神秘探求したいミレニアムモブ生徒とゲマトリアがガッチャンコ 作:ハイパームテキミレニアム
列車砲『シェマタ』。
かつての全盛期アビドスを率いていた『鉄拳政治のシェマタ』という伝説的な生徒会長にあやかって命名された、弩級の兵器。
……というような記述が、始めに見つけた資料に記載あり。
しかし、これが運用されたという公的な記録は何も無し。
見つけた資料の日付からして、開発設計がなされたのは■年前程、正確な日付は───■■■■■■■■■■
「────っ、あ、ぅ、く、っ」
─────見つ■た資料の■■からして、開発■計がなされたのはほんの数年前。
その日から遡ってまずはアビドス自治区の情報を軽く洗ってみるものの、ノーヒット。
開発されている途中や、設計図の段階で発生した不備などの様々な都合によって完成を迎える事ができなかったため、日の目を浴びず、記録にも残らず……というのはままあるとの事だが、開発されていたという記録すら見当たらないのは一体何故か。事実として目の前には列車砲という実物があるというのに。
それに、この列車砲にはアビドスと……ゲヘナが関わっているのだ。今はその隆盛が隠れて久しいアビドスならば情報が埋もれてしまうのは分かる。けどゲヘナは今現在もバリバリのマンモス自治区。そんなゲヘナならば、何かしら情報はあるのかとざっと調べたものの……列車砲『シェマタ』については何にも引っ掛からず。
ここまで引っ掛からないと、情報操作を行っているのか、それとも隠し兵器として徹底した隠蔽の元で開発されていたのか。
まぁ、つまりは謎の多い、未知なる巨大兵器という事になる。
謎、未知、秘匿、巨大兵器という3倍役満。たまんないね!! 弄り倒したいぜ!!
……。
チラッと列車砲を見上げる。
主砲の麓、上部装甲付近に載っている、ゲヘナの校章。中部装甲に貼られている、アビドスの校章。
自身の権威こそが上であると誇示するかのように、お互いで主張し合っている、大きく刻まれた校章。
今更ながらに、コレに手を付けて良いものかと理性が薄ぼんやりと冷水をかけてくる。
お黙り。
本能が燃え盛る最中、それはあまりにも弱々しい抵抗である。
念の為、目を閉じて、一時自分の世界に閉じこもる。深呼吸を1つ。
すると脳内でイマジナリーエンジニア部の面々が浮かんできた。
「……あのぅ、弄っても大丈夫ですかね?」
問い掛ける。
イマジナリーウタハ先輩がゴーサインを出した。
イマジナリーヒビキさんが両手でゴーサイン。
イマジナリーコトリさんがゴーサインをしながら列車砲という兵器の概念と起源について解説し出した。
速攻で満場一致が確定した。そのゴーサインを受け取り、エンジニア部としての使命と役目と情熱その他諸々を果たす事とした。
眼を開ける。
チラッと列車砲を見上げる。
どデカく長い主砲の根元に在る、王冠のようなゲヘナの校章。列車砲を支える足の部分、そこにデカデカと存在している、全てを照らし光るようなアビドスの校章。
それから眼を逸らして、そっと記憶から消した。
あと脳内で列車砲弄りについて談義を始めたイマジナリーの3名の話を聞きつつ、私も改造計画を思考内で画策する。
よほど大事な物なのだったらこんな無防備に放置しておいたらいけないよねふへへ。
さて。
計画が頓挫したからなのか、開発途中で打ち切られたからなのかでそのまま廃棄されたのだろう設計図や資料は僅かに残ってはいたが、中身の詳細な構造などは所々と穴抜けている……是非ともバラして解体して実際に覗いてみなくては。
しかし何分巨大な兵器だ。手を付けるにしても私の身一つではいくら何でも手が足りない。何なら目も頭も足も足りない。物理的に人員を増やさなくては。
粒子化を行い、一度研究室に持ち帰るにしても、預言者の方を丸々詰め込んでいる今は『しまえる君Z』の容量が限界だ。預言者の方以外のあれこれを諸々抜き出しても到底入り切らない。
一旦往復して研究室に持ち帰れば良いだろう、と考えたがこんな美味しそうで楽しそうで素晴らしい物を前にして何も手を付けず背を向けて帰るなど、帰るなど! そんなご無体な事はできはしない!
ならば今、やるならば、此処!
今すぐ見たいならば、此処でやらねばならぬ、リバースエンジニアリング。
此処はアビドス砂漠の僻地、誰かを呼んだとしても到着までに結構な時間がかかってしまう。今日見つけた預言者に列車砲、今すぐ何より弄り倒したいバラしたい改造したい作りたい…………
ならば……!
「出ておいで、っと!」
『しまえる君Z』に仕舞い込んだ私の神秘が内包された神名のカケラ、計600個を外に吐き出す。
積まれたカケラの山の前に立ち、軽く手をかざして、目を閉じる。
視界を閉じた暗闇の中、目の前に感じる神秘に向けて、『私』という存在を注いでいくように念じて、念じて、念じて。
新しい物が作れそうなワクワクを、思いがけない出会いによる喜びを、胸に燃え広がり体を疼かせ止まらないロマンを。
私の感情を強く押し出して、注ぎ込むように。私という存在を流し込むように。
すぅ、と胸から小さな引っ掛かりが抜けるような感覚。目の前で集まり、立ち上る神秘の気配。
目を開ければ、5人のミメシスの『私』が、私を見つめている。成功だ。
何か皆思い思いのポーズを取ったり浮き足立ってるような様子だ。流石私の複製、これほどの規模の兵器を前にわくわくが止まらないみたいだ。
それじゃあ待たせるのも悪いし、早速号令を掛けるとしよう。私も待ちきれないし!
ぐっと握った手を天に掲げて、大声で叫ぶ。
「それじゃあ皆! リバースエンジニアリング────開始!!」
響く号令、私に続けて示し合わせたように揃ってポーズを取って呼応するミメシス達。テンション高いなこいつら、仲良しか。私だもんな! 仕方ないや!
X線を用いて内部構造を適宜スキャン。
その結果を書き起こし作り出した簡易的な構造図を元に、端から丁寧に解体を始めていく。
必要な道具は『I.M』で生み出して。
人員の追加が必要になれば、どんどんとミメシスを作っていく。現在8名のミメシスの私が作業をしている。
少しずつ、慎重に解体されつつ内部構造を詳らかにすべくリバースエンジニアリングを進められていく列車砲を前にしつつ、残されていた資料を閲覧していく。
いやしかしこの列車砲、カタログスペックやら何やらは見た目相応にトンデモな代物。
なんと言っても目玉の主砲は、1t以上の物体を500km先までぶっ飛ばせる程の超々長距離射程。
打ち出すのも実弾ではなく、1600万℃以上のプラズマ。正しく太陽を撃ち出さんとしている。圧倒的熱量にて発射目標を周辺ごと焼き払うというのだ。
既存の戦術兵器をぶっちぎろうという魂胆が丸見えの、何処に出しても誇らしい馬鹿げた主砲を乗っけた弩級も弩級、ただの弩級ではなく超弩級な列車砲なのである。
しかもこれでいて副砲も多数搭載、2本のレールでもって元気に自走する機能も搭載させるという何とも欲張りな仕様。
うんうん、巨大兵器を作るとなればこうでないと。
これを考案、設計した人はさぞかし、自分の理想と夢を詰め込んだのだろう。
これを製造した後の使い途はこの際何だって構わない。欲求か、夢か、野望か、はたまた作りたかったからそうしただけなのか。
これを作ろうと思い付き、設計に携わった心は、尊ぶべきものであるのは間違いない。
何しろここまでのオーバースペックを搭載した、既存の物を大きく乗り越えようと画策した痕がこれでもかと詰め込まれている列車砲だ。
自分のやりたい事を実現したい、叶えたい、理論を実証したい……こうして言葉として表すと月並みな表現ではあるけど、夢に満ち満ちている思いが籠っているんじゃないかな。
これを設計した人にもう既に親近感を覚え始めている。何だか他人のようには思えない。
いつか会って直接話でもしてみたいな。
「うーん……やっぱり、エンジン部分……というか、全体的にエネルギーが貧弱かなぁ」
設計図と、解体されて中身が顕になっている黒光りの列車砲を見つつ1人ボヤく。
そう。
こんな欲張りワガママボディのスーパーウルトラハイパーオーバースペックを搭載した兵器を運用するのであれば、当然それ相応のエネルギーや動力部などが必要となる。
が、内部構造を覗いて詳らかにしていくにつれ、エネルギーや駆動部が積んでいる機能に対して貧弱であるのが伺えてくる。
それ自体は悪くない。通常の戦車や中型機器ならば十分に稼働してくれるだろうけど……この列車砲に使うには、パワー不足が否めない。
この子、どうにか完成直前まで至ったものの、エンジンの起動が叶わずに此処で敢え無く放置……という感じだったのだろうか。
全く痛ましい。
「ここをエーテルリアクターに換装して……幾つか増設すれば動きはするかな……」
新たに書き起こした構造図にペンを走らせ、印を刻んでいく。
既存の技術で動かなければ、新たな技術、機関を加えて実行してみよう。
周囲の大気中エーテルを吸収しエネルギーを生み出す『エーテルリアクター』ならば、数を揃えればエンジンのみならず主砲発射機構も動かせるかもしれない。エネルギー効率については改良を加えて向上しつつある。
技術は日進月歩、日々日々の積み重ねと研究によって進歩を続けていくものなのだ。
昨日の未知が今日には既知に。
先週の課題が今週には解決に向かう。
年を跨げば、驚きの新技術が世を席巻する。
少なくともミレニアムでは3日過ごせば新理論や新兵器が雨後の筍の如く現れる。予算が降りたり実証ができるかはアレだけども。
数年前に打ち立てられ、棄てられた技術。新たな技術で磨き上げれば、きっと素敵な輝きを見せてくれるだろう。
……どうせなら、やるならば、もっと強く、硬く、ど派手にいきたいな。
そうだ、ちょうどよく巨大なビームを放つ火器を備えた収穫物があったじゃん!
預言者の武装。アレと列車砲を組み合わせれば、もっと破壊力のある、究極の砲塔ができあがるのでは!?
預言者のビーム砲とプラズマ発射大砲塔。掛け合わせれば、ロマンに溢れる逸品が作れちゃったりするだろう!
夢が広がる広がる!
「うわー! 盛り上がってきたー!」
ぐるんぐるん、座る椅子ごと大回転。遠心力に振り回されながら、インスピレーションが加速していく!
やりたい事多くてたまんないねー!
そうだよそうだよ、今回手に入れた預言者の事についても考えないとだよ私。
まずはあの装甲をS.Fアーマーの更なる強化と最適化に利用できないか調査しないと。
それに預言者のパーツを用いた合体武装も、今回の預言者の分も作成しないと! どんなコンセプトを込めた武装にしようか。
……あぁ、既存の武装の強化と見直しも必要だなぁ。今回撃ったら破損しちゃったし……。合体自体は滞りなく出来たけど、発射前に私の神秘を詰め込んだのが良くなかったな。
合体はロマンだし外したくないけど、やっぱり耐久性が落ちるのがネックだなぁ。こればっかりは如何ともし難い。新たに合体もさせる、耐久性も盛る。どちらもしなくては。
そうだ。超高濃縮神秘『ハンドレッド』の容器の強化にも使えないか試しておかないと。
今の所、生徒の神秘を100の大台まで詰め込めてはいない。67名の量が限界といった所だ。それ以上に詰め込むと弾けて霧散してしまう。
目指せ100人の神秘凝縮。目指せテクスチャの完全剥離100%。できるできるぞ私ならできる。
あぁ、でもやっぱり。
列車砲と預言者のコラボレーション、したいよね。
やりたい事が多過ぎる。なんて幸せで焦れったい。辛抱堪らない。辛いけど楽しくて仕方が無い。
私はもう一度、列車砲を見上げる。
解体され、至る箇所を詳らかに、丸裸にされていく列車砲。
誰かの夢が詰め込まれて、そして日の目を見る事もなく、砂の海に埋もれようとしていた技術の結晶。
それを私が今日掘り起こして見つけ出したのは、果たして運命と呼ぶべきなのか。
似合わない言葉が脳裏に過ぎる。いけない、テンションが上がり過ぎて、何でもできそうな気がしてきて、どうにも気分が落ち着かない。
けれどこの体を浮かすかのような熱がまた心地好くて堪らない。もの作りってのはこうでなきゃ。
砂漠に残された、誰かの夢。
夢が残した足跡。
道半ばで途絶えたそれを、拾い上げて、私の足で引き継いで、私の行く末まで届けよう。
きっと、面白いものが見れるだろうから。
■□■□■□■□■□
アビドス砂漠。
その僻地。
列車砲が鎮座していたそこへと向かう中間地点から僅かに逸れた、相変わらず360°見渡しても地平線が広がるような場所に私は居た。
「……マジか」
そして独り言ちる。
オーパーツの持つような神秘とはまた違う、薄く淡い神秘。それを感じ取って、掘り進めた穴の中を覗き込んで、怯えも恐れもなく、口の中から困惑が零れ落ちた。
神秘研究、開発に関わる報告書:No.■■
────前提として、サンプル数が圧倒的に少ないこの件は、特別例として扱う。以後撤回の可能性高。
────アビドス自治区内の砂漠地帯(座標■■.■■.■■)において、地中内部に僅かな神秘を察知。該当座標を調査、発掘を開始。
────発掘開始から4分後、微量の神秘を発する物体を発見。
────ヘイローの無い生徒を発見。
────"添付写真-1"
────添付写真-1は発掘当時のもの。緑の長髪。制服着用。拳銃無所持。外傷、及び損傷は軽微。
────発見当時、脈拍無し、呼吸無し。ヘイローが消えているが、微弱な神秘を纏っているために死亡ではなく、蟻地獄等に巻き込まれた後の窒息、意識消失とその場で判断。蘇生処置を開始。
────幾度か蘇生処置を行うものの反応無し。意識は戻らないが、纏う神秘の量も変化無し。神秘が体から霧散する様子も無い。
────蘇生処置を中断。経過観察を行いながら、ミレニアム自治区内廃墟地帯ラボに移動。その間も、対象生徒の反応は変化無し。微量の神秘も残留。
────青輝石、オーパーツより抽出した神秘を対象生徒に投与。対象生徒の意識は戻らず。
しかし残留していた神秘の量が僅かに増加。
────生徒というテクスチャを貼られた体という、神秘を溜め込んでおく器が五体無事である影響か?
抽出神秘の投与を続行。経過観察を続ける。
────抽出神秘投与4度目。対象生徒の神秘量が更に増加。意識戻らず。自発呼吸無し。
しかし、肌の張りが微かに戻り、血色が僅かに好調に向かいつつあるように見られる。
抽出神秘の投与を続行。
────抽出神秘投与8度目。初回投与から3時間経過。対象生徒の神秘量が増加。
乾燥し切っていた体に瑞々しさが僅かながらに戻っている様子が見受けられる。
抽出神秘の投与、経過観察を続行。
────抽出神秘の初回投与から6時間経過。抽出神秘投与19度目。
対象生徒のヘイローが点灯。
意識を取り戻した。