神秘探求したいミレニアムモブ生徒とゲマトリアがガッチャンコ   作:ハイパームテキミレニアム

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ゴッド・マキシマム・X

 

 

 

「はー……いーい天気……なんだけどなぁ」

 

 

 アビドスの砂漠を照り付ける、さんさんと降り注ぐ陽の光。ぽかぽかと暖かな、暑すぎない気温。

 絶好のお昼寝日和だねぇ、と自分の口から自然に漏れ出すのは、自分の中の疑念を晴らすためのものだけど。

 

 

「……はぁ。なーんか、もやもやするなぁ」

 

 

 対策委員会の部屋の中、今は他の皆は出かけてるから、1人きりを堪能しつつ……私の席に突っ伏しながら独り言ちる。

 

 自分を誤魔化すようにいつものように昼寝をしてみたけど、やっぱり寝付けない。

 何がそんなに気に入らないのか、はっきりと言葉に出来ていない現状が、一番胸につっかえて、どうにもままならない。

 

 無気力に、頭の下に敷いたクジラ型の枕に顎を乗せていると……開けっ放しにしていたドア、そこから見える廊下を静かな駆動音を鳴らしながら通過していく、平たくて丸い、私の足元程度の大きさのロボットが見えた。

 

 廊下の隅に風で入ってきて、そこそこ積もってた砂の山。そこにロボットが突っ込んで、吸引器が吸って、ブラシ部分で掃いて……すっかり綺麗に掃除したら、次の所を掃除しに部屋の前を通り過ぎていった。

 

 

 ……最近、ミレニアムのエンジニア部、○○って子が持ってきた掃除用ロボット。

 

 神秘が宿ったオーパーツってのを集めるバイトを他の子達がやって、それを○○が引き取ってお金を渡す……っていうやり取りが、ここ最近で何度かあった。

 4度目のそのやり取りの終わりに、○○は私達の前にそのロボットを差し出してきた。

 

 

『───いつもご贔屓にしてくれているアビドスの方々に、細やかながらお礼にと思いまして!』

 

 

 その日もアビドスで埋まっていた潤沢なオーパーツを引き取って、笑顔で明るく振る舞いながら、行動の意味を語った。

 

 前来た時、ちょっとした雑談の中でノノミちゃんやセリカちゃんが校舎の砂掃除について愚痴を零した事。

 多くのオーパーツを提供してくれる顧客に、何かしらの誠意を。それから今後とも取引を続けてくれたら良いな、という欲求を含めた贈り物をしたいのだと。

 

 その贈り物である掃除ロボットは、砂と大気中に含まれる成分を燃料として、半永久的に稼働するらしく。計3体、アビドス高校に設置されて、今も動き続けて掃除をしている。

 

 他の子からは概ね好評。

 何時までも何処にでも風に乗って入り込んでくる砂の掃除は地味に時間を取られるものだったから、それをロボットが丸々請け負ってくれる。

 おかげで浮いた時間を対策委員会の活動や趣味などの自分の時間に当てられるようになった。

 セリカちゃんはバイトのシフトを増やしたし、シロコちゃんはライディングの時間が増えた。

 

 私も……こうしてだらだらと過ごす時間は増えた。

 けれど……大手を振って羽を伸ばしても、心の内にあるもやもやがどうやっても晴れてくれなかった。

 

 

「……何なんだろう、ホントに」

 

 

 今日何度目かも分からないため息が零れてく。

 

 

 ……○○。

 

 ミレニアムのエンジニア部の子。

 

 砂漠にいるとかいう巨大蛇を探して、アビドスの砂漠で遭難してるのを助けた事を縁に、出会う事が増えた子。

 

 ……神秘を研究している、とも言っている子。

 

 

 どうしても、そこで引っかかる。

 

 何度か会って、接して、話して、それこそ2人きりで問い質してみても、私達に向ける悪意は無いとは感じている。

 

 

 けれど、あの子に対して……何か言いようの無い疑念が、疑心が、心の中で蠢いている。

 その思いが……あの子に会う度に、膨れていっている。

 

 私達を騙そうとしている訳じゃない。

 相手にとって価値のある物を提供して、それに応じたお金を受け取っている。そのお金の出処も不正な流れで取得したものじゃないし、しっかりと使える事も確認した。

 

 私達を悪意でもって利用しようとしている訳じゃない。

 そういう大人とは何度も何度も出くわしたから、そういう思いを向けてくる相手なら嫌でも分かる。

 ○○はそういう感情は持ってない。

 

 私達を助けてくれる先生みたいのではなくて、単なる生徒同士として、普通に、普通に接してくるだけ。

 

 ○○は、単なるもの作りが好きな、ミレニアムの生徒ってだけ。

 人との距離が近くて、社交的で、人と接するのも好きってだけの、明るい子。

 

 

 ───本当に? 

 

 

 いくら自分を納得させようとしても、心の中のざわつきは収まらない。

 実際に見聞きして、接してきた材料を元にしても、自分の中から薄暗い思いが溢れてくる。

 

 

 小鳥遊ホシノって、こんなにも他人を信じられなかったっけ。

 

 何だか、自分が、凄く薄汚いもののように思えてきて、息が詰まりそうになる。

 

 

 

 

 

 

「……っ」

 

 

 

 部屋の外から、皆の声と一緒に階段をばたばたと駆け上がってくる音がする。

 出かけてた皆が帰ってきた。足音が近付いてくる。

 

 

 皆が部屋に辿り着く前に、息を整えて、汗を拭って、いつも通りの私に戻る。

 

 

「───ただいまで〜す☆」

 

「戻りました、ホシノ先輩っ」

 

「やぁやぁおかえり皆〜、どうだった〜?」

 

「ん。今日もどっさり。……まぁ、最初の頃よりは少ないけど」

 

 

 いつものメンバーが揃って、一気に賑やかになった部屋の中。

 シロコちゃんとノノミちゃんが持っていた箱をどくんと重たく降ろす。

 

 ……今やアビドス対策委員会の収入源の1つとなってる、オーパーツ。アビドス周辺で集められたそれが箱の中いっぱいに詰められてる。

 ……相変わらず、私には価値がよく分からない。何かの残骸みたいなのが多いし。

 けどまぁ、資金に余裕ができるのは良い事だし……

 

 

「この辺りのは大方取り切っちゃったみたいですね……あ、ホシノ先輩。学校周りに異常はありませんでしたか?」

 

「んー? うんうん、無事も無事〜、平和過ぎてお昼寝も捗っちゃったよ〜」

 

「結局サボってるじゃん!?」

 

「あはは……まぁまぁセリカちゃん。とりあえず、今日の分も合わせて十分集まりましたし、○○さんに報告して引き取ってもらいましょうか」

 

 

 そう言ってアヤネちゃんがパソコンを開いて、早速メールを打ち込んでる。

 それから皆が思い思いに過ごし出す。

 ……1人の時よりも居心地の良い空間になった事で、胸の詰まりがほんのりと薄れた気がした。

 

 

「やっぱり、探す場所広げた方が良いんじゃない?」

 

「ん、それか下に掘ってみるとか」

 

「あははっ、お宝探しみたいでワクワクしちゃいますねっ」

 

「どうせなら広く深く探そう。爆弾とか使えば一網打尽」

 

「オーパーツが粉々になっちゃうでしょ!? 禁止だから!」

 

 

 ……こういう騒がしさが、ずっと続けば良いのにな。なんて。

 

 

 

 そんな中、ぽこん、と通知音が鳴る。アヤネちゃんのパソコンからだ。早速○○からの返事があったらしい。

 

 

「……あ、返信が来ました。……え?」

 

「どしたのアヤネちゃん。受け取り拒否とか?」

 

「え!? こんなに集めちゃったのに!?」

 

「い、いえ。何時も通りこちらに伺って引き取るとの事ですが……最後に気になる文面が付け加えられてまして……」

 

 

 アヤネちゃんがほんのりズレた眼鏡を直しながら、パソコンの画面を注視して、その返信の最後の部分と思われる文を読み上げた。

 

 

「『アビドスの砂漠に居ると噂される機械の巨大蛇についての情報を求めます。情報の有無に関わらず、追加報酬はお渡しします』……との事です」

 

「…………うへぇ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 □■□■□■□■□■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────送信、っと。よし。……えぇっと、貴方、アビドス砂漠にいる預言者について何か知っていますか?」

 

 

 

 ご贔屓にして下さるアビドスの方々からのオーパーツ納品のメールを頂き、それに対する返信を素早く行い、スマホを仕舞い込む。

 それから目の前に居る……預言者の方に尋ねてみる。

 

 

 しかし、返事は無い。

 私が撃ち抜いてしまった球体型の本体部、コア。

 空洞を空けられたそこからばちばちと頼りなく火花を散らすばかりで、もう何の反応も示さなくなってしまった。

 

 

「……あぁ、もう動かない、ですね? しまったなぁ……コミュニケーションの取り方、もっと工夫しないとダメですかね……?」

 

 

 そもそも、人間の言葉で話しかける事自体がナンセンスなのかもしれない。

 超高度、超高性能な人工知能であるデカグラマトンと、それに感化されたAIが搭載された機械である預言者達。

 人ではないそれ等が私達に通じるような言語でコミュニケーションを取っているのか、と言われれば……まぁ。

 それよりもデカグラマトンと預言者同士でのみ通用する独自の言語を通して超高速通信などしているのではないか、と解釈した方が良い。その方が合理的であるし、万が一通信を盗聴などされたとしても容易に解読できない方が良いし。

 

 対話用AI同士を会話させた時にはお互いのみで通用する暗号のような言語のやり取りでコミュニケーションを取るように、預言者同士でのみ伝わる言語を介しているのならば、預言者とコミュニケーションを取る時にはもう少し彼等側に寄り添った方法を取る他無いだろう。

 参ったなぁ、どうしてその考えに先に至らなかったのか……

 

 

 

 しかし、今回出会った預言者には中々に手を焼かれた。

 

 

 前回遭遇したケテルを鹵獲した私は、次なる預言者と出会おうとはしゃいでいた。

 探知範囲を広げた『セフィラ・レーダー』を使用すると、何とまたしても近場……ミレニアム廃墟地帯で反応があったのだ。

 

 

 私は喜び勇んでその預言者の下へすぐさまに駆け付けた。

 

 辿り着いたのは、ミレニアム廃墟地帯に放棄された兵器工場の一つ。

 

 かつて『ディビジョン』と呼ばれたその工場にあった兵器生産システムAIが、デカグラマトンに感化されて生まれたらしいのが今回反応があった預言者。

 

 

 そしてその預言者が掌握、改良していたと見られる兵器生産システムというのがかなりの代物だった。

 工場に入り込むと、気付けば周りには無人オートマタとドローン、砲台だらけ。

 横を見ても、前を見ても、後ろを見ても、敵、敵、敵だらけ。

 

 無限に等しい機械の兵士達を作り出し、自らの尖兵として従える驚異的な生産能力。

 戦いは数が多い方が勝つ、という言葉を体現するかのように、無尽蔵のオートマタが私を襲い、押し寄せる津波の如くもみくちゃにしてきた。

 

 

 まるで大量の敵がわんさか出てくる無双系のゲーム。

 最近、ゲーム開発部に呼ばれてその系統の新作の協力プレイをやったっけ。

 

 大技を撃てば、雑魚敵の群れが一気に吹き飛ばせる。必殺技を出して、周囲の全てを一掃する時のえもいえない気持ち良さ。

 

 それが今回の預言者との戦いでも体験できた。

 

 マシンガンを撃てば、目の前の敵がばらばらと壊れていく。

 ガトリングを撃てば、もっと多くの敵に穴が空く。

 手榴弾を放り込めば、爆発が多くの敵を巻き込んでいく。

 ロケットランチャーを撃ち込めば、巨大な爆発がもっと多くの敵を巻き込んでいく。

 思い切り殴ったり、思い切り蹴り出せば、きりもみしながら吹っ飛んで、周りの敵を巻き込んでいく。

 

 

 とても爽快だ。

 気持ちがいい。

 

 

 ……相手は機械なのだし、もっと派手にやってみよう、とも思って。

『I.M』も使って、設計図のみだった机上の空論の武装達を呼び出して、更に激しく強く撃ち放つ。

 

 

 火力で、爆発で、面制圧で、炸裂で、自爆で、高熱で、電撃で、水圧で、大爆発で、質量で、暴力で、遠心力で……

 

 とにかくとにかくとにかく、ボーナスゲームのように押し寄せる機械をはちゃめちゃに破壊する。

 神秘を滾らせながら、漲らせながら、ひたすら、ひたすら。

 ロマン爆発の大火力、試す事もできなかった夢を一時の間実現させながら、とにかく自由に無我夢中に! 

 

 

 

 

 そうしてひっきりなしにやってくる機械の群れをひたすらに打ち払って、なぎ倒して、機械の波を掻き分けるようにして工場の中へと進んでいった。

 

 

 工場の最奥地。

 そこに鎮座していたのは、巨大な球体を象った機械。ヘイローを戴く、預言者の1人。

 

 

 極めて強固な外骨格装甲に分厚く覆われたそのボディにも中々に手を焼かれた。

 何せ今の私の攻撃力でもその装甲を抜くのが困難だった。

 けれど素晴らしい! この頑丈さはこの預言者の神秘によるものか、はたまた特殊な素材か、構造のためか。ますます研究し甲斐がありそう! 

 

 しかし、硬い事硬い事。この硬さを抜くには神秘を限界まで篭めた銃撃なら、あるいはフルチャージした『光の双剣』なら……と思っても、勢いを更に増して襲いかかってくるオートマタと防衛設備の猛攻がそれをそうそう許さない。

 

 

 

 けれど決着は案外呆気ないものだった。

 

 休みなく押し寄せる機械の波を追いやって、うちのめして、爆発させて。

 

 足元が見えなくなるくらいに機械の残骸が床を埋めつくした辺りで、がしゃん、と硬質的な音と共に、預言者の外骨格装甲が開き、中身を露出させる。

 

 見えたのは同じく丸型のコア。

 開かれた装甲を玉座に見立てるように、堂々とそこに存在していた。

 

 すわ何かの攻撃の予兆かと思ったが、新たに敵が湧いてくる訳でも無く、そこから何かを撃ち出してくる訳でも無く。

 

 もしや、ある程度力を示した私に胸襟を開いてくれたのかな? とも思って再度呼びかけてみるも、返答はなく。

 

 

 まぁ、何か厄介な行動を起こされるのを待つよりかは無力化させた方が良いだろう。

 

 フルチャージした『光の双剣』に、私の神秘を最大限篭めた一撃を、露出したコアに一直線。

 収束した光の柱に撃ち抜かれて、爆発を火花を散らして、外骨格ごと力無くその場に崩れ落ちて、その動きを止めた。

 

 

 

「さてと。そろそろ戻らなくちゃ」

 

 

 煙を上げ、火花を散らす預言者に手を添えて、『しまえる君Z』を起動。蒼白い粒子となった預言者が私の腰元に携えた装置の中に収まっていく。

 同じように外骨格装甲も、余さずしまっていく。後には何も無かったかのように、綺麗さっぱり、その場からくり抜いてしまったかのような跡地が残るのみ。

 

 

 ケテルを丸ごと粒子化して収納できたように、強化された私の神秘によって拡張された収納容量は現在青天井もかくやと言うべきものとなっている。

 相変わらず粒子化できるのは無機物に限るけれど、こうした収穫物を気にせず持ち運べるのは頼もしい。

 

 

「さぁて、これから忙しくなるぞー!」

 

 

 ケテルについての調査もそこそこにここまで飛び出してきてしまったものだから、研究と開発を進めるために早く戻らなくてはならない。

 それにこんなに大きな収穫物をまた新たに持ち帰る事ができるのだ。活用して何をしようか、何を作ろうか、何をやろうか……あぁ、楽しみで仕方ない。

 

 手始めに預言者の体に残った神秘を培養、増幅しておこう。元手があればいくらでも増やせるのだし、いくらあっても損は無い。

 増やした預言者の神秘を使って何をしよう。

 

 何ならアーマーの改修もしてみよう。今回の人海戦術で、流石に神秘の防護膜を抜かれるくらいに攻撃を受けたのが何度かあったし。その際に所々傷付いたりしてるし……そうだ、せっかく頑丈な装甲を手に入れたんだし、これを参考にしてみよう! 

 

 あぁ、ミメシスの私にまだ試していない組み合わせの合成神秘を作らせるように言っておいたから、それも確認して、神秘を取り込む実験もしないと。

 まだ試していない組み合わせは膨大、一つ一つリストを埋めて、試して、結果を残して……

 

 

「あははっ、やる事いっぱいで楽しっ」

 

 

 

 

 

 

 □■□■□■□■□■

 

 

 

 

 

 

 

「ん、っぐ」

 

 

 

 合成神秘取り込み実験、61度目。

 

 今回使用したのは、ヴェリタスの部員の合成神秘。

 チヒロさん、コタマさん、マキさん、ハレさん。この4人の神秘を掛け合わせたそれは、グルグルと渦巻く光を宿した魅惑的な輝きを秘めていた。

 

 頬張れば、舌の上で広がる何処と無くケミカルチックで、ジャンキーな味。複雑に混じり合った、けれど不快では無い旨味が喉を通って、私の神秘に溶け込んで1つになっていく。

 

 

「うぁ、が」

 

 

 数秒遅れて、体の内側に迸る、神秘が駆け巡って充足していく感覚。

 ぱきん、とガラスが割れるような軽い音が鳴り響く。

 頭の中がすぅっと透き通る、意識の収縮と解放が行われて……次第に、思考のモヤが晴れたように意識がはっきりと明瞭になっていって、ばちばちと荒ぶっていた体の内側が落ち着いていく。

 心なしか、視界も明るくなったようだ。

 

 テクスチャが剥がれた時特有の充足感、万能感だ。

 さて、今回は何処が剥がれたかなーっと。

 

 

《顔。右頬を中心に目まで割れている》

 

「ん? ……おぉ、ホントだ。ありがと私」

 

 

 聞こえた機械音声に従って、鏡で自分の顔を確認してみると、確かに右頬からひび割れて、そこから蒼白い神秘が見えている。

 

 縦にひび割れた端は、下は顎元、上は眼球を通り越して眉にまで及んでいる。

 目をぱちぱち、閉じたり開いたりを繰り返す。視界は特に変わりもない事から少なくとも視力に影響は無さそうだ。

 

 

《体調に変化は?》

 

「ん……悪影響は無いね。テクスチャが割れた時特有の充足感と高揚感はあるけど」

 

 

 ミメシスの私が端末を弄り、再び機械音声での問いかけを挟んでくる。私の返答を聞くと、別の端末に打ち込んで結果を記してくれる。

 

 

 ……うん、ミメシスの私とのコミュニケーションも問題なくできてるね。

 

 声帯を持たないミメシスの私とはこれまで私が一方的に喋って、ミメシスの私からは精々ジェスチャーでその意思を伝えるくらいしかできなかった。

 ちょっと不便なので、打ち込んだ文章を読み上げてくれる音声読み上げソフトを少し弄った物を与えたところ、このようにコミュニケーションを取る事が可能になった。

 

 ……にしても、やっぱりちょっと無愛想。必要以上の事は喋ろうとしないし、能動的に話そうとするのは稀だし。他の子から見た私って結構こんな感じなのかな……? 

 

 まぁいいか。今はこっちに集中っと。

 

 改めて、今回剥がれたテクスチャを観察してみる。

 

 

「……ふふふ」

 

 

 ……しかし、綺麗な景色だなぁ。

 

 他の子も、テクスチャを剥がせばこんな色が見えるのかな。

 私のはきらきら眩い透き通った蒼白い銀河のような煌めきが広がっているけれど、他の子の中には一体どんな輝きが存在しているのかな。

 私と同じ? それとも違うもの? 眩さも煌めきも輝きも、生徒によって差異は生まれるのかな。

 

 あぁ、サンプルが欲しい。詳細なサンプル。知りたい。試したい。

 けれど、ダメ。まずは自分のテクスチャについてやりきらないと。手段を確立して、より精度を高めて、安全性もある程度担保して……

 何より、実証をしないと! 実績がないと説得力は生まれない、結果を示さないといけない! 

 私の体で、神秘の可能性を示すんだ! 私で結果を出していかなくっちゃ! 

 

 それにやりたい事は山積み、どれにもこれにも手を出して、何もかもを中途半端にしてしまっては元も子もない。

 自分のキャパを知れ。そこまで私は器用ではないし。

 何よりもまずは、手元にあるものから手を付けていかなくっちゃ。

 

 

 全くもって誘惑が多い。あれもこれも試したくなる。

 でも、神秘というのはそれほど魅力的だから、仕方がない。

 まだまだ知りたい事、知らない事はどっさりだ。これからも解明して、解析して、読み解いて、開発して、研究していかないと……

 

 

「けれど、なぁ……やっぱり気になる……」

 

 

 ……ヒビキさんのテクスチャの内側はどんな色、どんな輝き? コトリさんは? ウタハ先輩は? テクスチャを剥がしたら、一体どうなってしまう? 

 あの子だって、この子だって……カケラに宿る神秘でさえ、とても素晴らしいものだ。テクスチャを、テクストを取っ払ったら……

 私でも、こんなに綺麗なんだ。他の生徒ならばきっと、もっと素敵なものが覗けるはず。観察したい、見たい、触りたい、試したい、知りたい……

 

 

《本体。手が止まってる》

 

「……あぁ! ごめんごめん。えぇと、じゃあケセドの神秘を培養する作業を続けてくれる?」

 

 

 いけないいけない。

 早速気を取られちゃってた。

 私は私で研究開発を進めないとね。

 

 

 先日持ち帰ってきた収穫物……黒服さんによれば、第4セフィラ・ケセドと呼ばれる預言者。その外骨格装甲は予想通りに予想以上の代物だった。

 

 何といっても、既存の物質よりも頑丈! 受けた衝撃を最大限分散させる構造! 私が思い付いたものより数歩先を進んでいる! 素晴らしい! 

 

 預言者は自らに備わったAIの判断によって自身の自己改造を図るらしい。ケセドは自らの脆弱なコア部分を守る為、より効率的に頑丈な装甲の製造と改造を行ったのだろう。それこそひたすらに、人の思考よりも遥かに早い速度で、ただひたすらに。

 その結実がこの超硬度な外骨格装甲。並の銃撃や爆撃では一切の傷も許さない、画期的で革新的な装甲。

 いやぁ、本当に良い装甲だ。ミレニアムに持ち込んだら研究が飛躍的に進むんじゃないか。新素材開発部の子とかも良い反応をくれそう。

 今の所は私が独り占めさせてもらうとするけど。まず何より私が試して作ってみたいからね、ごめんね。

 

 

 さて。これを素材として何をしようか。やはりアーマーの改修、改造に用いるか。いいや、せっかく預言者の素材が3種類も集まったんだし、それ等を集約させてみても良いだろう。

 3種類、複数の素材の統合。武装……。

 

 

「それこそ合体、変形する武装とか……やっぱりロマンだよねぇ」

 

 

 合体。変形。

 その言葉の響きの何と甘美な事か。何とロマン溢れる文字列だろうか。

 例に漏れず、私は合体する武器やらが好きだ。がちゃがちゃと駆動音を立てて形を変える変形美を作り出すのが大好きだ。エンジニア部に合体変形が嫌いな女の子は居ません! 

 

 ゲブラは様々な武装を機体全身に装着させながらも、変形を行う事で武装の収納、水中機動モードに移行できる機能を備えた預言者。

 ケテルは機体上部を脱着、換装を行い武装を多種多様に変化させる預言者。

 

 うんうん。合体や変形に親和性が抜群そうな機構を元々備えている。これはちょうど良い。どんな変形機構にしようか、変形後はどんな機能を備えたものにしようか……どうせならばそれぞれの特色を搭載したものが良いよね。

 あぁ、考える事いっぱいで楽しい! 

 

 

 

 

 デカグラマトン。

 新たな神の存在を、自らをもって証明しようとする貴方。

 

 私は貴方を肯定するよ。

 

 

 貴方が作り出した預言者達。

 それ等を通して、私は新たな恵みを賜った。

 それ等を通じて、私は新たな物を生み出せる。

 それ等があるからこそ、私は更なる境地へと至る事ができる。

 

 預言者と出会えたからこそ、私は更に一歩踏み出せる。

 貴方が預言者を作ってくれたからこそ、私は好きな事をもっと好きにできるようになれる。

 貴方の預言者が居るからこそ、私の幸福はより深いものとなる。

 

 

 人にこれ程豊かな恵みを齎してくれるなんて、神というには差し支えないでしょ? 

 

 

 私に恵みを下さる神に、心ばかりの祈りを捧げないと。

 

 神に祈る所作は……詳しくは知らないけれど。

 トリニティのシスターフッドだったかな、そういうのに詳しいのは。

 

 

 手を合わせて、指を組んで……えぇと、傅くように、こうやって。

 

 それでは、願わくば。

 貴方が作り出した預言者達が、私のまだ見ぬ預言者達が、強く、賢く、素晴らしい神秘を宿している事を祈るばかり。

 

 その方が、私の研究により活かせるだろうから。

 

 切に、切に、願っていますとも。

 私の求めるロマンのために、存分に楽しませてもらいますから。

 

 

「っふふふ……あははっ」

 

 

 では、次のステップに進もう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 






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