神秘探求したいミレニアムモブ生徒とゲマトリアがガッチャンコ   作:ハイパームテキミレニアム

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○○のテクスチャの剥がれ方は影ナル者、渾沌に呻くゴア・マガラみたいな……そんなサムシング。


ビヨンド・バイオロジー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゆらゆら、体が揺すられる。

 

 始めは小さく、緩く。

 右に左に小さく、意識が振れては戻る。

 

 

 段々と揺すぶりは大きく、強く。

 断続的にぐらぐらと揺られていく。

 

 

 

 

「…………ん、んん…………ふぁ……」

「……あれ、寝てた……?」

 

 

 

 ゆらゆらぼんやりと温かい揺りかごの中で揺られているような心地良さから、意識が一気に醒めていく。視界が定まって、ぼやけた輪郭がハッキリとしてくる。

 

 青白い影が、私の頭上を覆っている。

 

 

 何度か瞬きを繰り返すと、その正体が判明する。

 

 ミメシスの私が覗き込むようにしながら、私の体を揺すっている。

 あれ、何、起こしてくれたの? 

 

 

「うぉお、もう起きてるってば……そんな揺らさないで」

 

 

 目を開けてもなお私の体を盛大に揺すってくるミメシスの私の手を止めて、寝転んだまま辺りを見回す。

 

 

 ここは……私の研究部屋か。

 

 

 何故か床に突っ伏していた体を起き上がらせる。……うあ、体中バッキバキ。寝る前の記憶がはっきりとしない……何してたんだっけ、不意の寝落ちでもしてたのか私は。

 

 不思議と疲れは無い……というかすこぶる快調だ。床で寝てたのに。

 

 

「あぁ、もう……銃まで床に落としちゃってる……大事な物なのに」

 

 

 散らばる研究資料やカケラを納めてた箱と一緒に愛用のハンドガンまで床に落ちてた。

 先生から貰って一層大事に扱ってたのに……傷は付いてないか、良し。まぁあっても直せばいいんだけどさ。

 

 

 

 ……? 

 なんか違和感……

 喉元に引っかかっているような……拭い切れない違和感が頭をもやもやと包んでいるみたいで落ち着かない。

 

 

 

 …………あー、寝る前の記憶がぼんやり思い出せてきた。

 合成神秘の取り込み実験をしてて……そうだ、C&Cの4人の神秘を合成したんだ。それを取り込んで、成功して……

 

 ……テクスチャが剥がれたんだった。何処だっけ? 

 

 

「ねー私、テクスチャの事なんだけど……」

 

 

 ミメシスの私に尋ねてみると、半身を振り返らせたまま、自分の首元をとんとん、と指差して示してきた。

 

 

「……おぉ!」

 

 

 近場にあった鏡を覗き込んでみれば、その変化が大いに理解できた。

 

 ざっくりとした裂傷のようなひび割れが喉元から縦に伸びている。中間が大きく裂かれて、中身の神秘がキラキラと眩く溢れ出しているかのよう。

 ひび割れの両端は私の顎下と鎖骨の辺りにまで及んでいる。計3回発生したテクスチャ剥離の中で、今回が一番大きな剥がれ具合だ。

 これは……流石に服だけでは隠し切れない。ヘイローと同じようにホログラムで隠さないと。

 

 

 ……おっと、ヘイローもしっかりひび割れが進んでいる。外周を覆う円輪部分の4割程がひび割れている。

 ……うん? なんか……大きなひび割れの隙間から……仄かに光が漏れ出ているように見える。

 何だろ、このまま割れていけば中身が見えてくるかな。

 

 

 ……しかし気になるのは、私のテクスチャが剥がれるまでに使用した神秘とその量、密度の相関。

 今回のテクスチャ剥離はC&C4人分の合成神秘を摂取した為。けれども、前回のテクスチャ剥離から今回にかけて摂取した合成神秘の総合量的に言えば、C&C4人分のものよりもずっと多い。

 

 単に神秘を多く詰め込んだだけではテクスチャは剥がれない? 

 テクスチャを剥がすには、一定以上の強度や濃度、量を内包した神秘でなくてはいけない? 

 もしくは、組み合わせの問題? 

 これまでにテクスチャ剥離を成功させた組み合わせは私とネルさん、モモイちゃんにミドリちゃん、そしてC&Cの4人。

 ……サンプルケースがまだ少ない。適切な組み合わせによってテクスチャが剥がれたのかはまだ断定しにくい。この3つの例の中だと私とネルさんの合成神秘が浮いているし……やはり複数の要因が絡み合っているのだろうか。

 

 

 ううむと腕を組んであれやこれや何だろうかと思案する私の肩を、少々乱暴に叩いてくる青白い手。

 ミメシスの私か。

 

 

「ん、どしたの私……うぉっ」

 

 

 振り返るや否や、スマホの画面をぐぃっと押し付けるように見せ付けられる。

 寝起きの目に端末の光がやけに眩しい。ちょちょ、そんな擦り付けるみたいにしなくていいから……何か伝えたいのかな。

 ミメシスって声帯機能が無いからこういう時に一手間入っちゃうんだよね……私からははっきり言葉で伝えられるけど、あっちからは精々ジェスチャー程度しかコミュニケーション取れないし。今度そういう手段取れるようにしとこうかな。

 

 

「分かったって、見るから見るから……っ!?」

 

 

 …………忙しなく指先で示された画面に表示されてる時間。現在時刻。登校時間。

 あと十数分も経てば、学校に着いている頃合の時間だ。

 

 

 しかし今居るのは学校ではなくミレニアム廃墟地帯の研究室。

 ここからだと学校まで結構な距離である。

 

 

 

「……やっば、寝過ごした!?」

 

 

 

 遅刻だコレ! 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……よし、とりあえずどうしよう」

 

 

 研究室を出て、ミレニアム廃墟地域の空を見上げながら独り言ちる。

 

 

 うーん、とても良い青空。幾重にも重なる円環が透き通る空を彩っている。

 

 

 遅刻が確定すると焦るんじゃなく1周回って冷静になったりむしろゆっくりと準備して堂々とするとか何とかあるらしいけど私は今冷静を装いつつ焦っている。

 

 

 遅刻すると素行不良と見なされてしまう。

 いや、1回2回の遅刻ならまだ良い。しかしその回数が積み重なってしまうと問題だ。

 そして私は……というかエンジニア部の全員が遅刻を何度かやらかしている。主に研究開発の熱が入り過ぎた影響で。

 

 何度もやらかしてきた遅刻やら他の素行不良やら建造物破壊やら爆発やら発明品暴走やらを冷酷無情私情一切無しのユウカさんに激詰めされて予算削減という憂き目にあったのは記憶に新しい……! 

 予算を削られると開発の幅も減ってしまう! 

 

 なので部活動にあたってのウィークポイントをこれ以上増やさないためにも、極力遅刻は避けたい……! 

 

 

 

 というか、勢いで研究室から飛び出してきちゃったけど、ワープゲートで家に帰ってから向かった方が良かったんじゃ? 

 いや今更家に引き返してもダメだな、距離的にどっちでも間に合わない。

 ワープゲートもここの研究室と家しか繋がってないし、ワープ先を切り替えるのは黒服さんから秘匿性の為に禁止されてるし……

 

 

 ……ワープといえば異なる世界を繋ぐ装置なる代物があったけど……

 その装置によって、先生とはまた違うキヴォトスの外からやってきた人達……その方達を送還する騒動で壊れちゃったしなぁ……

 あの装置を何とか再現して、何時でも何処でもワープ装置、とか作れないものか。作れたら自治区間の移動もだいぶ楽になる。

 

 量産化、常態化すれば移動に革命が起きる事間違いなし! 海運業に頼り切りな面もあるキヴォトスにおいて気楽に気軽に長距離ワープとかできると一気に夢が広がる気配が────

 

 

 ……あぁ、異なる世界から来た人のヘイロー、改めてちゃんと見たいな……ついでに神秘も欲しいな……また来ないかな……転送装置作ったら異なる世界にこちらから積極的にアクセスするっていうのも……いや、キヴォトスに異なる世界の人達を引き込めば新しいヘイローと神秘を見る事もできる、取る事もできる、研究が捗る、進む、楽しい事たくさん……

 

 

 ……そういえばあの装置の騒動って何時頃の事だったっけ。

 あれ、記憶はしてるのに正確な日付が思い出せない……なんだったっけ。

 

 寝起きだからかな、思考が鈍って■■■■

 

 

 

 

 

 ……? あ、やっばい。ボーッとしてる場合じゃないや。遅刻しそうなんだった。

 

 

「んー、電車使っても間に合わないしなぁ……」

 

 

 電車の時刻表とにらめっこしてみるものの、やっぱり登校時間に間に合う時刻の電車はない。

 ゲヘナだとお客様都合に合わせたり遅延を取り戻す為に超速でぶっ飛ばす電車も存在しているらしいが、あいにく此処はミレニアム。そういうサービスは取り扱われていない。

 

 

 とりあえず走り出す。何事も足を動かさなくちゃ始まらない。

 強く足を踏み込めば、グンと加速する体が周りの景色を置いていき、空気の抵抗が風となって私の体を撫でていく。

 

 走り続ける。走り続ける。

 走れや走れ、日が昇るよりも10倍早く、音よりも早く! 

 何かに激怒……している訳でもないけどとにかく走れ! 

 

 

 ……度重なる神秘の取り込みによって身体能力が軒並み強化された為に、機敏に動く事が可能になったこの体。スタミナも増強されているので疲れ知らず、本気を出せば60kmを出しつつ一時間は走り続けられる。

 一本道なら無双の踏破力……だけど、今走る場所はロケーション的によろしくない。

 打ち捨てられた廃墟地域は整備もロクにされてないから道は穴ぼこだらけ、果ては崩れたり水没、陥落、足を取られ放題のぼろぼろ地域だ。気を抜けば猛スピードのまま足をもつれさせ、慣性の赴くままに転げ回り適当なビル壁をぶち破る羽目になる。というかこの前なった。

 

 機械ではない、あくまで人体の体。である以上、どれだけ性能が良くとも動かすおつむが追い付いていなければ最適な動きには程遠く。

 うーん、今度運動部のスミレさんに最適な走り方について教えてもらおうかな……今のスタミナならあの人のハードコアメニューにもある程度着いていけるかもしれないし。

 

 

 ……全力疾走できない地上はダメだ。結局間に合わない。そもそも廃ビルが乱立して入り組んでる構造からして移動にも時間がかかるし。

 それに───

 

 

「うわっ、また出た!」

 

 

 瓦礫の山を乗り越えた先に見えたのは大量の無人ドローン。

 

 センサーに私という存在を捉え、装着されたタレットで狙いを定めてくるドローンの群れ。

 

 

 弾丸の掃射が一斉に差し向けられる───前にドローンの群れの中を掻き分け、走り抜ける。

 

 背中に弾が当たる。痛くもないから気にしない。

 

 回り込むようにして立ち塞がってきたドローン達を腕を払って殴り飛ばす。蹴っ飛ばす。踏み潰す。走る勢いのまま体当たりで吹き飛ばす。

 

 そうしてようやく奴等の索敵範囲から抜け出せたようで、しばらく静かになる。

 

 

 

 放置されてとっくに人が居なくなった軍需工場やら生産工場やらで製造された無人機やドローンの類いはこの廃墟地域にうようよと蔓延っている。

 廃墟地域に時々訪れる者を見つければ問答無用で襲い掛かるほど思考ルーチンが古ぼけた彼等は、バッテリーが尽きるまで彷徨っているのだ。

 

 無人ドローンの数は多い。廃墟地域をうろついていれば不良よりも多く遭遇する。

 私の今日の登校が始まってからああいった群れに出会うのはこれで通算3度目。

 真面目に対応しててもぞろぞろと群れてくるものだから、通り抜けに吹っ飛ばすのがちょうど良い。地味にストレス発散にもなるし。

 

 

 あぁ、でも、やっぱり色々鬱陶しい。走りにくい道もドローン達も。

 

 もっと一直線に進みたい。ならどうしよう。

 

 

「……上から進もう!」

 

 

 

 空を見上げる。視界に入るのはうず高く連なって並び立つ廃ビル廃墟の群。

 神秘が膨れ上がらせて、より明瞭となった思考と視界に映る、いけそうな気配。

 

 

 グッ、と屈みながら脚に神秘を篭める。

 いち、にぃ、さん、息を整えながら、一気に空へと跳び上がる。

 

 

「ぅおぉっ……! い、がいと跳べるもんだねっ、と……」

 

 

 地面に小さなクレーターを残しながら、重力から解き放たれた軌道で空に向かって落ちるように大跳躍。

 薄暗い廃墟地域の空を駆け上る。

 

 

 10階建てのビルの屋上に一飛びで転がり込んだら、真っ直ぐに駆け走る。

 

 

「よし、よし、いけるいける、タイミングちゃんと合わせて……」

 

 

 走りながら歩調を合わせて、距離を見定めて、屋上の端っこに向けて一直線に向かって……

 

 

 いち、にの、さん。

 屋上の縁に足を掛けるタイミングでまた強く踏み込んで。

 走り幅跳びみたいに屋上を蹴って。

 

 

「いっ、けぇぇーっ!!」

 

 

 前に向かって飛び出していく。

 

 

 ぐん、と空気を突き破るような抵抗を受け流しながら、1つ飛ばしのビルの屋上へ着地。

 

 

「うわわっ、とと……! っ、飛べた!」

 

 

 勢いが良すぎてつんのめり、転びそうになった体を何とか持ち直す。

 

 

「……よし、このまま、進めば間に合う……!」

 

 

 瓦礫塗れ、穴ぼこだらけの地上を走るよりも数段早く距離を詰められた。

 ならこのままこの道を突き進むのみ。

 

 体勢を立て直したら、走っては飛んでの繰り返し。

 

 そうして廃ビルの屋上から屋上に飛び移っては、ひたすらに前へ、前へ、前へ。

 学校へ向けて一直線に跳んで行く。

 

 

 空を跳ぶ。空を駆ける。

 

 進み続けるに連れて、熱を帯びていく体。

 

 

 吹き抜ける風が心地好い。

 照り付ける朝日が心地好い。

 体に漲る神秘が心地好い。

 

 

 また2つビルを飛び越して、何の怪我もなく着地。そうしてまた走り出す。

 

 アニメやゲーム、漫画でしか見た事のないようなびっくりパルクール。

 

 以前の私ではできるなんて想像もできなかった事が、できている。

 こうして体を派手に動かす事で、私は私の力を改めて認識する。前の私から生まれ変わったみたいだ。

 

 飛び回る、飛び跳ねる。

 

 トランポリンで遊び尽くすように弾んで、空を舞う。

 

 まるで重力の枷から外れたような、身軽で気軽な動き方。

 晴れ渡る青空の下で行うそれは、何とも言い表せない爽快感に満ち満ちている。

 

 

 それでも何と言うべきか。

 そう、自由になれている感覚だ。

 

 

「あははっ!」

 

 

 楽しい。

 

 自分の可能性が広がっているのを感じる。

 

 もっと自由に、無邪気に、自分のしたいようにやってみれば、もっともっとこの感覚を味わえるだろうか。

 

 自分が自分らしくありながら、更に上に登っていくような、違うステージに外れていくような、そんな感覚。

 

 素敵で無敵なこの気持ちを、誰にだって邪魔されたくない。

 

 

「ぃよいしょっ」

 

 

 飛んで、走って、跳ねて、踏み締めて。どんどんどんどん加速して行く。

 早回しの映像みたいに過ぎ去っていく景色を横目に、ひたすらに突き進む。

 

 

「よっと」

 

 

 ビルの影から目の前を阻むように飛び出してきたドローンは、体を当てて勢いのままに吹っ飛ばす。

 

 

「やっ、と」

 

 

 神秘を体の内から溢れさせながら、屋上のフェンスを踏み壊して跳ねていく。

 

 

「ほぃ、っと」

 

 

 体を包む浮遊感が、どうしようもなく気持ちいい。

 キラキラとビル窓から照り返される朝日が、とても綺麗に映り込む。

 

 何処までも飛んで行けるような無双感が、頭のてっぺんから爪先まで迸る。

 

 

「あはっ」

 

 

 誰にだって、邪魔はさせない。

 私を阻むなんて、誰にもさせない! 

 

 

「あっははは!」

 

 

 私は、自由だ! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 □■□■□■□■□■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……にしても、○○がまた遅刻とは珍しいね。最近は無かったのに」

 

「寝不足?」

 

「それはいけませんね! 寝不足の原因について説明を──」

 

「あー……大丈夫です、大丈夫です……平気ですから……」

 

 

 

 現在、エンジニア部室内。

 何時も通り、工具と機械と機材に溢れ返った落ち着く空間で、私用デスクに身を投げ出す私。ついでに爆速解説をしようとするコトリさんを一旦留めておく。

 

 

 あの後、ビルを跳ね越える空中散歩によってテンションが上がり過ぎた結果、学校校舎すら飛び越えて延々と跳ね回ってしまい結局そのまま遅刻したのだ。

 何してんのさホントにもう私は。

 いや、まぁ、楽しかったからまたやりたいけども。

 

 ……アレ、アーマーを装着して神秘を増幅してればもっと早く動けてたのでは? 

 今度試してみよっと……

 

 んー、それも試したいけど次にやるべきはやっぱり何よりも合成神秘の研究だ。

 今はミレニアム生徒のものしか合成神秘を作っていないが、そろそろ他自治区の生徒の神秘も合成してみよう。

 果たしてミレニアムの生徒である私に、他学園の生徒の神秘はどのような影響を与えるのか。それが楽しみで仕方ない。

 

 しかしそのための神秘のサンプルには不安が残る。培養ができるから数を揃えるのは問題ない。必要なのは種類だ。

 やはり自分から動いて神秘を取りに行かないと……『ワンワンボット』をミレニアム以外にも放してみる? ありかも。

 でもやっぱり神秘は直接見てから取りたい。ヘイローを見たい。眺めたい。囲まれたい。

 ミレニアム、アビドス、ゲヘナ……ここら辺りから次に進むとしたら、以前にも考えていたがトリニティだろうか。

 

 あぁ、いいなぁ。トリニティならどんな神秘とヘイローが見れるかな。

 

 

 

「……トリニティ生徒の興味を惹くものって何か無いですかね」

 

「また唐突だね。私としては○○が作ったこの『エーテルリアクター』に興味が惹かれてるんだけれど」

 

 

 思考を回しつつぼんやりと零した言葉をウタハ先輩が耳聡く拾い上げてくれる。

 ……ウタハ先輩のヘイロー、左右に浮いてるパーツが何だか側頭部から伸びてる耳っぽく見えるんだよね。うさぎの耳みたいな。可愛い。

 

 

「そうですね! エネルギー効率、変換ロス共に類を見ない程に高成績! 革新的テクノロジーの匂いがぷんぷんします!」

 

「これまでエーテルを利用した製品はいくつもあったけど、これ程高性能なのは初めて見るね……」

 

 

 今行っているのはエンジニア部恒例の、『今何作ってるの会議』。

 これは不定期的かつ突発的に開かれる雑談会みたいなもので、その時に部員が個人的に作っている物を披露し合って、性能を見せあったりして意見交流をする場だ。

 ここで出し合った製品がミレニアムプライスやExpoで賞を取る事もしばしば。

 

 そして今日開かれたそれに私がお出ししたのが『エーテルリアクター』だ。今皆が資料を見つつ色々と眺めたり触ったりしている。

 

 

「大気中にあるエーテルを装置内部に吸引、電力に変換……というのはありふれているが、この変換効率は確かに目を見張る。稼働実績も十分なものだね」

 

「それに加えて複数台同時に長時間稼働をさせても大気中のエーテル量にほとんど減少は見られないとなりますとますますクリーンなエネルギー源として需要が高まりますね!」

 

 

『エーテルリアクター』はその名の通り、キヴォトスの大気中に含まれているエーテルを取り込んで他エネルギーに変換を行う装置。

 廃墟地域に移した様々な実験機材達は中々電力を食う。その上、所々出力不足な箇所が出てくるなどの悩み事が発生する。

 

 このままでは順調な実験が望めない、とエネルギー問題を解決するものとして開発したのだ。

 

 低燃費、されど高出力な代物。

 例え私の研究室の機材を24時間365日連続稼働を行っても大気中のエーテル量と濃度に致命的な損失など起こさない、これまでのエーテルを利用した製品を上回る高スペック機器が爆誕したのだ。

 お陰様で合成神秘がバンバン作れている。

 今もミメシスの私がせっせと合成しているだろう。

 

 

 ただこの『エーテルリアクター』、一般に流通させるには無視できない問題が残っているのでここでお出しするには正直言って恥ずかしいくらいだったのだけど……

 

 

「いやぁ、褒めて頂けるのは嬉しいんですけど問題点がまぁありまして……」

 

「うん、耐久性の面だね。拳銃射撃程度の衝撃で破損するのは確かに問題だけど……ふふ。○○、私達が誰なのか、忘れた訳じゃないだろう?」

 

「私達の手にかかればそんな問題点なんてサクッと解決してやります! 目指せミレニアムプライス最優秀賞、ですよ!」

 

「他にも色んな機能を付けてみたいかな……うん、夢が広がっていくね」

 

 

 もじもじと指を合わせる私の手を取って、身を寄せ、明るい表情でそう言ってのけてみせるマイスターの方々。

 そうして装置の改良案を次々と議論しては話し合って、会話に花を咲かせて熱を帯びさせていく。

 

 その姿が、とてもとてもきらきらと眩く映って、思わず見惚れてしまった。

 

 

 あぁ、やっぱり、エンジニア部っていいな。

 入って良かった。

 

 

 

 

 その後も話題が膨らんで、なかなかに熱の入った話し合いが進んでいく。他のマイスターの個人製作の製品も続け様に発表されていくので目が離せない。

 

 コトリさん? その『胡椒振り撒きダイエットマシーン』はどういう発想から……くしゃみ一回に付き消費されるカロリーは4kcal? くしゃみでお手軽に痩せる新兵器? 特殊配合した胡椒パウダーで無限くしゃみを誘発? こ、殺される……! 

 

 ヒビキさんのは……『改良版ホログラム花火』? あっ、以前百鬼夜行連合学院のお祭りで使われたというアレですね。……1680万色に光り輝くホログラムを夜空に投影? そんな馬鹿げたこと……やりましょう! 

 

 

 そんな白熱した開発談義、いつものエンジニア部の光景の最中で、不意にその感覚が訪れる。

 

 

 

「っ、ぅ」

 

 

 ふらり、と突然に訪れる睡魔のように意識が一瞬浮いていく感覚。

 ずくん、と私のテクスチャの中身が大きく脈打ち、溢れ出ようとする、そんな感覚。

 疼きのような拍動が体を駆け巡る。

 

 

 誰も見ていない事を確認してから、仕舞い込んでいた私の神名のカケラを1つ頬張る。特別な味ではない。無味無臭とはいかないが、なくてはならない、と感じさせる、大切な味。

 2つ、3つ。続け様に飲み込んで、ようやく体が治まり、落ち着いていく。

 私の体が、神秘を閉じ込める器が充足されて、緩んだ口が締まるように。

 

 

 

 

「ふぅ、そろそろ糖分が欲しくなってきたな……」

 

「そうですね、私も小腹が空いてきましたし……」

 

「あれ、○○……何か食べてた? 良かったら分けて欲しい」

 

「んぐ……っ! ぁ、すみません、今ので終わっちゃいました。……じゃあ皆で買い出しに行きません?」

 

 

 追加で1つ飲み下して、慌てて皆の方へ向き直る。

 

 

 大丈夫、大丈夫。

 

 まだ保てる。

 

 まだこんな所では終わらせない。

 

 

 

 

 

 

 

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