神秘探求したいミレニアムモブ生徒とゲマトリアがガッチャンコ   作:ハイパームテキミレニアム

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思い付いたら止められねぇ!
小説投稿スイッチONだ!




ファーストインプレッション

 

 

 

 私、ミレニアムサイエンススクール一年! エンジニア部所属の○○○○! 

 物作りが大好きなそこら辺にいるキヴォトス一般生徒! 

 今日も今日とてエンジニア部に舞い込んだ依頼を終えて、荷物を纏めている所! 

 

 

「すみませんお先に失礼します! 製品の試験や確認はお任せします!」

 

「おや、今日も用事があったの? 言ってくれれば気を回したのに。ともあれお疲れ様、気をつけて帰るんだよ」

 

「お気遣いなくウタハ先輩! 流石に依頼分は責任もってやりますので! それでは!」

 

 

 マイスターの方々への挨拶も程々に、ドタバタとミレニアムを駆ける。

 何せしばらくは部活動後の個人的用事もあって、ここの所てんてこ舞いなのだ。

 急げや急げ、と人にぶつからない程度の駆け足で進んで行くと、ここ最近で聞き慣れた明るい声をかけられた。

 

 

「あっ、アリスは○○とエンカウントしました! さぁ○○よ、この勇者パーティに加わりクエストをクリアしに行きましょう!」

 

「うぉっとと、アリスちゃん、ごめん今急いでてさ!」

 

 

 最近ミレニアムに姿を見せた、小柄な生徒のアリスちゃんだ。嬉しそうに駆け寄ってきてくれるものの、その誘いには乗ることはできない。今日はどうしても……! と両手を合わせてみるものの、どうもそれだけでは逃がしてくれない様子。

 

 

「そんな! ○○は前回のエンカウント時もそう言って逃げていきました! まるでメタル系モンスターです! 今日こそはゲームを一緒にするクエストを果たしてもらいます!」

 

「ごめん! ホントごめんね! 次こそは、次こそ付き合うからさ!」

 

「あっ……うわーん! 逃げ足が早いです!」

 

 

 真っ直ぐに感情を向けてくれる分、罪悪感がいっとう突き刺さる。けど譲れない物があるんだと拳を握り締める。許して……! 

 

 

「あっ、○○じゃない。この間渡した書類の件なんだけど……」

 

「ごめんなさい部室にいるウタハ先輩に押し付けたんで確認お願いします! それじゃ!」

 

「ちょ、あんまり走り回らないでよ! ……全く、元気になってくれたのはいいけど……」

 

 

 セミナーの会計係にも怯まずに駆けて行く。今の私なら激怒系ランナーメロスも敵じゃない。そのくらいの勢いだ。

 

 

「あ、○○ちゃんお疲れ〜。今日も忙しそうだね〜」

 

「また明日ね〜」

 

 同級生達の声掛けを申し訳なく思いつつも避けて、何時もの道に入って行く。

 次々にビルが建ち並ぶ、何気に発展が進みまくってしまったがために迷路のようなビル街の隙間を迷うこと無く進んで行く。

 無造作に場当たり的に歩いてる訳じゃなく、この道はなんて事ない、私にとっては歩き慣れた道のりなのだ。

 

 そうして駆け抜けて行く中で辿り着いた、突き当たりの一画に打ち捨てられた廃ビル。正面を避け、裏口ドアを開けたらしっかりと閉める。割れた窓ガラスの隙間からそっと外を覗いて、誰かに尾けられてないかを確認したらそこでようやく一息付けた。

 

 

 

 ……しまった、こうしてる暇も惜しいんだった。

 いそいそとカバンから、手のひら大のワープゲートを開く装置を起動する。

 すると目の前の薄暗い空間に亀裂が走って、人一人分の大きさに裂ける。

 いつ見ても裂け目の先は見通せないほどに泥のように重たくうねって、暗くて怪しい。

 

 

 

 この装置を渡してくれた人曰く、秘匿性に重きを置いた物らしく、指定された特定の座標からでないとワープゲートが開く所か起動すらできないのだそう。

 おまけに一回につき10秒しか開かないと言うのだから、消えてしまう前に裂け目の中へサッと体を滑り込ませる。

 

 

 

 裂け目を通り抜ければ、薄汚れた廃ビルとは打って変わって、清潔で整った、けれど怪しい雰囲気を何とも醸し出す施設の壁が視界に映る。

 最初は居るだけでちょっと縮み上がってたけど、見慣れてからは家に居るみたいな安心感が湧いてくる。

 それから、胸を高鳴らすどきどきと興奮も。

 

 なんたって此処は……

 

 

 

「黒服さんっ!」

 

「おや、随分とお早い到着ですね……クックック、ではその熱意にお応えしましょう」

 

「えぇ、今日も今日とてやりましょう! そりゃもうガンガンと!」

 

「焦りは禁物、加えて先走る事もよくありません。何事も一歩ずつ着実に、ですよ」

 

「分かっていますよ! ……では行きましょう!」

 

「えぇ、始めましょうか」

 

 

 

「神秘の探究を……クックック……」

 

 

 私のしたい事ができる、今最高に楽しい場所だから! 

 

 

 

 

 

 □■□■□■□■

 

 

 

 物作りが好きだ。

 物心が付いてからそんな事が頭にはあった。

 

 幸い、したい事と持ち前の才能は噛み合ってたらしく、やりたい事にとことん打ち込めたし、作りたい物は大抵作ってこれた。

 

 もちろん自分だけじゃできない事もあったし、誰かと一緒に物作りをして完成させた事もたくさんあった。何かを作ったり、そのために試行錯誤したり、誰かと共に何かを作り上げるあの喜びを分かち合うのは、やっぱりそれでしか摂取できない栄養素が出てると思う。

 癖になり過ぎるよあの味わい。たまんないよね。

 

 

 ミレニアムに入って、念願叶ってエンジニア部にも入れた。一癖も二癖もある同期と先輩方に囲まれながら一層物作りに打ち込んでいたある時、ふと頭の中に1つの考えが飛来した。

 

 

 

 ───そうだ、神秘に関するモノを作ろう。

 

 

 頭に思い浮かんだ、突然降り降りてきた言葉。正しく天啓といっても過言じゃない。

 

 そんな、ほんの些細な思い付き。思い立ったら即実行、即時開発をモットーにしてきた私は当然、作ろうとして……。

 

 

 

 

 …………今の今まで何にも作れず終いだった! 

 作ろうとしても上手くいかない。そもそも取っ掛りすら掴むのにも精一杯、というか形にすらならない。

 まるで世界から拒まれてるみたいに、神秘に関するモノだけが作れなかった。

 

 

 ミレニアムの中を引っくり返してまで神秘について調べた。

 

 物作りを通じて生まれたツテも使って他の学園にも入って徹底的に調べてみた。

 

 トリニティの古書館に入り浸った。

 

 ゲヘナで不良に絡まれまくりながらあちらこちらを歩き回った。

 

 何十もの書類を提出して、やっとの事で連邦生徒会の中の資料庫を見せてもらったり。

 

 レッドウィンターの雪山を行脚してみたり。

 

 山海経の神秘が見える薬というのも取り寄せて飲んでみたり。

 

 他にも他にも、色んな所を、色んな人と巡ったり、探したり、調べたりした。

 

 

 

 

 

 何にも分からなかった。作れなかった。

 

 

 

 私は挫けた。

 

 

 私の人生史上初めて味わう挫折だった。

 悔しい。悔しさの極み。舐めさせられた辛酸が苦過ぎる。

 挫折が悔しいとは聞いてたけどこんなにも無力感に打ちのめされるとは思わなかった。

 

「○○って挫折とか知らない完璧人間だよね〜」とか言ってくれた友よ、私はそんなんじゃないよ、普通に挫折を味わう力無き人間だったよ……

 

 

 

 

 そもそも神秘とは何か。

 

 

 神秘。

 私達、ヘイローを持つキヴォトスの生徒がその身に宿している力。

 これを行使する事で、色々と特殊な能力を制御したり、現象を引き起こしたり、戦闘力を向上させたりする……らしい。

 らしいっていうのは、私が調べた範囲で分かった情報。

 

 神秘っていう、考えてみると不可思議で、けれど当たり前の力。この力は、私達にとってはあんまりにも身近にあるものだから、皆が皆『そういうもの』として認識しているせいで、ありふれているのに理解が進んでいない。

 

 

『あなたの神秘ってどんなもの?』とキヴォトス街頭インタビューをしてみても。

 

 

『……さぁ?』

『神秘って何さ』

『知らねぇ。んじゃ質問料として有り金置いてきなァ!』

 

 

 ……といった具合で散々だった。

 

 

 あんまりにも分からなすぎて、私は荒れた。

 

 わかんないよ〜!! 神秘ってなんだよ〜!! 神秘のヴェール少しぐらい剥がれてても良いだろ〜!! ミステリー過ぎるよ〜!! 名が体を現しすぎてるよ〜!!! 

 でもその分探究心が擽られるよ〜!!! 

 

 もう散々に荒れに荒れて、周りの人に迷惑をかけちゃったり。あれは大変申し訳なかった。今思い返しても穴があったら速攻埋まってそのまま帰りたくない程に。

 

 そんな心境の中、何処とも知れない路地裏をふらふらしていた最中で、私は出会った。

 

 

 

 

「───どうやら、お困りのようですね?」

 

 

 闇に溶け込む様な黒地のスーツをカッチリと着込んだスマートな佇まい。

 

「おっと、失礼致しました。私は、そうですね……簡潔に黒服、と呼んで頂ければ」

 

 黒く燃える炎の様な、陽炎の様な……ぼんやりとした異形の頭。

 

 私達生徒とは違う、頭にヘイローの浮かんでいない、一人の『大人』。

 

 

「貴方と同じく、神秘の探究者ですよ」

 

 

「弟子にして下さい」

 

 

 その一言を聞いた途端、頭に電流が走った。

 そこからの私の判断は早かった。

 この大人はキヴォトスにいる他の大人とは訳が違う。

 私の求める物が、この大人と共に居れば掴むことがきっとできる。そんな妄信と確信めいた直感が過ぎったから。

 

 丁寧に差し出されたその手を、両手で鷲掴みにかかった。

 

 




ミレニアムモブちゃんには好きな名前を当て嵌めてやって下さい。
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