アンケートの結果を加味して、これからは気持ち早めに書く気持ちで行きます。
今回は短いですが次からは4000文字くらいに戻ると思います。
『ん。怪しいトラック見つけた』
通信越しに砂狼さんの声が聞こえる。
「多分それじゃないか。不良街に一般トラックが停車しているとは考えにくいし」
「先生の調べたデータを加味してもセリカちゃんが乗っている可能性はかなり高いです」
「だってさ。まぁ間違ってても先生が責任取ってくれるだろ」
”え!?”
何か言ってる先生の声を無視して、俺はアビドスにあった予備の銃の手入れをする。
アヤネさんになんかやることないか聞いたらコレをやってくれと頼まれたのだ。
先生、今回の俺はしっかり働いています。
「とりあえずどうにかして荷台の中身確認する必要があるな」
『分かった。破壊する』
「え?」
その瞬間、通信機越しに爆発音が届く。
ロケットランチャー系の爆発物を持っていなかったことから、恐らく撃った弾がエンジンや燃料タンクあたりをいい感じに貫いたのだろうが―――。
「えぇ…」
まだ一般トラックの可能性も僅かながらにあったというのに。
ていうかキヴォトス人が丈夫とは言えセリカさんが乗っているであろうトラックを爆破するとか。
流石キヴォトス人様。さすキヴォである。
「あ!セリカちゃん発見!生存確認しました!」
アヤネさんの言葉に、後ろからノートパソコンをのぞき込んでみると、煙で咳き込むセリカさんの姿があった。
どうやら無事だったようだ。
『……あっ、アヤネちゃん?!』
こちらの音声に気が付いたセリカさんの声をドローンのマイクが拾う。
『こちらも確認した、半泣きのセリカ発見!』
『!?』
『なにぃー!?うちの可愛いセリカちゃんが泣いてただと!そんなに寂しかったの?ママが悪かったわ、ごめんねー!!』
『う、うわああ!?う、うるさいっ!!な、泣いてなんか!!』
『嘘!この目でしっかり見た!』
『泣かないでください、セリカちゃん!私たちが、その涙を拭いて差し上げますから』
セリカさんをからかってじゃれ合うアビドス生徒。
”その涙売れば借金返せそうだね”
「先生は一回寝ましょう」
ドラゴンの涙じゃないんだから。
俺も100円くらいしか出さない、流石に。
『あーもう、うるさいってば!!違うったら違うのっ!!黙れーっ!!』
煙が目に染みて涙が出ていると思っていたが、この反応的に多分普通に泣いていたな。
無理もない。まだ高校生なんだ。誘拐されたら普通は泣くほど怖い。
「よかった……セリカちゃん……私、セリカちゃんに何かあったんじゃないかって…」
安心して気が抜けたからか、アヤネさんは涙ぐみながらそう言った。
まぁ怖かったのは誘拐された方だけじゃないよな。
『アヤネちゃん……』
清々しいほどの友情、青春である。
退学勢には縁のない世界だ。
まぁ誘拐がキッカケの青春なんてこっちから願い下げだけど。
「これで一件落着か」
『ん。まだ油断は禁物。トラックは制圧したけど、まだここは敵陣のど真ん中だから』
『だねー。人質を乗せた車両が破壊されたって知ったら、敵さん怒り狂って攻撃してくるよー』
ノートパソコンを覗いてみると、マップ画面に映る赤いマーク。
知識はないが、多分敵の位置やら数やらを表しているのだろう。
「じゃあ、あとは任せた」
そう言って俺は持っていた拳銃の手入れを始める。
何故だろうか、何もしていない時よりも自分の無力さを感じる。
いや待て、よく考えると、あいつらは不良という社会の汚れを掃除していて、俺は銃の汚れを掃除している。
同じ掃除という観点で見れば、俺もアビドスの奴らも同じ程度の活躍をしているわけだ。
ふむ。
死にたい。
◇
無事、集まって来たチンピラを蹴散らし、セリカさん救出作戦を成功させたわけだが、学校に戻って来た途端セリカさんが倒れてしまい、保健室まで運ばれた。
目立った傷もなく、ただの疲れが原因だと先生(正確には謎のAIアロナ)は言っていた。
特に重い症状であるわけでもなく、夜も遅いため、アビドスの生徒は家に帰らせ、俺と先生は起きた時に誰もいないのは可哀そうだからと、保健室に残った。
正直言えば、先生にも早く帰ってイカれモードを治してほしいが、心配だからと残ることを譲らなかった。
その心配がセリカさんの体調面であって、俺がセリカさんを襲うことではないと信じたい。
というか俺がキヴォトス人を襲ってみろ、ビンタで頭がトリプルアクセルするぞ。
さて、そんなこんなで時刻はおよそ2時、流石の先生も目に見えて眠そうである。
このまま眠ってくれればありがたいが、”好きな人いる?”やら”どんな人がタイプ?”やら”胸は大きい方が好き?”やらのダル絡みをして口を動かし続けているせいか、中々眠らない。
もう手刀とかで気絶させたい。
まぁ女性の肌とか触れられないから無理なんですけど。
なんて考えていると、ふと視界の端にあるハリセンに意識が向く。
……。
………。
…………。
「ストンっ」
手刀の音を付け加えながらハリセンで先生の首の後ろを軽く叩く。
その瞬間、意識が突然切れたかのようにベッドに頭を預ける先生。
数秒の沈黙。
俺は自分の両手を見つめ、呟く。
「……これが、俺の力」
そうして全能感を味わう。少し楽しい。
というかこれで気絶する先生ってなんなんだ。
ホントに過労死寸前とかじゃないのか?
なんて思っていると、ふと呟き声が耳に入る。
「ひ、人殺し…?」
既に目を覚ましていたらしいセリカさんにあらぬ疑いをかけられた。
「んなわけないだろ」
凶器、ハリセン。
年末の番組が笑ったら死人が出るデスゲームと化すぞ。
◇
「体調はどうだ?」
「少し怠いくらいよ」
「ならオーケーだな。いつもより少し元気がないくらいが耳にちょうどいいし」
「どういう意味よ!」
「冗談だ」と言ってセリカをなだめる。
「……」
「……」
お互いに口を開かず、しんと静まり返った保健室に先生の寝息の音が響く。
仕方ない。会話の内容なんて基本相手任せの受け身タイプだったし。
もし先生が起きていればゴミみたいな会話を永遠に繋げられただろうに…。
クソッ、何故俺は先生を気絶させたんだ。
「………えっと」
先に口を開いたのはセリカさんの方であった。
「…その、あり…がと」
「礼なら、俺じゃなくてここで寝てる先生に言ったら?。俺はただ銃磨いてただけだし」
「で、でも!心配させたことは事実でしょ!」
「確かにそうだ。なら、ありがたく思うといい」
「なんかムカつく…」
そんな言葉に、俺は少し笑いが漏れる。
それに対して怒るセリカさん。
うん。ここまで喋れるんだし、そこまで体調が悪くないというのも本当だろうな。
「……でもっ!この程度でアビドスの役に立てたなんて思わないでよね!」
「はは、まぁ俺は役立ってないけどな」
自虐風に言ってみる。
「そ、そんなこともないわよ!!銃の手入れとか助かるし!お、応援とかも嬉しかったし!」
「そっか、なら感謝してくれたまえ」
「なっ!もう二度と褒めてあげないんだからね!!」
うーん、このツンデレ。
揶揄うのがクソ楽しい。
「まぁでも、先生にはちゃんと感謝してやれよ。この人、朝から朝まで働いてるくせに、戦闘の指揮やったり、怒られるの覚悟でセントラルから情報抜いて調べたり、お前が起きるの待ってたりしてたんだぜ?」
ついでにストーカーも。
「わ、わかってるわよ!」
「なら、俺から言うことは特にないわ」
そう言って俺は立ち上がる。
「じゃあ俺は帰るから、先生と二人で色々話しときな」
後ろ向きに手を振りながら歩きだす。
…なんというか、胸が貧乳だし下半身が毛布で隠れてるからスカートの丈が気にならなくて目を見て話しやすかったな。
と思いながら保健室のドアに手を――。
「あだっ」
頭にハリセンが飛んでくる。
「何故だ!?」
「なんとなくよ!!」
野生の勘め。
投稿しておいてアレですが、出来が悪い気がするのであとで書き直すかもしれません。
ストーリー的な変更点はないです。