07-4.閑話.黒騎士の独白
ユリウスは食事とクリスティーナとの会話に満足して帰途についていた。帰る先は王城だ。
実は彼は王の末の弟、王弟だった。だが、まだ王に子がいなかった頃、自分の存在が実の兄の王位に災いをもたらすことがあってはならないと、王位継承権を放棄し、騎士の位に下った身だった。
とはいえ今は王には子宝に恵まれ、長男が王太子位についている。
王位簒奪などはかる輩が差し入れる隙もないくらいに、王位は安泰だ。その安泰にあぐらをかいて、黒騎士などと賞賛され、王国の安定に不和をもたらす可能性のある魔獣たちを狩って生きている。
外向きには王弟だと言うことは明らかにしていない。王の末弟がユリウスだと言うことも王都では知っているものは少ないし、そもそもユリウスというのは良くある名だった。
そんな彼は、王都では黒騎士として知られ、国の守護神などともてはやされている。
「それにしても、誰かと共に食事を採るというのも良いものだな」
ユリウスは馬に乗って王城に向かいながら、満足げにうなずいた。
──彼女は、すごい人だ。
彼女のヒールポーションはほかの店のどのものよりも品質が良く、怪我に使うと回復が早かった。あんなものを作れるのは御典薬師くらいなものじゃないだろうか。
一度一年前ほどに御典薬師の作ったヒールポーションから支給してもらったことがあったが、それを思い出させるような回復具合だった。
──あのヒールポーションがあれば安心だ。
そして、食事。
──彼女が作る食事が好きだ。そして、彼女と過ごす時間も。
だが、一緒に食事を採ってみると、彼女の食事の所作は、まるで貴族を彷彿とさせるような洗練されたものだった。
──もしや彼女は貴族出身?
何らかの事情で没落した貴族が身を立てるために商いに手を出すこともあると聞く。だが、彼女からはそんな暗さは感じさせなかった。あくまでも彼女は明るく愛らしかった。
やはり、大きな商家の娘さんが何かが、親の手を借りて気まぐれで店を商っているのだろう。
その気まぐれが私をいやしてくれる。