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11-2.

 やがて過ぎること一週間。商店街がざわついていた。


「宝石商のアリーゼとアリーナの双子を見たか?」


「見た見た! あのふかーいシワと、濃いシミがきれいさっぱりさ!」


 そこに、街の婦人たちが二人に食いかかる。


「ねえ、アリーゼにアリーナ、その顔どうしたんだい!」


「いやぁ、ちょっとね、腕利きの魔法薬師に頼んだら、このとおりさ!」


 アリーゼとアリーナがつんと鼻を上向きにして素肌を自慢する。


 二人はきれいになった素肌を自慢したいのか、化粧すらしていない。だが、美容剤シワトールとシミトールを使った二人の肌は、少女のようにきめ細やかで、化粧などいらないほどだった。


 二人が商人街の顔だったからさあ大変。


 自慢した彼女たちにあおられて、商人の女将さんたちがエリュシオンに押しかけてきた。


「美容剤シワトールとシミトールをおくれ!」


「あ、あの……、シワトールとシミトール、それぞれ金貨五十枚かかるんですけれど……。両方ほしいとなると、金貨百枚ですが……」


 そうなのだ。前世での美容外科的に考えて、一度の処方でシワもシミもすっぱりなくなる美容液なんて、五十万円でも安いわよね、と思って、金貨五十枚と値付けしたのだが……。


「そうかい! じゃあ、持ってくるから譲っておくれよ!」


 商人の女将さんたちは押しが強い。


「いやでも、素材が集まるのに時間がかかりましてですね……」


 私はああ、と頭を抱えたくなりながら対応に当たる。ちなみに、薬剤受付なのにカインではなく私がいるのは、女将さんたちの対応に困り切ったカインが、泣き出して持ち場を離れてしまったからだ。そっちもあとで対応してあげないと。


 そう思っている横で、女将さんたちはやいやい言ってくる。


「じゃあ、前のエルクのときのやつと一緒で、受注ってやつにしておくれよ! 私はいつまでも待つからさ!」


 そうして、受注票のリストが出来上がっていく。


 やがて店の開店時間も終わって、店じまいをする。


 受注リストを前に、さてどうしたものかと思いながら、農園(ユートピア)のアベルの元へ尋ねた。


「やあ、クリスティーニャ。夕ご飯の時間には少し早くないかにゃ?」


「うん、夕ご飯の準備はまだなの。水晶花と虹百合の様子を見にね。なんでも、それをから採れる素材を使った美容液が大好評になっちゃって、たくさん作らないといけなくなっちゃったのよ」


「ああ、それは大変だにゃ」


「そうなの」


 ふう、とため息をついた私に、アベルがよしよし、とばかりに私のスカートをポフポフとたたいて慰めてくれる。


「水晶花と虹百合は、一度良い環境に保つと、どんどん横に広がっていくほど繁殖力が強い植物にゃ。一回失敗して枯らしてしまったけど、今度は上手に育ててみせるニャン。そしたら、朝に、昼にといっぱいボクが素材を採っておいてあげるニャン」


 と、頼もしい言葉をくれたのだ。


「ありがとう、アベル。じゃあ、植物をお願いね」


「任せろニャン!」


「じゃあ、ご飯になったらまた声をかけるわ」


 そう言って、一度アベルと別れる。


 さて、カインは商人の女将さんたちに気圧されて傷ついてしまったし、アベルにはこれからお世話になるし、何か喜んでくれるようなお夕飯にしたいわね。


 私は台所に行って、夕食のメニューを考える。冷蔵保存庫(クール・ストレージ)を開けて、しゃがみ込んで中身を確認した。


「白身魚がちょうど買ってあるわね。貝も冷凍してある。あとは、上等な塊のお肉も取ってあったわ」


 そこからメニューを考える。そして、白身魚のアクアパッツァと、ローストビーフを作ろうかと思いつく。


「あの子たちはお魚もお肉も大好きだから、きっと喜ぶわ」


 まずはオーブンを予熱しておく。そして、お肉とお魚も冷蔵保存庫(クール・ストレージ)から出して、常温に戻しておく。


 アクアパッツァには、オリーブ、にんにく、そして彩りにミニトマトとパセリもも入れたい。ローストビーフには、いろいろな野菜のベビーリーフを添えましょうか。


 私は農園(ユートピア)に逆戻りして、アベルに協力してもらって食材を手に入れた。


 そして、調理をするために台所へと戻る。農園(ユートピア)の土で汚れた手を流しできれいに洗って、布巾で拭う。そして、エプロン掛けからエプロンを取って身につけた。


 まずは、時間がかかるローストビーフからね。


 ボウルに下味の材料を入れて混ぜ合わせる。これは、塩とかこしょうとか。そしてそれを、常温に戻しておいたお肉にすり込む。


 それから、フライパンに牛脂を入れて強火で熱し、さっきのお肉を入れて、全面に焼き色が付くまで焼き、火から下ろす。


 オーブンの天板の上に油を塗って、お肉を載せる。そして、それをオーブンでじっくりと焼く。焼き終えたら、しばらく置いて粗熱を取る。


 アクアパッツァはすぐ出来るから、このお肉を焼いて、粗熱を取る待ち時間の間に手をつければ良い。


 三切れの魚の切り身に、塩をふる。水気が出てきたら、清潔な布巾で水気を取る。貝は砂抜きを終えたのを冷凍しておいたからそのまま使える。


 ミニトマトは丸のまま使い、にんにくは香りが良く出るようにつぶす。バジルは粗く刻んでおく。


 フライパンにオリーブオイル大きめのスプーン一杯とにんにくを入れて弱火にかける。香りが出てきたら中火にして、白身魚を皮目から先に焼く。焼き色がついたら上下を返し、次に裏面にも焼き色をつける。


 貝、ミニトマト、オリーブ、白ワイン、水を加えて蓋をする。沸騰したら中弱火でしばらく煮る。


 蓋を外して、オリーブオイル大きめスプーン一杯を回し入れ、鯛にスープをかけながら少し煮る。塩、こしょうで味を調えて、バジルを散らす。


 白身魚に火が通り、貝が口を開けたら完成。


 そして、粗熱を取り終えたローストビーフは、薄切りに切る。そして、ベビーリーフとミニトマトを添えたお皿に盛り付けて、こちらも完成。


 テーブルにカトラリーを並べ、果実水を入れたグラスも並べ、準備する。


 そして、大きな声で二匹に声をかける。


「夕ご飯の準備、出来たわよー!」


 そうして、彼らが来る間に、アクアパッツァ、ローストビーフをそれぞれのお皿に盛る。そして、テーブルのそれぞれの席の前に置いた。


「わぁ、良い匂い!」


 先にやってきたのはカインだ。


「クンクン。お魚とお肉の匂い、両方するよ!」


 アベルもやってきて、二匹で洗面所に彼らの手である前足を洗った。そして、清潔なタオルで前足を拭う。


「やっぱり、お肉もお魚もある!」


「両方だなんて豪勢だね!」


 わあわあと騒ぎながら席に着く二匹。私も一緒に席に着いた。


「今日はカインにとっても頑張ってもらったし、アベルには、これから新しい植物の栽培と素材の採取をたくさん手伝ってもらうからね。そのお礼よ」


 すると、二匹で顔を見合わせて笑ったかと思うと、わぁいと笑った。


 食事は大いに賑わった。


 そうして私は彼らをねぎらったのだった。

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