"アレサ"
「なんだ先生、今回ばかりはもう止められんぞ」
"殺すの禁止"
「…………」
"分かった?"
「あ、あぁ……」
"あと服着てね"
「了解した……」*1
(先生、あんな風に怒るんだ)
(顔は笑顔なのにすごく怖い……)
(……思わず身構えちゃったなぁ)
(アレサちゃん、らしくないくらいに怯えてますね……)
『あの、キヴォトスで殺人はご法度なので、本当にやめてくださいね?』
「……それで、私はどうなるのでしょうか……?」
△▽△▽△▽△▽△▽△
便利屋68のリーダー、アルはイライラしていた。
ここ最近の出来事は、不幸の連続であった。アビドス襲撃の依頼をカイザーグループから受け、襲撃に失敗した。有り金の九割を注いで傭兵団を組んだものの、作戦途中に撤退。戦力低下で、便利屋68も撤退せざるを得なくなった。
この襲撃には、万屋Kenshiにも協力を仰いでいた。万屋Kenshiとは金銭のやり取りは無かったものの、万屋Kenshiは依頼をばっくれ、作戦中にオペレーター役を引き受けるという約束を反故にされた。その後も、何も連絡は来ていない。
依頼主からの催促を受けつつも、怒り心頭なアルは万屋Kenshiに報復をすることを決めた。が、いざ万屋Kenshiの事務所に行ってみれば、なんと襲撃対象のアビドスの面子と、シャーレの先生が居たのだ。
報復のために来たはずが、傭兵を揃えても勝てやしなかったメンバーが勢ぞろいしていたために、便利屋68は静かに身を引く事しかできなかった。*2
そんなこともあって、アルはひとまず冷静になり、再度戦力の確保をしようと考えた。しかし、今の便利屋68に資金はない。となると、どこかで融資を受ける必要があった。
「お待たせしました。陸八魔アル様」
「……ずいぶんと待たせたわね!? 二時間もこの場に貼り付けにさせるだなんて「申し訳ございませんが、貴方方に融資は提供できません」な、なんですってぇーーーっ!?」
アルたち四人は、ブラックマーケットで一番大きな闇銀行にいた。融資を受けるために審査を行ったが、面談後に二時間も待たされたあげく、返答はコレである。
アルは*3白目を剥いた。
「ちょ、ちょっとっ!? 私たちの何がいけなかったわけ!?」
「全てですね」
「全部っ!?」
「……というわけですので、お引き取りを。ガード、この者たちを摘まみ出せ」
「っ、ムツキ! ハルカ!」
二時間も待たされたためか、スマホを弄って暇を潰していたカヨコ以外の二名は、眠たげにソファーの上で船を漕いでいた。
呼び出される銀行のセキュリティガード。彼女たちに襲い掛かってくる。そう思ってしまい、かばうように身を出すアルは、今の自分がみじめに思えて仕方がなかった。
(どうして、私はこんなことを……っ)
アウトローに憧れ、学園を飛び出した*4。そんな自身が望んだ生活は、こんな乞食じみたものではないはずだ。もっとカッコよく、もっと強く、猛々しい……そんな「悪」を目指していたというのに。
セキュリティガードが増えるのが見える。視界が滲んで暗くなってゆく。こんなところで、終わるわけにはいかないのに。
──その時だった。
ズガァァアンッ!!
「「「「!?」」」」
爆発音とも違う、何かが砕け散ったかのような破壊音。それと同時に、フロアの照明が全て落ちる。
何が起きた!? 襲撃だ! 誰かがそう叫んだ気がしたが、その直後には銃声、同時にくぐもった悲鳴が聞こえる。
「な、何!?」
「社長、ソファーに身を隠して!」
カヨコの声を聞き、ひとまずそうした方がいいだろうと、言う通りにするアル。寝ぼけていた二人も流石に破壊音で起きたようで、アルと一緒に背を低くして、周囲を見渡した。
銀行の壁。入り口とは大きく離れた場所に、大きな穴が空いていた。そこから日の光が差し込み、スポットライトの如く六人のシルエットを映し出す。だが、逆光になっているのか、五人の姿が黒色に見えてしまう。
「な、何者ォッ!?」
「喋らず、指示があるまで動かないで。一つでも動きを見せれば撃つ」
一歩先に出たのは、青いバラクラバで顔を隠した少女。白いアサルトライフルを片手に、恐れるものなど何もないかのように堂々と歩く。
「ッ…………ふッんぼごォ!?!?」
「動くなと言ったはずだ。守っていれば、こうならなかったものを……」
銀行のカウンターにいた受付員は、可能な限り悟られないよう、指先を通報ボタンへ動かそうとした。瞬間、ブゥンッ!! と風を切る音と共に、純白の
「ここは既に制圧済み。だから大人しく、言うことに従って。さもないと……」
「アイゴアが殺す」
「……だから、死にたくなければ両手を上げて、跪くこと」
アイゴアと名乗った変態の言葉に、噓は無いのだろう。ブルー*5と呼ばれた少女は、この場にいる全員が言うことを聞いているか、辺りを見渡す。その時、ブルーの目は便利屋68を捉えたのだが、ブルーはあえてスルーした。
「あぁ、そこの人たちも、動かないでくださいね~♠」
「通報しても無駄無駄。内線も外線も、全部掌握してるから」
『外部電源もこちらが掌握済みです。大人しく指示に従った方が身のためですよ』
緑*6、ピンク*7のバラクラバを被った少女たち。音声のみの声*8と続いて、銀行の職員たちを脅してゆく。気のせいか、三人ともアイゴアと名乗った変態から目を逸らしているかのように見えた。
しかし、今のアイゴアは、持っていた大剣を銀行受付に投擲してしまっている。それは、武器を捨ててしまっているようなもの。制圧の隙足り得る。セキュリティガードの一体である機械種族の男は、ブルーの視線が逸れた瞬間を見計らい、自身のアサルトライフルで変態へ弾丸を浴びせる。
──はずが、セキュリティガードが次の瞬間目にしたのは、肌色の拳。
「ごッッッッッッッッ!?!?」
メキョォッ!! と、機械から出てはいけない音が鳴り、言うことを聞かなかったセキュリティガードは、そのまま吹っ飛んで壁にめり込んだ。
音もなく、動作もなく急接近し、パンチを浴びせた変態にやられたのだ。
「今のは慈悲だ。顔面だけなら死にはしない」
(いや絶対死ぬ寸前だって!!)
「だが、来るというのならば、このストーンゴレムのエサタが相手しよう」
(誰!?)
アルの漫才以上にツッコミたくなるような現状を、とりあえずカヨコは気合で無視することにした。
襲撃に来たのは、どう見てもアビドスの生徒たちだ。何故かトリニティの制服の少女が一人いるが、全員バラクラバを……トリニティの生徒だけ紙袋を被っており、顔を隠している。追加で明らかに何か
「って、そんなことしてる場合じゃない。このままだと巻き込まれない?」
「そうだねぇ……流石にこれは想定外」
「ど、どうしますか?」
「静かに……今は見逃されてる? けど、いつこっち向くか分からない。頃合いを見て逃げよう」
絶対後からここは戦場になるだろうと判断したカヨコは、どうにかしてここから逃げるプランを捻る。今の自身らは巻き込まれている状況だ。特にあの変態に敵視されることは絶対あってはならない。
ひとまず社長のアルに声をかけようとする。が、
(か、か……カッコイイ……ッ!!)
(社長……ッ!!)
まるで日曜朝の戦隊番組を見る子供のように目を輝かせるアルに、カヨコは天を仰いだ。
いや、なんとなくこうなりそうな予感はしていた。
「そこの従業員、このバッグに指定したものを詰めて」
「ヒッ!? ご、ご容赦を!」
「直近一ヵ月の取引明細と帳簿を入れろ。金は要らん。動いていいのはお前だけだ」
「たっ只今ァッ!!」
選ばれたのは、アルへ対応していた職員。先の一方的な戦闘を見たからか、怯えながらも従順に裏手へと走って行った。あの様子ならば、隠れて通報すらもしないだろう。
と思った数秒後には、もう書類を抱えて戻ってきたが、
「早すぎる。怪しいから一発」
「ほグボお゛ぉオッ!?!?」
「エエーーーーッッ!?!?」
(なんで社長も叫んじゃうの……)
見事に顔面に殴りを入れられた職員は、先のセキュリティガードと同じく、吹っ飛んで壁にめり込んだ。
ちなみに持ってきた書類はただのコピー用紙の束で、銀行強盗らの不機嫌さが増したように見えた。下手なことをしなければいいのに。カヨコはそう思ったが、どうにもベクトルは違えど、「なんとか出し抜こうとする」意思が感じられる辺り、やはりここの銀行は一筋縄では行かないらしい。
「もー仕方がないなぁ。ねえ、そこの君」
「は、はい!?」
「時間無いしさっさと持ってきてくれる?」
[ヒィッ!! 申し訳ございません! 申し訳ございませんッ!!」
次はピンクのバラクラバ少女が、近場で跪いていた職員に書類を取るよう促す。もちろん、ショットガンを突き付けた状態で。職員は腰を抜かしながらも、走って裏手へ向かった。
「ファルコン、俺はヤツを監視しに行く」
「ん? あー、りょーかい」
「思った以上にホシ……ファルコン、ノリノリじゃない?」
「いやぁ、ちょっとくらいアイツらにお灸を添えられると思ったら、ついね」
「私も何か、ああいう感じのしてみたいです☆」
変態は職員を追って、足音を一切発することなく付いていく。ファルコンと呼ばれた少女は、照れながら頬をかいているが、バラクラバの穴から見える目は一切笑っていない。
時間にして数十秒ほどか。三人ほどの職員が書類や札束を抱えて戻ってくる。変態も後ろから付いて行っているので、今度はちゃんと書類を持ってきたのだろう。
「こ、こちらです!」
「ふーん…………」
「そちらは直近一ヵ月分の明細と、こちらは、その……」
「うんうん。要求通りだね。お金は別に要らないって言ったんだけど」
「ど、どうでしょう……?」
「…………」
「…………」
「(無言の神秘散弾*9)」
「なんでェ゛ェーーーッ!!?」
そりゃ余計なものを持ってきたからである。
『チームに連絡! そろそろ電源復旧されるかと! 通報も時間の問題です!』
「よし、ブルー! 撤収よ!」
「ん、ちょうどいい」
「俺は時間稼ぎをしよう。先に行け」
「了解。健闘を祈る……えっと」
「俺はバグマスターだ」
もうマトモに名乗らない変態を置いて、アビドスの者たちや、紙袋を被ったトリニティの生徒が、速足で撤収してゆく。そのタイミングになって、サイレンの音が響き渡る。ブラックマーケットに警察は来られない。恐らくマーケットガードの類が来ているのだろう。それに加えて、戦車やヘリの足音まで聞こえてくる。
恐らく、ブラックマーケット史上最悪の全面戦争が起こるのではないか。
カヨコとムツキ、ハルカは目を合わせ、このタイミングだと悟った。
「社長、逃げるよ。今なら巻き込まれずに済むかも……って居ない!?」
「あっ、アルちゃんすっごい勢いでアビドスの子たちを追ってるよ」
「アル様っ!?待ってくださいぃぃぃ!!」
「はぁぁぁぁ~~~~~…………」
なんとなく、こうなる予感がしたカヨコは、今日一番大きなため息を吐いた。
そんな便利屋68を眺めていた変態……アレサは、「何やってんだアイツら……」という表情を深編笠に隠し、さらに金品や情報を盗むべく、全面戦争に挑み始めた。
「アイゴアが殺す」
Kenshi作中で、とある条件を満たすと戦えるクソ強NPCの一人、アイゴア。ピンク肌が特徴的な、サザンハイヴの侍。ムッキムキでデカい。ハイヴなので性別不明。とてもレアな武器を所持している。
「ストーンゴレムのエサタ」
Kenshi作中における、【シェク王国】の女王。クソ強NPCの一人、エサタ。ムッキムキでデカい異色肌のお姉さん。とてもレアな武器を所持しているが、本人はステータス的に上手く扱えない。
「バグマスター」
Kenshi作中にて、とある場所にたむろしている、クソ強NPCの一人、バグマスター。見た目は人間の男性。腰巻だけの半裸。とてもレアな武器を装備している。
余談だが、コイツがいる場所にはクソキモい蜘蛛のモンスターが大量に居る。
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