<社説>導水管破裂で広域断水 水の安全 政府が責任持て


<社説>導水管破裂で広域断水 水の安全 政府が責任持て
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 恐れていたことが起きてしまった。沖縄本島北部のダムから中南部の浄水場に水を送る、県企業局が管理する導水管が大宜味村内で破裂し、17市町村で断水が発生する見込みだ。早急に復旧を図るとともに、今後も起きないよう対処を急ぐ必要がある。

 水は生活、産業の命綱だ。そして、安全で安価でなければならない。沖縄は、河川の規模が小さく取水量が限られるため、本島北部のダムに多くを依存している。送水管が長くなり、ポンプなどの施設も多く経費がかかる。

 渇水の懸念が常にあり、さらに米軍基地が原因である蓋(がい)然(ぜん)性が高い有機フッ素化合物(PFAS)汚染の問題もある。県民は水を巡り三重苦、四重苦を強いられている。県が努力するのはもちろんだが、基地問題も関わる以上、政府は積極的に財政支援すべきである。

 上下水道管の老朽化は、全国的な問題である。埼玉県八潮市で今年1月、下水道管の破損が原因で大規模な道路陥没が起きた。京都市では4月、上水道の鋳鉄製管が破損し道路が冠水する事故が起きた。県内でも昨年1月、うるま市で、敷設から48年たった導水管に穴が開き、工業用水が断水となり、復旧まで10日を要した。

 政府は、41都道府県の調査で下水道297キロで陥没リスクがあるとしている。県内では北谷町で68メートルが「緊急度1」と判定された。破損のリスクが大きい鋳鉄製の上水道管の全国総延長は1万キロと推定されている。政府は責任をもって対処すべきだ。

 沖縄では、企業局が運営する導水管・送水管の総延長は712キロあり、その3割以上が法定耐用年数の40年を超えている。今回破裂した導水管も58年たっていた。また、県・市町村が管理する主要水道管(管路)は総延長2041キロあり、その約7割が耐震性を満たしていない。耐震化も待ったなしだ。

 これらの費用は沖縄振興公共投資交付金(ハード交付金)に頼ってきた。しかし、沖縄県の要望に対する措置率は、10年前は9割近くあったが、2017年度から減額傾向となり22年度以降は30%台にとどまっている。

 こうした中、企業局の水道用水供給事業は、24年度に22年ぶりに赤字となり、昨年10月から市町村への水道供給単価の段階的引き上げを始めた。企業局は、改定料金の48%を施設の修繕と耐震化に充てるとしている。物価高騰に苦しむ県民の負担がさらに重くなる。

 企業局はPFAS対策のために高機能粒状活性炭の交換などで年10億円をかけている。米軍が立ち入り調査を拒否するなか、原因が特定されていないとして防衛省が費用を負担しないのは理不尽だ。県民だけに負担を強いるのではなく、政府の責任で県民の水の安定供給、水の安全を保障すべきである。

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