怠惰な凡人男子生徒はシャーレで働く   作:怠惰らボッチ

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お気に入りが嬉しくて予定より早く投稿しました。
皆さん分かりましたね。承認欲求が私の燃料です。


フリーターです。ニートではありません。定職もありません。

 

 

 

 ”ラク、シャーレで働かない?”

 「え?」

 ”君今ニートなんでしょ”

 「まぁ、そういう見方もありますね」

 

 なんだろう、他人にニートと言われると腹立つな。自称なら特に気にしないのに。

 

 ”だから、私のところで働かない?”

 「けど、連邦捜査部って名前的に連邦生徒会の部活ですよね。先生は顧問なのでともかく、学生でもない俺が参加してもいいんですか?」

 ”大丈夫、外部コーチってことにしとくから!”

 「なんのコーチなんですか」

 ”……ニートの?”

 

 ニートのコーチってなんやねん。

 反面教師ならぬ反面コーチ的なアレか?

 

 ”それに、ラクもそろそろお金が尽きるんじゃない?”

 「……ま、まぁそれはそうですが」

 ”あと、職がないとキヴォトス追い出されるよ”

 「え!?」

 

 働かないと生きていけないなんて差別だ!(暴論)

 

 「難民申請とかできますか?」

 ”どこの国の難民?あと難民も働くよね”

 「働くという概念をどう捉えるかによっては、俺も働いていると思います」

 ”と、言うと?”

 「社会貢献という意味では、経済を回しているという点で働いています」

 ”働こうね”

 「実は秘密結社のエージェントで」

 ”働こうね”

 「実は」

 ”働こうね”

 

 逃げ道を確実に塞いでくる先生、なんてやつだ。

 

 「働くくらいなら実家に帰って畑を継ぎます」

 ”畑?実家が農家なの?”

 「いえ、畑は植木鉢です」

 ”それ継いで何ができるの!?”

 

 チューリップって7億くらいで売れないかな。

 あぁ~働きたくない。

 

 「なんで…なんで俺がこんな目に合わなきゃいけないんだよ…」

 ”働くだけだよ?”

 「神ってのは…世界ってのは…、残酷ですね」

 ”働くだけだよ!?”

 「先生、感じ方は人それぞれなんですよ」

 ”……確かに”

 

 あ、納得してる、なんか行けそう。

 

 「俺にとって、働くことは死ぬほど辛いことなんです」

 ”……”

 「俺は、働いて心が壊れるくらいなら、心を持ったまま死にたい」

 ”ラク…”

 「だから働けません」

 

 先生は深く考え込むように顎に手を当てる。

 お?これは来たか?

 

 ”……分かったよ”

 「先生!」

 ”君のことを養ってあげる”

 「先生!」

 ”その代わり、さっきみたいに私の隣でエロゲ――”

 「あ~凄い働きたい!凄い働きたいな!!」

 ”ほんと?よかった。じゃあ、これからよろしくね。ラク”

 

 ニコニコの先生が握手を求めて手を差し出してきた。

 クソっ!ハメられた!!!

 俺は屈辱を握りしめた左とは反対の右手で握手をする。

 そんなこんなで、俺がシャーレで働くことが決まったのだ。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 早朝。太陽と共に目を覚ます修行僧のような生活。

 少し前のニート生活とはまるで違うでしょう。

 なぜこんな時間に起きているのかというと、悲しい社畜公務員を眠りから覚ますためです。

 

 「先生、朝ですよ」

 ”…………あと5分”

 

 さて、何故俺が先生を起こすようなことをしているのか。

 つまるところ、これが俺の仕事の一つだからだ。

 俺と先生は今、シャーレに同居している。

 きっかけは先生にスカウトされたあの日にある。

 

~~~

 

 『働くのはいいんですけど、多分俺、途中でバックレると思いますよ』

 ”そんなに仕事が嫌なの?”

 『いやまぁ、嫌っちゃ嫌なんですけど、なんというか、俺怠ける才能がありすぎるんですよ』

 ”才能?”

 『ほら、夏休み明けって、学校行きたくない気分になるじゃないですか』

 ”なるね”

 『俺、それに負けて学校行かなくなって退学しました』

 ”……なるほど”

 『だから多分、シャーレも同じようになると思いますよ』

 ”う~ん”

 

 先生は頭を捻りながら悩んだ様子を見せている。

 しばらくすると、先生は何かを閃いたかのように手を叩いた。

 

 ”あ、ラク、シャーレに泊まったら?”

 『職場に泊まるってことですか?』

 ”そうすれば『行かない』って言う選択肢はなくなるでしょ”

 

 なるほど。確かにそうだ。行きたくないなら帰らなければいいじゃない作戦。

 

 ”シャーレには仮眠室があるから寝泊りできるし、キッチンとかシャワー室もあるよ”

 『おぉ!』

 ”さらに駅に近い!”

 『おぉ!』

 ”さらに私も住んでいます!”

 『おぉ!』

 

 確かにいいじゃないか!

 職場にいれば働く前に『あ~行きたくないな、休もう』てことにもならない。

 それにベッドもキッチンもシャワーも美人な先生も……ん?

 

 ”じゃあそういうことだから引っ越しの準備しておい――”

 『ちょっと待ってください』

 ”ん?どうかした?”

 『いやいやいや、え?同居するってことですよ!?』

 ”まぁ、そういう見方もあるね”

 『ダメでしょ普通!生徒と異性の先生が一緒に住むなんて!!』

 ”ラクはニートでしょ?”

 『そういう見方もありますね』

 ”じゃあ大丈夫だね”

 『いやいやいや、えぇ?』

 

~~~

 

 なんてことがあったわけだ。

 最初の方は欲望に負けて先生を襲ってしまうのではないかと不安ではあったが、よく考えたら、エロゲ中に横で実況するような奴だった。

 仮に襲ったとしても『あれ、幼馴染君、なんか小さくない?(笑)』とか言われかねないとか思ったらそんな気持ちはなくなった。

 …偶に妄想で使うことはあるけど。

 だって見た目だけならただの美女だし。

 まぁ、毒持ったカエルみたいな先生はおいておいて、そんな毎日をシャーレで過ごしている俺ですが、最近罪悪感というものが芽生えてきました。

 先生で抜いたことも一因ですがそれだけではありません。

 仕事内容です。

 俺は基本的に9時5時勤務のホワイトな勤務内容。

 そこに早朝に先生を起こしたり家事をしたりが入っているが、先生と比べるとかなり楽な作業だ。

 何故かって?

 先生、朝の5時半から夜中の2時まで仕事してるんだぜ?

 そら隣でエロゲも見て実況したくなりますわ。

 さすがに毎日というわけではないらしいが、平均の睡眠時間は多分4時間を切ってると思う。

 そんな先生と比べて俺は、9時5時勤務で夜もグッスリ。趣味の時間もかなりある。

 うん。罪悪感沸かない訳がないよね。

 けど面倒臭いから勤務時間外も手伝うのは嫌だ。

 仕方ない、だって怠惰だもん。

 そんなこんなで自分はそこまで手伝いたくないけど、先生の仕事を減らす方法を考えていたある日、ふとある情報を聞く。

 どうやらシャーレ、色んな学校の生徒を手伝いとして呼んでもいいらしい。

 もうね、先に言えと。

 先生曰く『みんな忙しそうだから』。

 もうね、阿保かと。

 あんたほど忙しいヤツが学生でいるわけないだろ。

 ……いるわけないよな?

 というわけで俺は、先生と唯一共通の知り合いである早瀬ユウカに助けを求めた。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 「…………久しぶりね、魚沼君」

 「あ~。そうだな」

 「………ところで、聞いてもいい?」

 「何?」

 「なんで目にマフラー巻いてるの!!?」

 「目元が寒くて」

 「今夏よ!!?」

 ”あはは…”

 

 冷酷な算術使いという二つ名を持つ早瀬ユウカの目線はおそらく俺の目元に固定されているのだろう。

 なんせ他所から見たら低クオリティ五条悟だ。

 インパクトはかなりあるだろう。

 もちろんこれには理由がある。

 原因は早瀬ユウカだ。

 この女、エロ過ぎるのである。

 なんだその太もも。

 なんだそのスカートの丈。

 学生時代の性に目覚めたての俺は何故気が付かなかった、コイツの圧倒的存在感に。

 目を見ようとすれば太ももに目が行き、頭の上を見ようとすれば胸に目が行く。

 なんだこの女。ニュートンに謝れ。

 なんて思いながら仕事をしようとペンを…ペンを……、ペン………。

 

 「先生!ペンがありません!」

 「あなたねぇ!!」

 「痛いっ!」

 

 早瀬さんに何かで叩かれる。

 ハリセン?ハリセンなのか?なんであんだよ。

 叩かれた部位を擦りながらマフラーを少しずらして視野を確保する。

 少し乱暴しようか(仕事)。

 気分はさながら五条悟である。

 シャーレは今日も自由な職場です。

 

 「なっ!?先生!!このプラモデルはなんですか!!?」

 ”え?気づいちゃう?お目が高いね、それは――”

 「そういう意味ではありません!出費は抑えるように言いましたよね!!何ですか10万円って!!」

 ”ひ、必要経費かなって”

 「先月も言ってましたよね!!?」

 

 向こうでは早瀬と先生が夫婦漫才をしている。

 ん?先月?

 早瀬さんはもしかして一度手伝いに来たことがあるのだろうか。

 うん、というかよく考えたら、俺がここで働くまで、俺の分を誰がやってたのかという話だ。

 それも先生が終わらせてたんだったら睡眠なんて取れないだろうし。

 そう考えると、それまでに何度かここに来ているのかもしれない。

 そんなことを考えながら、俺は書類を片付ける。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 「お、終わった…だと」

 

 現在時刻は午後4時半。

 まだ定時にすらなっていない。

 それなのに俺の分はもちろん、先生の分すら終わってしまった。

 ていうかなんなんだ早瀬さんのあの処理速度とふともも。

 思わずびっくりして三度見くらいしたぞ。

 書類仕事するための才能とかあるでしょ。

 超高校級の書類整理って言われたことない?

 

 ”助かったよユウカ、ラク”

 「ほとんど早瀬さんのおかげすけどね、ありがとう早瀬さん」

 

 俺は軽く早瀬さんに向かってお辞儀をする。

 

 「それは先生よ」

 

 どうやら早瀬さんではなかったらしい。

 

 「あぁすまん、前が見えないから分からなかった」

 「じゃあマフラー外しなさいよ」

 ”あはは…”

 

 早瀬さんは溜息をつき、先生は苦笑いを浮かべる。

 

 「でも…、元気そうでよかったわ」

 「……おう」

 

 早瀬ユウカ、ただの同級生が不登校になっただけで心配するような心の持ち主だ。

 惚れてしまうやろがい。てか惚れた結婚したい。

 というか、冷酷な算術使いなんて二つ名は彼女には合わないだろ。

 まったく誰だ、そんな二つ名を付けたヤツは。

 センスがなさすぎるのではなかろうか。

 ここは俺が、新しい二つ名を考えて悪評を払拭するしかない。

 ふーむ。

 ……。

 ………。

 …………。

 

 「よし、今日から早瀬さんの二つ名は『温厚な書類整理師』だ!」

 「どういう意味よ!!」

 「痛い!」

 

 ハリセンぽいので叩かれた。

 前見えないから普通に怖い。

 あとでこっそり先生に二つ名を広めておくようお願いしよう。

 

 




ユウカはツンデレ。
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