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エピローグ

これで完結です。

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 晴れて想いが結ばれた私たちは、今は婚約中という関係に落ち着いている。仮にも王位継承権を放棄したとはいえ、王弟殿下の結婚式である。それ相応の準備が必要で、結婚は一年後に執り行われる予定である。


 店の経営も順調で、希少で難しい素材などはユリウスが取ってきてくれるようになった。店を経営しながら、ユリウスやケットシーたちが見守る中、私は、使ってしまったエリクサーをいつか再現させようとして、日々、邁進中だった。


 今日も作業中である。そんな私の傍らには愛しい人、ユリウスがいて、見守っていてくれる。


「さて、まずはドラゴンの血から血清を取り出しましょう」


 素材屋から入手したドラゴンの血を試験管に入れて、私は魔力を注ぐ。


凝固(ゲリヌング)


 それから、その試験管に蓋をして、遠心分離機(ゼンティフーゲ)に格納した。遠心分離機(ゼンティフーゲ)の蓋をして、スイッチを入れる。すぐに終了を知らせるブザーが鳴って、試験管はきれいに黄色みを帯びた血清と、凝固化され、もちもちになった赤い部分とに分かれた。


 私は慎重に血清を別の試験管に取り出す。


 次はエタノールの分離だ。


 ワインを加熱する側の蒸留器(ブレナー)に注ぐ。そして、蛇口をひねって冷却水を蒸留器(ブレナー)の冷却管の中に通す。それから、加熱温度を調節するスイッチをひねった。エタノールは、水よりも沸点が低いから、その温度に調節する。


 加熱されたワインが冷却管を通る水道水に冷やされて、エタノールだけが抽出されていく。


 それが終わると、エタノールを規定量ちょうどを血清の入った試験管に入れた。


「最後に青薔薇水晶を粉にして……」


 私は乳鉢と乳棒を使って青薔薇水晶を粉にする。最初は押しつぶすように、そして円を描くように。そして、他の二つの素材が入った試験管に粉を入れた。


 これも、ユリウスが採取してきてくれたものだ。


「この三つの素材を混ぜて、生成(エツライゲン)すればいいのよね……」


 ゴクリとつばを飲み込む。ここまではおじいさまの創薬ノートの通りだ。だけれど、これは創薬レベルSS。今の私には、これを成功させるのは途方もない頂にも思える。


 そんな私に、背後から優しい声が掛かる。見守っていてくれていたユリウスの声だ。


「クリスティーナ。君ならきっと大丈夫。さあ、緊張をほどいて」


 そうして、優しく肩を撫でられた。


「ありがとう、ユリウス。頑張ってみるから、見ててね」


「ああ」


 そうして、私は試験管に向かって両手のひらをかざす。そして、唱えた。


生成(エツライゲン)!」


 素材の入ったビーカーに向かって、私は、両手のひらから限界の限りの魔力を注ぐ。すると、それは溶け合い混じり合い変成し、……薬剤に変わるはずが! 黒く煙を吐き出し始めた!


「やだこれ、前の失敗のやつと同じ……!」


 私はうろたえる。しかし、これが始まってしまってはもうおしまいだ。しかも、ボンッと盛大に爆発した。私も試験管周りもすすだらけだ。


「失敗しちゃったぁ……」


 私は肩を落とす。試験管に残ったのは、真っ黒になった妖しげな液体だった。


 鑑定眼鏡で確認してみるまでもなく、これは紛れもない産業廃棄物だろう。


「はぁ。失敗しちゃった」


 私は肩を落とす。


 そんな私の背後から、「ははっ」と笑い声が聞こえる。


「もう、ユリウス!」


 私は頬を膨らませる。


「そんなかわいい顔をしてもだめだよ。ほら、顔もすすだらけだ。きれいにしないと」


 そう言って、真っ白なハンカチーフをためらいもせずに使って、私の顔についたすすを拭っていく。


「ああ、髪の毛もすすだらけだね」


 そう言うと、髪の毛もハンカチーフで払ってくれた。


「またやり直しだわ。いつになったらおじいさまの域にまで達せるのかしら」


 私はため息をついた。そんな私にユリウスが優しく声をかけてくれる。


「何度でも頑張れば良いさ。君は、出来ないからって諦めたりはしないんだろう?」


「もちろんよ! おじいさまの作った最高傑作、エリクサーを作るのが私の夢だもの!」


 ユリウスが、私の言葉を聞いてにっこり笑う。そして私の額にキスを落とした。


「そうやってめげない、目標に向かってまっすぐな君が好きだよ」


「ユリウス……」


 私は、彼の突然のキスに顔が熱くなってしまう。きっと真っ赤になってしまっているだろう。そんな顔で、彼の方にむき直る。


 そこに、カインが茶々を入れる。


「婚約者にゃんだろう? チッスはしにゃいのか?」


「チッス?」


 私は考える。チッス? それってなにかしら?


 そこに、合いの手のを入れるように口を挟む。


「キスのことだろう? なあ、カイン」


 すると、わかってもらえたことがうれしそうに、カインがぴょんとジャンプする。


「そうにゃ!」


「……だって言うけど、どうする、クリスティーナ」


 ユリウスは、目を細め、艶っぽい顔で私の顔をのぞき込んできた。


 私は、これ以上ないと言うほど胸が鼓動をたたく。そしてさらに耳朶まで熱くなってきた。


「……だって。まだクリスティーナにはキスは早いみたいだよ」


「にゃあんだ、残念」


「くすくす」


 カインとアベルが揃って笑う。


 すると、ふわりと温かなものにくるまれる感触がした。……ユリウスの腕だ。ユリウスに両腕で抱きしめられていた。


「愛しているよ。かわいい私のうぶな婚約者」


 そう言われて私も口を開く。


「私も愛しているわ。……私の、優しくて頼りになる婚約者さま」


 そうして私は、胸に多幸感を感じながら、この愛しい恋人と共に目標に向かって頑張っていこうと思うのだった。

これで完結です。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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