聖女と直死


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作:あるけ〜
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神会


神が何故人間達が住む下界に降りてきたのか。永遠に等しい命を持つ神達にとって、天界での生活は退屈でしかない。全てが満たされ何でもある万能な暮らしに嫌気が差した神々は、下界へと娯楽を求めたのだ。

 

ーまぁ何が言いたいかというと、神というのは人と価値観が違う。率直に言って頭のおかしい奴や変態が多い。

 

そんな神達が3ヶ月に一度集まる神会(デナトゥス)に、珍しい老神が姿を見せていた。

 

「おや、久しいなディアン。お前が神会に来るなんて珍しいこともあるものだ。」

 

変態の多い男神の中でも少数派である、心優しい神と評判のミアハに声をかけられ、ディアンケヒトが顔をしかめる。

 

「やかましいわい。生意気なガキの二つ名を決めないといかんせいで、しょうがなく来ただけじゃ。」

 

普段ディアンケヒトが神会に出ることは基本ない。医療系ファミリアでは探索が殆どないため、ランクアップ者が少ないのだ。

 

「まったく、痛い二つ名が付かないようになんとかしてくれと頼まれなければ、今頃はホームで酒でも飲んでたんじゃが…」

 

「お前程のファミリアならどうにかするのは容易いだろうに。子供達にもっと寄り添ってやるべきではないか?」

 

「ふんっ、あのガキにそこまで面倒見られるか!」

 

とは言ったものの、シキやアミッドはどうも大人びているため、面倒を見ることなど殆どない。アミッドに関しては、既にファミリア内での実権を握っているような気さえする。しかし、慌てた時などにはまだ子供らしい一面が見えることもある。問題はシキの方だ。どうにも子供らしい態度を見せない。寧ろ大人の余裕のようなものを感じる。

 

どうもあいつは神に近い感性を持っている気がする。他の冒険者達の二つ名を痛いと感じるらしい。まぁ神々がそういう二つ名を意図的に選んで付けているため、その通りなのだが。

 

 

ここでは神達の近況報告や都市の情勢についてなどを話している。ことになっているが、いざ覗いてみればぐちゃぐちゃと集まって騒いでいるだけだったりする。何も知らない人の子たちは、神達による厳かな会議が開かれてると思っているのだが。

 

都市の近況などを話し終えたところで、司会席に座っている朱色の髪をした貧乳女神。都市最大派閥のロキファミリアをまとめるロキが声を発する。

 

「それじゃあ闇派閥に関してはこれまで通り厳粛に対応するということでええな!…ほんじゃ次に進もうか。お待ちかねの命名式や!」

 

「「「「「ヒャッホォォオオー‼︎」」」」」

 

「「「いよっ!待ってました!」」」

 

司会者の発言に神達が騒ぎ出す。ランクアップした冒険者達の格好いい(痛い)二つ名を決める時間である。

 

「じゃあまずはセトっちゅう神のとこの子や。狼人族の男やな。」

 

「た、頼む!お手柔らかに…」

 

「「「「「断る‼︎」」」」」

 

「そ、そんな!」

 

都市内で地位を持たないファミリアや、容姿含めて神達に好感を得られなかった場合、娯楽に飢えた奴らの餌食となる。

即ち、痛い二つ名を付けられる。

 

「それじゃあこいつの二つ名は、【闇夜吠える衝動(ダークネスバークインパルス)】で決まりや!」

 

「「「「「いてぇええええええ‼︎」」」」」

 

「うわぁぁぁぁぁぁ‼︎ 許してくれぇぇぇ‼︎」

 

 

ー狂ってる。

 

だから来たくなかったんじゃ。それに、

 

「なんでよりにもよって司会者があいつなんじゃ…」

 

「今日眷属が遠征に行ったばかりで、暇らしいわよ。」

 

「何ぃ?…そういえばそんなこと言っとったな。」

 

隣の席に座っている女神の声に思わず反応し、先日シキが言ってたことを思い出す。あいつが受けた依頼が確か今日からだった筈だ。

 

「久しぶりねディアン。シキには世話になってるわよ。」

 

ヘファイストスが手を前で軽く振りながら声をかけてくる。

 

「まったくじゃ。あいつはちと異常じゃからな。この間も儂の知らないところで勝手に交渉を始めおって。結果が良い分余計にタチが悪い。」

 

「あら、私以外のとこでもやってたのね。それで?今日はシキの二つ名を決めに来たの?いつもなら来ないで他の神達に任せるのに。」

 

「あやつ、痛い二つ名を付けたら儂の財布の中身を全部孤児院に募金してやると脅してきたんじゃ。お陰でわざわざ来るはめになったわ。」

 

「それは災難ね…。そろそろ回ってくるんじゃないかしら?」

 

ヘファイストスがそう言うと、丁度ロキがシキの名前が書いた紙を取り上げた時だった。

 

「最後は…ディアンケヒトのとこのシキって子供や。うほっ、なかなか格好いい子やな。…ただ、所用期間が空欄なのはなんでや?」

 

「そのまんまの意味じゃ。ステータス刻んだ時点でレベル2じゃったから知らん。」

 

「はぁ⁉︎なんやそのデタラメは⁉︎」

 

「ファッ⁉︎」

 

「普通レベル1からだろ!」

 

「改造でもしたんじゃねぇか⁉︎」

 

「そうだそうだ!チートだそんなもん!」

 

ロキに続いて神達が騒ぎ立てる中、端っこの席に座っていた男神。羽付き帽子を被った旅神ヘルメスが口を挟む。

 

「まぁまぁ。聞けばその子、恩恵を刻む前にワイヴァーンを倒したらしいじゃないか。別に可笑しくないんじゃない?」

 

その言葉に喧騒が収まる中、ディアンケヒトがヘルメスを睨み付ける。

 

「…何故お前がそれを知ってる?」

 

「嫌だな〜俺はヘルメスだぜ?オラリオ周辺で起きた出来事なんて当然押さえてるさ。」

 

「…ちっ、余計なことを言いおって。」

 

呆気に取られていた神達も、話が途切れたのをきっかけに、再びざわつき始める。

 

「ーは?恩恵無しでワイヴァーン倒すとか化け物じゃん。」

 

「でもだとしたら納得だわ。」

 

「まだ10歳⁉︎とんでもねぇな!」

 

「ってか文句無しの最短記録だろ。」

 

「この間噂になってた、上層でモンスター殺しまくってた奴ってこいつじゃねぇか?」

 

「例のモンスター大量斬殺事件ってこいつのせいか!」

 

「そういえばこいつ、今朝ロキんとこのアイズちゃんとダンジョンに潜ってくの見たぞ。」

 

「何ぃ〜⁉︎どういうこっちゃ!説明せい!」

 

「お前知らんのか?3日くらい前に【勇者(ブレイバー)】がうちのホームに来て、シキとアミッドに面倒を頼んでいったぞ?」

 

「あの子も連れて行くの?よかったわね。」

 

「なんやそれ!うち聞いてへんで⁉︎」

 

「あら、ロキったら信用されてないのね?」

 

ヘファイストスの発言に狼狽える。普段から飲酒に明け暮れている一面がある分、なかなかに胸に刺さる。

 

「そっそそそ、そんなことないもん!ウチはみんなから信用されてるもんっ!」

 

「でも伝えられてないんでしょう?大事な子供の面倒を任されないなんて…残念ね。」

 

「う、うわ〜ん!こうなったら帰ってきたアイズたんに一杯構って貰うんやからな〜!」

 

とどめを刺され、泣きながら出て行くロキ。

いなくなったところで男神達が再びざわつき始める。

 

「ーで?その一緒にいた女の子達はどんな子だったんだよ?」

 

「ロキんとこのアイズちゃんともう一人、銀髪でお淑やかな娘がいたぜ。この男の子にアミッドって呼ばれてた!」

 

「何ぃ〜⁉︎その歳でハーレムを作り上げているというのか⁉︎」

 

「なんとこちらに、その瞬間をとらえた写真がございます!」

 

「「「「でかしたぁぁ‼︎」」」」

 

「うわぁ、めっちゃ可愛いじゃん!この子もディアンケヒトの眷属なの?」

 

「将来絶対美人さんになるね!この子に会いたいがために怪我をする奴が来ると見た!」

 

「はい、この子の二つ名は【聖女】で。」

 

「「「決定‼︎」」」

 

「いや、まだランクアップしてねぇぞ。」

 

「この後この子に会いに行かねぇ?ちょっかい出すもよし。罵倒されるもよし。どんな子か直々に見定めに行くとしよう!」

 

「「「「よっしゃぁあ‼︎」」」」

 

 

「やめとけやめとけ。下手にアミッドに手出すとシキに殺されるぞ。」

 

騒ぐ男神達にディアンケヒトの忠告が飛ぶ。

 

「殺すってそんな馬鹿な。」

 

「まぁでも最悪天界に送還されるだけだし。」

 

「お前試しに送還されてこいよ。」

 

「嫌だよ、お前が行けよ。」

 

「本当に危なかったら神の力(アルカナム)使えばどうにかなるでしょ。」

 

「それどの道送還されるやつや。」

 

他の神達が笑い飛ばすが、ディアンケヒトのいつになく真剣な表情に周囲の神が訝り始める。

 

「ーいや、恐らくあいつに殺された神は送還されんじゃろう。」

 

「…は?何言っとんねん。下界で死んだ神は天界に送還されるのが決まりやろ。」

 

いつの間にか戻ってきたロキが問いただしてくる。

 

「…詳しくは言えん。唯、あいつに殺された後にどうなるかは保証出来んという話じゃ。…恐らく、魂ごと消えてなくなるじゃろうな。死にたくなかったら手を出すのはやめとけ。」

 

恐らくシキは、アミッドに手を出す者には容赦はしない。事実手を出そうとした冒険者が瀕死の状態で運ばれてきたこともある。(ギリギリでアミッドが止めたらしい)たとえそれが神だろうと、殺すと決めたなら躊躇いはしないだろう。

さらに気がかりなことは、先日のステータス更新でのスキルの能力の追加だ。シキは勝手に更新されるものと勘違いしていたので、昨日になって初めてステータスを更新した。その際羊皮紙に書き写したステータスを思い出す。

 

 

シキ

 LV.2

 力 :I0→H178

 耐久:I0→I36

 器用:I0→G242

 敏捷:I0→G261

 魔力:I0

 千里眼:H→D

 恐怖耐性:A→EX

 痛覚耐性:EX

 

 ≪魔法≫

 

 ≪スキル≫

 【直死の魔眼】

 ・"死"を視覚情報として捉えることが可能

 ・"死"の概念が無いもの、"死"を理解出来   

  ないものは見ることが出来ない

 ・格下であれば見ただけで殺すことも可能

 ・威圧、魅了の相殺

 ・発動時、器用と敏捷のステータス上昇

 

 【霊核御手】

 ・常時発動可能

 ・視界内の物体の掴み取りが可能

 ・実体を持たないものでも可

 ・投擲に対して高補正

 

 

アビリティの数値自体は2週間程更新していなかった分、溜まっていた経験値が加算されただけなので特に問題はない。ただ、発展アビリティの上昇具合とスキルの追加効果が気になるところだ。千里眼がHからいきなりDまで伸びている。加えて威圧、魅了の相殺。恐らく今後シキには神威が通じないだろう。威圧が通じなければ、力を封じられた神達に成すすべはない。

 

ディアンケヒトの発言を疑うような声もいくつか上がるが、最終的に今日一度会いに行くことに決めたらしい。話が落ち着いたところで命名に入る。

 

「髪の色とかは極東の子みたいだし、それっぽい感じの名前がいいな。」

 

「さっきのディアンケヒトの言葉通りにいくなら、【黄泉瓦解(ハデスブレイク)】とか?」

 

「こっわ、死後の魂を許さない的な?」

 

「医療派閥でその名前はやばいだろ。ハデスに怒られるぞ。」

 

「【神殺し】」

 

「いやいや、殺してないから。」

 

先程の忠告が尾を引いてるのか、それともシキの容姿が気に入られたのか、割りと無難な名前が飛び交う。駄目押しに、変な二つ名を付けたらポーションを売らないと脅せば、僅かにいたふざける神もいなくなった。真面目に考えだしたようなので、口出しせずに放っておく。

 

しばらくして、ようやくまともそうな二つ名に決まったところで切り上げ、そこで解散となった。

 

帰ってきたシキになんと言われるかわからんが、他の痛い例と比較させればどうにかなるだろう。【幼女堕とし(ロリコンバット)】なんかよりは遥かにマシの筈だ。

 

 

 

 

シキ Lv2 所属:ディアンケヒトファミリア

 

境界切断(ボーダーデモリッション)

 

 

 

 

…やっぱり怒られた。

 

 




ネーミングセンスが皆無で申し訳ない…。
いつの間にかお気に入り登録者数が凄いことになっててびっくりしました。不定期になりますが、これからも頑張ります。
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