デフ界唯一、もうひとつの「日本代表」 男子円盤投げ・湯上剛輝が金
東京デフリンピック第10日は24日、駒沢陸上競技場で男子円盤投げ決勝が行われ、デフ世界記録保持者の湯上剛輝選手(32)=トヨタ自動車=が金メダルを獲得した。
デフの枠にとどまらず、健聴者も含めて世界のトップレベルで争う実力者が、貫禄の金メダルを獲得した。
3投目まで思い描いた投てきができず、首をひねった湯上選手は、自分の投てきフォームを見直した。下半身を含め、体全体の力を円盤に伝えるために「(投げる瞬間まで)上半身をあえて止める」ように意識を変えた。
迎えた4投目、地面に落下するまで円盤を見届けた湯上選手から、この日初めて小さくガッツポーズが出た。58メートル93のデフリンピック新記録が生まれ、金メダルを決めた一投になった。
湯上選手が今年4月に出した自己ベスト「64メートル48」は、単にデフ世界記録というだけではなく、健聴者も含めた一般の日本記録でもある。
9月に東京で開かれた世界選手権も、デフアスリートとして唯一、日本代表に選ばれた。デフリンピックとは違い補聴器の使用も可能だが、「(周囲の音が聞こえずに)体の感覚に集中しやすいのは、ほかの人にない武器」と、あえて人工内耳を外して臨んだ。
デフリンピックは2017年のトルコ大会で銀メダルを獲得したが、22年ブラジル大会は日本選手団からコロナ陽性者が続出し、大会途中で出場を辞退した。優勝候補として迎えた今大会は世界選手権とは違う重圧もあったが、「リベンジ」の気持ちで臨み、最高の結果をつかんだ。
「聴覚障害者のヒーローになりたい」と何度も口にしてきた。自分の活躍で、聴覚障害者の子どもに夢と希望を与えることをずっと目指してきた。金メダルという一つの形を示したが、その大きな夢への道はまだ途上だ。競技者として、挑戦は続く。【川村咲平】