神秘探求したいミレニアムモブ生徒とゲマトリアがガッチャンコ   作:ハイパームテキミレニアム

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新年最初の初投稿です。

最近の主人公の趣味は、降臨大祭のアーカイブを見る事。




ブレイクスルー・ミステリー

 

 

 

 

 

 

『I.M』。

 

 

 諸々の作業や実験が滞り、息抜きとして作成している内に完成した装置の一つ。

 

 私の膨れ上がった神秘を、アーマーの防護膜以外に転用できないかと考え、作り上げたもの。

 

 

 それは、私自らが思い描く装置を一時的に実体化し、使用可能とする、理想の逸品。

 

 私の神秘を転用する前提の、超極悪燃費に仕上がった代物。

 

 

 何しろ、実体化する装置の隅から隅までを、使用者である私の神秘をたっぷり使って作り出す。以前の私のような神秘量ならば即座に吸い尽くされて気絶している量を余裕で飛び越してしまう、超絶な燃費をしている。

 

 しかも実体化させた物は、ただそこに在るだけで神秘を消費していくので、実体化できる時間も限られる。何もしなければ30分は実体化させられるが……弾を撃つ機構の物だと、弾倉内の弾を全て撃ち尽くすと同時に消えてしまう。

 

 そして何より、実体化する物の構造等を理解していないとしっかりと実体化できないのだ。

 

 例えば最初に巨大パンケーキへ撃ち込んだ二連砲レールガン。このレールガンの設計図を記憶し、構造を覚えていなければ、何故か発射されるのが神秘弾ではなく水となってしまったり。

 マシンガンの構造を理解していなければ、何故か銃口からゼリーが飛び出たり。

 ヘンテコな代物が出現してしまう。

 

 

 なので、正直汎用性としては著しく低い製品と仕上がってしまったのだけど……まぁ、先のレールガンを見る限り、威力や性能は大変申し分ないものになっている。

 

 

 かくして『I.M』とそれによって実体化される装置群はあまりにも取り回しの悪い物となった。

 

 

 継戦能力の低い装置達。

 汎用性の無い尖った性能。

 極悪燃費の超火力。

 

 

 

 何ともまぁ、ロマン溢れる代物じゃないか! 

 

 

 実体化する装置には、数あるデメリットを補ってなおあまりある、圧倒的火力というロマン。

 使用者を選ぶ、決戦兵器的性能もまたよし。

 仕様上では『わたしのかんがえたさいきょうのぶき』の実体化も可能という青天井スペックも頭を痺れさせる。

 

 あぁ、エンジニア部魂が激しく揺さぶられるのを感じる! 

 

 

 そんな訳で、かつてエンジニア部において開発や考案されていた武器の中で、生徒に向けるには躊躇われるような火力の物を片っ端から巨大パンケーキという心置き無く撃てる的にぶつけていった。

 

 

 

 爆音を鳴り響かせながら弾丸の嵐が破壊の限りを尽くす、試射段階でエンジニア部室を半壊させた2砲門ガトリングガン『ハイパーサイレント』───パンケーキの各所をスカスカのスポンジケーキの如く穴だらけに。

 

 百鬼夜行伝統の花火を参考にしたダイナミック火力の『絶対強盗撃退バズーカ』───巨大パンケーキの右側を撃ち抜き、肉片と触手の汚い花火がゲヘナに咲いた。風紀委員の方から不評が飛んできた。

 

 どんな鈍感でもイチコロ☆がキャッチコピーの超高電流発生装置『ウルトラスーパーDXテーザーガン』───命中、怯みはすれど気絶には至らず。

 

 ドリルのように回転しながら相手に突っ込んで爆裂する人型大鉄拳兵器『グレート魔神鉄拳』───パンケーキ上層部位を殴り抜き大爆発! 

 

 

 

 しかし巨大パンケーキはかなりしぶとい。これまで付けた傷もことごとく再生を繰り返されている。

 だがこちらもまだまだネタは尽きていないぞ! 

 

 

《Imagination》

 

「"ミサイルポッド"、っとと……」

 

 

 ぎゅぅん、と私の神秘を吸い出されると同時に大型のバックパックを象った装置が背中に背負う形で出現する。

 

 かなり重たい。S.Fアーマーを装着して強化された私の身体能力でもなお後ろにぐらついてしまうくらいには重い。

 今実体化させたこれこそ、エンジニア部において『ミサイルパーティ』と仮命名されていた、固定砲台型多弾頭ミサイル発射装置。

 

 

 徒党を組んだ不良部隊の制圧の為に広範囲高火力で攻撃できるような武器を……と依頼され、"多弾頭ミサイルを一気に10発も20発も発射できたらそれはもうすごい火力になるじゃん? "という思惑で開発され、試作段階まで漕ぎ着けていた……のだけれど。

 

 その試作品を件の不良制圧戦に用いてもらった際、あまりにもミサイルの数が多く不良が居ない場所も破壊してしまった、味方陣営にも被害が行った、重過ぎて持ち運びしにくい、というか撃ち尽くした後自走して敵陣営に突っ込んで自爆する機能なんか付けるな、などなどのクレームを頂き泣く泣くお蔵入りとなった。

 

 

「……ん? あっと、まずい……!」

 

 

 ぐぅん、と巨大パンケーキが触手の一本を高く持ち上げる。これまで何度も見た叩き付けの構えだ。

 その標的は角度的に私だ。……ちょうどミサイルポッドを装備してしまったせいで避ける動作が取れない。

 

 ……ここは耐えるしか……

 

 

「うぉぉぉぉ、こっちだ化け物パンケーキ! ……ぬあぁっ!?」

 

 

 不意にアサルトライフルの銃撃が巨大パンケーキに撃ち込まれる。私の右手の方に居た風紀委員の方の攻撃だ。

 それがパンケーキの気を引き、触手は標的をその子に変え、煩わしげに叩き付けられる。が、悲鳴を上げつつもどうにかぎりぎりで避け切った。

 

 

「すみません助かりました!」

 

「あぁ! 私だって風紀委員の端くれだ、余所から来た奴に頼り切りじゃ名が廃る!」

 

「わ、私達でできるだけ気を引くから、どデカいのでぶっ飛ばしちゃって!」

 

 

 見れば私が助けた方もすっかり気を取り直したようで、再び銃を手にしてパンケーキに立ち向かっている。

 うん、ヘイローも良く輝いて実に素敵な姿である。これは私もやる気が漲るというもの。

 

 では、ご要望通りにやるとしよう。

 

 

「よし、では発射します!」

 

 

 発射ボタンを押し込むとミサイルポッドのハッチが一斉に開き、そこから噴煙を伴いながら多弾頭ミサイルが順番に天高く立ち昇る。

 

 

 誘導式のそれが太陽を背にしながら複数の弾頭を吐き出し……目標物である巨大パンケーキ目掛けて雨霰の如く降り注ぐ。

 

 刺さり、爆裂し、盛り込まれた火力の怒号が地響きのように体を震わせる程の爆発と爆煙の連鎖がパンケーキの巨体を丸ごと覆い尽くす。

 点ではなく面に特化した火力の飽和攻撃、止まらない爆発! 

 巨大パンケーキの生地や触手も堪らず弾け飛んでいる! 

 

 ミサイルとはかくあるべき! 

 

 

「うわぁぁあぁ!?」

 

「げっほ、げほ……! か、数多すぎない!?」

 

「すみません、想定以上の火力でしたので!」

 

 

 しまった、あまりの火力でハイになっていた。とりあえず風紀委員の方に謝りつつ爆煙の向こうにいる巨大パンケーキの様子を伺う。バイザー越しならば噴煙がいくら巻き起ころうと生体反応で相手の様子を感知する事が可能である。

 

 

「うーん、やっぱり相当タフですね」

 

 

 巨大パンケーキはその巨体の所々を破損させながらも未だ健在。

 緑色の粘液を滴らせ、その破損箇所もぐちぐちと蠢きながら再生を……

 

 ……おや? 

 

 

「……再生速度が落ちてますね?」

 

 

 再生は始まっているものの、当初よりその速度は落ちてきている。

 最初のレールガンに開けられた二つの大穴は十数秒で塞いでいたのに、今のミサイルで傷付けられた箇所は、一つ一つはレールガンのそれよりも小さいのに、ゆっくりじわじわと、緩慢な速度で再生していっている。

 

 

《Imagination》

 

「"ロケットランチャー"、っと」

 

 

 試しに傷の再生が始まっている箇所へ、肩口に背負ったロケットランチャーを真っ直ぐに撃ち込む。

 

 爆発と共にパンケーキの一部が吹き飛び、また再生が始まる。

 ……が、明らかにその速度は遅い。目に見えて遅い。

 体の欠損と共に直していた触手も再生が追い付いていないのか、その数を減らしている。

 やはり無限に思える再生も限りがあるものだったらしい。ダメージを受け続けたことで再生に用いる生命力を限界まで削ることができたと見るべきか。巨大パンケーキも心なしかぐったりと項垂れ気味に頭部らしき部位を垂らしている。ふむ、これは……終わりが近い様子だ。

 

 

「どうやら後もう一押しのようですよー!」

 

「や、やっと……!?」

 

「よぉし! 最後まで踏ん張って生きて帰ってやる!」

 

 

 声をかければ更にやる気を取り戻したように湧く風紀委員の方々。

 ……神秘もそれほど消費している訳ではない様子。これなら少し取っても問題は無いかな。

 

 いけないいけない。まずは先に片付けるべきものを片付けてからだ。

 

 

「さて、最後はド派手に決めて……」

 

 

 瞬間、背後で神秘が高まる気配。

 思わず振り向く───その暇もなく、圧縮されたその神秘は放たれた。

 

 

 高出力のビーム砲の一射。

 そう見間違えてしまう程の神秘の密度。

 機関銃から絶え間なく吐き出されていった紫がかった弾丸の嵐は寸分違わず巨大パンケーキへと吸い込まれ、その巨体を抉り飛ばし、僅かな抵抗さえも弾丸の暴力に飲み込まれて行き……

 

 

 弾丸の一斉掃射が終える頃には呻き声一つすら上げることもなく、巨大パンケーキは地に伏した。

 

 

 

「───ごめん、皆。遅くなった」

 

 

 背後の瓦礫の山に立ち、身の丈程もある機関銃を油断なく構えている、小柄な少女。

 風紀委員の腕章を着けた、白髪の生徒。

 彼女は巨大パンケーキからその視線を外さず……全く動きを見せない事を確認してから、駆け寄ってきた風紀委員の方に声をかけた。

 

 

「ふ、風紀委員長〜! 待ってましたよ〜!」

 

「他の現場で温泉開発部が暴れてて遅れた。状況は?」

 

「あぁ、はいっ! 15名で巨大パンケーキの鎮圧にあたっていた所、あそこのミレニアムの生徒に助けられまして……」

 

 

 

 その神秘、その存在感は異様であった。

 

 頭上に戴くヘイローは、正しく冠。

 漆黒と紫に構成された、立体型のヘイロー。

 強く、雄々しく、威圧すら伴って、宿す神秘の濃度を示している。

 まるでゲヘナ学園の校章を象ったようなそれ。私は、彼女こそがゲヘナのトップなのだと直感した。

 

 あぁ、眩しい、すごい、素敵、素晴らしい。

 ホシノさんにも劣らない、純然たる強く美しい神秘。

 それが私の目の前に浮かんでいる。

 

 ……というか、近付いてきている。

 あは。

 

 

「貴女が皆の手助けをしてくれた生徒ね。風紀委員会を代表して、御礼申し上げるわ」

 

「……あぁ、いえいえ! これはご丁寧にありがとうございます。こちらこそ、最後に決めてくださって助かりました」

 

 

 お互い頭を下げて会釈の返しをしてから、そっと手を差し出した。

 もちろんアーマーの展開を解いてから、視線をしっかりと合わせて。

 

 

「ふう。っと、お会いできて光栄です、ゲヘナ学園風紀委員長」

 

「えぇ。少しばかり事情聴取をする事になるけれど……付き合ってくれるかしら」

 

「はい、喜んで。答えられることにはお答えしましょう」

 

 

 

 

 

 

 □■□■□■□■□■

 

 

 

 

 

 その後の経過、今回の収穫について。

 

 

 現場に居た者、及び鎮圧行動に乱入した者として風紀委員会からの簡易的な事情聴取を受けた際に得られた情報として、大変興味深いものがあった。

 ちなみに風紀委員長……空崎ヒナさんは、他の地区で勃発した騒動の鎮圧にと呼び出され、早々に去ってしまった。まぁ、彼女とあの場にいた風紀委員会の方々の神秘はしっかり頂いたのでさしたる問題は無い。やったね。

 

 

 

 まず、ゲヘナにおいて度々現れる巨大パンケーキは、給食部の部員の手によって作り出された生物だという。

 

 何でもその部員が作る料理は何故だか複雑怪奇な怪物を生み出してしまい、騒動のタネになることもしばしば……なのだとも。

 

 

 これにはとても気を唆られる思いとなった。

 ヘイローを宿さずに神秘を宿す生命体。強靭な能力を保有させるに至る生物をその生徒がどの様な工程を経て、どの様な状況でもって作り出すのか。

 一応戦いの最中や戦闘後のゴタゴタを見計らって、飛び散った肉片や触手の一部を拝借はしたが、やはり製作者本人に話を聞いてみなくては。

 

 

 ……この巨大パンケーキの肉片。構造的には間違いなく小麦粉その他の食材のみで構成されているが、何故だか生物的な細胞も有しているという、生物と無生物の狭間にあるような摩訶不思議な物体なのだ。

 細胞学や生物学に明るい訳ではないので詳しく解明することは難しい。もっと勉強しておくんだったなぁと後悔している。

 

 

 

 ともあれ風紀委員会の事情聴取の後、その給食部の部員が居るという場所を尋ねてから足を運び……巨大パンケーキの製作者である生徒に話を伺うことができた。トントン拍子である。

 

 

 牛牧ジュリさん。

 ヘイローは規則正しく並んだ青い十字の光によって円輪が構成されたもの。

 

 また、給食部の部長である愛清フウカさんも話に参加してくれた。

 ヘイローは赤色がかったおむすびを思わせるものに、ちょこんと外側に角らしき形状が伸びているもの。

 

 

 早速お二人に巨大パンケーキについて尋ねてみると、やはり興味深い話がどんどんと出てきた。

 いわく、『料理を行おうとすると意図せず何かを生み出してしまうことがある』。

『調理されたものに手を加えるだけで得体の知れない何かに変化する』。

 などなど。

 

 

 工程をすっ飛ばし、料理という物に何らかの形で関与する事で、結果として神秘を宿した生命体が作り出される……

 どうやらこれはジュリさんの神秘により引き起こされる現象だ。

 本人の意思に関わらず、一つの事柄において不可思議な現象を問答無用で発生させる、科学や薬学、調理学を逸脱した、正しく神秘による御業なのだ。

 

 実際見た訳では無いので断言とはいかないが……というか実演してもらおうとしたら『絶対ダメですからね!?』とフウカさんに全力で止められたのだけど。

 

 

 そして何よりも興味深いのが……今回の巨大パンケーキは、地下水を使って温泉卵を作ろうとしたら生み出されたものだという事。

 温泉卵を作るだけなら何の水でも構わないというのに、何故地下水を? 

 そう尋ねるとジュリさんはこう言うのだ。

 

『温泉開発部の人から、給食部の地下水にはすごい効果があるらしいから、それを使えば美味しい温泉卵になるかもしれないと考えた』、と。

 

 

 

 その後私は許可を頂き、ジュリさんが地下水を汲んだ現場まで赴いた。

 

 予想通り、その地下水にも神秘が宿っていた。生徒が宿すそれではなく、他の神秘の増幅を促す作用を持った神秘である。

 

 

 

 私はその地下水を汲み、一度持ち帰る事とした。

 

 そして直感に従って、『インクリースくん』の神秘培養の溶液にゲヘナの地下水を混ぜ込み、実験を行った。

 

 

 

 直感は裏切らなかった。

 

 予想通り、培養複製された神秘は、これまでの劣化したものとは打って変わって、培養元の物とより近い神秘を宿すに至っていた。精度が格段に上がったのだ。これは大変喜ばしい進歩だ! 

 

 けれど、完璧にはならず。

 しかし改修や改造を施さずともここまで至れたのだから御の字だよね。

 ここから更に突き詰めて、より完璧に近い品質の神秘を培養、複製できるようにしなくては。

 

 より一層励む気力が湧いてきた。やっぱり気分転換って大事だね。

 

 ……他の実験にも使えそうな素材だし、ゲヘナの地下水も度々汲みに行かなくては。枯渇する程取らないように注意しなくてはならない。

 

 

 

 

 

 

 

 ゲヘナ地下水を汲みに行って数度目の日の途中。

 

 ゲヘナで先生を目撃した。

 

 

 

 

 

 

『シッテムの箱』。

 

 先生が持つ、不思議で不可思議なタブレット。

 

 そこに宿っている神秘。

 その性能の一部。

 

 それも目撃することができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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