NARUTOコラム
2023/06/08
「ナルト走り」でプロのランナーが50mを全力疾走すると? 三津家貴也が“忍の走法”で最速を目指す
ただ、一般的な走り方のセオリー(腕を振ったときに生じる推進力を生かす)には反しているようにも感じられる。
腕を振らずに速く走れるものなのか?
前傾姿勢のまま走って転ばないのか?
そもそも、速く走るための走法として理にかなっているのだろうか?
そんな疑問を解き明かすため、専門家協力のもと検証実験を実施してみた。
「スポーツ科学」と「ランニングの専門家による実践」。2つのアプローチで、「ナルト走り」を徹底解剖していこう。
「ナルト走り」で「50m6秒台」を叩き出した男
スポーツ科学の専門家が語る、ナルト走りの「メリット」
協力を仰いだのは、塚原直貴選手や末続慎吾選手といった短距離走のトップアスリートを輩出してきた東海大学だ。大学が所有する最新鋭の装置を用いて、ナルト走りの「メカニクス(仕組み)」を明らかにしていく。
次に、実際にトラックでナルト走りの「スピード」を検証。三津家さんにナルト走りと通常のフォームで走ってもらい、タイムの差を比較してみる。
…….というわけで、早速私たち取材チームは検証実験を監修いただく東海大学体育学部の山田洋教授を訪ねた。
そんな山田教授に、まずはナルト走りについて率直な感想を聞いてみた。スポーツ科学の専門家は、あの奇抜な走りをどう見るのか?
――本日はよろしくお願いします。そもそも山田教授は「ナルト走り」の存在を知っていましたか?
山田教授:「こういうスタイルの走り方」があるんだな、という程度ですが、知っていました。実は、何人かの学生が私の体育の授業中にそんな走り方をしていたのを見たことがあって。
一例ですが、バスケットボールのシュート練習中、リバウンドボールを追いかけていく時に、ある学生さんがその走り方をしていました。
ただ、それが『NARUTO-ナルト』に由来するものだということまでは知らず、今回企画書をいただいて興味を持ち、取材を受けることにしました。
山田教授:難しい質問ですが、少なくともスポーツ競技の常識には反する走法ですよね。やはり上体をまっすぐにして、腕を振りながら走るノーマルな走り方が、速度を出す上では合理的ですから。
でも、少し引っかかるところもあるんです。なぜ『NARUTO-ナルト-』のキャラクターはあえて速度の出ないフォームで走っているのか、と。
なぜなら、この特徴は短距離走の常識に反しながらも記録的なタイムを叩き出した「ナンバ走り」と共通しているからです。
――「ナンバ走り」とは?
山田教授:日本古来からある走り方のひとつで、腕と足を同時に前に出すのが特徴です。何十キロ、何百キロもの距離を走る江戸時代の飛脚(文書や貨物を輸送する人夫)が実践していたと言われています。
これを、東海大学陸上競技部の高野進コーチ(現・東海大学体育学部競技スポーツ学科専任教授、東海大学陸上競技部監督)と、その教え子である末続(慎吾)選手が現代的な走法にリメイクしました。
2003年のパリ世界陸上200メートル走で、末続選手がナンバ走りにより銅メダルを獲得したことはよく知られています。
高野コーチはナンバ走りのメカニズムについて、「右肩から右腰、左肩から左腰にそれぞれ一本ずつの軸が入っていると想定し、この2本の軸を交互に素早く切り替えながら動かして体重を移動させ、『踏み込む動作』を行なっていく二軸走法である」と述べています。
山田教授:もっとも大きなメリットは、エネルギーを効率的に利用できる可能性があるという点です。
バランスを保ちながら速く走るために欠かせないのが、体幹(胴体の部分)の筋力です。ただ、その使い方を誤ると、逆に走りづらくなってしまいます。
走るときの体幹の役割について、2001年発行の雑誌「体育の科学」(杏林書院)のなかでこうつづられています。
“体幹が非常に大きな質量を有し、慣性モーメントも大きいことを考えれば、不必要な体幹の振動は疾走に対して不利にはなれ、有利には働かない。”
※雑誌「体育の科学」より引用/著者:小木曽一之氏(現・青山学院大学教育人間科学部教育学科教授)太字は編集部
つまり、体をひねる動作が少なければ、体幹も「不必要に」動かさずに済む。エネルギーを効率的に使って走ることができるわけです。
このことから、ナンバ走りはノーマルの走法よりも「地面を効率よく蹴ることができている」とも考えられます。
――なるほど。だからエネルギーも効率的に使えるんですね。
山田教授:はい。ただ、繰り返しになりますが、やはりノーマルの走法と比べるとスピードは落ちるでしょうね。末続選手は持ち前の技術でそのデメリットを補いながら走りましたが。
山田教授:もしかすると忍者ならではの利点があるのかもしれませんね。例ば、任務のために長い距離を走らなければならないとき。体をひねらない、必要以上に踏ん張らないことで、体に無理なく走り続けられるのではないでしょうか。
あと、移動中に敵襲を受けたときも「ナルト走り」であればとっさに攻撃をかわすことができるのではないかと。
歩幅が狭くなり脚の回転数が増えると、脚が地面に接地する時間も長くなりますから、小まわりは利く(方向転換しやすい)と思います。
実際、私たちが行った実験ではノーマルな走法よりもナンバ走りの方が、走っている時の外乱(稼働状態に対して外部から受ける干渉)に対しての反応が速い可能性があるという結果が出ています。もちろん場合によってよりけりですが。
最新テクノロジーでナルト走りを「丸裸に」する
加えて、高感度カメラとモーションキャプチャによって手足の複雑な動きを座標で表したり、筋電図によって筋肉各部の活動量を測定したりと、走行フォームにまつわる数多くのデータが得られるのだとか。これらのデータをもとに体の動きを解析し、効率的なランニングフォームを追求できるというすごいマシーンだ。
山田教授:まず、ピッチ数を比較してみましょう。時速20kmのペース帯では、ノーマル走りが10秒間で16ピッチ、「ナルト走り」は10秒間で18ピッチです。つまり、「ナルト走り」はノーマル走りに比べてストライドが狭くなり、ピッチ数が増えている。予想通り、ナンバ走りと同様の傾向が観測されましたね。
次に、左右それぞれの脚の地面反力(地面を蹴る力)のデータを見てみましょう。こちらは面白い結果が出ましたね。
ちなみに、一般的なフォームは「一軸走法」で、体の中央に一本の軸ができるため、地面を蹴るポイントも真ん中付近に寄りがちです。ノーマル走りのグラフで、左右の脚のピッチがところどころ重なった状態になっているのも、軸が一本である証ですね。
三津家さん:「ナルト走り」の方が地面を力強く蹴れている感覚はありますね。でも、腕を振らない分、前への推進力は弱まっている気がします。
――走りやすさはどうですか?
三津家さん:これが、皆さんの想像している以上に走りやすいんです。意外と脚を回せるというか。ただ、スピードを出そうとすると、どんどん体が前傾してバランスを崩しそうになります。最終的に時速20kmまでペースが上がりましたけど、たぶんここが限界。時速25kmになるとバランスを崩すと思います。
腕を振ることができないので、転倒しないように肩を固定させて体の揺れを抑えようとするんですが、それが難しい。
・ナンバ走りと同じ「二軸走法」。左半身と右半身の軸を、素早く動かしながら走る
・通常の走り方よりもピッチ数が増える。そのぶん脚が接地する時間が長くなり、細かく方向転換しやすい(敵襲に対して反応しやすい)
・通常の走り方より地面を蹴る力は強くなるが、腕を振れず推進力が出にくいので前に進むスピードは落ちる
・スピードを出そうとすると体が前傾し、転倒のリスクが高まる。バランスを取りづらく、うまく走るには訓練が必要
結局、「ナルト走り」は“速い”のか?
なお、この日は若干の追い風。好記録が期待できるコンディションだ。
まずは三津家さんのベストフォーム(ノーマル走り)で走ってもらう。
体力回復のために若干のインターバルを空け、いよいよ「ナルト走り」のタイムを計測する。
「ナルト走り」の“最適解”を探る
三津家さんにフォームを変えて何本か「ナルト走り」を試走してもらい、微調整を加えた結果、以下のようなことが分かった。
・腕を上げすぎると肩が動いてバランスが崩れる
・逆に腕を下げると体幹の筋力を使えてバランスが保たれる
つまり、バランスを保ったまま速く走るためのポイントは「腕をあまり上げすぎない」ことのようだ。
これをふまえた「改良版ナルト走り」のタイムを計測する。
ともあれ、科学的検証と実走を経て、「ナルト走り」のことがよく分かった。
・バランスを取るのは難しいが、思ったより走りやすい
・そこそこスピードは出る
・持久力も上がる(可能性がある)
・敵襲に対して反応しやすい(可能性がある)
こうして見ると、やはり「ナルト走り」は忍者にとって優れた走法のように感じられる。
もし、あなたが「敵襲をかいくぐりながら、遠くまでなるべく早く行かなくてはいけない」ような状況に陥ったら、ぜひ「ナルト走り」を試してみるのはいかがだろうか。
写真:小野奈那子
取材協力:東海大学
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