神秘探求したいミレニアムモブ生徒とゲマトリアがガッチャンコ   作:ハイパームテキミレニアム

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○○に青輝石をちょうだいと言えば、はいどうぞ!全部あげます!と渡してくれると思います。


Destruction,Ruin,Despair,Extinction.

 

 

 

 

 こつ、こつ。

 

 靴音が通路の中を反響する。

 

 

 埃とカビ臭い、湿気っぽい地下通路の最中。私1人だけの音が静寂の中で響いていくばかり。

 

 

 トリニティ自治区の外れ、人気のほとんど無いスラム街地帯らしき場所において、隠されるように在った地下へと続く階段。

 

 引き寄せられるように入り込んだそこは、如何にもな重苦しい歴史を感じさせる地下通路へと通じていた。

 

 

 明かりは薄く、頼りなく。階段の入口から射し込んでいた分は数歩歩くだけで途切れてしまったから、S.Fアーマーのバイザーだけを装着して、暗視モードを起動して進むはめに。

 

 

 淀んだ空気、神秘が感じられる大気、果ての見えない硬い通路の中。

 その中を進むにつれて……ここは不可思議な程に広く入り組んだ構造であると判明した。それこそ入り込んだものを飲み込んで逃がさない複雑怪奇な迷路の様相。

 

 決まった手順で通路を歩き、別れ道を正しく曲がらなくては元の場所に戻されたりする。ひたすら愚直に進んでいれば絶対に出口などに辿り着けない構造となっている。

 

 

 何故、何の為にこのような地下通路がトリニティにあるのだろう。

 

 昔に使用された秘密の連絡通路? 

 決まった手順でなければ奥に進めない、という構造は、招かれざる客ならば確実に閉じ込めたり追い返せたりする。

 昔のトリニティは派閥争いが激しかったと耳に挟んだし……何処かの派閥が、自分達だけが集まり、会合できる場を用意する為に用いたり何なりする通路として作り上げたのか。

 

 にしても、迷いやすくて嫌になりそう。……何というか、陰湿さというか、そんな空気をこの構造からひしひしと感じるものがある。何かねっとりとした恨みみたいのすら覚える。

 歩いているだけで気が滅入りそう。

 私はバイザーのマッピング機能を使っているから比較的楽に進めているけど……記録されたマップの図を改めて見るとごちゃごちゃと入り組み過ぎている。蟻の巣よりも凄いなコレ。

 

 

 しかし何だろうな、この理不尽すら感じる構造……。

 ……アレだ、ゲーム開発部が作ったダンジョン探索RPGをプレイした時に感じたやつだ。いや、アレはこれよりもっと酷かったな。道順通りに移動しないと即死だわトラップを短いターン内で解除しないと即死だわプレイヤーより3倍速で動く敵がタコ殴りにしてきたり……。

『超高難易度のトラップダンジョンならこのくらいの難易度じゃなきゃね!』とモモイちゃんは言っていたけど……多分課金用の復活アイテムを買わせるための理不尽難易度だよねそれ。指摘したらリアリティを追求したとの一言で誤魔化されたけど。

 

 

 うーん、それにしても長い、広い。ひたすらに歩き続けるばかり。

 しかし無心で、というのも勿体ない。歩いたり軽く体を動かしている時って良いアイデアやひらめきが生まれたり、考えを纏めるのにちょうど良かったりする。……なので、さっきまでのトリニティでの収穫について振り返っていくとしよう。

 

 

 

 こつ、こつ。

 

 薄暗い地下通路の最中、反響する私の足音をBGMにしながら、思いを馳せる。

 

 

 まずはオーパーツ周りか。高級住宅街にお住まいのトリニティ生徒の方。

 本日も良い取引ができたなぁ。オーパーツだけでなく、トリニティに関する古い物品やらも頂けたし。神秘に塗れた古書は一部破損していたが……より完璧な形に修繕すればより良い神秘が抽出できるはずだ。

 ……そういえば古書館の司書さんは修繕の技術に優れているんだっけ? 寄った際には頼んでみようかな。

 

 

 それと……今日の神秘は実に良い物が取れたんだった。

 依頼人の方。カイテンジャー。正義実現委員会の皆様。

 よりどりみどりといった具合だ。正義実現委員会の子達は特に良い。カイテンジャーとの戦闘に巻き込まれて倒れていた子を助け起こす際に紛れて多めに貰う事ができたし。

 特に一際良い神秘を宿していたのが仲正イチカさんだ。カイテンジャーの5人と比べても遜色ない。

 

 手元にイチカさんの神秘を宿したカケラを呼び出す。……硬い鈍色の、けれども可憐な煌めきに思わず胸がときめくようで、今すぐにでも取り込みたくなる。

 

 我慢、我慢。これは一つしか取れなかったのだから、味見は厳禁。帰ったら大切に培養しなくては。

 

 

 うん、うん。今日の成果としては……『ゲブラ・バスター』の実働データが取れたのも大きい。しっかりと稼働の確認もできたし、青輝石も、エネルギーとして使う分には申し分無いこともきちんと確認できた。

 

 

 ……青輝石。

 神秘の実験を行った際に何処からか排出される、純粋な神秘が詰まった宝石のような物体。

 これまで性質を調べたり使い道を探すばかりで数が貯まる一方だったけど……こうして攻撃に用いるエネルギーとして運用するにしても問題無いこともデータとして取れたし、一先ず良しとしよう。

 

 

 ……青輝石に詰まった純粋で密度の高い神秘を利用して、テクスチャの剥離を加速させようと開発した物はあるけど……それは思った成果を出せなかったしなぁ。

 

『ヘイロー破壊爆弾』の神秘に干渉、過負荷をかける原理を基にした『テクスチャ剥離剤』。

 注射器を模したデバイス内部に青輝石をセットして、対象にデバイスを接触させる事で青輝石の神秘が高負荷をかけて流れ込み、対象のテクスチャを剥離させる……という稼働を想定していたけれど。

 

 結果としては、真逆のものに。

 私のテクスチャの一部を、再定着させてしまったのだ。

 剥がれたものが、再び貼り直された。

 

 3度、『テクスチャ剥離剤』での実験を行い……首元のテクスチャが綺麗さっぱり貼り直され、元通りの肌色となってしまった。

 

 青輝石に篭められた神秘では、テクスチャを剥離するには至らない。それ所か、剥がしたテクスチャを戻し、生徒を生徒らしい姿に留める作用があるのだと判明。

 私は青輝石の神秘を体内に取り込む事は一旦止めておく事とした。

 

 

 

 

 

 ……いやしかし、『ゲブラ・バスター』を含めた預言者のパーツを利用した武装は先生に護身用としてプレゼントする為に作ったけど……もう少し調整が必要だな。

 私の身体能力基準で作っちゃったせいで、全体的に重たいし取り回しも悪い。

『ゲブラ・バスター』なんかはキャノンモードの反動が特に酷い。私でさえしっかり踏ん張っていなければ攻撃の余波で吹き飛ばされそうになったのだし……

 

 

 今更ながら先生は男/女の人だ。

 男性であっても/女性なのだし、反動は小さい方が良い。ただでさえヘイローがない、私達より弱い体なのだから……

 

 

 ……? 

 

 

 ん……? 

 

 

 何か、おかしい……ような? 

 

 

 いや。

 いやいや。

 

 

 先生は、プラモデル系列の玩具が好きで、高い所が苦手で……

 何より、生徒を大切にする……うん、先生はそういう人だ。うん、大丈夫。

 

 それに。

 先生はちゃんとした男性だ。/先生はしっかりとした女性だ。

 

 

 今の所、『ゲブラ・バスター』はアサルトライフル位の大きさに仕上がってしまったし……変形機構も組み込んだから中々重量もかさむ。……口惜しいけど、機能をいくらか削らないといけないか……

 

 

 先生はがっしりとした体格だ。/先生は痩せ型の体型だ。

 

 しかし重くて取り回しが悪いのは頂けない。搭載する機能は必要最低限に残して……極力削っておかないとダメかなぁ……

 

 自爆機能……要るでしょ。

 携帯端末の充電機能……これも要る。

 電子決済機能……これもキヴォトスでは欠かせない。これも要るね。

 なら削るとしたら……リミッター解除機能になってしまうかなぁ。ロマンの塊だけど、リソースも割かれがちになっちゃってるし。

 Bluetooth機能もオミットするかぁ、勿体ないけど……

 

 そうだ、何時も着ているシャーレの制服/緩く気崩しているスーツ/日によって変わる仕事着の中に違和感なく隠して仕込めるような形状にするのも良いんじゃないかな。

 

 

「あれ」

 

 

 ……。

 ……??? 

 

 

 何か、違和感が、ある。

 頭の中が、もやがかかったように、朧気になる。

 

 ……先生の、先生が、先生、が……曖昧、になる。

 

 

 ……先生の顔を思い出す。

 

 微笑みを絶やさない、優しげな顔付きだ。/目付きの鋭い、クールな表情が特徴だ。/柔和な垂れ目をした、女性らしい顔付きだ。

 

 

 髪型は天然パーマがかったふわふわとした髪をしていた。/ストレートな黒髪を肩まで伸ばしていた。/茶髪を後ろに撫で付けたオールバックだ。/淡い柑橘の匂いがするシャンプーの香りがした。

 

 眼鏡をしていた。/裸眼だった。/コンタクトを付けていた。

 

 頬に傷があった。/なかった。綺麗な肌だ。/鼻筋の通った整った形をしていた。

 

 

「あれ……?」

 

 

 ……????? 

 

 

 生徒を指揮する時の先生を思い出す。

 

 

 指示を飛ばす声は、低く頼もしい男の人の声だ。/騒がしい銃弾戦の中にも通る綺麗な声だ。/鈴を鳴らしたような可憐な声だ。/バリトンボイスの効いた良い声だ。

 

 指揮する手指は、割かしがっしりと筋肉が付いている。/女性らしくしなやかな形だ。/指輪を嵌めていた。/大きく頼もしい手だ。/細くて艶やかな指先だ。

 

 

 

「あれぇ……?」

 

 

 ぐるぐる、視界が回る。

 思考が濁る。

 頭の中が泥沼のただ中にハマりこんだように上手く動かない。

 

 

 先生の姿を思い浮かべる。

 

 男の先生が思い浮かぶ。先生だ。

 それとは違う、女の先生が思い浮かぶ。それも先生だ。

 中性的な外見の先生が思い浮かぶ。それも先生だ。

 筋肉の付いたムキムキの先生が思い浮かぶ。それも先生だ。

 小柄な体格の可愛らしい先生が思い浮かぶ。それも先生だ。

 眼鏡をかけた、理知的な印象の強い先生が思い浮かぶ。それも先生だ。

 暖かな雰囲気を持った女の先生が思い浮かぶ。先生。先生だ。

 

 

 次々浮かんで、形が定まって、消えてはまた浮かんでくる。

 先生。

 先生。

 先生。

 どれも、これも、先生だ。先生なんだ。確かに、生徒である私が直感する。確信する。証明されている。

 

 そのどれもが先生であると、私の総てがそう言っている。

 

 先生は、先生だ。

 先生なんだ、生徒を見ている。先生が、私達を見ている。覗いている。見つめている。そこに居る。キヴォトスに居る。

 

 私を、見ている。

 

 

「んぁ……?」

 

 

 ふと顔を上げると、先生が居た。

 1人。

 2人。

 3人。

 4人、5人、6人、7人…………他にも、先生。

 右を向いても、左を向いても、振り向いても、先生が居る。

 顔も違う、体も違う、身長も違う、性別も違う、雰囲気も違う。

 

 微笑んでいる。自然体でいる。『先生』の姿が、いくつにもバラけて、そこにある。

 

 だけどそこにいる大人が全員、先生だと理解できた。理性でも、本能でも、私の全てが、目の前の光景を受け入れる。

 

 

 "○○。"

 

 

 声が私を呼ぶ。

 

 

 優しい男性の声だった。

 嫋やかな女性の声だった。

 老猾な重たい声だった。

 胸を満たす温かな声だった。

 何処か甘くて惹き付けられる声だった。

 安心する柔らかな声だった。

 ニヒルさを感じさせる声だった。

 

 

 頭に染み込む、不思議な声色が脳を揺する。

 

 全て、先生の声だった。

 

 

「あははっ、何これ? 先生がいっぱいだぁ〜!」

 

 

 たくさんの先生。色んな先生。よりどりみどりの先生。

 囲まれて、包まれて、幸せに纏わりつかれて。

 あまりに心が暖かくて、幸せで、たまらなくて、意識が遠のいていく。視界がぼやけていく。もったいない、まだ先生達の姿を全て拝めていない。目に焼き付けていない。

 

 あぁ、先生、先生、先生、先■■■■……

 

 

 

 

 

 

 

 

「────妙な気配を古巣で感じて来てみれば……なるほどどうして、良い物が転がっているではありませんか」

 

 

 優しい空間の中に、不意に刺々しい女性の声が差し込まれる。

 

 その声を聞いた先生は、皆一様に顔を顰め、嫌な顔をし始め、不倶戴天の敵でも見るかのような態度に変わる。

 

 見た事もない、初めて見る先生の表情が引き出されている。

 

 

 声の主を見る。

 先生? 

 いや、先生ではない。

 異形の女性だ。

 

 

 眼の生えた無数の翼に包まれた頭部。そこから長く足元までしな垂れる黒髪。

 血のように赤く染まり上がった肌。対照的な純白のドレスに身を包んだ、貴婦人の如きシルエット。

 

 けれど、纏う雰囲気は……荒々しく、悪意に満ちたもの。黒服さんとは異なった、余裕の無い荒れ狂うドス黒い感情の色が伺える。

 

 いつの間にか目の前に立っていたその女性は、頭部の無数の瞳で私を一心に見つめる。焦燥、好奇を滲ませながら、品定めを行うように。

 

 

「……まぁ良いでしょう。乱れて、壊れかけであろうとこの量と質を活かさない手はありません。最大限に有効的に使い潰してやれば良いだけの事」

 

 

 そして私はお眼鏡に適ったのだろう。無数の瞳が喜ばしく歪み、口端を吊り上げては乱杭歯を覗かせながら微笑み、私の肩に掴みかかった。

 

 途端、きらきらと輝いていた視界が立ち戻る。高速で過ぎ去る景色のように、先生達が消え失せて、見えなくなってしまった。

 思わず何も無い虚空へと手を伸ばす。

 

 

「っ、先生っ!!」

 

「……何を言って……。……あぁ、そこまで壊れていましたか。大方、あの者達の実験で使い物にならなくなったと判断され、此処に棄てられましたか……」

 

 

 女性は得心が行ったとばかりに頷き、ぶつぶつと口の中で言葉を転がしながら思案をする。憐れみと侮蔑を赤い瞳に篭めながら。

 

 

「全く、最近躍起となって何を隠しているのかと思えば……まぁ、そちらから棄てた物を、どう扱おうが構いはしないでしょうし……私を貶めた事を、精々後悔すると良いでしょう」

 

 

 女性が指を鳴らすと、背後の空間に黒い穴が開く。ゲマトリアの方が使う、空間移動の術だ。やはりこの方もゲマトリアか。

 

 女性は私の肩を依然離さないまま、その穴の方へぐぃ、と私を引き込むように腕を引く。

 

 

 ……あのう、私をどうするおつもりで? 

 

 

 そう尋ねると、初めて私を認識したかのように目を瞬かせて……溜息を一つ零して、口を動かした。

 

 

「どうなろうが教えたとて益もありませんが……都合の良い拾い物をして機嫌が良い。特別に聞かせてあげましょう。

 お前はその神秘を私に捧げ、その存在の端から端まで糧となるのです」

 

 

 ……ふむ。ふむ。なるほど。

 今の私の神秘。それを他人に投与、ないし取り込ませた際にはどのような反応が起こるのか、気にはなるので協力する事自体は吝かじゃないけど……

 

 

 

「……神秘が不細工であるのはこの際許容しましょう。この膨大な量と質であればやりようはいくらでもあります」

 

 

 ……私の神秘を使って、なにをするので? 

 

 

「……あの気に食わない大人を、シャーレの先生を排除する、ただそれだけの事」

 

 

 …………先生、を? 

 

 

「……私が受けた屈辱、恥辱……その全てを完膚なきまでに返す……!」

 

 

 …………。

 

 

「あぁ、全く、初めからそうしていれば……! 崇高なる計画の邪魔をされる事も無かった! それ処か、このような妥協案に甘んじる必要も無かったというのに……!」

 

 

 …………それは、ダメです。

 

 

「理解を示さない愚か者共に少しばかりでも譲歩した事が無ければ、私は今頃……! あぁ、何が先生か、あのような俗物、崇高を理解しない愚物が!」

 

 

 いけません、それは。

 先生には、恩がありますし。

 それを返せていない。

 あの人を排除するなんて、認められない。

 

 

「忌々しい、忌々しい、忌々しい……!」

 

 

 ダメです。ダメです。ダメです。

 それは許容できない。

 認められない。

 神秘について協力したいのは山々なのですが。

 それはいけない。

 

 

「……先程から何をぶつぶつと……!」

 

 

 私達の邪魔を、しないでください。

 

 

 ───手元に愛銃を呼び出して、銃口を赤い女性の方へ。

 引き金を引く。

 

 

「がッ────!?」

 

 

 道を阻もうとする相手がいる。邪魔をしないで。邪魔をしないで。

 

 引き金を引く。

 引き金を引く。

 引き金を引く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 絶叫を残しながら、赤い女性は空間に空いた黒い穴の中に消えていった。

 それきり、地下通路は元の静けさを取り戻した。

 きん、と冷ややかな空気と、熱された銃口から立ち上る火薬と硝煙の香り。静寂が耳に痛い。

 

 

 あれだけ居た先生達は、今はどこにも居ない。見えない。感じない。

 

 

 

 ……先生達? 

 

 先生は1人だけなのに。

 

 というか、さっきまで何をしていたっけ。

 何が起こった? 何をされていた? 私は一体何をしていた? 

 

 私は■■■■■

 

 

 

 

 

 

 

 ────時間を確認する。

 地下通路を探索し過ぎたみたいで、もうかなり遅い時間だ。そろそろ帰らないと明日に支障が出ちゃう。

 

 

 

 ……しかしこの地下通路、脱出するにも一苦労だ。恐らく正規の道を選ばないと酷く時間かかるっぽいし……随分と奥の方まで進んでしまったために、引き返すのも時間かかる。

 

 

「……んん?」

 

 

 今一度マッピングしたマップ図を確認する。

 

 …………。

 

 

 断然早く帰れる近道を発見した。

 これなら道を引き返さずとも良い。

 

 右手側にある壁を軽く叩く。硬質な音、おおよその硬さが伝わってくる。……うん、これならいけそうかな。

 

 少し距離を離して、足首を回してストレッチ。

 それから体勢を整える。伸ばした足が、ぴったりと壁に当たる程に。

 

 

「さん、にぃ、いち……」

 

 

 息を合わせて、合図を重ねて。

 体に張り詰める神秘を、右脚に集中させる。

 

 

「───っと!」

 

 

 乱暴に足を振り回すだけの、サッカーボールキック。

 ドゴンッ、と轟音を鳴らしながらガラス細工のように壁が弾けて、崩れていく。

 

 崩れた壁を越えてみれば……出口がより近くなった。

 

 

 そうして、それから直進するように壁を4枚蹴破って。

 

 無事に、地下通路の入口まで戻る事ができた。

 

 

 さぁ、帰ろう。戻ろう。

 

 

 明日は、シャーレの当番があるのだから。万が一寝坊したりして、先生に迷惑をかけるわけにはいかないから。

 

 

 

 

 

 

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