財務省が11日発表した2025年度上半期(4~9月)の国際収支速報によると、海外とのモノやサービス、投資の取引状況を示した経常収支は前年同期比14・1%増の17兆5128億円の黒字だった。この状況は続くのか。

 まず、国際収支の経常収支黒字について、歴史的に重商主義時代にはいいものと信じられていたが、今となっては経済学的には誤りであることが知られている。

 カナダのように経常収支が100年以上にわたりほとんどの年において赤字でも、発展してきた国もある。アイルランド、オーストラリア、デンマークなどの経常収支も第2次世界大戦以降大体赤字であるが、それらの国が「損」をしてきたわけでもない。

 世界各国の平均経常収支対国内総生産(GDP)比と平均実質成長率について、長期的にみると相関はほぼなく、経常収支対GDP比と実質経済成長率にはなんら関係がないことが分かる。こうした意味で、経常収支黒字が望ましいわけではない。

 経常収支については、国の発展段階で異なるという「国際収支の発展段階説」がある。

 「国際収支の発展段階説」によれば、国の発展の初期段階では、輸出するものがなく、資本も海外に頼るので、経常収支は赤字となる。この段階では対外純資産はマイナスである((1)未成熟・成熟債務国段階)。

 そのうち貿易収支が黒字化し、所得収支は赤字になり、経常収支が徐々に黒字になる。そうなると対外純資産はゼロからプラスになる((2)債務返済国)。

 その次には所得収支も黒字にある。このときになると巨額の経常収支になる。対外純資産は大きなプラスである((3)未成熟債権国)。

 その次の段階では、貿易収支が赤字になり、所得収支が黒字になり、経常収支の黒字は縮小する。対外純資産はプラスだが増加が鈍化する((4)成熟債権国)。

 そのうち、貿易収支の赤字が多くなり、経常収支も赤字に転ずる。こうなると、対外純資産は縮小に転じる((5)債権取崩国)。

 今の日本は(4)成熟債権国の段階で経常収支黒字であるが、もうしばらくすると、いずれ(5)債権取崩国になり経常収支赤字になるだろう。

 ただし、この考え方は超長期に妥当するが、数年間の説明にはまったく適当でないことに留意すべきだ。

 もちろん、(4)成熟債権国や(5)債権取崩国であっても、成長するかしないかは、その国の経済運営次第だ。

(たかはし・よういち=嘉悦大教授)

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