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全日本創作で全員殺す選手権

アニメ化を機に「ブルーピリオド」を読みはじめたのだが、刺さりまくっている。

わかるわかる…! っていうところが多いが、特に好きなシーンはこちら。


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藝大受験がテーマのマンガとしては、「かくかくしかじか」とかも好きだったんだけど、こちらはまた別の面白さ。

藝大受験って、
「点数で測りにくいものに、評価をつけて並べられ、合否を決められる」
という点で、小説の公募にもつうじるところがあって、響いちゃうんだよな。

読んでいて、昔のことを思いだしてしまったので、ちょっと書いておく。


デビュー前、僕は2年半ほど、小説講座にかよっていた。
プロを目指す作家志望者のための文芸講座で、ベテラン編集者が講師をしてる、界隈では結構有名な教室だ。

こうした講座ってレベルがピンキリで、ほかに2つほどかよったこともあるのだが、そちらは1~2回だけ行って辞めてしまった。やっぱり講師の力量によって、ぜんぜんちがうのだ。

その教室の講師編集者は百戦錬磨で、本職ってすごいんだなぁと思わされた。受講生の提出する作品に関して、こうすればもっと良くなるという講評をするのだが、それらがことごとく腑に落ちるのだ。
たとえそれが、どんなに箸にも棒にもかからない作品(ある程度の水準にあるのは、10作に1作だ)で、なにをコメントすればいいんだよ……といったものであったとしても、講評を聞くと、「ああ、確かにそうすれば違うな…」と思わされてしまう。それまで自分に見えていなかった観点が見えてくる。
提出される作品のジャンルは多種多様なのに、それらすべてに対応していく幅広さは、まさに百戦錬磨だった。(とはいえ、ラノベやキャラ文芸はわからないみたいだったけど)
年齢が3回り以上も離れていたので、センスの部分の乖離はさすがにどうしても感じたけれど、土台の技術部分にある経験だけで、40も年下の若造に「なるほどすごいな」と納得させるのってすごいことだ。
小説に対する情熱にあふれていたし、尊敬していたんだよね。

で、僕はこういっちゃなんだが、評価されていたし、期待されていたと思う。
受講生にファンになってくれた人もいたしね。うれしかった。
1作め2作めあたりは、まだ小説の書き方もよくわからないまま書いていたんだけれど、講評(自作に対するものも、ほかの受講生の作品に対するものも)をとおして、小説の形を学んだ。
僕は貪欲なタチだったので、結構なペースで技術を吸収していったと思う。

はじめの1年間は、すごく刺激的で楽しかった。
回を重ねるごとに、どうすれば自分の手足を自分の思いどおりに動かせるかが、わかってくる感じだった。

ただ、1年をすぎたあたりから、雲行きが怪しくなってくる。
講評を受けているうちに、ムカムカすることが増えてきた。
それは、認められなくなったわけじゃなくて。
褒められることに、耐えられなくなってきてしまったのだ。
(いや、なんで褒められて不満なんだよ贅沢な! と、いま振り返ると思うんだけど、そうだったんだよ)


ブルーピリオドの中に、こんなシーンがある。
まわりと合わせて無難に生きてきた主人公が、美術の道を志すきっかけになったところ。

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(「ブルーピリオド」1巻 より)

僕、ここの気持ちがすごくわかるんだよな。
ものを書きはじめたきっかけは、人と会話したいと思ったことだったから。


テクニックはだんだん、身についてきたんだ。
でもそれは、自分が描きたいものを描くために身に着けていった、あくまで手段であって、自分が大事にしていた核っていうのは、きっと別のところにあったんだ。
それがわかっていなかった。

小説は、褒められるんだ。
でもそれは、講師の話を聞いてるうちに身に着けた、テクニックのものさしに沿った部分だけだったんだ。
自分が本当に大事にしていた部分は見てもらえない。
僕は褒められることで、逆に無視されているような気がして、虚しく感じるようになっていってしまった。

けなされるんなら、わかるんだよ。
「自分の力が足りなくて、伝わらないんだな。じゃあどうすればいいんだろう?」って考えられる。こんちくしょうが、とも思えるだろう。

褒められるのに、何も伝わっていないあの感じ。
そうじゃないんだよ、って。
なんだろう。目の前できょうだいばかり褒められているような。
だんだん、いたたまれなくなってしまって、辞めちゃったんだけど。

ピュアすぎる!
もっと理想を低くしろ!
人間なんて、ウンコマンだ!
……とか、今なら思うんだけどね。

当時はなんか、許せなかったんだよなぁ。


で、これ、運良くデビューしたあとも尾を引いて。
やっぱり、評価されるほど、辛くなっていっちゃったんだよね。
……我ながら、恐ろしく面倒くさいやつだ。

商業の世界は、講座とは、またものさしが全然違ったんだけど。
僕は貪欲なタチだったので、そのものさしに沿ったテクニックはだんだん、身についていったと思うんだ。
でもそれは、自分が本当に大事にしていた部分とは、やっぱり違ったんだよなぁ。
そりゃそうなんだよねええ…。

やっぱり、ものさしに沿った部分しか、見てもらえないよな。
商業だからあたりまえか、でもツマンナイな、って。

今なら、そのものさしの大事さはすごくわかるし、そんなことはないよ~と思うんだけども。

それで、辞めて趣味にもどろうかなと思って。
辞めるからもういいやと思って、ちょっとワガママいって自分の好きなようにやらせてもらって。
そのときにはじめて、あ、自分が大事にしている部分が伝わったかな、っていう経験をしたら。

それからあまりそのへん、気にならなくなった。
一度満足する必要があったのかもしれない。

スタンスにもよるのかなあ。
文芸の空気の中にいたときは、それこそ全員殺すつもりで書くし、そうすることが求められる空気感があった。
でも、最終選考作とか受賞作を読むと、「なんかおまえらエラソーなこと言ってるけど、結局のところ自分が見てきたものを評価してるだけやんけー!」って、正直思った。
(いやまあ、選考っていうのは、究極的にはそういうものだよ…)

でも、マンガ出身の人と話してみると、ちょっと違ってさ。
あっち、作家と編集が雑談しながら、書くものの方向性を決めていくみたいな文化があって。(編集部にも人にもよるんだけどさ)
つまり、「人間、自分が好きなものを好きなのはあたりまえなんだから、好きなものを出しあってみようか」っていう感じ。

その飾らない感じが、性に合ってたのかもなぁ。
殺すつもりで書くんじゃなくて、いっしょに楽しもう、って。


褒めてもらったらよろこんどけばいいじゃん。
自分の大事にしているところは、自分の中で大事にしておけばいいし。
それとは別に、人に評価されるところは、ただ武器としてあつかえばいいだけじゃねえ?
あまり理想を高く持ちすぎると、自分も他人もツライぞ。

そういった、わりとフツーのことに、気づくのがすごくむずかしかったんだよなぁ。
あれが若さというものだったのだろうか。

歳食うとさすがに、そんなナイーブさは持っていられないんだけど。
青春の尖りだよなぁ、バカだけど嫌いじゃないんだよなぁって、なんとなく懐かしく思ってしまうのだ。

ということで、みんな、ブルーピリオド読んでドロドロしよう。


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