にじボイスさんの件。あえてどこにもぶら下げずコソっと。
日本人的発想だと「うやむやなままにして逃げ出した」という感じかもしれませんし、実際にはやましいことがあったのかもしれませんが、純粋に両者から表に出てきている情報だけで判断すると、欧米的ビジネス観点からは「賢い戦略的撤退」になると思います…たぶん私が社長でも同じ判断をしていると思います。もちろん「正義があれば戦えばいい!」という話はあるとは思いますが、それは正直なところ外野のノイズにすぎず、「じゃあキミが同じ立場に立ったら本気で戦えるの?」という話なんです。
自分たちよりも規模も声も大きい団体に睨まれれば事実は関係なく風評被害は免れられない、その状態で売り上げが減ることはあっても伸ばすことは無理でしょう。そして何よりたとえスラップだったとしても裁判を起こされたらひとたまりもない。ベンチャー企業が少ない利益の中から裁判費用を出して、下手をすれば仮差し止め喰らって事業収入がない中で数年に渡る戦いで勝ち得るものがどれだけの価値になるのか…それを天秤にかけて肯定的な結果が出るものは残念ながら「訴訟を起こされる=悪」の日本では大企業ですらほとんどないです。
例えば直近だとコナミ vs Cygamesの訴訟がありましたが、あれだけ有利だったCygamesが和解金払ってまで裁判を終わらせたのは名を棄てて実を取った結果であり、裁判というものがどれだけ難しいかを物語っていると思います。
つまり、それだけのマイナスを背負って、勝っても得られるものは今と変わらず負けたら全部失うどころか負債のおまけつきになるかもしれない賭けをする人はどれくらいいますか?という話なんです。それならサンクコストが少ない今のうちに撤退し、将来的に消費されるであろう費用を別の事業に振り分けたほうがよっぽど賢い。
ビジネスとは、そういうもの。
もちろん、いち利用者としては日本語ボイスの中でもかなり高品質(自分が知りうる中では最高峰)で使えるボイスの数も多くアニメに向いているものだっただけに残念で仕方ありませんが、これが最適な判断だったということも理解できます。
苦渋の決断だったと思いますが、これまで良質なボイスを提供してくれていたことに深く感謝申し上げます。関係者の皆様の未来が明るいことを願って…。
…ただ…1つだけ残念だったと言えば、これで「声の問題は圧力を加えれば良い」という成功体験を既得権益側にさせてしまったことでしょうか。今はにじボイスさんだけですが、これが別のボイス提供企業やボイチェン使っている人などに波及した時に業界がどう濁っていくのか…は、あまり想像したくありませんね…。