かみ合わぬ兵庫知事の会見 文書問題への対応、一貫して「適切」
斎藤元彦・兵庫県知事が県議会の不信任決議を受けて失職し、出直し知事選で再選されて1年がたった。記者会見で政策については歯切れ良く答える斎藤氏だが、自らを含めた疑惑を告発した文書への対応を巡る質疑などでは紋切り型の回答を続けている。記者会見の現場を報告する。 【写真まとめ】再選を果たして県庁に登庁する斎藤元彦知事 「適切、適法、適正に対応している」 斎藤元彦知事は再選から1年が過ぎた19日の定例記者会見で繰り返した。 ただ、質問は県の対応についてではなく、公益通報者保護法の解釈を尋ねていた。同法は告発者への不利益処分を防止する措置を求めている。その場合、組織内部の窓口や行政機関への通報に加え、報道機関などに宛てた「3号通報」の告発者も対象に含まれるかどうか――。その答えが「適切」では議論がかみ合わない。 ここには斎藤氏らの疑惑が文書で告発された問題が横たわる。 文書は複数の報道機関にも郵送されたが、斎藤氏は作成者を捜し出すよう命じ、告発内容の真偽を調べる前に懲戒処分した。県の第三者委員会は文書は公益通報にあたるとし、県の対応を「違法」と結論付けている。 だが、斎藤氏は第三者委の報告書が提出された後の3月、「(保護対象は)内部通報に限定されるという考え方もある」と発言。4月に消費者庁から「国の見解と異なる」と指摘を受けた。斎藤氏は6月の県議会で、同じ月に成立した同法の改正などを踏まえて3号通報も含めた保護体制の整備を進めると答弁したが、3号通報も含めた告発者の保護は改正前から同法で求められているというのが消費者庁の解釈だ。 文書告発問題の対応を「適切」とし続けている斎藤氏。再選後の2024年11月27日~25年11月11日までの計42回の定例会見で、同問題や知事選の対応などの質問で「適切」という言葉を使った回数は少なくとも241回に上った。 その数は、文書告発問題の第三者委が報告書を発表した3月下旬以降、大幅に増えている。フリーランスの記者の質問に対してはさらに定型的回答の多さが際立ち、質問と回答がかみ合わず質問者が言葉を荒げる場面も相次いだ。しぶとい追及を「いずれにしましても対応は適切」と押し切る場面も多く、こうした文脈で「いずれにしましても(いずれにしても、を含む)」という言葉を発した回数は79回だった。 だが斎藤氏を支持し、定例会見のネット中継はほぼ毎回見るという市内の70代女性は「知事を陥れるための質問を繰り返す記者が悪い。同じような質問をするから知事もそう答えているだけで、もっと政策についての質問をすればいい」とかばう。確かに斎藤氏は政策課題には質問意図をずらさずに答える。19日の会見でも、県西部のカキの不漁について、漁業者支援策を12月の県議会に提案する補正予算案に盛り込む方針を明言。東北を中心に相次ぐクマ被害への対策についても、「銃の免許所持者の数に対して狩猟者登録が伸び悩んでいる。狩猟体験や啓発を通じて登録者を増やしていく」とすらすらと答えた。 今月の会見で定型の回答の多さを問われた斎藤氏は「自分が答えられることを答えられる範囲できちっと答えさせていただいている」と反論したが、同じ日に県庁前であった抗議活動では「ちゃんと質問に向き合って」という声も上がっていた。今春にこの抗議活動を始めた市民活動家の難波文男さん(43)は「自分に都合の悪いことだけ耳をふさいでいる。さすがに斎藤さん自身も今のやり取りはおかしいと思っているはず」と話す。 斉藤氏には自らが2期目のスタート時に掲げた「丁寧な対話」が問われている。【稲生陽、山田麻未】