聖女と直死


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作:あるけ〜
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フィン・ディムナ


ロキファミリアの3人にあってから4日後、唐突にフィン・ディムナがディアンケヒトファミリアのホームを訪ねてきた。

今日はダンジョンに潜らず治療院の手伝いの日だったため、荷物を運んだりポーションの作り方を学んだりと、中々有意義な時間を過ごしていたのだが、うちの団長が言うにはシキに用があると話してるらしい。

 

「…何かあったんですか?」

 

横で一緒にいたアミッドに心配される。最近ダンジョンばかりで一緒にいられず、今日は一日傍にいるつもりだったのだが、呼び出しに応じない訳にはいかない。

 

「大丈夫だって、心配ない。」

 

嘘だ。滅茶苦茶不安です。え、この間なんかまずいことしたかな。世間話しただけだと思ったんだけど。

 

応接室に入るとフィンさんが座って待っていた。

 

「やあ、4日ぶりだね。会えて嬉しいよ。」

 

爽やかな笑顔でそんなことを言ってのける。一体何人の女がこの顔にやられたのか、想像するだけで恐ろしい。

引きつりそうになる顔を抑え、返答する。

 

「どうもフィンさん。今日は一人ですか?」

 

「敬語は不要だ、フィンでいいよ。冒険者同士気楽に話そう。今日は3日後の遠征に必要なポーションの手配と、君にお願いがあって来たんだ。」

 

「…お願い?都市最大派閥のロキファミリアがレベル2のガキにお願いすることなんてあるのか?」

 

気楽でいいと言われたため、遠慮なく普通に話す。経験上、変に遠慮すると相手側が困ることが多い。それに昨日から思っていたが、この人意外と気さくなタイプだ。というかすごい話しやすい。

 

「この場合君の言葉を借りると、ガキだから頼みたいことなんだよね。」

 

「ガキだからねぇ。ガキに頼むっていったらガキについてしか思い浮かばないなぁ。」

 

「察しがいいね。僕たちが遠征に行く1週間の間、是非ガキの面倒を頼みたいんだ。」

 

「ガキの面倒?天下のロキファミリアが他派閥にガキのお守りをさせるのか?」

 

「生憎うちにはガキがあれしかいなくてね。いい歳したおっさんに頼むわけにはいかないからなぁ…。せっかくだからガキ同士仲良くしてもらおうと思ってね。」

 

「おいおい、ひでぇ言われようだな。見た目だけならそっちの方がガキっぽいだろ。」

 

「はははっ!そんなことを言ってくるのは君くらいだよ。内心は知らないけどね。」

 

軽口を叩いて笑っていると、突然扉を勢いよく開けてディアンケヒトが入ってくる。

 

「さっきからガキガキうるさいぞ‼︎このクソガキども‼︎」

 

 

「「手前に言われたくねぇよ。」」

 

 

…老神が出ていき、扉を閉める。

 

 

「おっといけない。いやぁ、いいね君。思わず素で喋りかけたよ。こんな立場ともなると皆気を使うし、日頃の態度も意識しないといけないからね。気兼ねなく話せる人ができて嬉しいな。」

 

「こっちも子供扱いしてくるやつが多くて普通にしづらいからお互い様だよ。見た目の印象がそんなに大事かね?」

 

「そうだね…。君から見て僕は何歳くらいに見えるかな?」

 

「さぁ?30代前半ってところじゃないか?」

 

見た目は子供、中身は親父ってか?そのうち眼鏡でもかけて「あれれ〜?」とか言ってきそうだ。

 

「正解!良くわかったね。もうかなりのおっさんさ。若さが羨ましいよ。」

 

「昨日の3人の中では一番歳下だろあんた。いいじゃないか。ありがたくショタじじいの名を頂戴しとけよ。」

 

「それは困ったものだね。早いところ嫁探しをしないとまずそうだ。」

 

やはり気が合ったようですっかり仲良くなり、楽しく談笑したところで話を戻す。

 

「で?どんなやつなんだ、面倒を見て欲しいってのは。」

 

「7歳の子でね。名前はアイズ。両親がモンスターに殺されて、うちで引き取ることになったんだ。」

 

「冒険者になったのは自分の意思か?…唯のモンスターって訳じゃ無さそうだな。大方復讐ってところかね。」

 

わざわざ都市最大派閥が引き取ったんだ。両親も只者じゃないだろう。

 

「…あぁ、およそ人に言いがたい運命を背負っている。恩恵を刻んでからもう半年だけど、目を離せばすぐにダンジョンに行こうとするし、モンスターとの戦闘を行う。入った当初よりはマシになったけど、僕らの指示もあまり聞かないね。どうも、強くなることに固執しているみたいだ。」

 

「あんたらが厳しくて嫌になったんだろ。そのぐらいと年齢になれば、自分の思い通りにいかないとイライラするものさ。…依頼としては何をすれば良い?流石に常に面倒を見ろというのは無理だぞ。」

 

「流石にそこまで言うつもりはないよ。ダンジョンにいる時に無理をしないように見張ってくれればいい。出来ればホームに連れ戻してくれればありがたいけど。」

 

「成る程、お目付役ってわけね。戦闘狂の相手をするのは面倒だな。」

 

「…シキ、引き受けてくれるかい?」

 

「おいおいフィン、ここには俺に依頼をしに来たんだろ?対価があるなら依頼を受けるのは当然だね。」

 

「?対価について話した記憶はないけど?」

 

「何、ロキファミリアの団長様とお友達になれて、期待の新人のお目付役だ。充分だろ。今後ともうちのファミリアを利用してくれるなら言うことは特にない。パーティーメンバーは俺も探してたしな。」

 

それに同年代の友人が出来るのはありがたい。そのうちアミッドにも紹介しよう。

 

「…ふ、やっぱり君とはいい友人になれそうだ。よろしく頼むよ。3日後の遠征に行くときに連れてくるから、ダンジョン入口の広場で待っていてくれ。」

 

「わかった。毎日無事にホームへ帰すと約束する。」

 

「ありがとう。これで僕達も安心して遠征に向かえる。…それにしても、そこにいる彼女はどうかしたのかい?」

 

「ん?あぁアミッドか。どうした?」

 

扉の隙間からこちらを見ていた少女がビクッと身体を震わせると、おずおずと中に入る。

 

「…シキ。今のは…」

 

「あぁ、しばらくこの人のところの団員とパーティ組むって話だよ。一週間くらい治療院の方は手伝えなくなるから爺さんにも伝えておかないと…」

 

「私も連れてってください。」

 

その発言にフィンとシキの動きが止まる。

 

「…君も冒険者なのかい?」

 

「はい。回復役(ヒーラー)をしています。レベルはまだ1ですが…」

 

まさか、彼以外にもこんなに若い冒険者がいたとは…!もし彼女も来てくれるなら、

 

「でもアミッドお前、この間魔法使って精神疲労(マインドダウン)で倒れたばっかりじゃないか。無理する必要は…」

 

「大丈夫です。あれから毎日練習して、魔力の込め加減が調節出来るようになりました。…それに、シキが近くにいれば多分問題ありません。」

 

なんだその根拠のない自信は…ひょっとして、あの時手で隠してたスキルが関係しているのだろうか。

 

「いいんじゃないかい?回復役(ヒーラー)のメンバーが増えるなら僕も安心だ。戦いが得意じゃないなら、普段はサポーターとして素材や魔石の運搬をするという手もある。」

 

…確かに俺1人ではやれることに限界がある。万が一負傷でもした場合の対処方を考えていなかった。

 

「それに、あの子の友達が増えるならありがたい。やっぱり同性がいた方が気安く接せるだろうしね。」

 

「それもそうか…。ーん?同性って言った?ってことは女子かよ!」

 

聞いてないんだけど⁉︎

慌ててフィンの方を見る。

 

「あれ?言ってなかったっけ?そう、7歳の可愛い女の子だ。」

 

「…普通女の子の面倒を、知り会って2回目の男1人に頼まないだろ…。事前に知らないで会う羽目にならなくて良かった…。」

 

戦闘狂の幼女をどう面倒見ろってんだ。軽い気持ちで引き受けるんじゃなかった。

 

「…依頼料追加だ。深層で珍しい薬草があったら採取してきてくれ。定価の7割の値段で買い取ってやる。」

 

「そのぐらいなら許容範囲だ。シキと…アミッドだったかな?2人とも、よろしく頼むよ。」

 

「「あぁ(わかりました)。」」

 

「それじゃあ3日後にまた。そのうちこちらの主神も交えて話をしよう。」

 

「こちらこそ。ロキファミリアとはこれからも仲良くしてもらいたい。無事に遠征を終えることを祈ってる。今後も素材を売りたい時には是非利用してくれ。」

 

「ありがとう。…そろそろ日が暮れそうだ。失礼するよ。」

 

そう言って立ち上がると部屋を出て行く。

フィンがホームへ帰ると、部屋にアミッドと2人残される。

 

「でも急にどうしたんだ?ダンジョンに一緒に潜るなんて。何か爺さんに言われたか?」

 

「…知りません。」

 

「え?」

 

そっぽを向いてそんな言葉を口にする。

…なんか、ちょっと怒ってらっしゃる?何故?

 

「…私に相談も無しに、他の女の子とダンジョンに行こうとするなんて…。」

 

「お、おいアミッドさん?」

 

何か言ってるが良く聞こえない。今日は一緒に作業する予定だったのに、急に出来なくなって怒っているのかもしれない。

 

「…まぁいいか。パーティー組む時、頼りにしてるぜ?」

 

そう言って彼女の頭に手を乗せる。

今回の依頼、正直言ってあんまり役に立てる気がしない。女の子相手だったらアミッドが適任だろう。こっちはまず、コミュニケーションが取れるように努力しなければ…

 

思考を巡らせながらアミッドの様子を確認する。顔を俯かせたまま身動き一つしないので、徐々に不安になり始める。

 

「…ど、どうした?」

 

「―っシキの馬鹿!」

 

突然顔を上げて真っ赤な顔でそう言うと、そそくさと部屋を出て行く。

 

「…なんでさ。」

 

勢いよく閉められた扉を前にしばらく動けないでいると、扉が開いて別の人物(神物)が入ってくる。

 

「ようやく終わったかこのクソガキが。まったく勝手なことをしおって。で?何の用だったんじゃ。」

 

「…ロキファミリアのとこの子供のお守りだよ。3日後から一週間、俺とアミッドでダンジョンに潜る。治療院は手伝えなくなるからそこんとこよろしく。」

 

「はぁ⁉︎何を勝手に!認めんぞそんなこと。第一なんじゃその頼みは⁉︎ガキのお守りなどに付き合う筋合いは…」

 

「今後のロキファミリアとの友好関係の維持と深層の薬草を定価の7割で買い取る約束をした。」

 

「よくやったぞシキよ!」

 

…見事なまでの掌返しに溜息をつく。

 

「しかし、もう少しふっかけられたんじゃないかのう。せめて6割ぐらい…」

「友好関係の維持つってんだろ!ふっかけすぎて印象悪くしてどうすんだ!」

 

「何ぃ⁉︎儂は良かれと思って…」

 

「うるせぇな、お前と一緒にすんなジジイ!俺の交渉のおかげでどれだけ利益得てると思ってんだ!」

 

ヘファイストスや今回だけでなく、空いた時間で団長とやった他ファミリアや商会などとの交渉でも、一見フェアに見えてこちらに利益の出る条件を飲ませることに成功している。

 

「やかましい!それについては認めるが、儂がするはずだった交渉に勝手に割り込んだことを忘れたとは言わせんぞ!」

 

「過去の商談の履歴見たぞ⁉︎あんたが足元見過ぎて失敗した商談がいくつあると思ってんだ!団長がすげぇ苦労してたぞ。ヘファイストスさんだって嫌がってたし、いい加減その考えを改めろ!」

 

 

目の前で喚くジジイに機嫌を損ねた幼馴染み、いまだ正体不明の戦闘狂幼女。

 

ーとりあえず今日はもう寝よう。

 

明日のことは明日考える。

その姿勢は決して悪いものじゃない。…そう信じている。

 

 

…絶賛機嫌損ね中の少女が、部屋で大声で騒いでいる2人に雷を落とすまであと少し。

 




怒ったアミッドさんは絶対に可愛い。…キレた時はきっと滅茶苦茶怖いと思うけど。
次回は遂に戦闘狂幼女が登場。
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