どうして私たちはこれほど冷淡になってしまったのか。再び能登へ。珠洲で開催中の展覧会「アウトサイド」と11/24ライブについて。

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2024年の春、工藝の街として栄えた輪島で演奏の機会を頂いて目の当たりにした光景を、生涯忘れることはないだろう。

大石可久也氏による美しい絵本「あさいち」の中で、ありし日の姿を垣間見ることが出来る活気に満ちた朝市通りはまるで戦場のごとく焦土と化したまま捨て置かれ、かろうじて燃え残った鉄骨の周囲には漆器の破片が散らばっていた。最低限の食糧配給さえ滞る中、崩れかけの自宅に放置された人々が、私と友人の演奏に耳を澄ませ、様々に言葉をかけてくださった。

2024年の元日に発生した能登半島地震の直後から「ボランティアは不用意に能登へ向かうべきではない」「過疎地に復興は要らない」などの言説が飛び交った。これは13年前の3.11震災時とはかけ離れた反応だった。当時、全国で広く用いられた「絆」「がんばろう」「食べて応援」といった掛け声の欺瞞性や軽薄さが批判される局面もあったが、とうとう日本人はそんな軽い励ましすら口にするのをやめてしまったのだ。

そして能登の現実から目を背け、口を閉ざした私たちは、◯◯◯ファーストといったカジュアルな物言いで命の選別を肯定し、世界中で吹き荒れる排外主義的ポピュリズムに共振しつつある。

今月から珠洲市で開催される本展は、筆者から見れば十分に当事者である石川県出身者、移住者混成の主催チームによって「アウトサイド」と名付けられたが、それに添って言わせて頂けるならば、今こそアウトサイドの声と、インサイドの声が衝突し混ざり合う地点に立ち、そこに生じる不協和音とハーモニーに耳を澄ませたい。私たちが知らず知らずのうちに立ってしまっている場所について、そして、これから何処に立つべきなのかを知るために。分断を強いられた世界にあっても、手を繋ぎ、声を掛け合うことや、ありとあらゆる架橋の試みを、あきらめてしまわないために。

能登の美しき鬼瓦たちは、庇護すべき家族を抱き留めきれずに崩れ落ち、慈悲深い表情のまま、鬼の涙を流している。

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追記: 上記は先月、能登に赴いた際に瓦バンクプロジェクトおよびアウトサイド主催チームからリクエストを受けて準備した文章で、既に幾つかの媒体に掲載されているかと思いますが、こちらにも転載させてください。
被災し倒壊した家屋から救出された美しい能登瓦と、思いがけない形で向き合う機会を頂きましたが、明後日11/24には珠洲の展示会場から徒歩10分ほどのガレージで、演奏もさせて頂きます。
ぜひ遠方の方もこの機会に足を運んでくれたら、皆で語り合えたら嬉しいです。
これまで陸路でしか行ったことがありませんでしたが、今回やむを得ない事情で羽田から能登空港を目指すことになりました。このルートなら今から突然、能登を目指したくなった方でも間に合いそうです。


◉美術手帖に、本展の開催に至った経緯なども含めた取材記事が載っていました。
https://bijutsutecho.com/magazine/news/report/31676

◉ 瓦バンクプロジェクト
公式ウェブサイト:https://kawarabank.org/#home

展覧会「アウトサイド」七尾旅人ライブ
日程:2025年11月24日(月・振替休日)
時間:14:30開場/15:00開演/16:00終演予定
場所:石川県珠洲市飯田町13-43
※海浜あみだ湯から徒歩約10分

観覧無料

定員は40名程度を予定しています。椅子のご用意はありませんので、床にお座りいただくか、折り畳み椅子をご持参ください。屋内ですが、気候によっては冷え込む場合がありますので、防寒対策のうえお越しください。
できるだけ多くの方に観覧いただきたいと考えておりますが、会場の都合により入場を制限させていただく場合があります。あらかじめご了承ください。

<バス>
金沢駅西口から珠洲までは北陸鉄道の能登方面特急バスが運行しています
金沢駅西口発【7:15、10:20】の便をご利用いただくと、ライブの時間に間に合います
珠洲発の最終便は【16:35】となりますので、ご注意ください
当日の運行状況については北陸鉄道ウェブサイトをご確認ください

<車>
珠洲市のご厚意により、下記の駐車所をご利用いただけます
・道の駅 すずなり(石川県珠洲市野々江町シの部15)
・総合病院駐車場(石川県珠洲市野々江町1-1)

◉展覧会「アウトサイド」
会期:2025年11月11日(火)~12月16日(火)
会場:海浜あみだ湯(石川県珠洲市野々江町ナ部5番地3)
開場時間:14:00-21:00
閉場日:水曜・木曜
開場時間・閉場日は、海浜あみだ湯の営業時間・定休日に準じます
観覧料:無料 *銭湯の利用には別途入浴料がかかります
主催:一般社団法人瓦バンク
出品作家:山本基、七尾旅人、仮( )-かりかっこ-、宮崎竜成、大和楓、池田杏莉

瓦バンクは、坂茂建築設計および坂氏が代表を務めるボランタリー・アーキテクツ・ネットワークと協働しながら、震災後から約1年5カ月の間に2万枚もの能登瓦をレスキューしてきた。現在は、回収した瓦を新しい建物に再利用するだけでなく、能登の文化や産業の歩みを象徴する素材として位置づけ、その中に新たな価値を見出そうとしている。その活動の一環として、本展「アウトサイド」を開催する。

イベント公式インスタグラム:https://www.instagram.com/outside.exhibition/

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七尾旅人 noteでの記事は、単なる仕事の範疇を超えた出来事について、非力なりに精一杯書いています。サポートは、問題を深め、新たな創作につなげるため使用させて頂きます。深謝。

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