消えゆく混浴温泉の記録~半出来温泉~
光山荘で一晩寝て、朝になった。
朝食を食べに食堂へ行ったら『昨日は体調大丈夫でしたか?』と女将さんに気を使わせてしまった。
ひかるちゃんは昨日の精神錯乱からすっかり良くなり、ケロッとした表情。
朝食は8割ほど食べる事が出来た。
コンニャクの刺身とシジミ汁が美味しかった。
他の宿泊客は朝食を食べたら次の予定があるのか、早々に出掛けてしまい、9時には我々しかいなくなってしまう。チェックアウトは10時。
せっかくなので昨日入れなかった女湯に入ってみる。
源泉口まわりは硫黄とミネラルで固まった湯の花ができていた。
女将さんにバス停まで送ってもらい、次の混浴温泉へ。
次に向かう温泉は『半出来温泉』という混浴温泉。
半出来…という奇妙な名前はその地区の名前らしく、作物が中途半端にしか育たない貧弱な土地ゆえにこの名前が付いたらしい。
長野原草津口駅から袋倉駅まで移動し、半出来温泉 登喜和(ときわ)荘に到着。
駅から宿までは店主さんが送迎してくれた。
登喜和荘の宿泊は一泊7000円とかなりリーズナブル。
ここの名物はスッポン料理らしいが、今は残念ながらやってないとのこと。
混浴温泉にスッポン料理、精力が付いて良さそうなのに残念。
『料理はまた再開する予定あるんですか?』と聞くと、『うーん、一年くらいは目処が立ってないねぇ…』と歯切れの悪い回答だった。
宿泊客は我々だけ。
だが宿の外には車とバイクが何台か止まっている。
日帰りの客はそこそこいるよう。
ゆるキャン△のステッカー付きバイク。
オタクの気配がする。
『廊下の突き当たりが温泉ですから。部屋は2階に用意してます。まだ部屋の準備出来てないので、荷物だけ置いて、温泉入ってて下さいね。』
そう案内され、廊下を歩く。
数年前に半出来温泉に来た客のブログには、
『廊下にいくつもの鉢植えが。女将さんはお花を植えるのがお好きみたいです。』
と書かれていた。
しかし今は植物が全く置かれていない。
女将さんらしき人の姿も見えないし、もしかしたら女将さんに何かあったのかもしれない。
温泉は更衣室男女別。
更衣室の先には内風呂があり、さらに先には露天風呂がある。この露天風呂が混浴温泉となっている。
女湯に限り女性専用の露天風呂が別途用意されていて、無理に混浴に浸からなくても露天風呂を楽しむことが出来るようだ。
マイナーな温泉だから誰もいなかったらどうしようね、なんて心配してたら、そんなこともなく。
混浴露天風呂は既に日帰り客で賑わっていた。
サーファー夫婦っぽい、浅黒く肌を焼いたヤンチャな見た目の中年夫婦。メガネのおじさん。少しふくよかな体系の若めのお兄さん。
それから私たち2人をあわせると浴槽に6人。
長方形の手作り木造風呂では6人入ればもうすし詰め状態。
ふくよかなお兄さんはバイクでここに来たらしい。
表に停めてあった、ゆるキャン△のステッカーが貼ってあったバイクはお兄さんの?と聞くとそうとのこと。
メガネのおじさんはキャベツを買いにわざわざこの土地まで出向いているそう。
『吾妻キャベツ、ここのキャベツを食べたら他の所のキャベツが食べられなくてねぇ。すんごい甘いの。』
なんて言っていた。
キャベツを買いにこんな僻地まで来る余生の過ごし方、いいな。
私も年取ったらこんなスローライフを送りたいものだ。
半出来温泉での会話は基本的にこんな感じでゆる~い雰囲気。
以前行った塩原温泉の大出館は浴槽が広いため単独のワニ(※)が複数浴槽に点在し、女性客が入ると刺さるような視線を向けてきたが、半出来温泉は浴槽が小さいため会話が発生しやすく、ゆえにアットホームな雰囲気になりやすいのだろう。
(※ワニ…混浴温泉において、女性客が来るのを長時間待つ男性客のこと。その姿が沼地に潜んで獲物を狙うワニのようなのでそう呼ばれる。)
まぁもちろん、温泉の雰囲気はその時々のメンツによって大きく変わる。
途中、見せ付け目的の熟年夫婦がやってきてスケベショーが始まったりもしたが、エロの雰囲気が高まって手を出されそうになってもNOを言えば無理に何かしてくることはない。
人数がいる中で暴走してしまうと収拾がつかなくなりやすい。旅館の方に迷惑をかけないために、多勢の場では守りに入った方が無難だ。
メガネおじさんはここらへんの混浴温泉に詳しいっぽかった。
〝きむら苑〟という混浴温泉はここらでも大きな混浴湯らしく、昨日は100人は居たんじゃないかというくらい大盛況だったらしい。
三連休なので特に賑わってるんじゃないか、とのこと。
風呂から上がってきむら苑の事を調べてみると、結構イケイケな雰囲気の混浴温泉っぽかった。
トリップアドバイザーの口コミにはこんな口コミが。
平日の午後に友人と日帰りで利用した。
泉質やスタッフの対応も良く、のんびりくつろげるなと思って露天風呂に入った。
ここから先はあまり思い出したくないだが、お湯の中に白い粘液状の小さな破片がいっぱい浮かんでいる。こんな湯の花あったっけ?指でつまむとネバネバ。それは男性の精液だった。
そういえば入れ違いに男女のカップルが出て行ったっけ。慌てて湯船から出たけど、カランも無い露天風呂なので体を洗うこともできない。
ここに来たバカップルは何が愉しくて公衆の湯船で性行為に及んで精液を撒き散らすのか、全く理解できない。ここに事情を知らない女性客が入ったら妊娠するんじゃないかと思ったくらいだ。
もちろん2度と来るつもりはないが、管理の甘い混浴温泉では似たようなことが起きるという話を聞いたことがある。
温泉は好きだし混浴も悪いとは思わないが、マナーの悪い一部の客に荒らされるのは本当に勘弁して欲しい。
むむむ、かなりヘンタイ御用達になってしまっている混浴温泉のようだ。
SNSのハッシュタグでもソッチ系の人たちの投稿が目立つ。
もちろん、過激な行為は仲間内でもあまりよしとは思われていない。
あまりにもみだらな行為が横行するようだと警察から指導され、温泉自体が営業停止になってしまうからだ。
承認欲求を拗らせたヘンタイ客と、貴重な混浴温泉の文化を守りたい客。その狭間で揺れ動く混浴温泉旅館。
その絶妙な空気感は是非とも調査してみたい。
『それじゃあ、明日はきむら苑に行ってみようよ』と、特急券をキャンセルし、急遽計画を変更する事にした。
半出来温泉の日帰り湯は20時まで営業している。
それまで私たちは何度か出たり入ったりを繰り返し、色んな客との交流を楽しんだ。
『今日私たち泊まりで来てるんですけど、今は料理がなくて素泊まりなんです』
と言うと、
『コンビニまで買い出し連れてってあげるよ』
なんて親切に車を出してくれる人もいた。
お言葉に甘えてコンビニに連れて行ってもらい、ツマミやおにぎりなどの食料を調達した。
晩飯はそれらと持ち寄った缶詰めでしのいだ。
【▼半出来温泉の写真】
だが夏場は日が照って日差しが暑いらしい。
掛け流しで清掃は毎日はやってないっぽい。
そのため浴槽内に藻が生えて若干ヌルヌルしていた。
滑らないように注意。
7人も入ればギュウギュウ。
コンビニまで買い出しに連れて行ってくれたおじさんいわく、混浴温泉でエッチな事が起こるのは月に1度あるかないかくらいとのこと。ハプニングバーの代替えとして使うには効率が悪いだろう。
そもそもそういう施設ではないのでロマンスを味わう程度で考えた方が良さそうだ。
と常連客に言われた。 この旅館も今はご主人が1人で切り盛りしてるようだし、いつまで続くかは分からない。


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