聖女と直死


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作:あるけ〜
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18階層


「…えーっと、これはどういう状況なのかな?シキ。」

 

地面に這いつくばった状態から、自身の背中に乗っている3人の子供達に、金髪の青年、フィン・ディムナが問いかける。

会うのはおよそ1週間ぶり。通常なら再会に喜ぶ場面だが、場所が場所だ。ここは18階層。断じてレベル2一人、レベル1二人のパーティでくるような所じゃない。

 

遠征の帰りに26階層で毒妖蛆(ポイズンウェルミス)の大群に出くわし、団員の何人かが毒を受けてしまった。解毒薬、治療薬の調達のため、単身地上に戻るか迷っていたところ、気配も無しに背後から襲われ(?)この様である。

 

「1度目偶然2度奇跡、3度目必然4運命。…そう、これは運命だフィン。」

 

「うん、どうやって現れたのかは聞かないでおくよ。とりあえず可及的速やかにどいて欲しいな。それと、僕の運命の相手は是非小人族(パルゥム)でお願いしたいね。」

 

シキの言葉をさらりと流し、自分の背から降りるよう要求する。いくらレベル差があるとはいえ、無防備な状態で武装した人間に背中を取られているのは、なかなか許容し難い。

 

「いや、これは仕方がないことだ。距離が遠かったから、フィンそのものを座標にするしかなかったんだよ。それに、あんたなら怪我することもないだろう?」

 

「聞きたいことが増えたうえに、僕の扱いについても話したいことが出来たけど…救援に来てくれたってことでいいのかな?」

 

3人とも背中から降り、重荷が無くなったフィンが立ち上がる。少女2人はまだ状況を把握出来ていないのか、周囲をキョロキョロ見回している。

 

「シキ。ここは…?」

 

「18階層だ。悪いな、何も言わずに連れてきちまって。」

 

シキの返答にアミッドが目を見開く。一体何をどうすれば、12階層からここまで一瞬で移動できると言うのか。

 

「やぁアイズ。元気そうで何よりだ。…また背が伸びたかい?」

 

「え…フィン…?」

 

突然知らない場所に連れてこられ、いる筈のない人物が目の前に現れた状況に、少女が目に見えて混乱し始める。

 

「フィン、怪我人の容態は?」

 

「どうして君がそれを知っているのか気になるところだけどね…こっちだ。」

 

少し先に向かうと、10人近くの団員が並んで倒れている。耐異常のない下級冒険者なのか、顔色が酷く悪い。毒は受けていないが、傷がかなり深い者もいる。

 

「遅かったなフィン……ん?…アイズ⁉︎何故ここに!」

 

「リヴェリアまで…」

 

容態を見ていたのだろう。しゃがんだ状態からこちらを振り向いた緑髪のエルフが、背後のアイズを見て声をあげる。

 

「えっと…リヴェリアさんだっけ?説明は後でするから、とりあえず状況を説明してくれ。」

 

「何?…お前は…!」

 

以前上層で会った少年の姿に、フィンが少女の面倒を頼んでいったことを思い出す。何故ここにいるのかは不明だが、とりあえずフィンと一緒にいることは納得する。

 

「深層でポーションの多くが破損してしまってね。回復魔法が使える者でどうにかして保っている状態だ。」

 

「成る程…。アミッド、やれるか?」

 

代わりに答えたフィンの説明を聞き、後ろの銀髪の少女に問いかける。子供とはいえ、治療師の端くれ。寝かされた者達を見て瞬時に状況を把握したのか、表情を引き締めて思案する。

 

「ここにいる全員となると…解毒までは難しいかもしれません。」

 

「わかった、毒の方は俺がやる。そっちは回復に集中しろ。」

 

「はい。」

 

病人を前にして、2人の顔つきが変わる。

たった今からシキ、アミッド・テアサナーレは、冒険者から治療師へと己を変える。

 

「怪我が酷い者からこちらに集めて下さい!毒を受けている者達は一箇所にまとめて!」

 

「は、はい!」

 

銀髪の少女が背負っていた荷物を下ろし、容態を見ていたロキファミリアの団員へ指示を出す。まだ子供ながら、凛とした通る声に反射的に反応し、少女の周囲に怪我人を運んでくる。

 

「彼女は?」

 

「ディアンケヒトファミリアの新人だよ。回復魔法が使えるそうだ。」

 

初めて見る少女に疑問を持ったリヴェリアに、フィンが答える。

 

「…うん。いつも治療してくれた。」

 

「そうか…後で礼を言わなければ。」

 

アイズの言葉に僅かに顔をしかめる。この猪突猛進幼女の面倒など、とんでもない苦労をかけたに違いない。

 

「うぅ…う、腕が…痛いっす…。」

 

「ラウル!しっかりして!」

 

一番怪我が酷いであろう、ラウルと呼ばれた少年の腕に巻かれた包帯には既に大量の血が染み込んでおり、身体の至る箇所に毒の症状が浮き出ている。猫人族の少女が声をかけるも、苦しげな声を漏らす。

 

「君、どいてくれ。」

 

「何を……っ‼︎」

 

少女が振り向くと、背後に立つシキの蒼眼を見て息を詰まらせる。黒髪の少年から溢れ出る強烈な殺気に、全身の毛を逆立てる。

 

「…ら、ラウルに、何する、つもり…?」

 

「何って解毒だ。すぐに済む。」

 

そう言うと懐からピックのような物を取り出し、何かを探すように全身を観察する。視線が脚部のある一点で止まると、少女が声をあげる間もなくピックを振り下ろす。

 

「なっ⁉︎」

 

後ろで見ていたフィン達3人も、突然の奇行に流石に驚愕する。リヴェリアが止めに入ろうと足を踏み出したところで、異変に気付く。

 

「血が出ていない…どういうことだ?」

 

心なしか、ラウルの表情が先程よりも穏やかに見える。シキがピックを抜き、何かを払うようにして振るうと、全身に浮き出ていた症状が消えた。

 

「な、何が…。」

 

「毒は殺したが、まだ残滓は残っている。帰ってしばらくは安静にしてろ。」

 

そう言い残し、別の患者の元へと去る。先程と同様の手順で次々に解毒を行い、最後の1人が終わったところでアミッドに声をかける。

 

「よし、いいぞアミッド。」

 

「はい。…【ディア・フラーテル】!」

 

少女を中心に魔法陣が浮かび上がると、光が傷口へと集まり修復を始める。傷口が一瞬光ると、次の瞬間には傷跡も残さず完治していた。

 

「この人数を一度に…なんて魔法だ…!」

 

「これは…流石に驚くしかないね。」

 

「…やっぱり綺麗。」

 

リヴェリア、フィン。2人の上級冒険者が、目の前の少女の魔法に戦慄する。これほどまでの回復魔法使いは今まで見たことがない。まず間違いなく、彼女はオラリオ最高の治療師になるだろう。

それにシキの方だ。見たところ詠唱をしていた様子はないし、治療薬を使った訳でもない。十中八九スキルだろうが、全くもって検討がつかない。

 

「ディアンケヒトファミリアの期待の星達か…。うちのファミリアに来なかったのが惜しいね。」

 

これはますます友好関係を維持していきたいものだ。シキに関しては特に謎が多いが、無理に聞く必要もないだろう。ここで反感を買うのは悪手だ。

 

「ふぅ……ぁ…」

 

「おっと。…お疲れ、アミッド。」

 

広範囲での使用の反動か、倒れそうになるアミッドを横からシキが支える。初めての生命がかかった治療だ。緊張もしただろう。

 

「ありがとう2人とも。君達がいなければ、ラウルはかなり危険な状態だったかもしれない。改めて礼を言わせてもらう。」

 

「あぁ。それと、アイズを面倒見てくれたこと、感謝する。」

 

フィン、リヴェリアがこちらに向かって頭を下げてくる。

 

「見ちまったからには放ってはおけないからな。構わないよ。治療費は…そうだな。俺達のステータスは詮索しないことと、アミッドの魔法については他言無用ってことで。」

 

「凄く気になりはするけどね…もとより他人のステータスの詮索は禁忌(タブー)だ。問題ない。彼女の魔法に関しては何故だい?」

 

「今のを見ても分かると思うが、まだ魔力量が心許ない。それにこんな世の中だ。広まれば騒ぎに巻き込まれかねない。」

 

まだレベル1だ。悪意を持った連中に狙われれば、危険に晒されることになる。

 

「成る程…わかった。団員達には釘を刺しておく。それと、今回とは別にまた改めて礼がしたい。地上に戻ったら宴を開く予定だ。是非顔を出してくれ。この子も喜ぶ。これまで面倒をかけてすまなかった。」

 

隣に立つアイズの頭を手で掴み、再び頭を下げるエルフに、流石に2人も苦笑する。

 

「いえ、私もアイズさんと一緒にいるのは楽しかったですから。また是非申し付けて下さい。」

 

「…うん、ありがとう。」

 

一緒になって頭を下げているアイズの手を取るアミッドに、自然とアイズも顔を綻ばせる。

リヴェリアがその様子を見て目を見開き、何度目かわからない礼を口にする。

 

「この子がこんな風に笑うなんてな…。本当に、感謝する。」

 

「礼ならアミッドに言って下さい。それじゃあ、これからもディアンケヒトファミリアをご贔屓に。…さて、なんとか今日中に帰れそうだな…アイズも一緒に戻るか?」

 

「うん。」

 

少年の言葉に頷き、少女達が手を取ったままシキの元へと近づく。

 

「今から帰るだって?もう地上じゃあ日が暮れる頃だろう?手狭だが僕らの天幕で…」

 

「問題ない。すぐに着く。じゃあなフィン。宴楽しみにしてるぜ?帰りが遅れることは伝えといてやるよ。」

 

そう言うと、少女達にコートの裾を掴ませた後に短剣を振るう。

途端に3人の姿は消え、後には何も残っていなかった。

 

「……やっぱりスキルについて聞いておくんだったかな…?」

 

「……デタラメにも程がある…。」

 

その夜ロキファミリアの天幕では、突然現れ病人を治療し、忽然と姿を消した子供達の話題が後を絶たなかった。

 

 

 

 

 

 

 

一方ディアンケヒトファミリアのホームでは…

 

「なんじゃあぁぁぁぁあ⁉︎」

 

「いやぁ〜やっぱり乗るなら大人のでけぇ背中に限るな。なんてったって3人乗っても余裕がある。」

 

「いいからどかんか!今度は何をしおった︎馬鹿者が‼︎」

 

「うるさいですディアンケヒト様!近隣の方の迷惑です。」

 

「…ここは…?」

 

老神の叫び声に団員が駆けつけると、部屋には子供3人によって下敷きにされた主神の姿があった。

 

「とりあえず18階層で取ってきた薬草で〜す。是非お納めくださ〜い。」

 

「色々聞き出さなきゃならん言葉が聞こえたが、とにかく儂の背中から降りんか‼︎」

 

数分して団長が帰ってくるまで、ホーム内では少年と老神による激しい応酬が続いた。

 




頭のなかではパッと組み立てられるんですけど、いざ文章にしようとすると難しいんですよね…。やっぱ小説家の人って凄いなぁ。
展開遅いような気がするので早く進めたいんですけど、なかなか端折れるところがなくて困る。読んでくれている方々も退屈でしょうし…。
スピード上げられるように頑張ります。
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