熊本県が目指す家事支援の外国人材受け入れってどんな仕組み? 懸念や批判の声相次ぐが… 導入したのは安倍政権、国家戦略特区で 県「子育て世代支援のため」強調
熊本県が、地域限定で規制緩和する国家戦略特区を利用して炊事や掃除などの家事支援サービスに従事する外国人材を受け入れると発表したところ、「犯罪やトラブルが増えるのではないか」「移民の受け入れには反対だ」といった懸念や批判の声が相次いだ。県は「子育て世代の支援のため」と事業の目的を説明する。県が目指している外国人材受け入れとは、どんな事業なのか。 事業は安倍晋三政権下の2017年、神奈川県を皮切りに始まった。外国人が「家政婦」として日本国内で雇用されることは外交官の家庭などを除いて原則禁止だが、特区内に限り、企業が雇って日本人の一般家庭に派遣することも可能とした。働き手不足が経済成長の妨げになるのを防ぐため、家事を支援することで女性の就労拡大につなげる狙いだった。 希望する家庭は、専門の外国人材を雇用したダスキンなどの受け入れ企業と契約を結ぶ。業務は炊事や洗濯、掃除、買い物などで、在留期間は5年。企業は外国人材に日本人と同等額以上の報酬を払う決まりだ。
入国に当たっては地方の出入国在留管理局が知識や技能、日本語能力などを審査する。受け入れ企業には自治体や国の機関でつくる第三者管理協議会が年1回監査に入る。内閣府地方創生推進事務局によると、現在は送り出しの態勢が整ったフィリピンのみから人材を受け入れている。 今月初旬時点で、全国では東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県、愛知県、千葉市が事業を導入している。24年度は6自治体で延べ3775人の外国人を受け入れた。東京都では8万8千世帯が利用した。日本人家庭の利用が多く、需要は伸びているという。 熊本県は台湾積体電路製造(TSMC)進出に伴う半導体関連産業の集積を受け、24年6月に国家戦略特区に指定された。外国人エンジニアらの在留資格審査のスピード化などに加え、特区で可能な事業として家事支援サービスの外国人受け入れにも手を広げる。 日本人家庭のほか、県内で働く外国人世帯の利用も想定し、26年の事業開始を目指す。だが、反響は県の予想を超えた。