今回も短めです。
ヒフミとの出会いは唐突だった。
アビドスの四人*1、先生、そしてニット帽を深く被り、ジャージに身を包んだアレサと合流した。それぞれ目的は銀行強盗である。
そのタイミングでの出会いであった。
「わわわっ! どいてくださーい!」
「ん? 何故こんなところにトリニティの生徒がいる。ふンッ!」
「「ごべァッ!?」」
不良生徒二体に絡まれ、追いかけられていたトリニティの生徒。そう、ヒフミである。彼女がこちらに向かって逃げてきたため、アレサはグーパンで不良生徒たちの顔面を破砕した。*2
そうして、助けてくれたお礼にと、ヒフミはブラックマーケットの案内を担うことになったのであった。
「トリニティの子もブラックマーケットに来るんだ」
「あ、あはは……多分私だけですけど」
「で、案内できる程度には馴染み深いと。まあ深くは詮索はしないが……」
「い、いえ、大丈夫です! もしかしたら、あなたたちにも新しいお友達ができるかもしれません!」
阿慈谷ヒフミ。プラチナブロンドのツインテールと、黄色い瞳が特徴的な少女。ちょっぴり引っ込み思案さが見える彼女は、ブラックマーケットにとあるものを探しに来たらしい。自身のスマホを取り出し、いくつかタップをして画面を見せた。おそらく探し物のことだろうか、皆でその画面を見た。
「じゃーん! ペロロ様です!」
──瞬間、アレサの脳裏を過った。
──存在する記憶。
『あああああああああああ!!』『痛い!!痛い!!』
『生きたまま食われる!』
『ガボガボガボ……』
『(首が食い千切れる音)』
さながらつるはしを振るうかのように、鋼鉄質なくちばしをスウィングする。首長で四足脚の鳥竜。それは鳥を彷彿とさせる頭、ブラキオサウルスめいた長い首と胴体、短い脚を持つ。いかにも歩くのが遅そうなビジュアルとは裏腹に、走る速度は時速40キロノット。*3
そう、この世の終わりみたいな生き物、『ビークシング』である。
ビークシングは「初心者におすすめはガット!」と、ウザい広告でよく出てくる土地、ガットを中心に、肥沃な環境に広く分布している生き物です。体長約5メートル、重さは2トン以上。最高時速約40キロノットで走ることができ、24時間走っても疲れないバケモノ染みたスタミナを持ちます。特に目を引くのは、長く尖ったくちばしで、くちばしは鉄以上の硬さを持っています。
この生き物は非常にアホで凶暴であり、視界に動くものが見えたら、それらが「食べ物」だと思い込む、単純過ぎる脳みその持ち主です。
見てくださいこの顔を。何も考えていません。*4
ビークシングは獲物を見つけると、持ち前の脚で超高速で接近した後に、己の武器であるくちばしを首ごとスウィングし、パイルバンカーの如き貫通攻撃を放ちます。
貫通攻撃の威力は、鉄の壁に容易く穴を開ける程度にはクッソ強く、防具があっても死ぬ可能性が高いです。モロに攻撃を受けてダウンしてしまった場合、生きたまま食われるでしょう。
人間はもちろん、
この説明を聞いた皆様は、あのアイドル的存在が浮かんでくるでしょう。
厳しい環境を生きることに特化した高い身体スペック。しかしその代償に、くるみサイズまで脳みそが委縮してしまった生き物。
ビークシングが、かの鳥の進化形、あるいは変態を重ねた極致であれば、これはその原型。
そう、奇跡のアホ、『ダチョウ』──
「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ」
「えっ、何が起きてるんですか!? ちょっと、しっかりしてください!」
『あ、アレサさんが壊れてしまいました!?』
「ア゜ッ!!」
「……意外な弱点、なのかな」
というわけではなく。
ヒフミが見せた『ペロロ様』とは、アレサが勝手に思い出して発狂した生き物、ビークシングとは全く似ていない。
ペロロ様ことペロロのビジュアルは、デフォルメされた寸胴の白い鳥だ。両目とも死にかけのように白目を剥いており、くちばしから舌が垂れ下がっているという、控えめに言って「キモい」姿であるのだが、ヒフミはこれを神の如く信仰し、敬愛していた。*6
ヒフミは単純に、ペロロ様……この鳥を主人公ポジションとして登場させている、『モモフレンズ』というジャンルを布教しようとしただけだった。
だが悲しいことに、アレサは既にビークシング教の被害者。ビークシング
「フーッ…フーッ…落ち着け、落ち着け……ビークシングは奇跡のアホ。コイツは鶏、なのか? 多分、うん。そう。だから違う……こんな死にぞこないみたいな鳥がビークシングなわけではない……」
「今ペロロ様を馬鹿にしましたか?」
「違う違う違う、待ってくれ怖い」
"うわぁ……"
無所属ナーバス四肢欠損少女に恐怖デバフをかけるヒフミを、一旦落ち着かせて。
案内を再開してから、アビドスの面々は闇銀行を目指すがてら、カタカタヘルメット団が使っていた武装や兵器の情報を集めることにした。ヒフミの案内もあってか、広く店を出回ることができた。が、成果はゼロ。しかし、このゼロこそが成果とも言えた。
「その、武器の出所が全くないっていうのはちょっとおかしいですね」
「私もそう思うな。ここの奴らは全員アウトローだ。こんなせこせこと悪事を隠し通す真似は、普通しないだろう」
"……言われてみればそうだね"
たかが武装や兵器の売買である。卸先や販売先はともかく、取引された物品の情報は、ガッチリと隠すような情報ではない。だが、それすらも隠蔽し、きっちりと出所全てから証拠を消しているというのは、それほど裏を掴まれたくなかったということなのだろう。
まあ既にバレている上に、何を企んでいるのかも知っているだが。
「えっと、着きました。あそこに見える大きなビルが、多分あなたたちが探していた闇銀行です」
黒色の建築材で固めた、巨大なビル。これ一つが銀行なのだから、その規模は計り知れないだろう。ブラックマーケットの支柱、あるいは心臓か。いざ、目的の銀行を目の当たりにして──シロコとアレサのテンションはブチ上がった。
「案内ありがとう、ヒフミ。さ、君はもう帰っても構わない」
「ん、ここからは見せられない。今すぐ引き返すべき」
"見捨てるような真似しないで? えっと、ヒフミ。その……できれば今から遠くに離れて欲しくて"
『先生! たった今、追跡中の現金輸送車がブラックマーケットに入りました。ルートを見るに、そちらの銀行です!』
あちゃー……と先生は天を仰いだ。
タイミングが良いのか悪いのか、現金輸送車が、目の前の闇銀行へ入っていくのが見える。ちょうど入り口付近でそれは止まり、銀行のガードらしき少女と、アビドスの面々が利息返済の際に立ち会った人物が、現金と帳簿を交換し合っている様子が見て取れた。
「アイツ……! 間違いないわ、今朝の!」
『車のナンバーは変わっていますが、車体は同じです。発信器はバレずに残っていたようですね……』
「え、えっと? すみません、どういう……状況……?」
「ん、端的に言うと、あの車と銀行が、私たちのターゲット」
ヒフミは、知ってはいけない情報を得てしまったと、ここで察してしまう。顔を青ざめさせて一歩引くが、その肩をホシノとノノミが掴んだ。
「悪いねぇ……もう知っちゃったからには、逃げられないんだよ」
「ふふふ……♣ ごめんなさい、
今から何をするの!? と言いたげに振り向くヒフミ。しかし、助けを求める相手を間違えてしまった。
砂狼シロコは、今日この日のために持ってきた装備を、頭に被る。それは青色の
「銀行を襲う」
嘘偽りのない、純度100%の、心からの犯罪予告。まるで歴戦の戦士の如く、シロコは自身の得物である
じゃあこっちなら!? とヒフミはアレサの方へ顔を向けるも、それも間違いだった。
どこから取り出したか分からない、麦色の深編笠を被り、頭を完全に隠蔽した彼女は、ジャージを脱いでありのままの姿を晒す。
「襲い掛かるヤツを全員殺す」
よりによってシロコ以上に最悪な犯罪者が出現し、ヒフミはついに崩れ落ちた。
「ビークシング」
初心者におすすめはガット!
「ガット」
実際に住むとなると最適な土地。
青い土に覆われ、鉄の樹が生えた湿地帯で、とても景観がいい。水源が豊富で、地形も平たい部分が多く、鉄鉱脈と銅鉱脈が密集している場所も多く、拠点候補にするならこれがいの一番に上がる。
「ダチョウ」
奇跡のアホ。この世の終わりみたいな脳みその持ち主。
次回、「盗んだ金を、何故返す必要がある!」
アンケートありがとうございました。
アビドス対策委員会の章が終わり次第、各キャラのブルアカ風プロフィール公開をしようと思います。
ブルアカステータス風のプロフィール
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