「…なんじゃこの素材は…?」
「僕も見たことないですね…。」
あれから、ダンジョンで気絶したアミッドを背負ってホームに戻った。玄関でディアンケヒトと団長に会い、中に入ってから回収した素材を見せる。
「えっと…なんだったかな?爪が長い影みたいなモンスター、そいつの顔。レンズみたいで綺麗だったから持ってきた。」
「⁉︎まさかウォーシャドー⁉︎どこまで潜ったんだ君は⁉︎」
「おわ!急にデカイ声出さないでくださいよ。安全面を考慮して5階層までしか潜ってないですって。」
「5階層じゃと⁉︎初日からなんてところまで潜ってるんじゃ!」
「ウォーシャドーは6階層以降に出現するはず…。まさか、階段手前まで降りたな?」
「だからアミッドが気絶することになるんじゃ!無理させおって!」
「おい待ってくれよ爺さん。アミッドが気絶したのは魔法を使ったからで…」
「彼女の魔法を使ったということは、どこか怪我をしたということだね?」
「何〜⁉︎怪我をするようなことをしたのかお前は!あと儂は爺さんじゃないわ!」
「儂つってんだろうが!ただ軽く切れただけですよ。いいって言ったのに聞かなくて…」
「知らん!お前の監督責任じゃ!飯はやらんぞ!今日は外で食ってこい!」
「それ作ったの僕なんですけどね…。」
「はぁ⁉︎ …わかったよ。じゃあちょっくら行ってきますね。支払いはこれで、」
「ーん?なっ!おいこら返せ!それは儂の財布じゃ!」
「必要経費は払ってくれるんでしょう?主神命令なんだ。食事代くらい出してくれるよな?」
「ふざけるな!それは今夜儂が酒を飲むのに使うんじゃ!」
「あーあ、ダンジョン探索疲れたなー。今夜は目一杯酒でも飲んでゆっくりしようかな。」
「5階層程度でお前が疲れる訳ないじゃろ!二桁になって間もないようなガキに酒なんて飲ませてたまるか!」
「お、今5階層くらい問題無いって認めたな⁉︎ほら、これまでの理不尽な言葉の暴力について謝罪しろよ。じゃないとこの財布の中身全部俺の武器代に変えてやる。よかったなー、眷属の生存率が上がるぜ?ほら、喜べよ。大事な子供が元気に生きられるんだ。ありがたいことだろ?」
「やかましいわ!いいからとっととそれを寄越せ!」
「いい加減にして下さい‼︎ 店まで聞こえてます‼︎」
扉が勢いよく開き、見知った顔が飛び出す。
「あ、アミッド、起きたのか…?」
「お、おぉ、よく無事じゃったの…?」
さっきまでの勢いは何処へ消えたか、焦ったように2人揃って声をかける。
ーあ、やばい。
普段冷静な人程怒ると怖いというが、彼女は怖いというより、
「二人とも、そこに座りなさい!」
「「は、はい‼︎」」
逃げられないのだ。瞬時に姿勢を正し、仲良く並んで正座する。団長が横で苦笑するも、とばっちりを受ける前に退散し、他の団員もそわそわしながらも扉の隙間から様子を確認する。2人が何やら言い訳をしながら、最終的には責任のなすりつけ合いをし始める。目の前の少女の顔が引きつってることに気づかずに…。
その日、ディアンケヒトファミリアのホームに、少女の雷が落ちた。
「まったく、お前のせいでとんだとばっちりを受けたわい。」
「誰のせいだ誰の。」
軽口を叩いた後、会話を戻す。
「ーそれで?この素材、どうする?」
「うちで使えないこともないが、生憎品質の良し悪しでどうこうなる商品は少ないからな。他のファミリアに売った方がよっぽど金になる。」
「そうか…。なら明日の朝、ヘファイストスファミリアに行ってくるか。…上手くいけば本人との交渉に持っていけるかもしれない。」
「上手い具合に高く売れよ?良い収入源になるかもしれんからな…。」
「「フッフッフッフ…」」
金の話になると気が合う2人である。
「それとは別に、話がある。」
「…アミッドのことじゃな?」
「あぁ。」
一度の魔法の使用で精神疲労。初めてだったからでもあるだろうが、今後ダンジョンで活動するなら魔力が足りない。というより、一度の魔法に込める魔力が調節出来ていない。それの練習をしなければまともに使うのは難しいだろう。回復魔法の使用なら、地上でも充分可能だ。わざわざ潜る理由はない。
「しばらくはダンジョン探索に行かせる気はない。好きにしろ。」
「…よろしく頼む。」
「何、あれはいずれオラリオ一の治癒術師になる。当然のことじゃ。」
「あぁ…。新しい素材と薬草、期待しとけよ?爺さん。」
「やかましいわ、クソガキが。」
夜の空を見上げる2人の影は、まるで星を探す親子のようにも見えた。