原神世界で不死身のボケ担当がハッピーエンドを目指すのは間違っているだろうか(旧:契約の国で働いてたら過労死したので自由の国に逃げようと思います)   作:ありがとうはなまる

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雷電将軍戦中半です。


16 漆黒ライダーエイイチ

 

 

 

永一が粒子を出す数分前─

 

 

 

 蛍side

 

 

 影との激しい攻防の最中、私は影と永一さん以外の情報を視覚から全て消し、戦いに集中する

 

 首を狙った横薙ぎ。後ろに重心を下げて回避、そのまま重心を前へ倒し剣を振るう。防がれ逸らされる

 

 影の薙刀を破壊、それが影を正面から倒す唯一の方法だと永一さんが言っていた。幾度もの衝突で、あの薙刀が生半可な硬度ではないことは分かっている、破壊など普通は出来ない。けど、永一さんから貰ったこのカグツチならそれが可能

 

 影が雷元素で出来た3つのオブジェクトを設置。無視して攻撃を続ける。バリバリと3箇所から音が聞こえると、オブジェクトのあった箇所の元素の圧が消える

 

 影は絶えず雷元素を放っている。当然、武器にも流れていて武器の鋭さが上がっている。そこに炎元素を纏った剣で攻撃をし続ければ勝機はある

 

 時間をかけりゃ水滴でも石を削る。ノーダメージ?そんな物体はこの世に存在しない、らしいぞ

 

 永一さんが作戦を教えてくれた時に言っていたセリフ。永一さんがそう言ったんだ、なら、信じる以外の選択肢はない。お兄ちゃん*1の言ったことを信じるのができる妹の条件だから、だから信じてそのまま突き進む

 

 頭、心臓、腹、3点を狙った高速の突きを剣で相殺、お返しに狙われた3箇所に三連撃を仕掛ける。全て防がれた

 

 剣を振るっては防がれ、薙刀を防いで反撃しても防がれて、隙がなさすぎる

 皆の「願い」を背負ってから体の調子がとても良く、体がいつも以上に動いてくれていていつも以上に攻撃のスピードもパワーも上がっているはずなのに、全く持って影の防御を突破できない

 

 風刃を足裏に発動させ速度を乗せた攻撃を仕掛ける。振るわれた剣を薙刀で受け流し軽くいなされた

 

 体勢を立て直し、再度攻撃を仕掛けようとした時、目の端でしゃがんだ姿勢を取る永一さんを捉える

 

 私は影から少し離れ、重心を丸め全身に力を入れる。さながら縮ませたバネのように、全身のエネルギーを集中させる

 

 合図はすでに永一さんが切ってる。全身に溜めたエネルギーを解き放ち、一直線に影へと飛び出す

 影も向かってくる私に合わせ、タイミング良く薙刀を振るってくるが、予想通り

 私は足を地面に付け体を捻り、振るわれた薙刀を剣の腹で滑らせ回避、過負荷によって起きた衝撃波の勢いを利用して地面に付けた足を軸に回転、そのまま影の後ろへと回り込み推進力と遠心力を乗せた一撃を影目掛け振る

 

 影は回り込んだ私に対応しすぐに後ろを振り返り薙刀を振るうが─

 

 ズズズズ…

 

 「なっ!?」

 

 

 ─影の驚愕を孕んだ声と共に薙刀と雷元素の勢いが薄れ、私の剣の方が先に影の腹へと直撃。勢いのまま剣を振り被り、影を横へと吹き飛ばす

 

 初めてまともに攻撃が当たった。だけど、当たった感触に違和感を感じる、腹に剣を当てて振りかぶったのに何でどこも切れていないの?

 

 流石武神、永一さんの言う通り規格外な強さ。だけど…私が攻撃した箇所に手を当てているのを見るにノーダメージ、という訳ではないらしい

 

 

 「このまま叩く!」

 

 

 私は走り出し影との距離を詰め斬りかかる。影も応戦するが、未だ混乱の真っ最中であるのか先程よりも技のキレが圧倒的に悪くなっている

 

 影の反応に永一さんが言っていた元素の阻害が上手く嵌ったことが伺える

 

 私は永一さんに事前に詳細を知らされているお陰で、この現象の対処方法を知っている

 この現象は、永一さんが出す「粒子」と呼ばれるものが周囲に漂う元素と私たちの元素を阻害して元素反応を出来なくさせているらしい

 だけど、それは外にある元素だけで、私たちの体内にある元素は阻害出来ないらしい。だから体外に元素を放出する元素反応は使えなくても、身体能力を向上させるために元素を体内で循環させることは問題なくできる

 そのことを影が気づく前に決着を付ける!

 

 剣を持つ手に力を入れ、影に無数の剣撃を叩き込む。だが、ただで食らってくれるはずもなく、影も負けじと薙刀で応戦してくる

 体内での元素が使用できることに気づいたのか、それともこれが素の身体能力なのか、どちらかは分からないが、唯一分かることは先程よりスピードが段違いに遅く、こちらの攻撃が少しずつだが確実に影に当たっている

 

 それに、影はまだ気づいていないようだが、薙刀の刃の下部分に僅かだがヒビが出来ていることを確認した

 私は影の攻撃を防ぎつつ、ヒビの入った箇所をより重点的に攻撃していきヒビを広げていく

 

 

 「っ!」

 

 

 ヒビを狙いながらの攻防を繰り返すこと数十手、自身の武器にヒビが4割ほど侵食されてちることに影が気づくが、もう遅い

 

 

 「JET…(ピストル)!!」*2

 

 

 大好きなまんがの技名を借り、ヒビの入った箇所に全力の刺突を繰り出す。影が薙刀を動かしヒビの入っていない部分で防御しようとするが、そんなの関係ないとばかりに私は刺突の速度を更に上げ、強引に剣をねじ込み無理やり命中させる

 

 バキッ!バキ!バキ!バキ!

 

 砕 けろ!!

 

 バキンッ!!

 

 刺突によってヒビは広がり、ついに薙刀は剣先から砕けれ影が目を見開き驚愕する

 

 

 「これで、終わり!!」

 

 

 私は無防備になった影に向かい、引き戻した剣を振り下ろす

 焔色の残像を出しながら振り下ろされた剣は、無防備になった影に吸い込まれていき、私は自身の勝利を確信した

 

 瞬間、視界の全てが静止した

 

 振り下ろす剣が止まった、いや動いている、だけど余りに遅い、目が動かせない、瞬きすら出来ない、思考だけができる…世界がゆっくりに映るこれって……たしか……走馬灯

 

 時が止まったかのように錯覚する世界。そんな中影だけが動き、トーマの目狩りを防ぐため、初めて対峙した時と同じように「無双の一太刀」を胸部から取り出し、私目掛け振り下ろした

 私は自分の体に刃が突き去る光景を、何の抵抗もできずに見守り、そして体からは赤い血と熱を吹き出し、私の意識はそこで暗闇に溶けて消えていった

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 永一side

 

 

 俺が出した大量の粒子が消し飛び視界が戻ると蛍が影様に切られている姿があった

 

 何でここにソレがココにあるんだよ!!?

 

 真っ暗から出されてすぐに見る光景がこんな絶体絶命な状況ってイカれてんのか!こんなん簡易無量空処だわ!情報量多すぎるわ!いきなりどうしろってんだよ……ちっ!考える時間すらないってか!

 

 血を流して倒れている蛍にとどめを刺そうと、「無双の一太刀」を構える影を見て、俺は息を吸い大声を出す

 

 

 「アアアアアアアアア!!!」

 

 「!」ピタッ

 

 

 「一心浄土」に響き渡る俺の大声に、影様の動きがピタリと止まる。亜人の叫び声を聞いたものは金縛りにあったかのように一定時間動けなくなる。このことは影様や他の人間には誰も教えたことのない俺の秘蔵っこ、まさかこんな場面で使うことになるなんてな

 

 俺はIBMを4体出現させ、1体を倒れた蛍の回収に向かわせ、他の3体は影様の妨害を命令する。俺が行くよりIBMの方が早く着く、適材適所ってやつだ

 IBMは迅速に行動を開始し、蛍を優しく抱き抱えこっちに離脱、他3体は金縛りが解けた影様をこっちに近づけさせないよう付かず離れずの距離で足止めしてもらう。もっても1,2分ってところか

 

 運び込まれた蛍をゆっくり地面に寝かせ傷の具合を見る。顔や手にいくつか擦り傷は見られるがここは大丈夫、息は辛うじてしてるが浅く苦しそうだ。問題は、やはりこの肩から腹にかけての切り傷

 

 これは……骨はもちろん内臓まで綺麗に斬られてる、殺し屋の殺戮剣豪ジジイみたいに断面が綺麗ならくっつけて持ってる回復薬でもぶっかければそれで良かったんだが、そう甘くないらしい。「無双の一太刀」のせいで切り口の断面が焼けている。俺の持つ回復薬は自然治癒能力を上げて治癒させる薬、こんな状態じゃああまり役には立たない

 何でこれでまだ生きているのか不思議なぐらいの超重症だな

 

 

 「神子、もし影様がこっち来たら少しの間足止めをしてくれ、俺はこれから蛍の応急手当をする」

 

 「今の妾は思念体、物体はすり抜け干渉はできぬぞ」

 

 

 く、糞の役にも立たねぇ〜、何が「お願い私の仙狐宮司様」だ、このドラさんのパクリが。今度帰ったら「お願い働いて私の仙狐宮司」を書いて八重堂に出版してやる

 

 

 「…そっか、なら……………蛍、今から俺は危ないことをする。もし失敗したら存分に俺を恨んでくれ」

 

 「?お主、何を…」

 

 

 俺は懐から短刀を取り出し自分の小指、第一関節部分を切断する

 哲平や他の兵士たちにやった時は問題なかったが、蛍は人間と言っていいか分からない種族だからこれで完治できるか不安が残る。けど、やらなきゃ死ぬならやる、絶対出来ると信じてやってやる

 

 俺は手に持つ短刀で蛍の頸動脈を切り、蛍を「殺す」

 

 

 「!?永一…貴様!?」

 

 

 首から大量の血が流れ出れる蛍を尻目に、切れて断面が露出している小指を蛍の体に押し当て、小刀を俺の首に突き立てる

 

 俺は自分自身を調べ尽くした。自分自身の体を数え切れないほどイジっては復活を繰り返し、亜人について調べ上げた

 そこで、俺はある仮説を立て研究を始めた。それはフラッド現象と同じように亜人の出す粒子で人を治すことができるのではというものだ

 フラッドを重傷者の前で意図的に発現させ周りの人間を治す手段もあるが、それをすれば生み出されたIBMの大群でかえって被害が大きくなるだけだ

 だから俺は、その仮説を実現させるため自分自身の肉体の意識を偽る技術を身に着けた。愚地息子がしていたアレに近いと思ってくれれば良い

 

 亜人が出てくる漫画の中で生まれつき足に障害を持つ男がいた。そいつの足は亜人の復活ですらどうにもならなかったらしい。つまり、亜人の復活は再生ではなく修復、脳や体が死ぬ前の肉体の情報を元に体を元の状態に戻していたのだ

 

 ズズズ…

 

 俺の死をトリガーに俺の体から粒子が吹き出し、傷ついた肉体が修復されていく。当然切断した小指の先もだ

 フラッド無しで人を治す方法、それは肉体の持つ情報を騙し、傷口の先も自分自身の肉体だと思いこませることで、復活の際に出る粒子が傷口先の人間の体を修復してくれるというわけだ

 言うは易し行うは難し、ということわざ通り、理屈を書くのは簡単だが、それを実行するのはものすごい時間と労力を使った

 

 だが、今ではこの通り、影様に付けられた痛々しい切り傷は消え、若々しく綺麗な素肌が切り裂かれた服の隙間から見える蛍の完成だ

 

 ちなみに余談だが、この技術を習得したお陰で俺は長生きすることが出来ている。肉体の情報を騙し、肉体の年齢を自由に変えることが出来る。少年体や青年体、果ては老人にだってなることが出来る

 こう考えると仙人とか妖怪の一種みたいだな俺

 

 

 「…………良し、上手く行ったようだな。神子、蛍のことを見ててやってくれ、傷とかは修復されたが目が覚めるまで少し時間が掛かる、その間蛍を守ってやってくれ」

 

 「汝はどうするつもりじゃ」

 

 「俺は…影様と戦ってくる」

 

 「…無駄じゃ、すぐに死ぬ」

 

 「…」

 

 

 神子の言葉を聞きながらストレッチをして体を起こす

 

 

 「いくら汝が死なないからと言って相手はあの影、お主がいくら挑もうが奴に勝てる可能性は0じゃ」

 

 「…」

 

 「…それでも、お主は行くのじゃな……フッ…勝てる可能性はあるのか?勝機は?千に一つか 万に一つか 億か 兆か それとも(けい)か」

 

 「……フッ…それがたとえ那由他(なゆた)の彼方でも、俺には充分に過ぎる!!」

 

 

 ホント、言葉選びが最高(パーフェクト)だぜ宮司様

 

 俺はイヒカ(短剣)を持ち、足止めにと置いていたIBMをすでに倒している影様の元へ行く

 

 

 「オマター影様、お互い準備万端だな」

 

 「あなたは⋯」

 

 「あ⋯?」

 

 「あなたは本当に変わらない、いや、()()()()()()()()()()()()()は変わらない。その道化のようなあなたは⋯」

 

 「⋯」

 

 「あなたには感謝しています。あなたが私に仕えて五百数年、あなたは私のもとで共に「永遠」の礎を築いてきた」

 

 「しかし、あなたは私を裏切り「目狩り令」の阻止を目論んだ。そして、あなたは一度を死んだ。だと言うのにあなたはまたしても私の目の前に現れ、私の前に立ち、私に剣を向ける」

 

 「何故です、何故アナタも分からないのですか」

 

 「あなたなら分かるでしょう。変化するということは何かを捨てることだということを⋯夢や希望も、叶えようと歩き続ける限り何かが道にこぼれ落ちるものだと、「変化」とは大事なものを悠然と無情に奪い去っていくものだと⋯」

 

 「あの「厄災」で、私はあらゆる大切なものを失った。友を姉を、あの時! あの場所で! だから、私の手の中で息絶えようとしてる彼女に、私は誓ったのです!」

 

 「貴方達の好きだった稲妻を、誰も傷つくことのない安寧と平和が「永遠」に続く国を創り上げ、「永遠」に守り通すと!

 

 

ザザ…

 

■■■■!!

 

永一⋯そんな顔をしないで、これは私のせい、私が悪いのよ

私は⋯影のように、強くないから⋯勝手に出かけて、勝手に、ボロボロになって…ほんとうに、ダメな神様ね⋯

 

 

 「⋯なら、アンタはその大層な約束を達成させるために、多少の犠牲は仕方ないって割り切ったのか?⋯抵抗軍にいた兵士も幕府に仕える兵士たちも、その平和な国を作るための尊い犠牲だったとでも言うのか」

 

 「…」

 

 「確かにアンタの目的を達成させるための労力や時間なんて計り知れない、犠牲1つなしで成し遂げるなんて夢物語あるはずがない、それはいいんだ、分かりきってる」

 

 「そもそも俺に人の夢に無理だ諦めろ、なんて冷たい言葉を言う気も趣味も理由もない…だがな」

 

 「自分の進む道()を、眞様たち(死人)との約束を盾に言い訳してんじゃねぇよ

 

 「⋯…何?」

 

 「貴方はただ、あいつらとの約束に縋り付いて安心したいだけだろ。「一心浄土」の中で引きこもって、自分の進む道は正しい、これが稲妻のためなんだと、耳を塞いで自分に言い聞かせてるだけだろ…ふざけるなよ

 

 「⋯⋯⋯⋯」

 

 「眞様と約束した眞様たちの好きな稲妻?どこにあるだよ」

 

 「お前の理想の先に!あいつらが好きな稲妻は本当にあんのか!

 

 「⋯⋯」

 

 

永一⋯あなたのお陰で、私達の好きな稲妻は、豊かで活気に溢れる⋯素敵な国になった

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!

 

 

 「死人は未来を見ねぇし喋らねぇ…だから、俺が代わりに断言してやるよ!そんなもん、ない!

 

 

あなたは、本当に不思議な子だった、けど⋯それ以上に優しい子だった⋯今もこうして、私を助けに来てくれたのでしょう

 

■■■■!!

 

 

 「ふざけるなよ、俺はそんな国を認めない、それがあんたの夢見る理想の国なんて、眞様たちの好きな国だなんて、口が裂けても言わせない!それはアンタと眞様たちの夢を侮辱することだ!」

 

 

あの子は、私に比べて⋯頑固な子だから⋯私、が、いなくなった⋯後…あなた、た、ちに⋯苦労をかけて⋯しまう、でしょう⋯⋯だから

 

■■■■■■■!■■■■■■■■■■■■■■、■■■■■■■!■■■…■■■、■■■■■■■■■■■■!

 

 

 「⋯⋯⋯⋯⋯稲妻の「永遠」を脅かす者…不死川永一、アナタの命を刈り取り、私の「永遠」を完成させましょう」

 

 「俺がアンタのその曲がっちまった誓いをぶん殴って直してやるよ!」

 

 

影をお願いね

 

■■■■■■(分かりました)

 

 

 

 瞬きすらしていないにも関わらず一瞬で俺の目の前まで接近していた影様は、俺を横に両断しようと手に持つ「無双の一太刀」を振るう

 俺は影様の一撃をほぼ反射で剣を動かし受け止めると、刀で「無双の一太刀」の一撃を反らし力を逃がして腹に蹴りを入れる。しかし、余裕で受け止められそのまま上空に放り投げられる

 投げられ空中にいる俺に狙いを定め飛び上がり、刀を振り上げる影様、俺は影様の攻撃に合わせ剣を振るい攻撃を防ぐ

 俺の「イヒカ」と影様の「無双の一太刀」がぶつかり合い、紫色の雷と白い細氷が舞い散る

 

 

 

雷神

 

雷電影

 

 

 剣同士の衝突の末、俺は力負けし吹き飛ばされ、地面に衝突。少しばかり埃が舞う中、俺はすぐに立ち上がり剣を構え迫りくる神速の雷刀を防ぐ

 

 防ぐ防ぐ避ける避ける防ぐ防ぐとみせかけてカウンター。迫りくる絶殺の一撃を全て躱すか防御しながら、隙を見て攻撃を繰り出し、なんとか戦いが成立している

 

 

 「ハァ ハァ…何で俺がここまで粘れてるか不思議そうだな…」

 

 「…っ」

 

 

 身体能力の差は歴然、影様の神速の一撃なんぞ凡人の俺じゃ蛍のように捉えて防ぐなんて芸当出来るわけない、だがなぁ

 

 

 「凡人、極めれば神と拮抗できるってなぁ!」

 

 

 あんたを倒すために俺がどんだけあんたの戦いや癖を研究してきたか、どれだけ俺が雷電人形と戦ってきたと思ってんだ。軽く数万は戦ってるぞ

 

 

 「俺がヘルモード攻略者だぁー!」

 

 

 俺は影様の繰り出す神速の連撃を、影様の動きの動作で先読みし最小の動きで捌き続ける。だが、捌けるだけで突破口はない、身体能力がフリ◯ザとラデ◯ッツぐらい離れてるせいで俺の攻撃が影様に全く当たらない、当たっても埃を付けるだけのカスダメしか出ない

 

 このまま戦ってもやっぱ決着なんで付くわけないよな、なら数十年前から温め続けていた対雷神用作戦を食らわせる

 俺は懐にある閃光弾を取り出すと同時にスイッチを入れ俺と影様の間に投げ発光。視界が真っ白になっている間に俺は一度影様との距離を取り、懐から風元素玉と煙玉を取り出す。割合としては2対8の割合で出した

 

 俺は風元素玉と煙玉を地面に叩きつけ起動、煙玉から出る大量の煙を風元素玉の風で周囲に送り視界を防ぐ

 

 さて、俺の集大成を見せてやるよ

 

 

 

◇◇◇

 

 

 第三視点side

 

 

 一面煙に覆われ視界が悪い中、影は「無双の一太刀」を腰に置き居合の構えで永一を待つ

 自分から動かないのは、永一が何をするのか未知数なことと、動かず周囲を見渡すことで永一の動向や居場所を音や煙の動きで見極めるためである

 

 

 「!」

 

 

 影は視界の端で不自然に動く煙を捕捉し、神速の抜刀によって、煙の奥にいたものを捉えた

 

 

 (斬った…しかし…)

 

 

 しかし、斬った手応えを感じながらもそこには何もなく、永一の姿はどこにも見当たらなかった

 

 影は傍観をやめ、「無双の一太刀」で一帯の煙を吹き飛ばそうと刀を振るう、直前─

 またしても影の視界の端で不自然に揺れ動く煙を捕捉。刀を振るう手を止め、そちらに進行方向を変更し刀を振るい直す

 影が煙を一掃するよりもそちらを優先した理由は、先程とは違い煙の揺らぎが大きくこちらに迫りくる影がはっきりも視認できたため、永一と判断しそちらを始末しにかかった

 

 自身が煙を晴らそうと動く時を永一が狙っていた場合、このまま煙を晴らすのは悪手。煙を晴らしながら永一を切る選択肢もあったが、永一がそれに対策していないとも考えられない

 結果、シンプルな手段(排除)をとるのが妥当、だが…

 

 

 「!?」

 

 

 煙から出てきたのは永一ではなく、パラシュートのように広げた布が結ばれたクナイが出てきた

 

 ボッ

 

 「!」

 

 

 パラシュート付きクナイに騙された影の後ろをとるように姿勢を低くしながら永一が現れ、右手を大きく振り被り影に迫る

 影は永一の存在を認識すると同時に、後ろを振り返りすぐさま永一に向かって刀を振り下ろす。それと同時に永一は振り被った腕を戻し影に向かって振り被る

 互いの攻撃がかち合い金属音が鳴り響く…はずが、金属音は聞こえず、代わりにスッと何が切れる音が静かに聞こえた

 

 

 「…!」(手に、何も持っていない!?)

 

 

 音の正体は永一の手首が影によって切断された音で、影は斬った永一の手に先程まで持っていた短剣を持っていないことに驚き、永一の方を見るが利き手にもそれは見受けられなかった

 

 

 「…!?」

 

 

 そんな中、突然の嫌な予感を感じ取り下げていた頭を上げ上を見上げると、先程探していた短剣が目前まで迫ってきていた

 

 影にとって当たったところでそこまでのダメージにはならない攻撃だが、神にも脊椎反射は存在し、影は顔に迫りくる短剣を驚異的な身体能力と反射神経で手に持つ「無双の一太刀」を用い短剣を弾き飛ばす

 

 ザスッ

 

 「……ッ!!!」

 

 「ブラフのブラフのそのまたブラフのそのまたまたブラフだぜ、影様」

 

 

 だが、その動作によって致命的な隙を作り、無防備な脇腹に透明な刃が突き立てられる

 

 

 (俺は粒子でどんな形でも瞬時に作り出すことが出来る。神出鬼没な透明の短剣なんて奇襲(ブラフ)にはもってこいの品だろ)

 

 

 短剣型のIBMを逆手に持ち影の脇腹に突き刺した永一。しかし、永一の追撃は止まらず、先程影によって弾き飛ばされた短剣を煙の中で息を潜めていたIBMにキャッチさせ、刺されたことで永一に視線が釘付けの影に向かって意識外からの全力投()を仕掛ける

 

 永一の作戦はシンプル、影の虚を突きまくって倒すこと。神と言っても人間のように思考はするし、驚きもする

 物事を処理する脳も動かすことの出来る体は一つ、影がいくら速く強くても機械のように全てを完璧に捌ききることなんて出来ない、予想外な事が起これば必ずほころびが生まれる

 

 

 (360度全方位をブラフだらけにして攻撃し続ける、そしてそれに驚いて固まる影様を突き続ける、名付けて「嫌がらせ作戦」だ)

 

 (影様も思考する生物、虚を突かれれば動きが鈍る。これなら─

 

 キン!!

 

 紫の閃光と斬撃音が響いた瞬間、永一の体が一瞬にして切り裂かれ、その斬撃の余波で短剣は吹き飛び、煙が晴れた

 

 

 (まじか…!!)

 

 

 五肢*3が切り裂かれ、驚愕する永一は、すぐさま現状動かすことの出来る目を動かし、自身の意識が途切れる前に周囲の状況を把握する

 

 

 (周りの煙幕がほぼ消えてる、首に加えて四肢も斬られてる。恐らく「無双の一太刀」を振るって俺と煙と短剣の全てを強引に力技で全部を解決しやがった!頭金玉魔王の苦労が垣間見えるよ、策をいくら浪費したところで脳筋野郎共は全部パワーで解決しやがる、理不尽にもほどがあるだろ!クソ! )

 

 

 心の中で影への悪態を突く永一にとどめを刺そうと、六通りされた永一の体目掛け「無双の一太刀」を振り下ろそうとする

 いくら永一(亜人)と言っても、ドラゴンボ◯ルの魔人のように細胞1つ残さず消滅させられれば死んでしまう

 

 永一は最後の力を振り絞り、不測の事態に備えて待機させておいたIBM2体に、それぞれ影の足止めと自身の体の回収を命令

 IBMに命令した永一(頭部のみ)は、そのままは地面に叩きつけられ永一の意識は暗転し─

 

 ズズズズズズ…

 

 ─そして復活し「あぶねぇぇ!!」

 

 復活した直後、目と鼻の先にで振りかぶられた「無双の一太刀」を、間一髪後ろに倒れることで回避した永一。完全回避とはいかなかったのか、鼻先には縦線に赤い切り傷が付けられていた

 

 

 (後もう少しで一部D◯Oみたいに両断されるところだったが、詰め(チェック)が甘かったなぁ〜!)

 

 

 永一はそのまま後ろに飛び、影との距離を離し息を整えて考える

 

 

 (策はまだ何個かあるが、どれもさっきみたいに一刀両断されて終わりな未来しか見えない。流石「無双の()()()」一太刀の名は伊達ではないか……)

 

 

 永一が思考する中、影は今も尚血が流れている脇腹の傷に手を置き、そして─

 

 

 「ふん!」

 

 

 目を見開き脇腹に力を込めると、力んだ事によって筋肉が圧縮され、傷口が塞がれる。力技の極致とも言える力技で傷口を止血した*4

 

 

 (……ここまで行くと驚きとか呆れ通り越して尊敬するよ……やっぱ呆れるわ、何だよアレ、力技にも程があるだろ。雷神辞めて(パワー)神に改名しろよ)

 

 「はぁ……()()を使うしかないか…」ボソッ

 

 

 永一は覚悟を決めた顔で立ち上がり、ゆっくりと歩いていく

 

 

 「やっぱり強いな⋯このまま無理せずに倒すなんて、やっぱできないか⋯」

 

 「はぁー⋯…これは、蛍や神子、それに貴方には見せたくなかったんだが⋯背に腹は代えられない、か」

 

 「蛍、俺はこれから無理をする。見ていて不快になる戦い方だ。だから、その間目を覚まさないでいてくれよ。神子も、お前が考える不快よりも更に不快だと思うから目を瞑って置くことを推奨しておくよ」

 

 

 永一は今は眠りについている英雄()友人(神子)に、これらか自身がしようとする行為に謝罪と忠告を述べ、地面に落ちている短剣を拾い、影の方へと顔を向ける。その声には悲しみと覚悟が込められていた

 

 

 「影様、俺はこれからを貴方を倒せる俺に『変身』する」

 

 

 

「『変身』」

 

 

 永一の体から粒子が溢れ出し、体に纏わりつく。体に纏われた粒子はIBMのように形を成していき、まるで鎧のように体全てを覆う

 

 

 行くぞ(逝くぞ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────────────

 

 

永一メモ

 永一が稲妻から出る際、雷電将軍(影)に切られて死んでいる。そして、その死体は影によって保存処置(エンバーミング)*5され稲妻城に保管されている。

 

 尚、神里家の終末番が永一の安否を確認するため稲妻城に潜入した際、上記永一が死体を発見したため、神里家全員は永一が死んでいるものだと思っていた。その報告を聞いた者たちの心情は、敢えてここでは語らない。

 

 

 永一が頑張って瀕死の眞を守り影と合わせたせいで、影の絶対永遠の国作ってやるスイッチを原作よりも付けさせてしまい、一心浄土での戦闘が激化した。

 

 

・「お願い働いて私の仙狐宮司」

 容姿とスタイル以外ダメダメな主人公を、あの手この手で厚生させようと努力する巫女の日常ギャグ成長漫画。

 主人公の性格は怠惰で他力本願でダラケもので長いものには巻かれる性格ですぐ媚びを売る体力ゴミのダメダメ人間。(階段の昇り降りだけで死にかける、50m走10分)

・「表紙」

 動いたら負け白Tシャツを来た桃色髪の女性が、畳の部屋で眠たげな顔で寝そべりながら煎餅を食べている。

 主人公が神子に激似であるが別人である。

 

 

 

 

 

 

 

*1
※血も繋がってないし盃も交わしていません。全て彼女の妄想です。鵜呑みにしないように by皆の心にいない永一より

*2
某ゴム海賊2ndと同じ構えで出した刺突

*3
頭、両腕、両足

*4
ハンター協会会長が足でしていた止血方法

*5
遺体に殺菌消毒・防腐・修復・化粧などを施して、故人を生前の姿に近づける処置




もしかしたら後半2があるかも

タイトル元ネタ:仮面ライダー

稲妻編終わったら何編しよう

  • そのままスメール編
  • 回れ右して璃月編
  • そんなことより番外編(茶番)
  • まさかの過去編
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