高市早苗内閣では、片山さつき氏が古巣である財務省のトップに起用された。積極財政を掲げる高市内閣において、財務省の意識改革は進むのか。

 財務相に就いた片山氏が財務省に初登庁したのは10月22日。出迎えた財務省職員の中で新川浩嗣財務事務次官とおぼしき人物が90度近い最敬礼をしていた。22日午前、財務省4階の講堂で開かれた新大臣による訓示式では、片山氏が壇上から「私も60代半ばで『恐竜』になる年ではないので安心してください」と語りかけると和んだ。

 恐竜とは仕事に厳しい上司を指す隠語である。冗談で「恐竜番付」を作っていたが、片山氏も番付上位の常連だった。

 22日の就任会見で、財務省を批判する言葉を挙げ「『ザイム真理教』だからデモが起こるスタンスになっている」と指摘した。その後の記者会見でも、財務省の意識改革は徐々に進展しつつあるとし、対外公表用のパンフレットの表現を変えたことを指摘している。

 ただし、組織の意識改革は難しい。何しろ長年日本の財政は悪いと言い続けてきたのが財務省である。

 財政状況は、市場で客観的に見られる。CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)といい、各国が国債が紙切れになった場合に備える「保険」がある。

 その保険料は世界中の参加者がいる市場で決まる。参加者はみな身銭を切っており、格付け会社が分析もなく独断で判断する格付けよりはるかに信頼されている。もちろん保険料なので、危ない国ほど高いというデータで、これも公開情報で客観性がある。

 11月14日現在のデータ(単位0・01%)によれば、カナダ39・60、米国32・82、フランス32・23、イタリア30・42、日本20・12、英国19・87、ドイツ8・26。日本はG7中3位だ。

 このデータの推移を15年にわたって確認すると、最も高かったのは、民主党政権末期であり、150ほどだった。

 その後、政権交代によって安倍晋三政権の誕生が確定的になり、アベノミクスの実行が予想されると、急速に低下しはじめた。安倍政権の後半あたりから、CDSは低位安定的になってきた。現段階での破綻確率は今後5年で0・5%を割っており、とても財政危機とは言い難い。

 筆者としては、意識改革もさることながら、財務省はこうした世界標準のファイナンス論で日本の財政を語ってほしい。そうなれば今の財務省がいう、狭い範囲における政府の債務残高でなく、純債務残高に着目すべきであることが分かるだろう。

(たかはし・よういち=嘉悦大教授)

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