米国の人種差別の矛先、今度はインド系米国人に 背景に経済的不満
高度技術者向け就労ビザが非難の的に
ナイク氏らによれば、なかでも一貫して非難の的になっているのが、高度な外国人技術者向けの就労ビザ(査証)「H-1B」だ。取得者の国籍はインドが最も多い。H-1Bビザをめぐってはトランプ政権内部でも意見が分かれ、ミラー大統領次席補佐官ら反対派はインドが「移民政策関係で多くの不正行為」を働いていると非難してきた。トランプ氏は立場が定まっていなかったが、このほど10万ドル(約1550万円)の申請手数料を課すことで制限に乗り出した。 極右のアカウントや活動家らは、インド系移民を米国人から高収入の職を奪う詐欺師と呼び、送還を求める発言を繰り返している。インド人は自分と同じカースト(階級)や民族の出身者しか雇わないと非難し、「汚い」「くさい」というレッテルを貼り、手を使って食べるといった風習を後れた文化として取り上げる。これは極右のネット荒らしに限った傾向ではない。最近のニューヨーク市長選では、無所属で出馬したクオモ前ニューヨーク州知事の陣営が、対立するインド系のゾーラン・マムダニ氏に対する中傷広告で、同氏が米飯を手で食べるAI生成の映像を流した(が、まもなく削除した)。 南アジア系の人々に対する中傷は、ほぼ放任状態のネット掲示板「4chan(フォーチャン)」などで始まり、今やオンラインでも実社会でも急増して共通語となりつつある。公共の場にいるインド系の人々をわざわざうつし出した写真や映像が、「侵略」の証拠として掲げられる。その背景にあるのは、白人人口が移民らによって「置き換えられる」という説だ。こういう説は、ひとりでに生まれたわけではない。トランプ氏が大統領に初当選するよりさらに前から、同氏周辺のスティーブ・バノン氏やミラー氏ら有力者は、白人至上主義者らが好むフランスの小説「Le Camp des Saints」を教訓として引用していた。インド系移民がフランスを侵略し、西側世界を屈服させるという物語だ。