米国の人種差別の矛先、今度はインド系米国人に 背景に経済的不満
地位や名声を手にしたインド系米国人が格好の標的に
ナイク氏とともにCSOHの報告書をまとめたサンタクララ大学のロヒット・チョプラ教授によれば、この人種差別的、経済的な不満を背景に、地位や名声を手にしたインド系米国人が格好の標的となっている。米調査機関「ピュー・リサーチ・センター」が国勢調査を分析した結果によると、インド系移民とインド系米国人は米国内の人種、民族のうち最も高所得の層に属する。政府の要職や大企業の最高経営責任者(CEO)に上り詰めたり、メディアや娯楽、科学技術、ビジネス、医療、学術分野のトップで活躍したりする人材も多い。 このイメージが全体を反映しているわけではない。米国内にいるインド系の人々は宗教的、民族的に多様な集団で、米市民権や合法的な就労ビザの保持者から留学生、不法移民まで含まれる。だが裕福なインド系米国人に対する長年の反感が高じ、インド系の人々全体を悪者として敵視する風潮が広がっている現状では、それが現実世界の暴力を触発する恐れもあると、チョプラ氏は指摘する。
ネット上の反インド感情が日常にも波及
フロリダ州パームベイでは最近、市議会議員がSNS上でインド系住民への中傷を繰り返して一斉送還を主張し、政治的責任を問われて解任された。インド系のIT技術者が多いテキサス州アービングでは、覆面の3人組が路肩に立ち、「私のテキサスにインドを持ち込むな」「H-1Bビザの詐欺師たちを送還せよ」というプラカードを掲げて抗議した。 アジア・太平洋諸島(AAPI)系米国人へのヘイト行為に抗議する米NPO「ストップ・AAPIヘイト」に今年報告されたという人種差別的な事案からは、トランプ氏やその周辺からの発言が敵意をあおっていることがうかがえる。ジョージア州のある女性は、ファストフード店で別の客から、移民税関捜査局(ICE)に連絡してインドへ送還してもらうと脅された。 バージニア州の男性も今年、友人と食事をしていたレストランで男に絡まれた。男は暴言を吐いてトランプ氏の名前を挙げ、「国へ帰れ」「(南インドの古典舞踊)バラタナティヤムを踊れ」と迫った。さらに暴力を振るうと脅して店の前で待ち受けていたため、友人が警察に通報したという。 この男性は「多くの人々が、2016年以前は口にできないと思っていたようなことを怒鳴り散らしている」と語った。