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『作劇とは、不安定な状態へ持ち上げ、安定した状態へ落とすことである』

僕が創作で心がけてる言葉7選と題して以前講義した資料を、数回に分けて掲載していくよのコーナー。
4つめも創作技術の話!

『作劇とは、不安定な状態へ持ち上げ、安定した状態へ落とすことである』

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とつぜんだが、以下スライドの、
「左の円」と「右の円」、「左のパズル」と「右のパズル」
どちらが、気になりますか…?

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僕はこういう狙いがミエミエの問いかけを受けると、意地でも問いかけたやつが答えてほしい答えと逆方向に行きたくなってしまうひねくれ者なのだけど、世の中の人たちはみな優しいので、こちらの狙いを看破したうえで予定調和的な回答をしてくれるものと期待して進みます。
そう。

「右の円」と「右のパズル」の方が、気になりますよね…?(圧力)

円の欠けた部分に、線を足したくなっちゃうし…。
パズルの埋まっていない部分に、ピースを埋めたくなっちゃうし…。

完成した円と完成したパズルには、それ以上なにかを足し引きする余地がありません。「安定した状態」といえます。
対して、未完成の円と未完成なパズルは、「不安定な状態」であり。
人は、不安定な状態を提示されると、無意識に安定な状態を期待する、心の癖があるのではないかと思っています。

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なので僕は、作劇に関して、「不安定な状態を提示する」っていうことだけ考えてみるのも、ひとつのやり方かなぁと思っていて。
もちろん、ほかにも作劇に対する考え方はいろいろあって、それらはすべて正しいとは思うんだけど……あまりいろんなことを考えすぎてると、肝心の流れが見えなくなっちゃう気がするので。
まずはシンプルに、「出だしでなにかしら不安定な状態を提示してやる」と考えるだけでも、いいんじゃないかなと。
不安定に着目すると、そこに「安定した状態へ落ちていくための流れ」みたいなものが自然発生するので、あとはそれに沿って書いていくだけ……くらいシンプルに考えると、迷いにくいんじゃないかなと思います。
僕はデビュー直後、いろんなことを考えるうちに、小説の書き方がよくわかんなくなっちゃったんだけど、初心にもどって不安定な状態の提示だけ考えたら、ちゃんと書けるようにもどった、というのもあり。(絶望鬼ごっこの1巻は、「出だしに不安定を2つ提示する」という形の物語です)
なるべくシンプルに考えるときの、一つの型かなと思っています。

ちなみに、なぜ不安定な状態へ「持ち上げ」、安定した状態へ「落とす」なのかは、僕がこの考え方を高校化学のエネルギーの関係として捉えているからです。原子とか分子って高エネルギー状態から低エネルギー状態へ遷移しやすく、つまり高エネルギーなことって状態としては不安定で、それが安定状態へ遷移したときの差分が熱エネルギーなどに変換されるっていうのは、わりと人の心とおなじかなって…。…頭湧いてんですか?

で!
小説のジャンルっていうのは、シンプルに考えれば、
その物語で語られるのが、どんな不安定状態と安定状態なのか?
ということなのかなと思っていて。

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「わかっていない」不安定状態が提示され、「わかっている」安定状態へ落ちるのを描くのがミステリ。
「危機が迫っている」不安定状態が提示され、「危機が去っている」安定状態へ落ちるのを描くのがサスペンス。
「問題を抱えている」不安定状態が提示され、「問題を解消している」安定状態へ落ちるのを描くのが人間ドラマ。
「欲している」不安定状態が提示され、「手に入れている」安定状態へ落ちるのを描くのが少年漫画。
……みたいな?
まあ、ホラーや怪談は捉えられない気がするんだけど。なので僕はホラーの描き方がよくわからん…。

僕は小説を書くときに、ジャンルをあまり意識したことがないんだけど、たぶんこんなふうにジャンルじゃなくて、「なにを不安定にするか?」を軸に作劇を捉えているからなんだと思うんですよね。
物語の基本構造は、「不安定」を「安定」にもどすこと。
こまかい技術論で道に迷ったら、自分の描きたい不安定と安定を意識してみることだけ、まずは考えてみてもいいんじゃないかな、と思うなどします。

以上、心がけてる考え方のひとつ、『作劇とは、不安定な状態へ持ち上げ、安定した状態へ落とすことである』でした!

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