エデン条約が無事終わったらまたどこか行こうかな…。

海とか…？

なんか違うな…海って最近行ったっけ？

いや、行って無い気が…？

何か忘れているような気がする…。

そんなことより。

　改めて目の前に続く路地をどうやって抜けようかと思い直す。

たまにはトリニティにも行ってみようと思っていたけど。

これじゃ、ただの迷子だよね……。

　遠くに見えた古聖堂を目印に人気の無い路地を歩き続ける。

『私ってこんな方向音痴だったっけ…？』

無事、古聖堂についたがなんだか、物々しい空気が漂っている。

トリニティの正実とゲヘナの風紀委員が睨み合ってる……？

何かあったのかな…？

『こっち見て無いよね…？』

風紀委員と睨み合ってる正実の後輩達を横目に"コッソリ”と古聖堂にお邪魔する。

誰もいない古聖堂の中をのんびり見ながら歩き回る。

もちろん､目立つ事は無いようにね…？

お…？　面白そうな人影が見えたから､話しかけに行こうかな､なんて思ったり。

（あれは…、確かシャーレの先生…そういえば補習授業部が何とかかんとかで

　トリニティにきてたんだっけな…。）

音もなく先生の背後に周り、肩に手を置いて驚かせる

スッ……。

「”おわっ……！？びっくりした……。”」

『こんにちわ、貴方はシャーレの先生だよね？どうしてこんな場所にいるの〜？』

「”そうだけど…というか君こそ、なんでここにいるの!?”」

「”ここは関係者以外立ち入り禁止なはず…。”」

『大丈夫！どうせ警備がザルで見つからないからね。』

「”いや、見つからなくてもだめだからね！？”」

「”というか、どうやって入ったの!?”」

『それはもうコッソリと人目をかいくぐって。』

（あ、忘れてた。）

『そうだ、話すことがあって追いかけてたんだった。』

「”うん…？別にいいけど。”」

『じゃあ…まず。』

『先生…、補習授業部の子達は元気してる？』

「”…？　うん、みんな仲良くやってるよ…？”」

（”そうだこの子！”）

「”それより君は坂浦エミさんじゃないか！？ヒフミ達が君のことを探していたよ？”」

『ちょっと旅行に行ってたんだ〜。別に心配しなくても良かったのに…。』

「”ちょっとじゃ無くない…？数ヶ月前に退学届けを出してから音沙汰なしだったのに…。”」

「”でも、無事で良かったよ…｡”」

驚いていた先生が､そっと胸を撫で下ろした。

『調印式終わるまで、クロノススクールの生中継でも見て待ってない？』

”確かに、どうせ暇だからね…。”

”そうだ、調印式が終わったら少しでいいからみんなに顔を見せてあげてくれない？”

『まあ､良いよ。たまには可愛い後輩の顔も見たいからね。』

………

『…ねぇ、先生？　先生はトリニティのことをどう思う？』

”どうって…そんな事言われてもね…。”

『そっか、じゃあずっとそのままでいてあげて？』

『私みたいな人を信じられないやつは一人でいい。』

『だからね、先生。　貴方だけはトリニティの子たちを信じてあげて？』

「”……。”」

”その時、私は彼女に何も言ってあげられなかった。”

”エミと雑談しながら調印式の配信を眺めていたその時”

ヒュオオオオオオォォォン！！

空から大きなものが降って来るような音がする。

「”うん……？なんの音だろ……？”」

『先生！』

「”おわっ……!!”」

急に腕を引っ張られ翼の中に抱き込むかのように押し込められて声が出た。

ドカアアァァァァァン！！！

爆音と凄まじい衝撃に襲われ意識が沈んでゆく中で、

翼に守られながら最後に聞いたのは、

彼女の『これだからトリニティは…。』という愚痴だった。

その時の彼女は、どこか諦めたような…悲しそうな顔をしていた気がした。