11-1.美容剤シワトールとシミトール
素材採取から帰ってきてから数日経った休店日。私は早速美容剤シワトールとシミトールを作ることにした。
美容剤シワトールの材料は、カエルの皮、エタノール、水晶花の蜜。
美容剤シミトールの材料は、真珠の粉、エタノール、虹百合の朝露。
カエルの皮は、アベルがマムシのときのように、農園でお尻をフリフリしながら狩りをしてくれて、カエルを狩ってくれた。
エタノールも、ケハエールのときのようにワインから蒸留してある。
水晶花の蜜は、採取してきて農園に植えた水晶花から、毎日咲いた花から採取させてもらった。
虹百合の朝露は、採取してきて同じく農園に植えた虹百合から、毎朝朝露を採取して集めた。
そうして数日経って、ようやくすべての素材が集まったのだ。
「でも今回の美容剤には問題があるのよね……」
なんと、おじいさまの創薬ノートによれば、創薬レベルAと書いてあるのだ。私はまだ、創薬レベルBまでのものしか作ったことがなかった。
「作れるかしら……」
私の脳裏に不安がよぎる。
私は、その不安を吹き飛ばすかのように、頭をふるふると振った。
「これを必要としている人がいるのよ。頑張らなくてどうするの、私!」
私は、自分に奮起させるよう言い聞かせた。
カエルの皮は、干しておいたものを乳鉢ですりつぶして粉にする。
それを、試験管に入れ、エタノールを入れ、水晶花の蜜を入れる。
私は、両手のひらから三つの素材の入った試験管に必要な魔力を注ぐ。すると、それは溶け合い混じり合い変成し、……薬剤に変わるはずが! 黒く煙を吐き出し始めた!
「やだこれ、失敗のやつ……!」
私はうろたえる。しかし、これが始まってしまってはもうおしまいだった。
「失敗しちゃったぁ……」
私は肩を落とす。試験管に残ったのは、真っ黒になった妖しげな液体だった。
一応鑑定眼鏡で確認してみる。すると、試験管の上に『産業廃棄物』と表示された。
「あーあ。やっちゃった」
これでは、水晶花の蜜の素材採取からやり直しだった。
「どうしよう……私にはレベルAは難しすぎるのかしら?」
でも、いつまでもレベルBだけでとどまっていては成長できない。思い切って、まだ材料のある美容剤シミトールを挑戦してみることにした。
「頑張らないと、成長できないのよ、私! 頑張りましょう!」
自分に言い聞かせるようにやる気を奮い立たせた。
試験管に乳鉢で粉にしておいた真珠を入れ、エタノールを入れ、水晶花の蜜を入れる。
──これを必要としている人がいるの。どうか、出来てちょうだい!
思いを込める。
そして、 私は、両手のひらから三つの素材の入った試験管に必要な魔力を注ぐ。すると、それは溶け合い混じり合い変成し、薬剤へと変わっていく。キラキラと輝いたかと思うと、強い魔力を注ぎ込んで真珠のように輝く液体が出来上がった。
「これはもしかして!」
私は期待を込めて鑑定眼鏡をかけて鑑定する。すると、試験管の上に『美容剤シミトール、良質』と表示されていた。
「やったぁ! 出来たぁ!」
私は拳を上げてジャンプする。
私は慎重にやれば、レベルAのものだって作れるのよ!
ものが出来上がったことと、自分の創薬の実力が上がったことに感動して、私はしばらくはしゃいでいたのだった。
そうして、水晶花の蜜の素材採取をすること数日。私は二度目のチャレンジに臨んでいた。
「今度こそ成功させるわ……!」
カエルの皮も、アベルに狩りをし直してもらった。
その、粉にしておいたカエルの皮を試験管に入れ、エタノールを入れ、水晶花の蜜を入れる。
──今度こそ、今度こそ。これを必要としている人がいるの。どうか、出来てちょうだい!
強く、強く、思いを込める。
そして、 私は、両手のひらから三つの素材の入った試験管に必要な魔力を注ぐ。すると、それは溶け合い混じり合い変成し、薬剤へと変わっていく。キラキラと輝いたかと思うと、強い魔力を注ぎ込んで虹色に輝く液体が出来上がった。
「今度こそ、もしかして!」
私は期待を込めて鑑定眼鏡をかけて鑑定する。すると、試験管の上に『美容剤シワトール、良質』と表示されていた。
「やったぁ! 今度こそ出来たぁ!」
アリーゼさんとアリーナさんに早くこの成功を教えてあげたいとドキドキと胸が高鳴る気持ちを抑えつつ、漏斗を使って試験管から薬瓶へと移す。そして、薬瓶にコルクで蓋をした。それを二回繰り返した。
「二人に渡してあげなきゃ!」
もう営業は終わりに近づいている時間だった。カインに留守番をお願いして、急いで出かけてしまおう。宝石店が開いている間に二人に渡してあげたい。
私は創薬室を出て、カインのいるパン販売コーナーまで走っていく。
「あとお店もう少しだから、店番、していてくれる?」
そうお願いすると、カインがひげを揺らす。
「お? 薬が出来たのかにゃ?」
「そうなのよ! だから、お店が開いている間に渡してあげたくて!」
「それは良いにゃ! 暗くなる前に帰って来るにゃ!」
「わかったわ。じゃあ、残りのお留守番よろしく! 帰ったらお店じまいを一緒にしましょう!」
そう言って、私はポシェットを斜めにかけて、大切な二つの薬瓶をその中に入れる。
「行ってきます!」
そうして、私は二人が経営する宝石店へと向かったのだった。