桂華院瑠奈公爵令嬢暗殺未遂事件の一部始終 表
忘れてはいけない。
この小説のジャンルは『恋愛(現実世界)』という事を。
VIPホームは既に避難客でごった返していた。
車内に入れろと詰め寄る客も居るが、そこは警備員とメイドたちが丁寧に応対する。
「総理が自衛隊に治安出動を命じたみたいです。
とりあえず、この状況も解決に向かいますよ」
情報収集をしていたメイドのエヴァが安心させようと私に情報を流す。
紅茶のティーカップを置いて私は質問する。
「どうして、自衛隊が出ると解決に向かうのかしら?」
「まずは、成田空港の混乱が解決します。
現在の成田空港はこの有様で、警備がめちゃくちゃになっているじゃないですか。
それにはマンパワー、つまりさらなる人員を投入して安全確保に動く必要があるのですけど、警察はその人員をテロリスト包囲に取られていますからね。
自衛隊がテロリスト対策に専念してくれれば、警察側はその人員を全て成田空港の混乱に割くことができます」
なるほど。
現在ターミナル全域で爆発物がないかのチェックをやっているはずだった。
それが終われば、空港内の安全は確保でき、ここの避難客を移すことが出来る。
「あとは純粋に装備の差でしょうね。
テロリスト。
立てこもっているのはテロリストに武器を渡そうとしたロシアンマフィアですが、奴らはイスラム過激派と違って命を掛けてまで抵抗はしません。
自衛隊が前面に出て攻撃をしてきた時点で降伏も視野に入れるでしょうね。
その見世物として、自衛隊は第1空挺団だけでなく、土浦駐屯地から戦車を持ってくるとか」
あったのか。戦車。
聞くと土浦駐屯地には教育用の90式戦車が置いてあったらしい。
あれが出てきたらそりゃ吹き飛ばされて終わりというのが分かるだろう。
その前に警察が暴発して攻撃しなければだが。
何処もそうだと思うが、基本警察と軍は仲が悪いし。
そんな事を考えていたらまたPHSが鳴る。
栄一くんからだった。
「瑠奈。俺だ。
今、空港の駐車場前に来ている。
車を入れたいから警備担当にそっちから言ってくれないか?
車は防弾仕様だ」
「ちょっと待って。
栄一くんが防弾仕様の車を用意してくれたわ。
ホーム前出口に車を入れたいって」
エヴァが頷いて何処かに連絡しているのを確認してから、私はPHSの向こうの栄一くんに話す。
「今交渉しているわ。
うん。
OKが出た。
入り口の近くに車を持ってきて」
「車確認しました。
お嬢様の移動の準備をします!」
橘由香の言葉に、久春内七海が続く。
「1号車と3号車を開放します。
子供と女性を中心に、そこに避難客を集めてから、2号車のドアを開けてお嬢様を外に出します!
2号車の警備は私が残るので、遠淵さんはお嬢様の護衛の指揮を取って頂戴」
「了解!
野月、秋辺、イリーナ、ユーリアは付いて来い!
残りはこの車両の警備!」
「先導は我々がします。
お嬢様はその後を付いて来てください」
夏目警部の念押しに私は頷く。
何かあるとしたらここだ。
ほぼ確信に近い勘のようなものが私に警鐘を鳴らす。
その時、私はお嬢様として守られるだけでいいのだろうか?
それとも……
「おい!見ろよ!
桂華院瑠奈公爵令嬢だぞ!!」
「あんな子供があれだけ大勢の護衛に囲まれて羨ましいこった」
「けど、何でテロリストはあんな子供を殺そうとしているんだ?」
「俺たちが安全なホームに逃げられたのは、あのお嬢様のおかげらしいぞ」
嫉妬と羨望とカメラのフラッシュがホームを出た私を捕らえる。
警備員が怒鳴るが、マスコミ連中が潜り込んでいたらしい。
「公爵令嬢!
一言!」
「今回のテロは公爵令嬢を狙ったものだと……」
「公爵令嬢と米国の繋がりについて……」
傍若無人に避難客を押しのけて警備員を排除しようとするマスコミに私は引きつった笑いしかできない。
避難客とマスコミが押し合いへし合いの混乱を起こそうとして、メイドや警備員たちがそれに巻き込まれる。
それでも私のメイドたちや夏目警部は必死に私を出口に運んでくれた。
階段を登りきり車が見えてきた時、その叫びを私は聞き逃さなかった。
「瑠奈っ!?」
その方向に栄一くんが居て、栄一くんが私達と同じぐらいの女の子にしがみ付いて倒れ込もうとするのを私の目は見逃さなかった。
そしてその娘の手に何が握られているのかまで。
「手榴弾!」
叫びながら自然と体が前に出る。
己の体のチートを、この手のシーンを映画で撮ったことを今ほど感謝したことはない。
「お嬢様!!」
秋辺莉子の脇をすり抜け、マスコミの背を蹴って私は飛ぶ。
私の行動に何が起ころうとするかの理解した夏目警部が叫ぶ。
「テロリストが居るぞ!
手榴弾を持っている!!」
倒れ込む栄一くんとテロリスト。
そのテロリストが押さえ付けられたまま手榴弾のピンを抜こうとする。
お願い。
届いて!
彼女の手を握り強引に押さえ付ける。
テロリストの女の子が私達に何か叫ぶが、手榴弾のピンは外れず、その数瞬後に警察とメイドが殺到する。
「確保!」
「お嬢様ご無事ですか!?」
「栄一くん!栄一くんは無事なの!?」
「こいつ舌を噛もうとしているぞ!
させるな!」
「おい!
彼は帝亜財閥の御曹司で、公爵令嬢のご友人だぞ!!」
映画のような一瞬。
けど、永遠に等しい一瞬。
犯人から離された私と、犯人に間違えられかかった栄一くんはこうして再会する。
「何で映画と同じような事をするんだよ。瑠奈」
「何で映画に出ていないのに、私みたいなことをするのよ。栄一くん」
もみくちゃにされていたが、自然と笑顔になる。
きっと色々な人に私達は怒られるのだろうが、それでもこの選択だけは間違えていないと確信する私が居た。
多分栄一くんもなのだろう。
彼の笑顔が眩しい。
「やってみたかったんだよ。
かっこいいだろう?」
どくん。
少しだけ心臓が違う跳ね方をした。
それに気付きたくない私は、いつものように栄一くんに憎まれ口を叩いた。
「ばーか」
そして私達は車に乗り込んで成田郊外のホテルに避難した。
二人して色々なところから滅茶苦茶怒られたのは言うまでもない。
今回の自爆テロ
洗脳した女性や子どもたちを使ってのテロの手法。
警戒がゆるくなるのと、戦闘での戦力を減らしたくないのでやられると実に厄介。
この手の少年兵問題は中東だけでなくアフリカでも問題になっていたり。