あっという間だった。
イヤほんとに。
私こと島津識は、駅のホームで訳もわからず後ろから突き飛ばされたと思ったら気づけば此処にいた。最後に見たのは突っ込んできた電車のライト。
だからあれほどホームにホームドアを付けろと言ったんだこのバカタレ‼︎と思いながら、先月父親とそのことについて議論したことを思い出す。どうか俺の死が今後に役立つ様に頼んだぞ親父…。
「で、俺どうなるんですかね?」
俺死んだと思ったんだが。まぁ、それを知覚してる時点で異常ではあるか。とりあえず目の前で座っている綺麗な女に聞いてみる。
イヤだって明らかに何か知ってるでしょこの人。いや、俺の予想だと人じゃないけど。
「先程の事故で貴方はお亡くなりになりました。短い生ではありましたが貴方の様な人材が命を落とすことを残念に思います。」
やっぱり神か何かか。
「いや、社交辞令とかはいいんで、ほんと。俺をどうするつもりですかね?」
別の世界に行って何かしてこいみたいなのは勘弁してもらいたい。まぁこのまま無に還れ、とかよりはマシだけどね。でも俺ってば唯の一般人な訳で?魔王倒せみたいなこと言われてもマジ無理なんでほんとそこんとこよろしくお願いいたいんですけど……
「貴方がいた地球ではない世界に行ってもらいます。オラリオという迷宮都市があるのでそこを目指すと良いでしょう。ですがそんなに身構える必要はありません。地球の人間がそこに行くこと自体が重要ですので、そこで貴方が何をしようと問題ありません。
それと、転生といった形になるので一時的に記憶に関しては消させてもらいます。」
なるほど、不足している魔力か何かを補充するのが目的なのだろうか?よくわからないが、別にその辺りは興味も無いので掘り下げる気はない。記憶についても仕方ないだろう。といっても何もなしに行けと言われてもハードルが高い。せめて2回目くらいは老衰で死にたいものだ。
「そうですか…。でしたら何か要望があればスキルとして発現させましょう。」
それはありがたいな。
まぁとはいえ、別に俺TUEEみたいなのをしたい訳じゃない。迷宮都市というからにはダンジョンとかあるんだろうか?
詳しく聞くと、その都市には所謂ファンタジー系の亜人やエルフの他に天上の神達が暮らしてるらしい。
え、何それ。急に帰りたくなってきた。
どうやら神の恩恵とやらを与えることで人は力を得て冒険者になるんだそうだ。人にステータスを刻むってことか。ダンジョンのモンスターが持つ魔石やアイテムを換金して生計を立てている人が多いんだとか。
当面は金稼ぎにダンジョンかな?
ーどうしようか。
戦闘なんて以ての他喧嘩もロクにした事が無い。俺TUEEするつもりはないと言ったが、それなりに何か貰っておかないとホント死ぬ。
「じゃあとりあえず、恐怖と痛みに対する強い耐性が欲しいです。」
だって血の出るような怪我なんて慣れてる訳無いし、痛みでショック死するなんてことになりかねない。モンスターとか怖いし正直まともに見たくない。
ーでもどうしたものか。一度の攻撃で敵を殺せるような何かが欲しいとは思うが、あんまり目立ちたくないし、汎用性のあるものにしたいのが本音だ。
あ、そうだ。
「じゃあ……。」
死ぬ前に最後に読んだ本に出てきた能力を口にする。
「それでは、貴方をこれから下界に送ります。良い人生になるよう、お祈りしております。」
そう言うと同時に、俺を眩い光が包む。……