料理をさせるというこの作戦

 

どうしてあまりこの作戦を使いたくなかったのかというと、それは単純に牛牧さんにベタベタ触れる事になってしまうからですね

 

女の子の肌に勝手に触れるのはアウトだからね、仕方ないね……あ、ちなみに不良生徒と戦ってる時は敵を拘束する為に触れる事もありますけどそれはセーフです

 

 

「勿論、牛牧さんが嫌なら無理強いはしないけど……」

 

「……やります。いえ……やらせてください!」

 

「……良いんだな?」

 

「はい!これで少しでもまともな料理に近づけるのなら……!」

 

「……分かった、じゃあまずは味噌汁からだな」

 

 

給食部の調理法に則って味噌汁を作り始める

 

豆腐、わかめ、刻んだ油揚げ、シンプルな味噌汁だ

 

今は料理本番ではなくただの実験中なので大して拘りも入れずにちゃちゃっと味噌を入れる手前の段階まで済ませる

 

 

「酒泉さんって手際が良いんですね」

 

「まあ、自炊してるしな……よし、とりあえずこれで良いだろ。牛牧さん、準備はいいか?」

 

「……はい!」

 

 

すーはーすーはーと繰り返し深呼吸してから返事をする牛牧さん

 

普通の人には味噌を入れるだけなのに大袈裟なと思われるかもしれないが、俺達当人にとっては大事な一瞬なのだ

 

 

「では……いきます!」

 

 

寸胴鍋の上で味噌こしを構えたまま待機している俺の左手を牛牧さんが掴むと、俺の右手に構えられている箸で中の味噌をぎこちなく少しずつ溶き始めた

 

くるくるくるくる回る味噌、行きつく先は鍋の中

 

「お願いします、食材さん……美味しくなってください……!」

 

「頼む……頼む……!」

 

 

気分的にはソシャゲのガチャで欲しいキャラをラスト十連で当てようとしている時の気持ち

この味噌汁が普通の味噌汁となるか、それともただの化け物となるか

 

確率はニブイチ、当たりか外れか、イエスかノーか、天国か地獄か、きのこかたけのこか、熱血系かクール系か、ツンデレかヤンデレか、巨乳か貧乳か

 

太ももに関しては古事記にも書かれているように太ければ太い程良いものとされており、俺も太い太ももは大変好ましいのだが、胸に関しては大きい程良いかと聞かれれば賛否両論であり────何の話してるんだろ俺

 

 

「……よ、よし!一先ず完成だ!」

 

「見た目は普通……ですけど……」

 

 

触手が生えている訳でも意志が芽生えている訳でもないごく普通の味噌汁、それを前にしても牛牧さんは警戒を解かない

 

今まで積み重ねられてきた数多くの失敗が自身の料理の腕を疑わせてしまっているのか……俺が知らないだけで、見た目が普通でも不味い料理になってしまった経験もあるのだろうか

 

……そんな悲劇は今日で終わらせてやる、今日から牛牧さんは普通の料理を誰かの為に作ってあげられる普通の優しい料理人になるんだ

 

 

「火を止めてお椀によそってくれ」

 

「は、はい……」

 

 

そのまま牛牧さんに俺の手を操らせ、味噌汁をお椀によそってもらう

 

料理をお玉でかき混ぜただけで一気にポイズンクッキングと化してしまう牛牧さんだが、どうやら他者の肉体が間に挟まれている場合はセーフ判定らしい

 

味噌汁一つに相当気を配りながら、それを二人分用意して一旦料理を完成とさせた

 

 

「……じゃあ、飲むぞ」

 

「……はい」

 

 

いざ実食、飲む前からごくりと喉を鳴らしてお椀に口を近づける

 

恐る恐る口に含むと、中に広がったのは超絶シンプルな味噌の味、つまり味噌汁オブ味噌汁

 

これは────

 

 

「飲める……酒泉さん!この味噌汁飲めます!」

 

「ああ!成功だ!」

 

 

やった……ついにやったぞ!牛牧さんは己の運命に打ち勝ったんだ!

 

絶対に折れる事のなかった牛牧さんの心と、努力に対する献身的な態度が!自分に掛けられた呪いを打ち破ったんだ!

 

 

「酒泉さん!このまま他の料理も作っていいですか!?」

 

「ああ!どんどん作ろう!」

 

 

成功体験を忘れぬうちにと食材を準備する牛牧さん

 

この後、俺達は今日の昼食に出てくる料理を全て作り上げた

 

目玉焼きにベーコン、サラダに沢庵、そして再び味噌汁

 

俺の手を介しての料理なので普通の人が作るより時間が掛かったし目玉焼きも少し黄身が破れたりしてしまったが、少なくとも味に関しては問題無く食べられるレベルにまで成長していた

 

また、何の異変も起きず次々と普通の料理が完成していく様を見ていた牛牧さんの笑顔はとても輝いていた

 

 

「やった!やりました酒泉さん!今日の昼食のメニュー、全部完成させる事ができました!」

 

「良かったなぁ!良かったなぁ!」

 

 

俺の両手を握りながらぴょんぴょんと跳ねる牛牧さん、その笑顔を見ているとこっちまで感化されて一緒に跳ねてしまった

 

 

「ありがとうございます!これも全て酒泉さんが手を貸してくれたおかげ……あっ!?ご、ごめんなさい!私ってば何を……!」

 

「あ……い、いや……俺も悪いから気にしないでくれ」

 

 

すると互いの手がギューっと繋がりっぱなしだった事に気づいた牛牧さんが顔を赤くして咄嗟に離れた

 

やってしまった……事が上手くいきすぎて普通に手を握り返してしまった……

 

でもまあ、これで昼食作れない問題は解決したし安心して────ん?待てよ?

 

 

「……なあ、牛牧さん。今更なんだけどこの方法で料理するのめっちゃ効率悪くないか?」

 

「…………あ」

 

 

そうだ、完全に忘れていた。今回の目的は〝牛牧さんに料理を作らせる事〟じゃなくて〝牛牧さんだけで食堂を回せるようにする事〟なんだった

 

この方法じゃ時間が掛かりすぎて大勢の生徒達を待たせる事になってしまう

 

 

「そ、そうでした……すっかり忘れてました……」

 

「一体どうすれば……やっぱ食堂を閉めるしか────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふ……話は聞かせてもらいましたわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局進展は無し……かと思いきや、直後食堂の扉から人の声が

 

誰の声か気付いてしまいつい溜め息を溢してしまいながらも、もしかしたら人違いかもしれないと一応振り返ってみる

 

 

「こんな時こそ私達美食研究会の出番ですわね!」

 

「食事に関する悩みなら私達におまかせください☆」

 

「沢山ご飯作ってくれるってほんと~!?」

 

「私達は提供する側だからね!?」

 

 

 

「うわっ、来たよ……」

 

「び、美食研究会の皆さん!」

 

 

そこにはなんと、今日も元気にどの面下げて風紀委員の前に姿を現してやがる美食研究会の皆様が立っていたではありませんか

 

ちなみに一昨日くらいにどっかの飲食店を爆破してたのでブタ箱にぶち込んでやったばかりである

 

 

「まあまあ、そう露骨に嫌そうな顔せず……私と酒泉さんの仲ではありませんか」

 

「これって陸八魔さんにも言える事なんだけどもしかして俺達の関係性ルパンと銭形的なアレだと勘違いしてます?俺からしたらアンタらただのテロリストですからね?」

 

「「「「……!?」」」」

 

「なに驚いてんだ当たり前だろうが」

 

 

陸八魔さんにも言ったことあるけどあの人も似たような反応してたな……まあ、ぶっちゃけ便利屋に関しては俺も仕事の依頼をした事あるしあんま棚に上げれんけど

 

 

「で?今日は何しに来たんです?言っときますけど拉致しようにも愛清さんはここには居ませんよ?」

 

「それは分かっています、先程保健室にお見舞いに行きましたから。拉致はまた別の機会にする予定ですのでお気になさらず」

 

「おう、じゃあ別の機会にアンタらぶっ飛ばしに行くわ……つーかそれだったら何が目的で?」

 

「目的なんて大層なものはありません、私達はただジュリさんのお手伝いに来ただけです」

 

 

俺からの問いにすらすらと答える黒舘さん、他のメンバーの顔色も窺ってみたが嘘を吐いている感じはしない

 

この人達は懲りもせず毎度毎度愛清さんを拉致ろうとするグルメ犯罪者だが……かと言って誰彼構わず襲うような暴徒では無い

 

おそらく牛牧さんの手伝いに来たというのは本当の話だろう、そこだけは一応辛うじて恐らくなんとかメイビー信頼出来る

 

 

「……どうする?牛牧さんがこの人達の手を借りたくないってんなら今すぐ追い払うけど」

 

「い、いえ!追い払うなんてそんな!でも……いいんですか?食す側の皆さんに手伝わせてしまって……」

 

「日頃からご迷惑を御掛けしてしまっている御詫びですので☆」

 

「迷惑掛けてる自覚があんなら大人しくしてくれませんかね」

 

「報酬は酒泉さんの手作り弁当でお願いしますわ」

 

「御詫びなら対価を要求しないでください」

 

「ですから御詫び相手の〝給食部のジュリさん〟には何も要求していませんわ」

 

 

そうかそうか、つまり風紀委員会の俺には何も詫びるつもりはないと……よし分かった喧嘩か喧嘩だなよし喧嘩だ

 

 

「分かりましたよ、じゃあ黒舘さんはシュールストレミング弁当とバラムツの刺身弁当のどっちがいいですか?」

 

「勿論、両方頂きますわ」

 

「正気か?」

 

「重要なのは〝誰が作ったか〟ですので」

 

「……はぁ、そっすか」

 

 

ちょっとした冗談で煽ってやろうかと思ったらニコリと微笑まれながら大人の対応をされてしまった

 

しゃーない、今のは俺もちょっと喧嘩っ早かったし御詫びとしてちょっとした賄い程度なら作ってやろう

 

 

「んじゃ、これで人手不足は無くなりましたね。後は誰がどの役割を担当するかですけど……まずは俺と、他には────」

 

「はいはーい!私が担当するね!」

 

「却下で」

 

「えぇ!?どうして!?」

 

 

獅子堂さんは牛牧さんと違って料理の腕が壊滅的という訳ではないのだが、代わりにちょっと手間を加えてとんでもないゲテモノ料理を作り上げようとする事が度々ある

 

 

「ではここは私が……」

 

「いえいえ、ここは私にお任せください☆」

 

「二人とも却下で」

 

 

黒舘さんと鰐渕さんに関してはなんか試食と称されてめっちゃ食われそうだし、実際にやるかどうかはともかく

 

そうだな……ここは消去法で……

 

 

「赤司さん、悪いけど調理を手伝ってもらってもいいか?」

 

「え?私?別にいいけど……そんな上手って訳じゃないわよ?」

 

「問題無い、簡単なもんしか作らないからな」

 

 

「ロリコンですわ……」

「ロリコンですね☆」

「ちっちゃい子が好きって噂、本当だったんだね!」

 

 

 

「あ、あの……酒泉さん?否定しなくていいのですか?」

 

「もういいよロリコンで、いちいち否定すんのもめんどくせぇし」

 

「や、やさぐれてる……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「赤司さーん!そっちの目玉焼きは半熟で頼むー!」

 

「ええ!?もう普通の作っちゃったわよ!?」

 

「じゃあそれ次の人のでいいから!……あ、牛牧さん!こっちの定食もう完成してるから持ってってくれ!それと黒舘さんと獅子堂さんも手伝ってあげてください!」

 

「は、はい!すぐにお持ちします!」

 

「ふふ……こうして提供する側に回るのもなんだか新鮮ですわね」

 

「ねえねえ、これちょっと味足りなくない?ここにチョコレートを混ぜても……」

 

「目玉焼きにチョコレートなんて聞いたことありませんよ!余計なトッピングせずそのまま運んでくださいね!?」

 

「はーい……」

 

「鰐渕さんはご飯をよそって定食の準備を……多い多い!流石に盛りすぎですって!?あっという間にご飯無くなっちゃいますよ!?」

 

「えー?でも沢山あった方が皆さんも喜ぶと思いますよ?」

 

「だとしても鰐渕さん基準じゃなくて普通の生徒の胃袋基準でよそってください!」

 

 

そして訪れる決戦の刻

 

食堂に集まる生徒達、御馳走様でしたと一人生徒が去れば頂きますと新たに一人生徒が追加される

 

完成する度に一瞬で持ってかれる定食、ストックなんて残せる筈もない、常に数人以上の客を待たせている状態だ

 

 

「おーい!私の分はまだかー!?」

 

「ねーもう十分は待たされてるんだけど?」

 

「はいはーい!今作りますよー!」

 

 

ベーコンエッグ、特に難しくない料理でも注文の数が多ければ当然その分時間が掛かる

 

他にも皿洗いやら米炊きやらもしなければならないので休んでいる暇など一秒足りとも存在しない、これをほぼ毎日こなしているというのだから牛牧さんと愛清さんには脱帽するばかりだ

 

 

「……酒泉さん、そんなにジロジロと見つめられると流石に照れてしまいますわ」

 

「……おう」

 

 

しかもそんな忙しい日でもコイツらテロリストに拉致られる事もあるというのだから、その心労も肉体的疲労もとても計り知れたものではない

 

まあ、今回はその事に罪悪感を覚えているからこそ美食研究会もこうして手伝ってくれている訳なのでその辺は少し見直し……はしないな

 

 

「ゲヘナの生徒ってどうしてこう、両極端な奴ばっかなんだろうなぁ……」

 

 

暴れる時はめちゃくちゃ暴れまくる、協力してくれた時はめちゃくちゃ助けてくれる

 

めっちゃ厄介な敵かめっちゃ心強い味方の二択、基本的に敵である事の方が多いけど

 

「酒泉!冷蔵庫の一番上の段に置いてある卵取ってくれる?私じゃ届かなくて……」

 

「おー了解、すぐ取ってくるからちょい待っててくれ」

 

赤司さんに呼ばれて小走りで冷蔵庫に向かう、今は考え事をしている場合じゃなかったな

 

「やはりロリコン……」

「ですね……」

「ねえねえ!冷蔵庫に入ってたこのご飯達後で食べてもいい!?」

「そ、それは後で食べようと酒泉さんが保存しておいた私の失敗料理ですので……酒泉さんに聞いていただければ……」

「ふ、ふーん……酒泉ってちっちゃいの好きなんだ……」

 

 

おーおー、好き勝手言いなさる……!

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ごちそうさまでしたー」

 

「はい……あ、わざわざお皿重ねてくれてありがとうございます」

 

 

手を休めずひたすら卵を焼き続け、一体どれぐらいの時間が経ったのだろうか

 

人の数も少しずつ落ち着きを見せ始めた頃、牛牧さんがオーダー待ちがいないのを確認してから俺の方に近寄ってきた

 

 

「酒泉さん、酒泉さん」

 

「ん?どうした?追加でなんか頼まれたか?」

 

「あ、いえ……その、忘れないうちに改めてお礼を言おうと思って……今日は料理を教えてくれるどころかこうして食堂のお手伝いまでしてくれて本当にありがとうございました!」

 

「いいよいいよ、俺だって弁当持ってきてない日はよく食堂のお世話になってるんだしさ……困った時はお互い様って事で」

 

「はい!……それでですね、実はもう一つお願いがありまして……」

 

「お願い?」

 

「はい……あの!お昼休みが終わる前にもう一度私と手を繋いでくれませんか!?」

 

 

若干の恥じらいを感じさせつつ、俺の両手を握ってくる牛牧さん

 

世の思春期男子なら〝あれ?これって俺に気があるんじゃね?〟と勘違いしてしまうかもしれないが、俺は先程の成功体験から〝あ、料理がしたいんだな〟と意図を察する事が出来た

 

 

「私、フウカ先輩の為にたまご粥を作りたくて……でも私一人で作るとまた失敗してしまいますので……」

 

「おお、それいいな。二人でとびっきり美味いお粥作ってくか」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「すみませーん、私の分の味噌汁ちょっと少なめにしてもらってもいいですか?」

 

「はーい!少なめですね!……で、では!また後程!」

 

 

意気消沈していた様子もすっかり感じさせなくなるほど元気良く頷くと牛牧さんは味噌汁の入った寸胴の方へと向かった

 

いやーよかったよかった、かなり遠回りな方法だけど牛牧さんでも料理出来る方法が見つかって……これからは愛清さんの手を物理的な意味で借りながらイチャイチャ百合百合と料理を────ん?

 

 

「……あっ!?待ってくれ牛牧さん!牛牧さんが味噌汁をお玉に入れると────」

 

「ギエピイイイイイイイイイ!!!」

 

「きゃああああああ!?」

 

 

「うわあああああああっ!?な、なんだ!?厨房の方からモンスターが出たきたぞ!?」

 

「なんか豆腐とか油揚げとか色々混じってるんだけど!?」

 

「なんなのアレ!?スライム!?」

 

 

しまった……時既にお寿司だったか……!

 

案の定ちょっと目を離した隙に寸胴の中の味噌汁が固まり、一体のスライムと化してずりずりと牛牧さんに這い寄っていた

 

 

「フシュウウウウウゥ……フギャアアアアア!!!」

 

「テメェの弱点はちょっとはみ出てるわかめの部分!さっきの戦闘で知り尽くしてんだよぉ!」

 

牛牧さんに襲い掛かる前にブヨブヨの体からはみ出てるわかめをナイフで切り裂いて味噌汁スライムを撃破する

 

すると形成されていた肉体が力を失った様に崩れ落ち、ただの味噌汁として床にべちゃりと溢れる

 

俺にスライムをノッキングする技術が無いばかりに……すまない、食材達を無駄にしてしまった……

 

 

「大丈夫か?牛牧さん」

 

「ジュリさん!大丈夫ですか!?」

 

「あ、黒舘さんストップ────」

 

 

騒ぎを聞きつけてか、俺が手を差し出すより先に咄嗟に厨房に戻ってきた黒舘さんが牛牧さんに駆け寄る

 

味噌汁が溢れている場所は厨房の入り口を丁度曲がった辺り、黒舘さんの位置からじゃそれを確認出来ないと思って忠告しようとする

 

 

「っ!?」

 

「きゃっ……」

 

「────っとお!?」

 

 

……が、間に合わず

 

床に落ちた衝撃でぐちゃぐちゃになっていた豆腐を踏んでしまい、両手を前に出して勢いよく転倒してしまう黒舘さん

 

更にはそれに巻き込まれた牛牧さんまで背後から押される形で一緒に前のめりになり、彼女の手が俺を身体ごと突き飛ばす

 

相手が女性とはいえ二人分の体重を傾いた姿勢から支えられる程俺の身体は強くはなく、無慈悲にも咄嗟に支えようとした俺の両手ごと二人に押し潰されてしまった

 

 

 

 

「いたた……二人とも大丈夫か?」

 

「は、はい……なんとか……」

 

「ご、ごめんなさい!すぐに退きます!」

 

「いいよ焦んなくて、また足滑らせると危ないしゆっくり────」

 

 

 

 

 

ムニュ

 

 

 

 

 

「ひゃん!?」

 

「きゃっ!?」

 

「立って……く……れ…………?」

 

 

俺もさっさと立ち上がろうと思って両手を床に着ける為に動かそうとしてみれば、直後になんかムニュっとした柔らかい感触が手に伝わってきた

 

更にはそれと同時に黒舘さんと牛牧さんの方からなんか……その……艶かっ……げふんげふん、変な声が聞こえてきた

 

 

 

 

モニュ

 

 

 

 

 

「んぅ……っ」

 

「ふあぁ……」

 

 

 

 

 

なんだ?俺は何を掴んでいる?俺の手は何に押し潰されている?

 

俺の上に乗っかっているのは黒舘さんと牛牧さんの二人、そして手の位置には二人の胸部が……ん?胸部?胸部ってあの?

 

 

 

 

 

 

モミ

 

 

 

 

 

 

「ひっ……ぅ……!」

 

「やぁ……ん……!」

 

 

 

待て、俺のご自慢の眼はなんと言っている?誰の、何が、何に、何をしているシーンを映している?

 

俺の、手が、二人の胸部を、掴んでいる?

 

………………女性の胸部ってさ、それってつまりそういう事だよね?

 

 

 

「ちゅ……厨房で何してるのよぉ!?」

 

「大胆ですね☆」

 

「みんな大丈夫?怪我してない?」

 

「は、はい……大丈夫です」

 

「怪我は……ありませんが……」

 

 

獅子堂さんの手を借りて立ち上がる牛牧さんと黒舘さん、その際に二人とも顔を赤く染めながら何か言いたげに此方を見つめてきた

 

大丈夫、何を言いたいのか分かってるから。俺だって最初から〝そのつもり〟だし安心してくれ

 

 

「酒泉も大丈夫?」

 

「ありがとうございます、獅子堂さん……でも自分で立てるので大丈夫です」

 

 

二人を起こした後は俺の方にも獅子堂さんが手を差し伸べてくれたが、今の俺にその手を取る権利は無いのでやんわりと断る

 

 

「よっこいしょっと」

 

 

ふう……さて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「黒舘さん、牛牧さん、この度はお二人の胸部を鷲掴んだ挙げ句三揉みもしてしまい大変申し訳ございませんでした、折川酒泉が腹を切ってお詫び致します」

 

「ジュリさん!ナイフを取り上げますわよ!!」

 

「はい!!」

 

「俺の好きなケジメです。漢、魅せます」

 

 

ごめんなさいプレナパテス。貴方との約束、果たせそうにありません

 

ああ、短き人生だった。本当はもっと生きていたかったけど俺の薄汚い命で罪を償うにはこの方法しかないので仕方ない

 

 

「お、落ち着いてください!私達は気にしていませんから!」

 

「HA☆NA☆SE!!!俺は死ぬんだぁ!俺は死んだんだァ───!」

 

「くっ……こ、こういう時だけ無駄に力が強いですわね……!」

 

 

光帝クライスとミスターブシドーと折川酒泉は幾らでも切腹させて良いと古事記にも書かれている

 

安いもんだ……俺の命の一つくらい……折川酒泉、セクハラ野郎である事がバ レ バ レ

 

 

「っ……責任を取るにしても別の方法があるでしょう!?」

 

「別の方法……ああ、確かにそっちの方法もありましたね。分かりました、牛牧さんと黒舘さんにはそっちの方法で責任を取らせていただきます」

 

「……ふえ!?そ、それってつまり……そ、そういう事ですか!?わ、私なんかで良いんですか!?」

 

「そ、それは流石に急すぎるといいますか……な、何もこんな所で宣言しなくとも……もう少し場所を考えて────」

 

「許さないでくれ、俺は本当にどうしようもない」

 

「銃を口に突っ込んだ!?」

 

 

恐らく黒舘さんは死にゆく俺の姿すら見たくないので〝さっさと即死してくれ〟と伝えたかったのだろう

 

相手がテロリストとはいえ女性である事は間違いなし、牛牧さんに関しちゃ何の罪も無いのに身も心も傷付けてしまった

 

己の手に残るジュリパイとハルパイの感触に罪悪感を抱きながら俺は自分を恨もうとああでもやわらかかったな死ね俺

 

 

「くっ……てい!」

 

「なぬっ!?」

 

 

しかし己の過ちに気を取られている隙に黒舘さんに銃を引き抜かれてしまった、引き金に指を置いとけばよかったか

 

 

「ジュンコさんはアサルトライフルを!イズミさんはスナイパーライフルを回収してください!アカリはナイフを!ジュリさんは私と二人でも酒泉さんを抑え込みますわよ!」

 

「はい!酒泉さん!そんな簡単に命を捨てようとしないでください!私達は酒泉さんがわざとあんな事をした訳じゃないって理解してますから!」

 

「だとしても!俺は俺を許せない!牛牧さんと黒舘さんの胸を揉んでおきながらのうのうと生き続ける「胸を……揉んだ?」なんて、そんなこと俺には────ん?」

 

「あ!フウカだ!」

 

「ちょ、ちょっと!熱は大丈夫なの!?」

 

「大丈夫、あれから悪化もしてないしまだ微熱程度だから」

 

 

食堂の入口の方からここには居ない筈の人の声が聞こえたのでそちらの方を振り向いてみる

 

すると、そこにはマスクを着けておでこに冷えピタを貼った状態の愛清さんが立っていた

 

 

「せ、先輩!?どうして食堂に!?」

 

「私が休んでいるのに何故か食堂が開いてるって話を耳にしたからちょっと様子を見にきたんだけど……何やら面白そうな話をしていたわね」

 

「えーっと……フウカさん、それには少々事情がありまして────」

 

「酒泉君、今の話……本当?」

 

「聞こえていませんわ……」

 

「修羅場ですね☆」

 

 

ニッコリと笑顔で愛清さんが寄ってくるがその笑顔に親しみや好意は籠められていない。笑うという行為は本来攻撃的なものであり、獣が牙をむく行為が原点である

 

おそらく愛清さんは大切な後輩と友人(?)が傷つけられた事に怒りを抱いているのだろう、俺自身それを心苦しく思っていたので誤魔化す理由もない

 

 

「────はい、本当です」

 

「…………」

 

「俺は確かにこの両手でお二人の胸を掴み、そのまま三回程揉みました」

 

「酒泉さん!?」

 

「そこまで潔く言わなくても……」

 

「これは嘘でも否定でもないです」

 

「そう……本当……なのね…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれだわ」パリン

 

「先輩のヘイローにひびが!?」

 

 

フリーズ状態から再起動、次の瞬間にはヘイローから嫌な音が聞こえてきた

 

確かに悪い事をしたとは思っている、だがまさか愛清さんのヘイローにひびが入ってしまう程の嫌悪感を与えてしまうとは思わなんだ

 

 

「酒泉……私は……あなただけが……」

 

「先輩!しっかりしてください!フウカ先輩!」

 

「ようすのおかしいひとです」

 

「様子がおかしいのはフウカさんですわ!」

 

「ああ……やっぱ俺は駄目な奴だ……」

 

「また酒泉がヘラってるんだけど────って、それイズミの銃じゃない!?」

 

「ほんとだ!?いつの間に取ったの!?」

 

「もう……嫌なんだ自分が……」

 

「うーん……フウカさんも酒泉さんもどちらも重症ですね……」

 

「俺を……殺してくれ────」

 

「すいませーん!早く料理作ってほしいんだけどー!」

 

「あのー……私の定食、沢庵付け忘れてるんですけど」

 

「おい!まだかよ!?」

 

「は、はい~!すぐにお持ちします~!」

 

「待ってくださいジュリさん!一人で料理をしてしまうと────」

 

「きゃああああああっ!?」

 

「また目玉焼きに自我が!?」

 

 




後日、料理の礼にと酒泉の為に一人で甘いあまーいパンケーキを作ろうとしたジュリだったが……結果はお察しである
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