【30,000字・全編無料】受託事業が堅実に1億円を稼ぐ仕組み
※内容は定期的にアップデートしますので、ぜひフォローいただけると幸いです。
受託事業が不安定だと言われるたびに、正直「本当にそうだろうか?」と思ってきました。というのも、僕自身がレディクルというBtoBマッチングの仕事の中で、数百社を超えるベンダー様と毎週のようにやりとりをしてきたからです。
良い会社も、伸び悩む会社も、途中で消えてしまう会社もすべて見てきました。その過程で受託のプロセスが間違っているケースがほとんどだという事実でした。
技術力があるのに売れない会社、人柄がいいのに利益が残らない会社、案件は来るのに積み上がらない会社…。
なぜそんなことが起こるのか?答えは単純で、受託の本質が「モノづくり」であると誤解されているケースが多いからです。スコープの設計、期待値調整、法人購買の原理、人脈の使い方、営業の型、リピートと横展開の作り方。これらの基礎がきちんと積み上がっている会社は、例外なく売上が階段式に伸びます。
受託事業は経営的に難しいビジネスではなく、基礎を知れば堅実に積み上がるビジネスです。このnoteは、レディクルで日々多くの企業とやり取りをして得た「現場リアルベースのノウハウ」と、「受託を構造化して理解するための専門知識」の両方をまとめた、完全保存版の教科書です。これから受託を始める方、伸び悩んでいる方、事業として本気で伸ばしたい方のどれにでも役立つように書きました。
第0章 なぜ受託事業は“積み上がらない”と誤解されるのか
受託事業について話すと、決まって出てくるのが「単発が多い」「売上が読めない」「外注費が重い」「人件費に圧迫される」といった労働集約型産業の負の側面ばかりをみてしまう、消耗型のイメージです。
でも、レディクルで膨大な数のベンダー様と実際に会ってきた当社の知見からすれば、それは受託事業のビジネスモデルの問題というより、「正しい売上を作るプロセスを知らないまま走り始めてしまった結果」だと考えます。
たとえば、技術力がどれだけ高くても、スコープが雑な会社は必ず利益が残りません。一方で、そこまで尖った技術がなくても、プロジェクトの進め方と期待値のコントロールが上手い会社は安定して売り上げています。
事実、レディクル上で継続的に売上を積み上げている企業は例外なく、
①スコープ、②期待値調整、③法人購買の理解、④営業の型、この4つが自然と習慣になっているのです。
ではなぜ多くの会社は、この基礎を知らないまま参入してしまうのか。
理由はシンプルで、「受託は作れば売れる」という誤解をしているからです。LPを作れる、動画を作れる、システムが組める、広告が回せる、AIモデルが作れる。
それ自体は価値ですが、実はそれは商品ではありません。
受託の本質的な商品は「どこまでやるか(スコープ)」と「どう進めるか(プロセス)」であり、成果物はその結果にすぎません。
もちろん結果も大事です。ただ、スターバックスでコーヒーを目線も合わせずに渡されたりすると、どうでしょう。いくら美味しいコーヒーでも「値段相応」とは感じにくいのではないのでしょうか。
この誤解があると、以下のような典型的な落とし穴に落ちます。
案件単価の根拠が曖昧になる
顧客との境界線を引けない
トラブルは都度の感情で処理してしまう
リピートが発生しない
紹介が生まれない
横展開ができない
結果として常に新規依存になる
そして「受託は消耗戦」という結論に辿り着く
しかしこれらは、自社のサービスレベルとお客様との関係性の作り方を整えればすべて解決します。むしろ、整った受託は積み上がり型の最高のビジネスになります。
クライアントの事業に深く入り込み、長く改善し続け、紹介が発生し、別部門に広がり、新規にも勝てるようになる。実際、僕が見てきた強いベンダー企業は、年々売上が安定し、かつ伸びています。
自分たちの納品物にわかりやすく「200万円」「月額20万円」という値付けがされ、受注された時点であたかも入金されるような錯覚を持って事業運営してしまいます。実はキャッシュフローや外注費一つとっても大変管理が大変なのです。
受託事業が安定するかどうかは、才能や運ではありません。
売上構築の再現性への理解の有無で決まります。このnoteはまさにその再現性を構成するエッセンスをすべて言語化したものです。
第1章 受託事業とは何か
受託事業を語るうえで、まず最初に正さなければいけないのは「受託とは何を売っているビジネスなのか」という根源的な問いです。
ここを間違えると、どれだけ営業しても、どれだけ技術を磨いても、どれだけマーケ施策を打っても、事業は安定しません。レディクルで数百社を見てきて感じたのは、受託事業の定義は各社によって意外とさまざまになってしまっているという点です。
私たちは受託事業をこう定義しています。
受託事業とは、顧客の未充足ニーズを外部リソースとして、「成果責任つき」で代替し、成果物または成果状態を移転するビジネスモデルである。
多くの会社が抱える誤解はシンプルです。「成果物が商品」だと思い込んでしまっている。LP制作会社ならLP、動画制作会社なら動画、開発会社ならシステム、広告代理店なら広告運用。
しかし実際には、成果物はただの結果でしかありません。本物の商品は、成果物が生まれる前段階の「プロセス」と「スコープ」、そしてその成果物がもたらす「成果≒顧客期待値」ということになります。
たとえば「LPを作ってほしい」と言ってくるクライアントの多くは、本当はLPが欲しいわけではない。売上を上げたい、採用したい、問い合わせが欲しい、ブランディングを整えたい。
つまり、成果物の奥にある変化を買おうとしているわけです。成果物はあくまでそのための手段。だからこそ、受託事業では「何を作るか」ではなく「どこまで責任を持つか」「どんな道筋でそこに辿り着くか」が重要になります。
受託事業は、突き詰めれば、「プロセスを委ねてもらうビジネス」です。クライアントは「結果を届けるまでのプロセス(進行・判断・品質管理・調整)」を自分たちではできない、あるいはやりたくない、または時間をかけたくないから委ねます。
プロセスを委ねてもらうということは、責任の重心も受け取るということです。「どう進めるか」を提案し、「何を決めるべきか」を整理し、「何が問題なのか」を指摘し、「クライアントが気づいていないリスク」も説明する。プロジェクトの成功確率を上げるための意思決定を肩代わりする。それが受託事業の本質です。
だからこそ、受託の価値は確実性から生まれる。クライアントは、あなたの作業時間を買っているのではなく、「ちゃんとたどり着いてくれる安心感」を買っているのです。
受託事業は、必ずProfessionalであれ
私たち受託事業に携わる人間が、絶対に忘れてはいけない姿勢について触れたいと思います。
スタートアップ業界には、ある種の「定石」があります。 それは、自社プロダクト(SaaSなど)が軌道に乗るまでの間、受託開発やコンサルティングで日銭を稼ぎ、会社のランニングコストを賄うという戦略です。
投資家や経営者の視点で見れば、これは非常に合理的です。キャッシュフローを安定させ、生存確率を上げるための賢い生存戦略と言えるでしょう。この考え方自体を否定するつもりはありません。
しかし、この「受託=資金作りのための手段(踏み台)」という意識が、心のどこかに少しでも透けて見えた瞬間、その事業は決してうまくいきません。
なぜなら、お金を払うクライアントにとって、あなたの会社の「資金事情」や「将来の夢」など、何ひとつ関係がないからです。
そもそも「Professional(プロフェッショナル)」という言葉の語源をご存知な方も多いと思います。 これは「Profess(公言する、告白する)」という動詞から来ており、元々は聖職者が「神に対して宣誓する」ことを意味していました。
つまり、プロフェッショナルとは単に「スキルが高くてお金をもらっている人」のことではありません。 「私はこの職務を全うします」と、相手に対して魂を込めて誓いを立てた人のことを指すのです。
ビジネスの文脈に置き換えるなら、それは「クライアントの事業に責任を持ち、彼らを絶対に勝たせる」という宣誓に他なりません。
「私たちは、このクライアントを勝たせる覚悟があるか?」
その「宣誓」ができない仕事なら、受けるべきではないのです。
一社から仕事をもらい続ける
「御社を勝たせる」という覚悟で仕事に向き合うと、必ずその先にあるご褒美が待っています。 それ「バーティカル(深掘り)」と「ホリゾンタル(横展開)」という成長です。
一度、魂を込めた仕事をして信頼を勝ち取ると、クライアントとの関係は劇的に変わります。 業務のクセ、文化、担当者の好みまで理解したあなたに対し、クライアントは「次もあなたにお願いしたい」と自然に思います。
すると、同じ領域で追加の依頼が来る(バーティカル)、あるいは「あの部署でも困っているらしいから」と別部門を紹介される(ホリゾンタル)。
私が見てきた「本当に強い会社」は、例外なくこのパターンです。 制作から広告運用へ、採用動画から社内研修へ。一社との関係が深まるにつれ、領域が広がり、契約が積み上がっていく。 クライアントからすれば「説明しなくても分かってくれる」「トラブルなく任せられる」という最高のパートナーになっているからです。
いわば、一社から「ズルズルと頼まれ続ける状態」。 言葉は悪いですが、これは受託事業者にとって最高の勲章です。なぜならその「ズルズル」は、あなたが積み上げた「信頼の証」そのものだからです。
受託事業とは、新規案件を狩りに行くビジネスではありません。 一社の中で深く、横に、長く育っていく「関係構築のビジネス」です。 単発の売上ではなく、揺るぎない信頼関係という「資産」を積み上げる。これこそが、プロフェッショナルに許された受託事業の醍醐味なのです。
第2章 法人の購買構造(なぜ会社は外部に依頼するのか)
受託事業の本質を理解するうえで、避けて通れないのが「法人はどんなときに外部に依頼するのか」という視点です。
ここを誤解したまま営業しても、提案しても、マーケティングをしても、すべて空振りになります。
レディクルで多くの企業の購買意思決定に触れてきたなかで確信したのは、法人の購買は「論理」で動いているように見えて、実際には「心理」も多分に動いているということです。
まず前提として、法人が外部サービスを購入する理由はシンプルです。どれだけ複雑に見えるニーズも、最終的には 「売上を上げたい」か「コストを下げたい」 のどちらかに収束します。
広告運用も採用支援も動画制作もシステム開発も、AI導入もブランディングも例外ではありません。この原理を外さない限り、受託事業は刺さらない提案を避けることができるようになります。
たとえば「動画を作りたい」という相談があったとしても、背景にあるのは「採用を強化したい」「CVRを上げたい」「営業資料を強化したい」といった本丸の課題です。
「LPを作りたい」も同じで、目的は「売上UP」か「応募数UP」。つまり、法人の購買は表面に見えているニーズと、裏側の“本当の理由”が全く別物であることが多いということです。
しかし、ここで「論理」だけで攻めると失敗します。
「御社の売上を上げます」「コストを下げます」と提案すれば契約が決まるかというと、現実はそう甘くありません。なぜなら、法人の意思決定プロセスには、「会社としてのメリット(論理)」と同時に、「担当者個人の事情(心理)」が複雑に絡み合っているからです。
レディクルでの経験則から言えば、最終的な発注先を決めるトリガーは、往々にしてこの「心理」の側にあります。
1. 「失敗したくない」という強烈な恐怖
法人取引において、担当者が最も恐れていること。それは「成果が出ないこと」以上に、「変な業者を選んでしまい、社内で自分の評価を下げること」です。
どれほど革新的な提案であっても、実績が乏しかったり、担当者が社内に説明しにくい内容だったりすれば、その提案は「リスク」とみなされます。 多くの担当者にとって、「ホームランを打つこと(大成功)」よりも「三振をしないこと(失敗回避)」の方が、サラリーマンとしての生存戦略上、重要度が高いのです。
つまり、受託側が提示すべきは「売上が上がるロジック」だけでなく、「この会社に任せておけば、少なくとも大火傷はしない」という「安心感の担保」なのです。
2. 担当者の「個人的な利得」は見えているか
さらに踏み込むと、担当者には会社への貢献とは別に、個人的な裏のニーズ(インサイト)が存在します。
「上司に『良い業者を見つけた』と褒められたい」
「面倒な社内調整や資料作成を、業者が代わりにやってくれないか(楽をしたい)」
「このプロジェクトを成功させて、昇進の足がかりにしたい」
例えば、「動画制作」の依頼であれば、単にクオリティの高い動画を納品するだけでなく、「担当者が上司にそのまま提出できる、見栄えの良い報告書」をセットで提案する方が喜ばれます。当たり前ですが。
これは「会社の課題(動画が欲しい)」と同時に、「担当者の課題(楽をして評価されたい)」を解決しているからです。
3. 論理と感情を使い分ける
結局のところ、法人の購買行動の方程式はこうなります。
購買決定 = (会社の課題解決への期待値)×(担当者の安心感と個人的メリット)
提案書やLPに並べるべきは、「売上アップ・コストダウン」という「社内稟議を通すための論理(正義)」です。 しかし、最後の最後で競合他社の中から自社を選んでもらうための決め手は、「この人なら任せられる」「この人なら自分を助けてくれる」という「担当者への共感と安心(感情)」です。
「御社の課題は何か?」という視点だけではなく、「目の前の担当者を、社内のヒーローにするには(あるいは、安心させるには)どうすればいいか?」
この視座を持てるかどうかが、単なる下請け業者で終わるか、不可欠なパートナーになれるかの分水嶺となるのです。
マーケティングだけで売れるという勘違い
そして法人購買には、もう一つ重要な特徴があります。マーケティングだけでは絶対に売れないということです。
「プロダクトが良ければ、営業はいらない(PLG)」という考え方が流行っています。確かにZoomやSlackはそれで広まりました。しかし、高単価な商材や複雑なソリューションにおいて、営業なしで成約することは稀です。
Amazonで水を買う時、ヒアリングは不要です。水という「完成品」と「価格」が決まっているからです。 しかし、受託事業(システム開発や制作)は違います。
お客さまが欲しいのは「何かすごいシステム」というぼんやりしたイメージだけ。商品がまだこの世に存在していないのです。 だからこそ、営業という名の「ヒアリング」を挟まないと、見積もり(値段)すら出せません。
影も形もないものに、数百万円、数千万円の値段をつける。 これは非常識なほど難しいことです。
だからこそ、どれだけ優れたマーケティングオートメーション(MA)を導入しても、どれだけ魅力的なWebサイトを作っても、受託事業のクロージングは自動化できません。
なぜなら、マーケティングはあくまで「一対多数」のコミュニケーションだからです。「弊社の開発実績は素晴らしいです」「こんな技術があります」と、広く世の中にアピールすることはできます。
しかし、顧客が最後に契約書にハンコを押すために知りたいのは、一般的な実績ではありません。 「で、私の会社の、この特殊で複雑な悩みは、具体的にどう解決されるの? いくらで?」 という「個別解」です。
この「個別の問い」に対して、Webサイトは答えてくれません。顧客の現状をヒアリングし、複雑に絡み合った糸をほぐし、その企業のためだけの解決策を提示できるのは、生身の人間による営業活動だけなのです。 マーケティングが「興味の入り口」を作るものだとしたら、営業は「出口(ゴール)を設計する」役割と言えるでしょう。
その手間暇が受注につながる
余談のようでいて、実は受託事業の核心でもある話をしたいと思います。レディクルには全国から多種多様なベンダー企業が登録していて、僕らは毎日のように「提案の現場」を見ているのですが、明確にひとつの傾向があります。それは、リモートより“会いに行く会社”のほうが圧倒的に受注率が高いということです。
もちろん、オンラインが悪いわけではないし、リモートで完結する案件もあります。でも、受託というビジネスは本質的に「不安の解消」と「期待値の同期」で成り立っている。だからこそ、足を運ぶという“手間暇”が、言葉を超えて相手の心に届くのです。
法人の担当者は、いつも忙しいです。社内の調整も多いし、責任も重い。そんななかで、わざわざ時間を使って会いに来てくれる会社は、それだけで「このプロジェクトを大事にしてくれている」と感じられる。
お客様の心を動かすのは、いつだって手間暇です。
これはレディクルの現場を毎日見てきたからこそ、胸を張って言えることです。
営業とは、売り込む行為ではありません。営業とは「あなたのために時間と労力を使っています」というメッセージそのものです。この自分事化の表明が、法人購買においては圧倒的に信頼感を醸成する。
そして、ただ会いに行けばいいわけではありません。
自社都合で動かず、常に相手にとっての価値を持っていくこと。
これを僕は「お土産」と呼んでいます。
最新の市場データ
他社の成功事例
問題を整理した図解
仮説ベースの改善案
簡単なラフ案
金額の大きさではありません。「あなたのために考えてきました」というその姿勢が、最も価値になります。受託事業は、意外なほど心理的で、意外なほど人間的です。手間暇をかけた分だけ、返ってきます。
ただ、ここをいかに打算でなく、心の底からやり切れるか。
これがProfessionalたる所以なのだと思います。
第3章 月額1,000万円を受注するまでのマインドセット
受託事業で売上を伸ばし続ける会社には、業種や提供価値が違っても「共通する思考の型」があります。それは特別な才能ではなく、月額100万円でも、最終的に1,000万円でも同じ積み上げの原理です。レディクルでは売上規模が数百万から億単位になる企業をたくさん見てきましたが、その全員が例外なくこのマインドセットを持っていました。
ここでは、受託事業が大きく伸びる会社が当たり前のように実行している考え方を整理していきます。戦略というより、姿勢・思考習慣・判断基準に近い話です。
(1)検索して見える情報を整える
受託は無形サービスである以上、クライアントの最大の不安は「何をどこまでやってくれるのかが見えない」という点です。その不安を和らげるためには、Webサイト・営業資料・実績ページ・SNSなど、検索してすぐ確認できる情報が極めて重要になります。
特に重要なのは、作業範囲(スコープ)やプロセスが明確になっていることです。「どこからどこまでやるのか」「成果物は何か」「どのように進行するのか」。これが書かれているだけで、クライアントの安心感は大きく高まり、受注率にも直結します。レディクルでも、Web・資料が整っている会社ほど圧倒的に結果が出ています。
「受託=オーダーメイド」だと思い込んでいる会社は多いですが、全ての工程をブラックボックスにする必要はありません。 クライアントが求めているのは、完全なオーダーメイドよりも、「ある程度確立された、成功確率の高い型(パッケージ)」です。
Before(不安): 「お客様の要望に合わせて柔軟に対応します」
After(安心): 「基本プランには、要件定義・UI設計・実装・テストが含まれます。サーバー保守はオプションです」
このように、サービスの内容を「商品」のようにパッケージ化し、松・竹・梅のようなプランや、標準的な工程表(ロードマップ)を提示することで、クライアントは「何を買うのか」を具体的にイメージできるようになります。「目に見えないサービス」を「目に見える商品」に変換する作業こそが、資料作りの本質なのです。
(2)バリュープロポジションを絞る
受託事業で最も多い失敗パターンが「うちはなんでもできます」という状態です。これは一見すると柔軟性が高いように見えますが、法人からすると「結局何が得意なのかわからない」という印象になります。逆に、成功している会社の共通点は 専門領域がはっきりしていることです。
医療業界特化、採用動画特化、BtoB SaaSサイト特化、建設業向けDX特化。ジャンルは何でも構いませんが、「この領域は任せてほしい」と明確に言えることが、受注率を引き上げます。理由はシンプルで、担当者が社内に説明しやすくなるからです。
例えば、建設業界に特化したシステム会社であれば、ヒアリングの段階で「2024年問題の残業規制への対応ですよね?」「現場監督と本社の共有ラグが課題ですよね?」と、相手が口にする前に業界特有の痛み(Pain)を言い当てることができます。
担当者はこう思います。 「この人たちは、私たちの業界のお作法や苦労を分かってくれている。一から説明しなくていいんだ」
この話が早いという感覚こそが、担当者にとっての強烈な安心感(=心理的メリット)となり、「この人たちならプロジェクトを任せてもズレないだろう」という推測になります。
あまり知られていない話ですが、専門特化は、単価アップの正当な理由にもなります。 社内稟議において、上司から「なんでA社より高いB社にするんだ?」と突っ込まれたとき、担当者はどう答えるでしょうか。
何でも屋の場合→「えっと、担当者の対応が良かったので……」(これでは稟議は通りません)
専門特化の場合→ 「他社は安いですけど業界知識がなく、要件定義で失敗するリスクがあります。B社はこの業界での導入実績が50社あり、法規制も熟知しているため、手戻りのリスクが最小限だからです」
このように、「◯◯特化」という看板は、担当者が社内を説得するための「最強の武器(言い訳)」になるのです。担当者に武器を持たせてあげることが、受託側のマーケティングの役割です。
(3)売上目標。目標がないと妥協が連続する
売上目標がないと、受託事業は必ず破綻します。
目標がない会社は、
採算の悪い案件を受けてしまう
採用や外注費の計画が立たない
営業活動が日々の忙しさに飲まれる
マーケ投資が判断できない
優先順位が曖昧になる
結果として“妥協の連続”になる
これはレディクルでも非常に多く見てきたパターンです。逆に、売上目標が明確な会社は、逆算して「必要なリード数」「投資すべきチャネル」「最適な単価」「受けるべき案件 or 受けない案件」がはっきりします。
売上目標を持つことの最大の効能は、「何をしないか」を決められることにあります。
受託事業における最大のリスクは、「貧乏暇なし(繁忙貧乏)」です。 目標がない会社は、目の前の案件が「自社にとってプラスか」を判断する物差しを持っていません。そのため、「せっかく相談が来たから」「断ったら次がないかもしれないから」という恐怖心で、低単価・短納期・高難度の“毒まんじゅう”のような案件を食べてしまいます。
余談ですが、受託会社の経営において一番厄介なのは、金がないので案件を回すPMを採用したい、採用したいが採用費がない、採用費がないから小さい案件を取ってしまう、というデッドロックにハマってしまうことです。
しかし、明確な目標(例:月次粗利1,000万円)があれば、思考はこう変わります。
「この低単価案件でリソースの3割を使うと、目標達成に必要な高単価案件を取りに行く時間がなくなる。だから、この案件は勇気を持って断る(または値上げ交渉をする)べきだ」
つまり、目標数値は、無理な案件から現場と経営を守るための「防波堤」の役割を果たすのです。
さらに、受託事業で陥りやすい罠が「売上至上主義」です。 1億円の売上があっても、外注費や原価で9,500万円出ていけば、会社に残るのはわずか500万円。これではリスクばかり高く、会社は成長しません。
成功している受託企業は、必ず「粗利(付加価値)」を目標に置いています。
自分たちの稼働(人件費)に対して、どれだけの利益が残るのか?
その案件は、未来の資産(実績・ノウハウ)になるのか?
この視点がないまま売上目標だけを追うと、右から左へ仕事を流すだけの「トンネル会社」になり、組織としての地力がつきません。「高付加価値な仕事を選び取る」ためにも、粗利ベースでの目標設計が不可欠です。
4章 どのようにビジネスモデルを設計すべきか
営業のnoteなのにスコープの話?スコープは重要なのはわかってるよ、と言われそうなのですが、少しスコープの話をさせてください。
受託事業を続けていると、ある瞬間に気づきます。
「同じ技術力なのに、伸びる会社と伸びない会社がいるのはなぜだろう?」
「案件数はあるのに、なぜか利益が残らないのはなぜだろう?」
「どれだけ丁寧に進めても、どうして炎上するのだろう?」
その答えは、スコープ管理が強いか、弱いか、にあるのではないかとみています。
売上は「スコープ × 単価 × 販売力」で決まる
受託事業における売上の公式は極めてシンプル
売上 = スコープ(作業範囲) × 工数 × 単価
しかし、この3つは表面的に見えて、全て戦略選択です。
スコープが広いと、単価は上がるがリスクも上がる
スコープが狭いと、利益は高いが顧客に説明力が必要
工数ベースは人時で積むモデル(安定するが価格競争になりやすい)
成果ベースは利益率は跳ねるがスコープ設計が必須
結局のところ、スコープを言語化し、適切に値付けできる企業だけが伸びる。
利益は「再現性 × マネジメント × スコープ管理」で決まる
続いて利益の話をします。
受託事業が難しいのは、利益が現場力と強く紐づくこと。
利益が残らない会社は例外なく以下のような特徴があります。
スコープが曖昧
手戻りが多い
複数案件を社員が同時に抱えている
マネジメントが弱い
進め方が属人化している
逆に利益率の高い企業には次の特徴を考えてみます。
提供プロセスが標準化されている
スコープが固く、境界線が明確になっている
PM(プロジェクトマネージャー)の能力が高い
案件が特定領域に集中しており再現性がある
再利用可能な資産(ノウハウなど)が進んでいる
受託の収益上限は、単に人員数だけで決まりません。大きく分けて3つの限界があります。
PMキャパシティの限界
専門職(デザイナー・エンジニア)のリソースの限界
社内コミュニケーションの限界(マネジメントの壁)
受託が伸び悩む瞬間は、ほぼすべてこの3つに突き当たります。
境界線を引くには、「謙りすぎない勇気」が必要
スコープを明確にすることが大事だと頭では分かっていても、実際に線を引くのは簡単ではありません。特に独立直後の会社や、受託を強気で売っていく経験が少ない会社ほど、クライアントに対して謙りすぎる傾向があります。
「これを断ったら嫌われるのではないか」
「強く線を引くと、追加発注してもらえないのではないか」
「相手の要望には極力応えたほうがいいのではないか」
この気持ちは、とてもよく分かります。
しかし残念ながら、この“謙りすぎ”こそが炎上を呼ぶ最大の要因であり、会社を消耗させる根本原因でもあります。
境界線を引くというのは、相手を拒絶することではありません。
むしろ逆で、相手のプロジェクトを成功させるために、必要な線を引く行為です。
クライアントも本当は、曖昧な境界線のまま進むことに不安を感じています。
ただ、それを自分から言葉にしづらいだけです。だからこそ、受託側が「ここまではできますが、ここから先は別の扱いになります」「この判断は御社でお願いしたいです」と、丁寧に伝える必要があります。
強く出る必要はありません。でも、必要な線を引く勇気は、受託事業者のプロとしての責任です。
スコープ管理が弱いと、社員に仕事を任せられなくなる
スコープが曖昧だと、案件の管理ルールが人によって揺れます。ある案件はAさんの判断で進めるが、次の案件ではBさんの判断が違う、そんなバラつきが発生します。
すると、どうなるか。
「任せると炎上する」
「やっぱり最後は社長が見るしかない」
「社員に渡すのが怖い」
……この状態になると、組織は一気に限界を迎えます。
社員が育たない。採用しても任せられない。
結局、社長が全部対応する。
結果、案件を増やせなくなり、売上も頭打ちになる。
スコープが強い会社は、社員に安心して任せられます。判断基準が同じだから、品質も安定し、組織が拡張します。
受託事業はサブスク要素を持たないと苦しくなる
話は少し変わりまして、ビジネスモデルの話です。
受託事業は、案件単価こそ高いものの、キャッシュフローが極端に不安定です。
その大きな理由は次の2つ。
売上の発生が「納品ベース」
支払いサイクルが「後ろ倒し」になりやすい
多くの受託会社がやりがちな失敗は、
「納品後でいいですよ」
「請求は月末締めで大丈夫です」
「まずは結果を出してからで構いません」
という良い人発言。でも、これを続けていると、会社が先に死にます。
なぜなら
納品までの数ヶ月間、誰が現場の人件費を払うのか?
その期間、会社はどうやって生きるのか?
という問題が避けられないからです。
受託ビジネスのキャッシュフロー構造はそもそも不利
受託事業のキャッシュフロー構造はこうです。
先に工数(コスト)が発生する
その後、数ヶ月かけて納品
納品後に請求
さらに翌月 or 翌々月に入金
つまり、
コストが先行し、売上は後ろからやってくる
この構造は資金繰りを常に逼迫させます。だから、サブスクリプション(月額課金)を持たない受託は、常に死の谷を歩くビジネスモデルなのです。
サブスク要素は「利益のため」ではなく「安定のため」に必要
誤解されがちですが、サブスクは儲けるためではなく、会社の安全装置として必要です。受託におけるサブスクとは、
運用保守(月額5〜30万円)
クリエイティブの定期改善プラン
分析レポートの月額提供
マーケコンサルティングの定額顧問
採用・広報・ECなどの月次支援
小規模追加作業の月額バンドル
デザインパス(毎月5点まで)
テックサポート(MTG月2回+Slack対応)
こうした 継続プラン のこと。これらの月額課金が積み上がると、キャッシュフローが安定し、売上の予測精度が向上します。そうすると、毎月のメンタルが楽がなり、新規顧客を無理に取りにいかなくて良くなる。
そうなると、PMの稼働が平準化するため、組織の採用計画が立てやすくなる。といいことずくめなのです。
サブスクを持っていない受託会社ほど、値下げ要求に弱くなります。
なぜなら、「来月の売上が見えない」状態では、どんな無茶な案件でも取りに行かざるをえないからです。
これは経営的に最悪の状態です。逆にサブスクが積み上がれば、
受けたくない案件を断れる
単価を適正価格に戻せる
営業の選別思考が働く
会社として待てる状態になる
受託事業の黒字化は、実はどれだけ断れるかによって決まる。そしてその「断る余裕」を生むのがサブスクリプションということになります。
高単価のスポット受託で利益を取り
月額支援で安定をつくる
この二層構造を作れた会社が、50名〜100名にスケールします。
第5章 相談がどんどん来るようになる、サービスマーケティングとは
受託におけるマーケティングの本質は「需要を生み出すこと」ではありません。「需要が発生した瞬間に選ばれる準備を整えること」です。
なぜなら、需要もないのにいきなりWebサイトを作ったり、システムを開発する営業をされたとしても買わないからです。当たり前ですね。
受託ビジネスを深く理解しようとすると、「なぜ売れる会社と売れない会社に分かれるのか」という疑問に必ず行き着きます。技術力の差でもなければ、デザインの出来ばえでもない。広告費の投入量が答えでもない。
結論から言うと、受託事業はサービス・マーケティングであるという前提を理解しない限り、本質にはたどり着けません。
その構造を最も正確に説明できるのが、サービスマーケティングの基本フレーム7Pです。ただし、7Pをそのまま表層的に使っても意味はなく、受託事業ならではの解釈が必要になります。
受託は無形のサービスを扱い、クライアントと共同で成果物を設計していく業態です。つまり、購買判断の中心にあるのは、完成品そのものではなく、“サービスの品質”です。この構造を読み解くために、まず7Pを受託に最適化して整理します。
7Pとは何か?
製品マーケティングの4P(Product、Price、Place、Promotion)にPeople(人)、Process(プロセス)、Physical Evidence(物的証拠)を加えたサービス業特有のマーケティング要素の体系です。
Product(サービス内容): 提供する専門性とソリューションの適合度
Price(価格): コストパフォーマンスと価格設定の妥当性
Place(提供場所・手段): サービス提供体制とアクセシビリティ
Promotion(情報発信): 実績・事例の可視性と専門性の伝達力
People(人材): 実際にプロジェクトを担当する人材の専門性と信頼性
Process(プロセス): プロジェクト管理手法と品質・納期の担保システム
Physical Evidence(物的証拠): 過去の実績、資格、認証などの証明材料
しかし、受託で本当に成果を左右するのは7Pのうち3つだけ
7Pはサービス業全般を説明するための広いフレームですが、レディクルでの数千件の商談データと、伸びる会社・伸びない会社の行動を重ね合わせると、受託事業の勝敗を決めるのはたった3つだと私は考えています。
それは、People・Process・Physical Evidenceの3つです。
この3つが弱い会社は、どれだけ技術があっても売れる仕組みが構築できません。
その理由を深く掘り下げていきます。
◼︎People
受託ビジネスは無形サービスです。完成品を先に手渡すことができない。
つまりクライアントは常に「まだ見えない未来」にお金を払うことになります。だからこそ、受託では他のどんな要素よりも、担当者そのものが商品になる。
担当者の言葉、説明の仕方、表情、誠実さ、資料の質、期待値の揃え方。
これらすべてが、クライアントの不安を溶かす「価値」になるのです。
人間は担当者の姿を見て判断する
たとえば、コンサル会社や制作会社のWebサイトに、
顔写真
経歴
プロジェクト責任者一覧
どんな思想で動いているか
担当者のnoteやSNS
があるだけで、安心感を覚えませんか?
これは心理学でいう “ヒューマナイズ効果”で、人は人間の顔を見ると、企業やサービスそのものを信頼しやすくなるという現象です。SaaSはUI/UXを見て判断しますが、受託は担当者の顔を見て判断するのです。
受託ビジネスは「担当者次第」という残酷な真実
多くの企業は、過去に受託ビジネスを発注して失敗した経験を持っています。「納期が遅れた」「品質が低かった」「コミュニケーションが崩壊した」「想定外の追加費用を請求された」こうした痛みは、担当者に深く刻まれています。
だからこそ、次の発注では 「本当に大丈夫だろうか?」という構造的な不安が必ずついて回る。そしてこの不安を解消できるのは、会社の実績でも価格でもなく、担当者の態度・説明・地頭力・誠実さなのです。
失敗経験を持つ企業ほど、担当者の人間としての信頼性を最初に見ています。受託事業において People(担当者)を明らかにすべきなのは、このトラウマを払拭してあげることと不可分になります。
■ Peopleの厚みを出す具体的アプローチ
では具体的にPeopleの何を表現するべきなのか、具体的な表現方法を見ていきましょう。
① Webサイトで「誰がやるか」を明確にする
受託では、実績よりも担当者の人となりが評価されます。だからWebには以下を必ず載せるべきです。
プロジェクト責任者の顔写真
経歴・専門領域・得意分野
過去の担当プロジェクト
チームメンバー一覧
② 営業資料に「担当者紹介ページ」を入れる
営業資料に会社概要や事例だけ載せる会社は多いですが、担当者のプロフィールも可能であれば掲載しましょう。掲載する内容の具体例を下記します。
写真
役割と得意領域
これまで携わった案件
プロジェクト管理経験
簡易ポートフォリオ
③ 事例では「担当者がどう関わったか」まで書く
事例はすごく営業においては強い武器ですが、営業先の企業も、「この事例、本当か?」と実は少し疑っています。
一般的には成果物だけサイトや資料に載せる企業がほとんどですが、実は受託においてクライアントが読みたいのは、「誰が」「どう関わって」「どう改善したか」という再現性にまつわる部分です。
担当者の判断や、なぜそうしたのかという思考プロセス
会社や担当者が果たした役割
成果を上げるための工夫
チーム体制
が書かれているだけで、事例の説得力は段違いになります。
◼︎Process
続いて、Processについて解説していきます。
受託事業でクライアントが最も恐れているのは、「進め方が見えないこと」による不安です。
どんな工程なのか
誰が判断するのか
いつ合意を取るのか
どこから追加費用になるのか
進め方が曖昧な会社ほど、クライアントは決裁できない。ブラックボックスのサービスには、大きな予算は落ちません。だからこそ、成功している受託会社は、Process(進め方)を徹底的に見える化する時代になっています。
進め方を事前に理解できる会社は、それだけで「この会社は信頼して良い」と判断されやすくなり、結果として受注率が大きく上がります。
StockSunに見るプロセス公開
具体例を見ていきます。StockSunの品質ガイドラインは、
受託のプロセス公開のレベルとしては日本屈指です。
どの工程で何をするか
いつ誰が判断するか
どんな基準で良し悪しを決めるか
を細かく言語化し、外部にまで公開している。これほど進め方が透明な会社はほとんどありません。
これにより、
認識のズレが起きない
手戻りが減る
誰が担当しても品質が落ちない
決裁が通りやすくなる
という成果が生まれています。StockSunの最大の強みは、品質ガイドラインだけではありません。品質会議をYouTubeでそのまま公開していることです。
これは非常に強力です。クライアントは実際の議論を見ることで、
この会社はどんな基準で判断しているのか
どこまでこだわっているのか
どうやって品質を担保しているのか
どう改善し続けているのか
を裏側まで確認できます。普段、受託の裏側は絶対に見えないものです。しかしStockSunはその裏側をあえてさらけ出すことで、顧客の不安をゼロにするという、ある意味で革命的なアプローチを取っています。
結果として、「ここまで見せてくれる会社なら任せたい」という“心理的確信”が生まれます。Processの可視化がそのまま 受注率UPのエンジン になっているのです。
Physical Evidence
最後に、Physical Evidence(物的証拠)について話したいと思います。
本来のPhysical Evidenceとは、サービスを提供する際の演出ツール・装飾などを指します。
例えば、以下のようなものです。
サロンの資格証明、免許証、認定証の掲示
レストランのメニューのデザイン
ECなら商品撮影の品質、レビューの質
受託は無形ゆえに、クライアントは判断材料が少ない。だからこそ、「目に見える証拠」を増やすことで購買が早まる性質があります。
具体的に受託会社が見せられるEvidenceを列挙してみます。
事例(導入前後の変化が分かるストーリー)
図解(課題・構造・打ち手・プロセス)
プロジェクトのプロセス表(どの工程で何をするか)
KPIシート(どの指標をどこまで改善したか)
提案資料のロジック(なぜその施策なのか)
サンプル(レポート、成果物の一部)
Before→After の比較(画面・数字・組織の変化)
契約書の粒度(どこまで責任を持つかの明示)
クライアントの声(インタビュー・コメント)
この Physical Evidence を極端なレベルで積み上げているのが、才流です。才流は「BtoBマーケティング支援」という、非常に無形度の高いサービスを提供していますが、その見えない価値を、ほぼ徹底的に可視化しています。
徹底した事例記事
実際の改善プロセスを公開するコンテンツ
Before/Afterの明確な提示
KPIの変化を数値で示す
メソッドを言語化した資料の無料公開
顧客インタビューの量
どの施策をどう判断したのかの透明性
才流のコンテンツを見れば、
「この会社はこう考え、こう改善し、こう成果を出す」
が一目で理解できる。
つまり、「よく分からないけれどとりあえず頼んでみる」という状態ではなく、“ほぼ不安ゼロの状態で購買できる” ようになっている のです。これは Physical Evidence の理想形に近いと言ってよく、受託企業全体のハードルを底上げしてしまうほど強力なやり方です。
■ なぜ才流のEvidence戦略が強いのか
もう少しだけ分解すると、この戦略が強い理由はシンプルです。
才流はこのEvidenceを「営業トークの補足」として使っていないからです。
顧客教育
プロセス透明化
社内基準の標準化
ブランド資産の蓄積
顧客に決裁理由を提供するための材料
といったあらゆる場面で汎用的に利用できる形になっている。
つまり、
「いいから任せてください」
ではなく、
「こういう考え方で、こういうプロセスで、こういう結果が出ます。その具体例がこれです」
と、判断に必要な情報をすべて証拠で見せている。受託の価値は、「言葉」よりも「できる」で伝えたほうが100倍早いです。この姿勢を自社でも取り入れるだけで、商談の質も、リピート率も、決裁速度も、すべてが変わります。
People × Process × Evidence が揃うと勝ちやすくなる
だからこそ、最初に着手すべきは営業資料とホームページの整備です。ここに実績・プロセス・人材が明確に示されていなければ、候補のテーブルにすら上がれません。加えて、定期的な情報発信は不可欠です。顧客が調べたとき「この会社は今も動いている」と実感できるかどうかで、信頼の厚みは劇的に変わります。
第6章 受託事業は具体的にどのようなマーケティングチャネルを活用するべきか
受託事業における「トラクション=顧客獲得チャネル」は、一般的に語られる19のチャネルをそのまま並べ替えただけでは機能しません。SaaSやECとは違い、受託ビジネスは無形サービス × 高単価 × 高関与購買という特徴を持ち、チャネルの強弱が根本的に異なります。どのチャネルがどれほどの効力を持ち、どの順番で取り組むべきか。その正解は、私の調べた限りあまり体系化されていません。
しかし、レディクルで数千社以上の受委託データを見続けてきた経験から、
受託事業の成長は、「どのチャネルに依存し、どのチャネルを軽視するか」でほぼ決まるということは言えるように感じています。
本章では、受託事業に特化した独自Tier構造を軸に、トラクションの本質を明確にしていきます。
Tier1:最優先で取り組むべきもの
既存顧客のリピート・横展開
人脈(前職・友人・業界)
紹介(クチコミ・パートナー)
Tier2:時間 or お金にゆとりができてきたら取り組みたい
BtoBマッチングプラットフォーム
検索されるWebサイト(特に事例・スコープ公開)
SEO記事(専門性の見える発信)
note・X(思想の可視化)
展示会・カンファレンス
セミナー主催・登壇
Tier3:社員数人以上の規模になってきたら
広告(Google / Meta / LinkedIn)
アウトバウンド(メール・テレアポ)
パートナー営業(代理店構築)
書籍
コミュニティ運営(Slack / FBグループ)
Tier4:余力があれば
バイラル(SNSバズ)
広報・メディア露出
Tier5:基本的には取り組む必要がない
オフライン広告(交通・屋外)
アフィリエイト
以下、Tierごとに“なぜその順位なのか”“どこまで効果があるか”を専門的に解説します。
■ Tier1
受託における最上位のチャネルは非常にシンプルで、既存顧客、人脈、紹介の3つに収束します。特徴は「信頼の跳躍を必要としない」という点です。法人は、無形サービスを検討するときに必ず不安を抱えます。成果が出るか、炎上しないか、社内説明が通るか。この不安を最短で消すのがTier1です。
特に既存顧客のリピートと横展開は、受託の構造そのものと言っていいほど強力です。一社と関係ができると、半年から数年にわたって複数部門・複数用途へ自然に広がっていきます。これは、顧客が成果物に依存するのではなく、プロセスの信頼に依存するからです。
信頼は再現性を持つため、別の部門に話が流れやすくなる。こうした循環は、広告や営業努力では作れません。関係資産が自動的に売上を生む、受託らしい構造です。
1. 既存顧客のリピート・横展開(ホリゾンタル)
受託の売上構造を理解している会社は全員ここを最重要視します。
理由は明確です。
信頼コストがゼロ
期待値が揃っている
プロセスの信頼が積み上がっている
単価が上げやすい
横展開が自然に起きる
レディクルでも、売上が伸びている会社の共通点は「一社から複数案件を取れる」ことです。
2. 人脈(前職・友人・業界)
最初の10社は“人脈”から生まれる
多くの受託企業が「最初の顧客獲得」に苦戦します。しかし、これは発想がWeb前提になっているからです。
受託事業の最初の売上は、ほとんどの例外なく人脈から生まれます。これは精神論でも偶然論でもなく、構造上必ずそうなります。前職の同僚、取引先、知り合いの経営者、Facebookの友人、こうした過去の信頼によるつながりが最初の数件を生むのが普通です。
そして、このフェーズで最も多い失敗が 「恥ずかしがること」 です。
独立したばかりの方の多くが、
「まだ実績が少ないから言いづらい」
「営業していると思われたくない」
「迷惑をかけるのではないか」
といった感情を抱きます。しかし、この感情こそが初速を止めてしまいます。
結論を言えば、恥ずかしがっていると売上は絶対に立ちません。
独立したということは、組織という後ろ盾を外し、自分の名前で勝負することを決めたという意味です。そうであれば、恥ずかしさよりも“覚悟”を優先しなければ、事業は前に進みません。
むしろ、独立直後は少し“痛いくらい”の発信と行動のほうがちょうどいいのです。
なぜなら、法人の購買は「知っている人」から始まるからです。人は知らない相手より、知っている相手を選びます。そして“知っている度合い”は、発信や連絡を通して強くなっていきます。
「こういう事業を始めました」
「もしお困りごとがあれば相談に乗れます」
「得意領域はこちらです」
これを言える人と、「恥ずかしいから…」と黙ってしまう人では、半年後の売上が本当に違います。
そもそも法人の担当者からすると、独立したばかりの人ほど“つながっておきたい存在”です。行動力がある、スピードがある、柔軟性がある、そして何より熱がある。(あとちょっと安いし・・・。)
こうした価値を持つ人材は、企業にとってはむしろ魅力的です。
そして、最初に生まれる案件の多くは、いわゆる “ご祝儀案件” と呼ばれるものです。「独立したなら一度お願いしてみるか」「困っていたからちょうどいい」という“お気持ちの依頼”です。
ここで勘違いしてはいけないのはご祝儀案件は、単発で終わらせてはいけない ということです。ご祝儀は、あくまで入口であり、スタート地点にすぎません。本当に強い受託企業は、この最初の案件を「一社と長く続く関係」へと丁寧に育てていきます。
領域を深掘りする(バーティカル)
別部門に横展開する(ホリゾンタル)
良い経験を事例化し、次の顧客の“説明材料”にする
相手の社内で「あの会社は信頼できる」と認知される
磨けば半年後には2件、1年後には5件、気づけば数百万円〜数千万円規模の累積売上になっている。そんなケースをレディクルでも何度も見てきました。
だからこそ、恥ずかしがらずに一歩を踏み出し連絡し、価値を伝え、ご祝儀案件をちゃんといただく。その積み重ねが、後の月額1,000万円の基盤をつくります。
3. 紹介(クチコミ・パートナー)
紹介は受注率がとても高いチャネルです。
受託は信頼の共有で購買されるため、人の口を介すると決まりやすい。
ただ、紹介というチャネルは、サービスが優秀だから決まるのではなく「紹介してくれた人の顔」で決まっています。紹介者があなたに仕事を紹介するという行為は、自分の社会的な信用や人間関係という「信用残高を担保に、貴社に仕事を紹介する(信用貸しする)ことに他なりません。
紹介案件の責任を果たすために必要なのは、通常の案件よりも丁寧な「二重の期待値調整」です。
紹介を依頼された時点で、紹介元に対し「どのような課題解決を期待されているか」「予算や納期感」をヒアリングし、自社で解決可能かを事前に確認する。
商談時には、紹介によって既に信頼残高があるからこそ、逆に「どこからどこまでやるのか」というスコープの線を明確に引く。この明確さが、紹介元への信頼を裏切らないための証拠となります。
紹介案件は「ご祝儀」ではありません。「紹介してくれた方の顔に恥じない、プロフェッショナルな成果を出す」という強い覚悟と、それを実現するための厳格な運用体制があってこそ、初めて安定的な成長チャネルとなるのです。
■ Tier2:信用資産を積み上げ、自然流入を作るチャネル
Tier1が濃い関係だとすれば、Tier2は広い関係を形成するフェーズです。Webサイト、事例、note・Xなどの発信、展示会やセミナーは、いずれも「検索して見つかった時に信頼できるか」を決める要素になります。
受託の購買行動は、想像以上に検索主導です。担当者は、紹介された会社であっても必ず検索します。そして、その瞬間に“情報の粒の細かさ”と“透明性”が問われます。スコープが書かれているか、実績の文脈が具体か、プロセスが言語化されているか。このあたりが整っている会社は、検索された瞬間に受注率が跳ね上がります。
展示会やセミナー主催も同様に、いわば「信頼の貯金」を積み上げる行為です。即座に商談が生まれることもありますが、本質的には「認知 → 期待 → 想起 → 商談化」のプロセスを作る役割です。受託において、Tier2のチャネルは“未来の売上をつくる投資”的な意味を持ちます。
4.BtoBビジネスマッチング
紹介に次いで成果が出やすいのが、レディクルをはじめとする BtoBマッチングチャネル です。
受託事業にとっては珍しく、「意欲の高い企業と会える」「決裁者に最短距離でアクセスできる」「成果が出るまでの時間が短い」という、極めて受託と相性の良い構造になっています。
近年、BtoBマッチングは大きく三つのタイプに分かれています。
営業代行型マッチング
Webプラットフォーム型マッチング(検索・条件一致型)
コンシェルジュ型マッチング(伴走・要件整理型)
① 営業代行型マッチング 「商談は増える」が、優先順位の構造が最大のリスク
営業代行は「売ってくれる人が増える」という意味で、受託企業にとって短期的には非常に強力です。しかし、構造的な落とし穴があります。
■ 営業代行の本質的なリスク
“条件が悪いと、後回しになってしまう”
営業代行は成果報酬で動くため、「稼ぎやすい商材」から優先して売る という動機が必ず発生します。
つまり、あなたの会社の条件(価格・キックバック率・工数)と競合の条件を比べた結果、代行側の「収入効率」が悪ければ、途端に売られなくなる。
よって営業代行が機能する条件は、
「利益率が高い」
「受注単価が大きい」
「紹介フィーを払える」
「要件定義に時間がかからない」
ということになります。営業代行は万能ではなく、“営業代行が売りやすい商品に最適化されているか”を確認しないと成果が出ない。
実務的な話をすると、つまりパッケージ型のツールであれば成果を出しやすいのですが、受託型のビジネスとはやや相性が悪いように感じています。
② Webマッチング型
次に、Webマッチング型(掲載型)。
これは受託企業に最も相性が良いチャネルの一つです。
■ なぜ受託と相性がいいか
① 相手がすでに困っている状態である
検索して依頼しに来る企業は、すでに困っており、購買意欲が高い。
② 商談までが圧倒的に速い
展示会や広告は「興味」段階の顧客が多いが、
Webマッチングは「今すぐ解決したい」顧客と出会える。
③ 技術や実績が正当に評価されやすい
構造化された比較環境の中では、“実力のある会社がちゃんと勝つ”。
特に 「紹介だけだと限界がある段階」 の企業にとって、
“意欲の高い企業と効率よく会えるチャネル”は極めて貴重です。
③ コンシェルジュ型マッチング
最後が、レディクルが最も強みとする コンシェルジュ型(要件整理型)。
これは単なる「条件マッチング」ではなく、
依頼企業の要件を整理し
ニーズを構造化し
最適候補を絞り
商談の前提条件を揃えた上で
ベンダーと接続する
という購買の初期フェーズを代行してくれる仕組みです。
■ 最大の強み:ミスマッチが起きない
普通のマッチングでは、
目的が曖昧
予算が不明
権限が不明
期待値がズレたまま商談に来る
という「商談の機会損失」が起きやすい。
コンシェルジュ型はそれを事前に潰すため、きちんと商談になりやすいという特徴があります。
レディクルのみで1年で1億を超える売り上げを作っている会社も数十社あり、再現性のあるチャネルになりつつあります。
5. Webサイトのお手入れ
クライアントは必ずあなたの社名を検索します。
商談前に検索し、初回商談後にも検索し、稟議の前にもう一度検索します。
「検索されるWebサイト」を考えるうえで、とても重要なコツが “違和感をゼロにすること” です。
たとえば、
SEO会社なのに、自社サイトのSEOが全然できていない
デザイン会社なのに、自社のWebサイトがそもそも存在しない / 古すぎる
DXコンサルなのに、資料請求がFAXと電話しかない
「成果にコミット」と言いながら、成果事例がほとんど載っていない
こうした「言っていること」と「見えているもの」のギャップは、
クライアントにとって強烈な不信感につながります。
受託ビジネスでは、この“小さな違和感”がそのまま「発注を見送る理由」になります。
だからこそ、自社サイトを作るときは、
「うちのサービス内容と、サイトの見え方に矛盾はないか?」
「第三者の目で見たときに『え、それはおかしくない?』と思われないか?」
を徹底的に考え抜くことが重要です。
Webサイトは、ただあればいいものではなく、
「自分たちの言っていることと、やっていることがちゃんと一致している」
と証明する場所なのです。
6. SEO記事(専門性の発信)
Xやnoteがプッシュ型の情報発信であるのに対し、SEO記事はプル型です。ユーザーが自らの課題解決のために検索した瞬間に表示されるため、そこで得られるリードは非常に購買意欲が高い(=顕在層である)という特性があります。
SEO記事が最も得意とするのは、課題解決の「答え」を探しているユーザーを捉えることです。
例えば、「LP制作 費用 相場」と検索するユーザーは、単なる情報収集段階ですが、 「BtoB SaaS サイト 制作 失敗 事例」と検索するユーザーは、既にプロジェクトが立ち上がっており、失敗リスクを回避したいという切実なニーズ(心理的恐怖)を抱えています。
受託事業のSEOでは、後者のような「課題の深さ」がわかるキーワードを狙い撃ちにし、その検索意図に対して、他社にはない「高い解像度」の回答を提供することが重要です。
また、前に論じた「専門特化」を外部に証明するのが、SEO記事のもう一つの役割です。
多くのSEO記事が「〇〇とは?初心者向け解説」という一般的な内容で終わるのに対し、受託事業で成功する記事は、「自社の専門分野の独自のノウハウ」を出し惜しみなく公開します。
例: 建設業向けDX特化の企業なら、「建設現場のDX導入で最も躓く『初期フェーズの調整』を乗り切るための7つのチェックリスト」など、すぐに使える具体的な手順や専門用語を含めます。
これにより、クライアントは記事を読むだけで「この会社はうちの業界を深く理解している」「このノウハウは自社では生み出せない」と納得し、記事そのものが信頼残高を築くのです。
一応、AIOにも触れておきます。
田中調べでは、AIOはSEOを頑張っていれば自然についてくる類のものなので、頑張って発信しましょう!という他ないのですが、AIO記事は、その広さと深さによって、クライアントにこう確信させます。 「この会社は、このトピックに関しては他に類を見ない知見を持っている。なぜなら、これだけの情報を整理し、体系化しているからだ」
なのでAIO記事(ピラーコンテンツ)を核とし、その周辺に、関連するニッチなキーワードで書かれた通常のSEO記事(クラスターコンテンツ)を配置することで、サイト全体のトピッククラスター構造を完成させることが重要です。
これにより、Googleは貴社サイトを特定のトピックにおける「包括的な情報源」として評価しやすくなり、結果的にサイト全体のドメインパワーと検索順位が向上します。
7. note・Xによる思想発信
みんなやったほうがいいよね、と思われる領域なので深くは話しませんが、noteで意外に読まれているのは失敗事例です。成功事例だけでなく、「実はこのプロジェクトでこの問題が起きたが、専門知識でこう解決した」という失敗事例や課題への対処法を公開すると、前述した「担当者が抱く、失敗したくないという恐怖」に対し、「この会社はトラブル対応力もある」**という安心感を植え付ける効果があります。
また、Xは、企業の購買担当者や経営層とフラットな関係性を構築しやすいツールです。業界のキーパーソンや、ターゲット企業の担当者と建設的な議論や情報交換を行うことで、見込み客との心理的な距離を縮め、商談前の「親近感」を醸成します。
8. 展示会・カンファレンス
ここでは、受託事業における展示会の選び方やノウハウを整理していきます。
1. 「探索意図」の高さを最優先する
最も成果が出るのは、来場者の「課題解決意欲(探索意図)」が高い展示会です。営業支援EXPOやマーケティング⚪︎⚪︎のように、来場者が「課題を持って解決策を探している」タイプの展示会は、アポ率も受注率も高い。
つまり、「今まさに探している人」が集まる場は、営業効率が圧倒的に良い。
一方で、トレンド系・ネットワーキング系のイベントほど、KPI達成はしんどくなる傾向がある。
来場目的が「情報収集」や「業界の空気を掴みたい」だと、商談化率が下がる。
良い出会いはあるけれど、数字で見ると苦戦する。
「今すぐ客」が集中する展示会を選ぶことで、営業活動の効率を圧倒的に高めることができます。
2. 「主催者の集客設計」を深読みする
展示会は主催者が意図的に来場者層を設計しているため、その設計意図を見抜くことが、出展成功の成否を分けます。
誰もが知る「有名度」ではなく、自社のターゲットとする「探索意図の強い層」を主催者が集めているかを論理的に推定することが重要です。
9. セミナー主催・登壇
セミナーは可能であれば積極的に出ていきましょう。
専門性を文章で伝えるのと、実際に聴衆の前で論理的に語るのとでは、伝わる権威性のレベルが全く異なります。
セミナーは、深い知識を体系的にまとめ上げる能力の証明であり、「この分野の第一人者である」という印象を決定づけます。業界内でセミナー登壇者と見なされるようになると、競合他社とは「価格」ではなく「専門家の知見」という土俵で比較されるようになり、価格競争から一気に抜け出すことができます。
みなさん、忙しいですよね。忙しいとなかなかノウハウを言語化する機会にも恵まれないと思います。セミナーはそんな自分に期限を切ってスライド化しないといけないというタスクを授けてくれる場所だったりもします。
そして、そのセミナーのスライドは、無形サービスである受託プロセスを可視化する最高のツールとなります。貴社の受託事業における「失敗しないための7つのステップ」や「要件定義で最も重要な3つの質問」といったサービスプロセスを具体的に解説することで、クライアントの最大の不安である「何をどこまでやってくれるのか」を解消します。
登壇とは、貴社の知識・ノウハウを「生きた形」で見せ、高確度な見込み客を効率よく商談に繋げるための、極めて有効な戦略なのです。
また、、、これはすごく嫌な言い方になるかもしれませんが、登壇パートナーを選ぶ最大のメリットは、そのパートナーが長年かけて築いてきた「信頼残高」と「専門性」をお借りすることができる点です。
参加者は「パートナー企業(A社)が推薦する企業(貴社)なら、間違いないだろう」と無意識に判断します。これにより、貴社がゼロから信頼を築くフェーズを大幅にスキップし、商談が「課題解決の深掘り*から始められます。
また、貴社がアプローチできていない層(例:貴社は事業部長層に強いが、パートナーは現場担当者層に強い)のリードを、「信頼のバトン」を介して獲得することができます。
■ Tier3:スケールを生むが、勝つには戦略が必要なチャネル
Tier3には、広告、アウトバウンド、パートナーセールスといった、より“積極的に獲りに行く”チャネルが並びます。これらは適切に設計すれば売上は急激に伸びますが、基礎が整っていない会社が手を出すと確実に疲弊します。
例えば広告。受託における広告はSaaSのようにCPAが軽くありません。問い合わせ単価は高く、その後の商談で“比較される”状態になるため、選ばれる構造を持っていない企業は勝てません。アウトバウンドも同様で、露骨な営業では決まらず、「第一声の構造化」「担当者のメリット提示」「期待値のズレを消すメッセージング」など、かなりの設計力が要求されます。
Tier3のチャネルは、Tier1とTier2で“選ばれる準備”が整っている企業だけが勝てる領域です。
10. 広告(Google / Meta )
受託会社において、正直広告は第一選択である必要性は薄いと思います。しかしながら、後述するセミナーや作り込まれたLPなどがあれば十分受注が狙えます。GoogleとMetaだけ選択肢に入れる方向でいいと思います。
Xはムダ撃ちが多いですし、その他メディアは受託会社では検討する必要がないと思います。
余談ですが、以前私が受託会社を経営していた際も広告で複数件受注したことがあります。
1. Google広告
Google検索広告は、「今まさに解決策を探している」ユーザー(顕在ニーズ)を捉えるのに最適です。
「LP制作 費用」のような競争が激しいキーワードではなく、貴社の専門特化領域を反映したロングテールキーワード(例:「製造業向け 採用動画 制作 相場」「BtoB SaaS サイトグロース 支援」)を徹底的に狙い撃ちします。
検索者が抱える課題の深さがわかるため、クリック単価は高くても、商談化率が極めて高いリードを安定的に獲得できます。(展示会の「課題解決型」来場者と同じ)
ちなみに私はなんとなくリスティング広告が大好きです。
2. Meta広告
Meta(Facebook/Instagram)は、職務ベースでのターゲティング精度ではLinkedInに劣りますが、「広範な認知」と「読了済みの顧客への追撃」に力を発揮します。貴社のAIO記事やnote記事を既に読んだユーザーに対し、「あの記事の解決策を、御社専用にカスタマイズしませんか?」といったリターゲティング広告を配信できます。
一度貴社の専門性に触れた「温まったリード」に絞って広告費を投下できるため、商談化率が大幅に向上します。(リードナーチャリングの自動化)
11. アウトバウンド(メール・テレアポ)
アウトバウンドは、多くの受託会社が最も嫌うチャネルです。
しかし正しく設計すれば、単価が上がりやすく、意思決定権者とも最短で会える高効率チャネルになります。
鍵はたったひとつ。
「自分のサービス」ではなく「相手の成果」をきちんと話すことです。
多くの受託会社は、アウトバウンドでこう言ってしまいます。
「Webサイト作りませんか?」
「広告運用代行しています」
「動画制作できます」
「DXコンサルやっています」
しかし、これはクライアントにとって自分ごと化されていないメッセージです。一切刺さらない。なぜなら、そんな連絡は腐るほどもらっているからです。
本当に響くのは、クライアント側の“得るもの”に直結する言葉です。
● 受託における良いアウトバウンドの例
「既存サイトの改善でCVが平均1.8倍になっている事例があるので、お役に立てるか見ていただけませんか?」
「採用母集団を2〜3倍にしたクリエイティブ改善をご支援しています。御社の場合どこまで伸ばせるか簡易診断します」
「人手が足りなくて回っていない業務があれば、ROIベースでやる価値があるか無料で算出します」
「営業資料を1枚変えるだけで受注率が平均8%伸びています。御社の資料もプロ視点で改善点を10分で指摘できます」
いずれも 売りたいものではなく、相手が得られる成果 を語っています。
12. パートナー営業(代理店)
受託事業におけるパートナー営業の究極形は、電通や博報堂といった日本の広告・マーケティング市場のゲートキーパーとなる大手総合代理店から、継続的に案件を受注する状態です。
これは単なる売上獲得以上に、受託会社の経営に「信用」と「安定」という、かけがえのない資産をもたらします。
あまり大きな声で言える話でもないのですが、大手代理店は、大規模で複雑なプロジェクト(広告キャンペーン、大規模システム刷新など)を動かしており、そのプロジェクトは無数の専門的な「部品」によって構成されています。その中で「品質が保証された、かけがえのない専門部品」になることも一つの強い生存戦略といえるでしょう。
一度成功体験を共有した貴社は、代理店の「秘密の、低リスクな外部リソースリスト」に載ります。新しいプロジェクトが立ち上がるたびに、担当者は内部のリスクを最小化するため、すでに実績のある貴社に類似の案件を回すようになり、貴社の経営は劇的に安定します。
大手代理店は、何でもできるゼネラリストを自社内に抱えています。そのため、外部に求めるのは、「社内では採算が合わないほどニッチで、かつ、高度な専門性」です。
例:「単なる動画制作」ではなく、「医療機関の治験募集に特化した、薬機法をクリアするアニメーション制作」。
例:「一般的なWebサイト制作」ではなく、「100万MAUを超えるBtoB SaaSのグロースハックに特化したサイト改修」。
この「代理店自身ではやりにくい、専門特化の切り口」を提示することが、選ばれるための絶対条件です。
代理店営業における貴社の仕事は、代理店の営業担当者がクライアントに自信を持って提案できる「武器」を提供することです。
貴社の専門ノウハウを、代理店のフォーマットやロジックに合わせて編集した専用の営業キット(価格ロジック、実績データ、提案用スライドなど)を提供する。これにより、代理店担当者は貴社を「提案の幅を広げてくれる、頼れる専門家」として認識し、積極的に貴社サービスを組み込もうと動きます。
13. 書籍
書籍は、受託事業における営業、マーケティング、ブランディングの全てを、同時に高める最も強力なツールの一つです。自費の商業出版で500万円程度からスタートできるかと思うので、キャッシュに余裕が出始めたら着手して良いと思います。(私は書いてませんが笑)
書籍を出版することは、その分野において「知識を体系化し、一般に公開できるだけの専門性を持っている」ことの公的な証明となります。
登壇時や商談時に書籍を渡す行為は、単なる名刺交換ではなく、「私たちはこの分野の専門家です」というメッセージを、最も格式高い形で伝えることになります。競合他社との差別化は一瞬で完了する点が、めちゃくちゃ大きなメリットだと考えています。
書籍は、一度世に出れば、貴社が特に広告費や工数をかけなくても、半永久的にリードを生成し続ける、最も耐久性の高いコンテンツ資産となります。
14. コミュニティ運営
受託事業におけるコミュニティは「商談の場」ではなく「対等な仲間が集う学びの場」として設計されるため、参加者(見込み客)の心理的なハードルが劇的に下がります。
通常の商談では、顧客は常に「自分たちが不利にならないか」「この業者に頼んで騙されないか」という警戒心を持っています。そのため、課題を話す時も会社として公式に認められた建前の課題しか伝えません。
しかし、コミュニティの中では、参加者同士が対等な立場で情報交換を行います。主催者である貴社も、「サービスを売る人」ではなく、「業界の課題解決に貢献する専門家」として参加します。
この対等な関係性によって、参加者は「ここで話すことは、そのまま契約に繋がるわけではない」という安心感(心理的安全性)を得ることができます。
なので、運営まで行かずとも、自分の開発したいスキルセットのコミュニティがあれば積極参加することで売り上げにつながることは往々にしてあるということなのです。
■ Tier4:刺されば強いが、安定性がないチャネル
SNSバイラルやメディア露出は、受託においてはサブ効果を期待するチャネルです。問い合わせが突発的に増えることもありますが、継続性がないため主軸にはなりません。ただ、思想発信と組み合わせるとTier2を加速させる役割は果たします。
15. バイラル(SNSバズ)
割愛。
16. メディア露出
割愛。
■ Tier5:特定用途を除き、受託には不向き
オフライン広告やアフィリエイトは、受託の購買プロセスと噛み合いません。成果物が無形で、購買が高関与で、担当者が複数いる受託では、衝動的な問い合わせはほぼ発生しないからです。もちろんブランド形成の文脈では活用される場合もありますが、売上をつくるためのチャネルとしては優先度は低くなります。
18. オフライン広告(交通・屋外)
受託の購買プロセスには合いません。
ブランド形成目的ならアリですが、プロダクトがあった方がいいのでここにかけるコストは別に回した方がいいと思います。
19. アフィリエイト
割愛。
終わりに
レディクルでの膨大な経験を通じて、私は数多くの受託企業様の成功と失敗の現場を見てきました。そこで確信したことがあります。世間一般で言われる「受託事業は再現性が低い」「結局は運とセンスだ」というイメージは、完全に間違いなのではないかということです。
技術力だけでも勝てない。営業力だけでも勝てない。ただ広告費を投下するだけでも勝てない。その代わりに、勝ち続ける会社には必ず、再現性のある「成功の法則」があります。
その法則こそが、これまで私たちが論じてきた以下の4つの柱です。
スコープとプロセスの明確にすること
法人購買の原理を理解すること
チャネルを戦略的に選ぶこと
信頼の極大化につながる道を選び続けること
これらを丁寧に積み重ねた会社は、例外なく右肩上がりの成長を実現しています。
私たちは受託を「不安定な商売」だと考えていません。むしろ、適切な仕組みさえ整えば、どんな会社でも堅実に売上が積み上がる、最も盤石なビジネスモデルだと確信しています。
もし、あなたが今、
「疲弊せず、もっと受注率を上げたい」
「事業を安定させ、社員が自信を持てる会社にしたい」
「運任せではない、再現性のある組織にしたい」
と感じているなら、本書(この一連の議論)に書いてきた内容は、必ずあなたの会社の未来を変える力になります。法則と仕組みを理解し実行することで、あなたの会社は今より確実に、強く、安定し、そして何より「自信を持って成長できる組織」へと進化します。
受託事業がもっと健全に、もっと社会から信頼される世界をつくるために、この知見がその一助となれば嬉しく思います。
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ファイナンスとかは触れませんでしたが、この辺はまた次回にでも・・・。

