「えしばっか〜のVol.6 in 東京体育館」出展における運営トラブルの経緯と消費生活センターからのあっせんを含む対応報告
はじめに
2025年10月5日に開催の「あきばっか〜の東京体育館」内サブコンテンツ「えしばっか〜のVol.6 in 東京体育館」で発生した運営トラブルをきっかけに、企業の対応、行政の限界、そして「推し活」における消費者の立場の弱さを実感するに至りました。
当記事では、その一連の経緯を一次資料に基づき整理し、同じ立場の消費者への警鐘として残します。
【当該イベント】
●「あきばっか〜の東京体育館」
●「えしばっか〜のVol.6 in 東京体育館」
※本記事は、2025年10月に発生したイベント運営トラブルに関する事実経過を記録・検証したものであり、特定の団体・個人を誹謗する意図はありません。
※内容はすべて、当時入手した一次資料・公式発表・行政相談記録に基づいています。公開の目的は、同様のトラブル再発防止と、推し活における消費者保護意識の啓発にあります。
1.この記事を書く動機
先に結論として提示しますが、この記事を書いた動機は大きく二つあります。
①同じくファンの立場の人に向けて:消費者目線で注意喚起したい
冒頭にも書きましたが、こういった体験価値の損失が起きた時、消費者の立場は弱いということを身をもって体感しました。どう心構えればいいか、いざというときどうしたらいいか?の一つの参照点としてのナレッジ共有を目指します。
色々やってみようとはしたものの、あくまで個人の力は弱いので、裁判でもしない限りは企業法人相手にできることは限られます。外から「見る目」を増やすこと、外圧をかけることくらいしか思いつかなかったのでこれを書きました。
私もまさか自分が今回のような事件の被害当事者になるとは思っていなかったので、見過ごすことが回り回って自分の元に返ってくる可能性を視野に入れて、自分の消費の在り方を考えるきっかけとしていただければ幸いです。
②「あきばっか~の」関係者に向けて:イベントの理念を自ら破壊していることに気付いてほしい
被害者として傷ついたこと以上に、私の怒りの核心(裏切りへの失望)はこちらにあります。
「あきばっか~の東京体育館」はオタク×ダンスの新たなカルチャーとして、A-POPダンスシーンが世に打って出る大きな一歩でした。
「あきばっか~の」は、「A-POPダンスバトル」は、オタクカルチャーを愛するダンサー(クリエイター・表現者)がプロアマ問わず戦う、最高のイベントです。私はカルチャーに対して、クリエイターに対して、リスペクトフルなイベントだと信じて参加を決めました。
でも、そのイベントで、よりにもよってオタクであり、クリエイティブ(表現)でイベントを盛り上げようと参加していたえしばっか~の出展者の権利を運営ミスで傷つけ、事後対応ではさらに尊厳を傷つけ続けました。
バトル参加者ではありませんし、ダンサーでもありませんが、自らの表現をこのイベントのために用意して、ダンサーを含む来場参加者を楽しませる側として臨んだ人たちが被害に遭いました。
属性だけ見れば、これは自らイベントの理念を破壊している自傷行為です。
意図がある・ないに関わらず、結果としてそのような構図になっています。
私はイベントの理念に共感して参加したため、イベントの企画・制作側にその観点が全くないということに根本的な危機感を感じたのも筆を執った動機になります。
2. 当日の経緯
※Xでの投稿を追っていただいていた方はここは飛ばして問題ありません。
【概要】
・2025年10月5日 東京体育館において開催された「あきばっか〜の東京体育館」において、私はアリーナ観覧権(Aチケットの権利)を出展料内に含むサブコンテンツ「えしばっか〜のVol.6 in 東京体育館」出展プランとしてイベントに参加しました。
しかし、現地で突然「そのリストバンドではアリーナに入れない」と運営により出展者全員がアリーナでの観覧を拒否され、混乱の中で事態が進行しました。
当日中に運営スタッフと複数回やり取りし、後日連絡を約束されましたが、返金・補償の約束・具体的な原因の説明もその場では得られませんでした。
【出展申し込み時の条件(サイト上にあった表示・現在は閲覧不可)】
ちなみに上記の認識でいたため、S席を希望していた私は実際に抽選に申し込んでいました。
結果落選しましたが、「落選したけどAチケットの権利はあるからまあいいか」と考え、売り子を頼んだ友人にも「Aチケットで入れるから申し込みはしなくていいよ」と伝えていました。
【時系列】
以下は当日リアルタイムでXに投稿した内容の再掲です。
①朝、「えしばっか〜の」の設営に入り出展料(Aチケット込)の7,000円を払う。売り子も別途同額を支払う。
②1回目の販売時間の終了後、アリーナに入ろうとするとアリーナ出入口スタッフに「そのリストバンドの色は入れません」と止められる。
③出展者管理スタッフに確認してもらい、「運営側で認識に齟齬があった」とお詫びされ、「確認します」と言いつつ中に入れてもらう。
④アリーナ内に入るが、アリーナ内では依然として「アリーナ立ち入りNG」のリストバンドとして周知されているため、場内スタッフに捕まる。
⑤さっきもその話をしたので再度確認して欲しいとお願いすると場内管理っぽいスタッフさんが召喚され以下のやり取り。
👤「我々(場内スタッフ)は今もう追い出さないですけど、2回目のえしばか販売時間の時に一旦出たらもう入れないようになります。という説明を後ほどえしばかの管理スタッフからします」
👤「そのリストバンドは本来スタンド席しか入れないんですけど、今もう入られてるんで出すことはしないです」
私「え、じゃあアリーナ出なきゃいいってこと?それ、チケットの料金体系としておかしいと思うんですけど」
👤「いや僕にそれ言われても困るんで」
私「じゃあどこに言えばいいんすか?」
👤「一番偉い人に言ってもらえれば回答されるんじゃないすかね」
⑥とりあえず予選はそのまま最後までアリーナで楽しく見てたら、運営より以下メールが来る。
⑦荷物も置きっぱなしで2回目の頒布時間が始まるため、えしばっか~のの自スペースに一旦戻り2回目販売中に以下メールを返信。
⑧⑤の話通り出展者管理スタッフから説明あるかと思いきや始まらない。
⑨予選結果発表が始まり、本選も始まるので痺れを切らして責任者を呼んで説明するよう求める。
⑩現場責任者が到着し、以下事情を説明される
・サイト上でもメールでも「えしばか出展にはAチケット相当の権利がある」と案内していたが誤りで本当はBチケット相当だった
・会場のレギュレーションとしてアリーナにご案内することはできない
・返金や補償については来週中にご案内させていただく
⑪当然納得いかないので、その場にいた出展者一同より更なる説明を求める。
※以下は口頭で行われたやり取りの概要です。
※記憶によるもののため時系列は順不同、その場にいた出展者たちで対応したため、質問者は筆者のみではありません。
・会場のレギュレーションって何?
(回答)普通のライブとは違うので会場内に入れる人数が厳密に決まっていて事前に会場とも協議しており、今から変えられない、人数以上に入れるとイベントが開催できなくなる恐れがある
・補償って何?
→確定したことは申し上げられないが、返金やプライズなど……
・口約束してて裏切られたので、それも口約束で信用出来ないんで一筆書いてもらえる?
→今フォーマットがないので難しい。書いたとしても効力に疑問がある。
・じゃあ責任者の名刺貰えます?
→自分のものは切らしているため、上長のものを持ってきます
→1枚だけ持ってきたので出展人数分コピーして?と言ったけど結局みんなで写真撮ることに
・こうしてる間に本戦どんどん過ぎているので補償が効かないんですけど
→申し訳ございません
・ていうかいつこの件発覚したの?
→1回目の販売時間が終わった後の最初の入場時(我々が入口で悶着したから気がついたってことっぽい)
・とりあえず連絡を待てばいいですか?
→はい。もし対応が決まらなくても来週中には一報入れます。
・アリーナには入れない、スタンドも今からだともう埋まってて後ろの方か立ち見になるんですけど
→自由席なので優先的に席をご用意するのは難しい
・(この時点で既に帰宅してたり2階席に行ってしまっていたえしばか参加者もいたため)既に参加者の中で情報に差があるのでまず補填してください
→そちらも合わせてご連絡いたします
3. 企業の対応と報告内容
【当日の夜、主催の株式会社アブストリームクリエイションより受信したメール】
これに加え、イベント終了後に事態を把握したオーガナイザーからも謝罪のポストがありましたが、一貫して「何が起きたか」の具体的説明はなし。
状況の把握が即時にできていないことが伺えます。
【10月8日、公式から報告が上がる】
3営業日ほど経った10月8日、公式サイト上に経緯の報告及び謝罪・補償に関するページが立ち上がりました。
株式会社アブストリームクリエイションによる謝罪・報告の要点は以下です。
■発生した問題
出展料7,000円には「あきばっか〜の」観戦チケットが含まれていたが、
公式サイトや案内では「Aチケット相当(アリーナ入場可)」と表記。実際は「Bチケット相当(スタンドのみ)」が正しく、
当日になって出展者がアリーナへ入れない事態が発生。この誤表記は開催当日に指摘されるまで主催側も把握できていなかった。
当日の謝罪メールにも誤解を生む文言が含まれ、混乱に拍車がかかった。
■原因(公式説明)
運営資料として「概要マニュアル」と「運営マニュアル」が存在。
誤記があったのは初期資料である「概要マニュアル」。
その内容をもとに外部公開情報が作られたため、誤った案内が出た。
後から作られた「運営マニュアル」には正しいBチケットが記載されていたが、公開情報の誤りに気づけず修正されないまま当日を迎えた。
問い合わせにも誤った「アリーナ入場可」と回答していた。
アリーナ人数は会場・関係各社・消防と厳格に協議されており、当日になって追加することはできなかったと説明。
■補填内容
出展料7,000円の全額返金(出展者+同行者)
・ISARIBIから返金フォームを案内有料配信の無償提供(ツイキャス)
・購入済みの場合は返金対応
■再発防止策(公式の方針)
マニュアル記載内容のチェック体制を強化
公開情報と運営ルールの照合フローを構築
当日の情報発信の指揮系統を整理し、誤情報発信を防止
社内の二重チェックに限界があるため、情報発信をグループ会社ISARIBIへ委託
出展者の観覧体験を考慮した運営設計を今後検討すると宣言
以上の報告を受け、補償内容はともかくとして、説明に納得がいかない部分があったため、筆者個人によりメールによる問い合わせを行いました。
4. 筆者からの指摘とアブストリーム社からの回答
報告が上がった直後に以下のメールを返信。
株式会社アブストリームクリエイション
ご担当者様
お世話になっております。
10月5日に開催された「えしばっか〜のVol.6 in 東京体育館」に出展した者です。
10月8日付で公開された「お詫びと補填内容に関してのご報告」につきまして、
拝読の上、以下の重大な矛盾点・説明不備・補償範囲の不十分さについて、
あらためてご回答をお願いしたくご連絡差し上げます。
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1. マニュアル構造と販売実務の整合性について
御社のご説明では、「概要マニュアル」にAチケット相当と誤記があり、それが更新されないままHPや募集ページに残っていたとされています。
しかし、この説明には根本的かつ看過できない矛盾があります。
■外部公開・募集・販売が「概要マニュアル」に基づいて行われていたのであれば、 当初からアリーナ入場人数の上限設計もAチケット人数を前提に行われるのが自然です。にもかかわらず「人数上限の都合でアリーナ入場が不可能」とされた点は、内部では早期からBチケット前提で設計していた可能性を示唆します。
■社内では「運営マニュアル」でBチケットが“正”として記載されていたにもかかわらず、外部への情報訂正が行われなかったことは、単なる誤記ではなく「正しい情報を把握していながら訂正義務を怠った」と解される重大な管理不備です。
■「本イベント申込ページではなく、あきばっか〜の公式ページにチケット詳細が記載されていたため誤記に気づけなかった」とする説明も不自然です。どちらのページも御社が作成・管理していた以上、両ページ間での内容差異を確認できなかった理由や、チェックフローそのものの不備について具体的な説明が必要です。過失については主語をぼかさずにご説明ください。
■また、「概要マニュアルの誤記に沿ってアリーナ入場可否の問い合わせに回答していた」との記載についても、その時点で運営マニュアルが既に存在していたのか/社内でBチケットが“正”と認識されていたのかが明確にされていません。どの時点で、どの部署・担当がどの情報を根拠に対応していたのかという時系列が不明瞭なため、誤情報と知りつつ案内を継続していた可能性すら否定できません。
つきましては、以下について具体的なご説明を求めます。
① 概要マニュアル・運営マニュアルの作成・更新・運用の具体的な時系列(作成日・改訂日・社内配布日など)
② 各マニュアルが社内で参照された期間と、問い合わせ対応時点で参照されていた資料
③ イベント申込ページと公式ページの記載内容の齟齬を社内で把握できなかった具体的理由とチェック体制
④ 社内でBチケットが「正」と認識された時期、およびその時点でなぜ外部への訂正・告知が行われなかったのか
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2. 人数バッファと会場協議の不透明さについて
ダンスバトル出場者については直前まで欠席の可能性およびキャンセル待ちが存在し、人数変動の可能性が見込まれていました。にもかかわらず、出展者分のアリーナ入場枠は最初から確保されていなかったとされています。
「数十人の追加が不可能だった」という説明は、そもそも出展者枠を含まない前提で協議を進めていたことを意味します。その場合、「Aチケット相当」として販売した行為と整合しません。
「いつ」「どのタイミングで」「どの人数を前提として」会場・消防・関係各社と協議を行ったのか、
バッファの考え方を含め、具体的な数値・時系列の開示を求めます。
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3. 補償範囲が実態に即していない件について
現時点で提示されている「出展料返金+配信無料」では、実際の被害は到底カバーされません。特に以下の点が考慮されていません。
・出展申込時点で「売り子1名の同伴と、その者へのAチケット相当の権利」が明記されていたにもかかわらず、それも履行されなかったこと
・売り子の中には遠方から交通費を負担して来場した方がいるなど、出展者本人に加えて売り子にも直接的な金銭的損害が発生していること
・誤った案内を信じたことで、別券種への応募機会や観戦体験の質において機会損失が生じていること
これらを踏まえ、同行者を含めた補償対象の拡大と、実損・機会損失への対応策について、再検討をお願いいたします。
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4. 当日現金徴収と補償遅延による心理的損害について
本来であればチケット販売サイト等を通じ、権利を事前に確約した上で安心して当日を迎えたかったにもかかわらず、御社の都合により「当日現金支払い」とされました(8月26日付ご案内メールより)。
当日現金を支払ったにもかかわらず、その日のうちに返金・補償の確約も得られず、3日以上経過した現在も個別の正式連絡はありません。
また、支払い後にサービスが提供されず、返金・補償の見通しも示されない状態が続いたことは、参加者に大きな不安・不信を与え続けていました。
これは契約履行の不確実性による精神的損害と捉えるべき事態です。
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5. 個別の正式謝罪が一切行われていない件について
10月5日深夜に送付された一斉メールを最後に、被害者個人に対して正式な謝罪・連絡は一切行われていません。
当日、現場責任者と会話した際、その場には出展者全員が揃っておらず、既に帰宅してしまった方、スタッフの案内に従いスタンド席に行ってしまった方などがおり、状況認識に差がある状態であったため、取り急ぎ事態の説明を被害者に対しいち早く説明するよう求めていましたが、それについての対応もありませんでした。その後の「報告」はWebサイト・SNS上での一般告知のみであり、個々の契約関係当事者に対する正式な説明や謝罪が行われていない現状は、誠意ある対応とは思えません。
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6. 今後の対応について
本件は単なる情報誤記ではなく、「正しい情報を知りながら訂正せず販売を継続した可能性」「契約内容と実態の乖離」「同行者を含む損害」「返金対応の遅延と個別連絡の欠如」といった、消費者契約法・景品表示法の観点からも重大な問題を含んでいます。
今後の信頼回復のためにも、以下について書面での明確な回答をお願いいたします。
・会場協議・人数設計・マニュアル改訂の具体的な時系列と責任所在
・誤情報認識後に訂正が行われなかった理由
・補償対象を拡大する方針の有無(同行者含む)
・当日現金徴収と補償遅延に関する御社の見解と対応策
・被害者個別への正式な謝罪・通知の実施予定
本件については、今後の対応次第で消費生活センター等への相談も視野に入れておりますが、
まずは御社の誠意ある説明と解決策の提示を強く期待しております。
何卒よろしくお願い申し上げます。
敬具
翌朝早々に返信があり、「5. 個別の正式謝罪が一切行われていない件について」については「すでにメールを送っている」との指摘がありました。
実際、個別連絡については私が見落としており、全体に公開(Xで告知)する前にサイト上の報告と同内容のメールが送られていました。
ただし、アブストリームクリエイションからと言いつつ、受信したことのない「http://isaribigp.net(ISARIBI)」のドメインから送られていたため迷惑メールに振り分けられていました。
相手が知らない連絡先から連絡する時は既知の連絡先から「送ります/送りました」の案内をするのが一般的かと思うので、そこについても改めてお願いし、全体へのリマインドをかけていただけたので、ここの「あきばっか~のスタッフ」による対応は非常に迅速でした。
で、その後、翌日の夜に正式に問い合わせへの返信がありました。
内容は以下。
「サイト上で報告した内容」以上の情報は出すつもりがない、という返事です。会社として顧問弁護士が入っている以上、法的な観点では隙が無く、想定の範囲内でした。
ただし、つらつらと既に出した情報を繰り返す(それを読んだ上で納得がいかないため問い合わせたにも関わらず)こと、それから最後に以下の文章が捨て台詞として入っていたこと、この時点で被害者感情を理解しているとは感じられなかったため、「真摯な対応」とやらを見るまではやってみよう、と腹が決まりました。
また、本件については弊社顧問弁護士にも相談のうえ対応をすすめております。貴殿からは消費生活センターへのご相談も想定されているとのご連絡を受けておりますが、消費生活センターをはじめ関係機関から問い合わせをいただきました場合には真摯に対応をさせていただきます。
5. 行政・弁護士の見解
私がとった行動は以下の3つ。
①地域の消費生活センターへ相談
②都の消費生活センターへ相談
③都の弁護士会への相談
前提として、私の目標は「補償の追加」ではありませんでした。
もちろんそこも期待できるなら考えましたが、どのみち体験価値の完全な補填は不可能です。
ここは別の文脈が乗りますが、私はアブストリーム社の所属アーティストを推しており、報告内にもあったように年間かなりの数の主催イベント・ライブに参加してはミスを目の当たりにし、時に巻き込まれてきたため、私の目的は「どうしたら体制として改善されるのか?」という一点でした。10月8日の報告では問題の核心にまでメスが入ったように見えなかったため、具体的な原因究明(経緯や資料の提示)を求めましたが、完全スルーに終わりました。
ここが難しかったところで、消費者センターを介した交渉というのは基本的に「補償に関する交渉」が想定されています。なので、私の目標は最初からズレており、担当者とのコミュニケーションはまあまあ難航しました。
とはいえ、得られた知見があったので以下にポイントをまとめます。
①地域の消費生活センターへ相談
ホットラインからではなく、直接近くの消費生活センターに電話しました。基本的に、居住地の管轄のセンターに連絡することになります。
電話すると記録のために「個人情報(氏名、住所、電話番号、性別、年齢、職業等)」「該当の事業者名」「具体的なトラブル内容」を聞かれ、対応の助言や消費生活センターで出来ることについて説明が受けられます。
大前提として、消費者センターには法的な強制力はないため、事業者に対して何かを指示したり、指導したり、介入したりする機能はありません。あくまで当事者自身での解決の助言がメインになります。
【消費者センターがしてくれること】
自主交渉の助言:
クーリングオフなど自分で対応できる方法があればアドバイス。
あっせん:
法的な指導権限や強制力を伴うものではなく、あくまで中立な立場で消費者と事業者の間に入って話し合いを手伝い、解決を目指すもの。
情報提供:
契約や商品に関する情報提供を行い、必要に応じて弁護士や司法書士などの専門家を紹介。
さらに話が拗れると裁判所での「調停=ADR(裁判外紛争解決手続)」に至るケースもあるとのことでしたが、そこは詳しく聞いていないので割愛します。
最終的には私の目的を理解していただいた結果、「あっせん」の手続きをとるに至りました。消費生活センターには被害者の代行をすることも、事業者に指示する権限もないので、あくまで私が事業者に対して行動するときに第三者として存在するのみになります。
流れは以下の通り。
・要望の書類を事業者の代表宛に送る(内容は消費生活センターの担当によるチェックが入る)
・書類が届く頃に消費生活センターの担当者より「こういう手紙が行きます」と事業者に知らせ(電話)を入れて「対応していただけますか?」と聞く
・事業者からの回答を消費生活センターの担当者がヒアリングし、私に報告
回答は次項にて触れます。
で、本当は行政によるある程度の強制力を期待していたのですが、行政を動かすにはいくつもハードルがあります。
消費生活センターそのものには強制力がないのですが、通報の記録は全国共通のデータベースに蓄積されていくため、「通報数を増やす」ことで間接的に行政に話が上がる可能性はあります。
この辺りは「8.それを受けての今後の筆者の対応予定」に後述します。
②都の消費生活センターへ相談
本来、消費生活センターの対応窓口は一つにすべきらしいのですが、①の地域の消費生活センターとのやり取りが難航していた内に都の窓口にも連絡しました。
こちらは話が早く、「消費生活センターでカバーできる範囲では対応が難しい可能性がある」「法的観点で弁護士に一度相談すべき」とのアドバイスを得て③の都の弁護士会の連絡先を紹介されました。
③都の弁護士会への相談
②の後すぐに連絡。弁護士が無料で15分程度相談に乗ってくれます。
要点を説明した上で目的(補償ではなく、体制改善のための情報開示)を伝えると、やはり難しいとのこと。
今回は既にチケットの全額返金を含む補償対応が既に示されているので、「追加の補償を目指して訴訟を起こし、その中で情報開示を請求する」等しなければ、社内資料として開示を拒まれたものを引き出すのは難しい。しかも時間もお金も労力もかかるので推奨できない。それはそう。
これも想定の範囲内だったので、考えていた妥当な落としどころ(今やっているようなネット上での開示と注意喚起)についても確認したところ、「問題ないと思いますよ」と助言をいただいたので①の地域の消費者センターによるあっせん→結果を観測→ネット上で報告、のこの形にすることにしました。
6. 消費生活センターを通した最終的なアブストリーム社の対応
10月29日付けで以下の書類を郵送しました。
内容は最初に私がメールで問い合わせた内容とあまり変わりないですが以下の通り。
11月4日に消費生活センターから連絡があり、アブストリーム社からの回答を報告されました。
結果としては「10月8日の公式報告内容以上のことはお答えできない」の一点張りでした。
メールでの問い合わせと結果が全く同じなので、検証の意味あったのか?と思いますが、これを「真摯な対応」と見なすのはさすがに難しい心情ではあります。
7. その後の企業対応
10月8日の報告で、会社の体制を含む抜本的な改善に努める方針が発表されましたが、その後も慢性的なミスが続いています。
大きいのはこれ。
販売時の条件をひっくり返したという点で、チケットトラブルとして今回の件と類似点があります。ざっくり言うと、以下の流れの事象です。
・「来場者限定特典付き」として前方指定エリア席を販売
・当日、該当者に特典の配布無し
・該当者からの指摘ののち、「特典ありは間違いでした」とのポスト→批判される
・「特典ありは間違いでしたと言うのが間違いでした」というお詫び書面がポストされる
・結果:特典(ブロマイドセット)を該当者に配布
・お詫びとご案内
— 株式会社アブストリームクリエイション (@abstreem) October 27, 2025
昨日10月26日に開催されましたREAL AKIBA JUNIORZ『TRICK&JUNIORZ』の
来場者限定特典に関し、公演後の当社の情報に誤りがございました。
お客様にご迷惑をおかけしましたこと、深くお詫び申し上げます。https://t.co/8xbOLY1QgB pic.twitter.com/ivMCvDzPAT
これに限らず、公演日時の誤植レベルの細かなミスも相変わらずあり。
ミスが多すぎて誰も全貌を把握できてないんじゃないかと感じます。
全部挙げていくのはもう無理なのでやりませんが、体感として「改善された」「変わった」と思っているファン(消費者)はあまり多くないのでは。
話を元に戻しますが、今回の「えしばっか~の」被害者に対する対応のオチとして極めつけはこれです。
お詫びの品としてアブストリーム社からの被害者宛に送り付けられてきたものが「粗品のしの貼られたとらやの羊羹(小型7本)、送り状・詫び状なし、事前連絡なし、店からの直送」でした。
私はこういう発信をしている以上、全ての補償を拒絶しているので受け取っていませんが、もし受け取っていたらこの記事を書く気力が砕かれていたと思います。
#あきばっか〜の東京体育館
— 遊兎《ゆう》 (@ffyou_rab) November 23, 2025
えしばっか〜の被害者へのお詫びの粗品が届いたとのことで、実物見せてもらいました(私は補償拒絶してるので受け取っていない)
・とらやの羊羹(小型7本)
・送り状、詫び状等の書面の添付なし
・店からの直送
謝罪対応として絶句するヤバさなので何がダメか書きます→ https://t.co/93HsB0EMxC pic.twitter.com/kvKaGp4ZGv
Xの方に書いたのでこちらに詳述するのはもうやめますが、企業の謝罪対応として、もはやていを成していないことがわかります。
8.今後の筆者の対応予定
既に徒労感がかなりありますが、他にもやっておく価値のある手段がありそうなので検討しています。
▼消費者庁の「表示・取引監視部」への情報提供
消費者センターとは別。消費者庁が事業者を直接監視する窓口です。
消費者庁は「景品表示法違反や誤表示」について、個人からの情報提供を受け付ける窓口を設けています。
継続的な「誤表示(表示の適正化の問題)」は景品表示法の監視対象として、個別トラブルでも、複数件の情報が集まれば調査対象になる可能性あります。
あとは先に述べた以下、各地の消費生活センターに報告を溜めていく手段。
▼消費生活センター経由での「PIO-NET」登録(相談実績がたまる仕組み)
各地の消費生活センターや消費者ホットライン(188)に寄せられた相談は、国民生活センターが運用する「全国消費生活情報ネットワーク・システム(PIO-NET)」に登録されます。
行政(消費者庁・自治体)は、この相談情報をもとに・注意喚起・業界への要請・調査・法改正の検討を行うという構造が説明されています。
まあ、いずれにせよ、私の調べた限りでは即効力のある方法はないです。
飛び道具としてSNSのバズ(炎上)・マスコミ取材・メディア報道などがありますが、あまり現実的ではない。
かと言って泣き寝入りするのは嫌、という当事者の方は上記の方法もあると覚えておいていただければ幸いです。
9. 補足観点:推し活におけるファンの扱われ方/謝罪の在り方
■推し活におけるファンの扱われ方
今回の件の発生から今に至るまでで、ちょっとだけ似ている事件が起きていました。ご存知の方もいるかと思いますが、ウマ娘のライブのフラスタ制作会社が納品不備多発で炎上した件です。
これも、「消費者が企業に一方的に契約を違えられる」「その日限りの体験価値を損失する」「推し活フィールド上の事件」という意味では類似の部分があるなと思って見ていました。ただ、こちらの件とは異なり、Cygamesはきちんと主催(発注者)として責任を取り、返金能力を失ったフラスタ社に肩代わりして、広範かつ消費者に寄り添った返金対応で逆に好事例としてニュースになっていますが。
推し活というフィールドでは、体験価値に重きが置かれることが多々あります。物ではなく、ライブやイベント等、その日その時間に得られる価値に消費者は対価を払っています。そうした場合、その価値が失われるとなると補填することが非常に難しい。今回の件で理解しましたが、補償についても消費者側から要求することは難しく、あくまで企業側の判断に一存します。
とはいえ、「(推し活における)ファン」というのはそもそも消費者の中でも最も御しやすい属性です。そもそも、「好き」という感情を人質に取られているので、批判しにくく、好意的に流れやすい。
Cygamesの好例を見ればわかる通りですが、どれだけ大きな事故が起きても、事後対応の誠実さがあれば、むしろ一転してブランド価値が高くなる場合も大いにありえます。
翻ってアブストリーム社の場合は、取り返せたはずの場面でみすみすファン心理を冷え込ませている現状について認識してほしいと願うばかりです。
■「謝罪」の在り方
「好き」という感情を人質に取られる、という話を出しましたが、こちらも根深い問題です。アブストリーム社の場合ですが、運営や会社のミスにより、出役である演者が直接謝罪するケースが多く見られます。
ファンにとっては慰められる一方で、被害感情の矮小化にも繋がりかねません。今回、私はそこで救われた部分もあるので一概には言えないものの。
「(口で・言葉だけで)謝る」という行為は加害側が簡単に楽になる方法でもあり、被害者に謝罪を受け入れさせること自体エゴに繋がります。(なので、あのお詫びの品の羊羹を「郵送で送り付ける(謝罪を拒否させない・被害者に問答無用で受け取らせる)」こと自体、問題がある……ということまで考えていたらこんな事態にはなっていないと思いますが)
かつ、ただ謝るだけでは問題の根本的解決には繋がりません。アブストリーム社の場合はここがすべてのコミュニケーションのズレになっていて、謝るだけで改善の様子があまり見られない(ミスが頻繁に再発している)ことがファンのフラストレーションにも繋がっていると思います。
本質的な「企業としての謝罪のあるべき姿」は「クライシスコミュニケーション」などについて調べるとわかると思いますが、「正確な事実開示 → 被害の認知 → 原因分析 → 補償 → 再発防止策」が揃って初めて成立すると言われます。
私があっせんして問い合わせたかったことの要点=企業謝罪としてのポイントだと個人的に考えていたことを記載しておきます。別にこの分野のプロではないので、あくまで自分も仕事で何か起きたらこういう軸で考えるという、一般的な会社員の感覚です。
①何が起きたかを「正確に、隠さず、主語を明確に」説明する(事実開示)
→誤情報・誤操作・システム障害・手続きの不備・人的ミス、いずれであっても「誰の、どの行為が、どの時点で、どう間違っていたか」を明確に説明する。
② 被害の範囲と影響を定義し、どう迷惑をかけたかを本人の言葉で述べる(被害の認知)
ただ「ご迷惑をおかけしました」ではなく、「誰に(対象者)」「どんな被害・不利益を(精神的/金銭的/機会損失)」「どの程度(深刻度)」を企業が自ら認めることで被害者は初めて「自分の被害感情を理解されている」と感じられる。
③ なぜ起きたのかを客観的に説明する(原因の分析)
必要なのは「単なる言い訳ではなく、構造的な原因の開示」。「個人のミスだけではなく組織構造の欠陥を説明する」「なぜ検知できなかったのか」「なぜ訂正されなかったのか」まで出さないと再発防止に繋がらない。
④ どのように補償・埋め合わせを行うか(実害の回復・補償)
謝罪は必ず「金銭的補償」「機会損失への救済」「手続き改善」「対象者への個別連絡」とセットで提示する。補償は「迷惑をかけた相手が納得できる補償」を基準とし、企業側の都合で「これで終わりです」はCSR的には許されない。
⑤再発防止策と、それを誰が・どの期限で実行するか(アクションの透明性)
「チェック体制の整備」「管理フローの変更」「権限の一本化」「外部監査の導入」「運営体制の見直し」などの具体的な対策を提示。かつ、「誰が、いつまでに、何を改善するのか」 を明確に示さないと、謝罪としては不十分。企業統治(ガバナンス)では、再発防止策に「具体性・実装責任」が必要。
おわりに
長い割に実のない記事だと思われた方が多いかと思います。
自分でもそう思いますが、声を上げるには限界があること、個人でやれることには限界があること、それらを痛感する出来事でした。
結局のところ、ここで私一人で喚いたところで、行政も企業もいちいち個人の感情に対応はしません。そういうふうに社会は回っているのでそれはいいんですが、それだけではマズい部分も確かにあるというのが実感です。
SNSやnoteで一次情報を共有することは、制度が届かない場所での「市民の監視」の機能を果たします。
ファンとして、支払い・権利・説明のすべてを「契約」として受け止めつつ、どのように感情の距離感をコントロールするか?を向き合う機会になりました。
結論は最初に提示した通り。
ファンの立場にいる消費者の方々に対し「もし同じような立場になったらどうするか」という目線で考えてみて欲しいなというのと、イベントを作る側の方々に「被害者の尊厳をあなたたちの理念(オタクカルチャーとクリエイターへのリスペクト)ごと破壊する行為をいい加減にやめてほしい」というのが届くといいなと思います。
※本記事は公益的な記録・検証を目的としており、記載内容はいずれも当時確認可能であった事実および公開情報に基づいています。
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記事の内容や意見の表明は筆者個人の見解であり、関係各所への中傷や不当な圧力を意図するものではありません。


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