転生者達の新エリー都、二足のわらじ生活   作:フライパンソルジャー

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パエトーン視点です


プロキシ兄妹の決意

インターノットのスレッドでは例に漏れず様々な情報が飛び交い、ユーザー間で大量の情報の共有、拡散などが繰り返されている。

 

プロキシやホロウレイダーに最も愛されているポータルサイト、そこにはある日を境に突如として伝説と共に現れ、その卓越した手腕から話題となった存在がいる。

 

現在ではインターノットでも指折りのトッププロキシとして地位を手に入れた存在、『パエトーン』。

 

初め、伝説のホロウレイダー集団『ヒール』の腰巾着と電子掲示板で酷評されていたがそれも一瞬のこと。手厚いサポートで難易度の高い依頼を何度も成功させて評価は一変した。

 

新たな伝説の誕生だと囁かれている。

 

「やれやれ、彼らに出会ってから大層な評価になったものだ」

 

自分たちの評価をスマホで確認していたアキラはそう独り言ちる。

 

「そんなこと言って、お兄ちゃん。顔がにやけてるよ。パエトーンが有名になったのがうれしいんでしょ。」

 

面白がるように此方を見つめる妹のリン、彼女の機嫌も随分といいようだ。

 

「それはそうさ、並みの映画よりも上等な経験だからね。収入も上がって家計は大助かり。少し舞い上がっているのも否定はしないさ。ここの所、個別の依頼も増えてある程度選択できるようになったし、良いことずくめだね。」

 

「それもあるかもだけど本当は皆に追いつけたようで嬉しいんでしょ?そりゃあ初めはヒールのお抱えみたいになってたし、周囲の評価もあながち間違いでもない内容だったし……」

 

彼らの仲間に迎えられてからというもの、彼らは僕たちによくしてくれたように思う。高額な報酬もそうだがホロウ内での戦闘時の此方への気遣い、情報の収集等。

 

友人の様な距離感はとても心地よいものであり、旧都陥落で失ったことの傷を癒してくれるようであった。

 

零号ホロウの探索、先生が連れ去られた原因、それらを知るためにそんな優しい彼らを利用しているのだと自己嫌悪に陥ることもあった。

しかし、彼らは当時の原因を探るのも彼らの活動の目的の一つであると話してくれた。

 

世間では僕たちのお世話になった先生、カローレ・アルナは旧都陥落の原因であるとされている。

 

誰もがそのことに疑いを持つこともなく、もはや旧都陥落の裏の真相を探っているのは自分たちだけではないかと酷い孤独感や、やるせない感情に苛まれることもある。

 

自分たちは悪魔の子、それが絶対に覆せない自分たちの正体であると。

 

”我々を舐めるなよ、パエトーン!何があっても最後まで支えてみせる!”

”だって仲間ってのは、そういうものだろう?”

 

その言葉でどれ程僕たちが救われたか。

胸の奥が、じわっと熱くなった。久しく忘れていた体温だった。

 

真相を追求したいのは自分たちだけではないのだと。

 

その時からだろうか、本当の意味で彼らの力になりたいと思ったのは。ただのプロキシとホロウレイダーの関係ではなく、共に背中を預け合う戦友の様な関係に。

 

リンも同じように感じたようで羊飼いなどの情報屋に頼み、依頼を斡旋してもらい、仕事をこなし、彼らと同じような存在になろうとした。

 

プロキシとしての実力と実績を積み上げ、彼らと対等に、隣に並び立っても恥じないような()()に。

 

そして今、ようやく彼らと同じ立場に追いついたのだ。

 

お互い未だに隠した秘密を持つ仲である。しかしーー

 

「近いうちに彼らに打ち明けよう、僕らの目的、そして11年前のあの日に見たもの。」

 

「……うん、そうだねお兄ちゃん。きっと皆信じてくれるよね。」

 

二人は真実を探す。覚悟を宿した強い意志を持って。

 

 

ーーーーーー

219:デンキウナギ ID:zzztensei02

祝!パエトーン遂に伝説へ!

 

220:軟体エンジニア ID:zzztensei05

いや~凄まじいね

 

221:カラスメイド ID:zzztensei04

活動開始から半年足らずで伝説とか、鼻が高いよ

流石我らのパエトーン様だわ(後方腕組み)

 

222:サソリ薬師 ID:zzztensei03

早いのか、遅いのかわからんけどこれで原作通りやな

一先ず安心

初め話題にはなったけど俺らの組織の腰巾着扱いはビビったわ、対等な協力関係のはずなのに

 

223:カラスメイド ID:zzztensei04

あれだけはマジで許せなかった

腰巾着?寧ろ彼らが主役ですが?

言わせてもらいますわ、名前が売れて当然だ!だって彼らは本物だから!

 

224:サイ男 ID:zzztensei01

愛が重いな

でもちゃんと実力で登り詰めたの胸熱だわ

 

225:軟体エンジニア ID:zzztensei05

ああ、あれね

いやーネットって怖いですね

事実確認をしない馬鹿が多くて多くて

 

226:サソリ薬師 ID:zzztensei03

その時期にこいつら全員黙らせようかって兄妹に伝えたら「大丈夫僕たちで何とかするよ。間違いだってことを証明してみせる」って笑顔言ってたな

かーっ!見事有言実行とか、カッコ良すぎんか!?

 

227:軟体エンジニア ID:zzztensei05

当人たちに言われちゃあ何もできないからね

気分は良くなかったけどぐっと我慢したよ

 

228:サソリ薬師 ID:zzztensei03

でもたしかドクってスレッドでなんか暴れてなかったっけ?

 

229:軟体エンジニア ID:zzztensei05

そうだね

でもアンチコメントにしてる奴らにボクのサブ垢でレスバ仕掛けただけだからセーフだよ

決まり手は、ボクのハッキングによる個人情報流失で彼らの完全沈黙により決着したよ

 

230:サイ男 ID:zzztensei01

レスバはどうした?

論破して黙らせろよ

 

231:カラスメイド ID:zzztensei04

完全なOUTで草、何一つ我慢できてないじゃんか

 

232:軟体エンジニア ID:zzztensei05

でも推しが有名になるの嬉しいけど正直ちょっと寂しいや

ボクと同じこと考えてる人いない?

 

233:カラスメイド ID:zzztensei04

ちょっとわかるわ、ずっと独占しときたかったけどビビアンに悪いしな

 

234:サイ男 ID:zzztensei01

ビビアン誰だよ

まあ、気にしなくていいんじゃないか目的通り古参エージェントって奴になれたと思うし

 

235:軟体エンジニア ID:zzztensei05

まあそうね!全力で先輩風吹かせてやるぜ

 

236:カラスメイド ID:zzztensei04

これからどんなに兄妹がエージェントたちと交流を持とうと、初めては我々なのだ!

この事実に変わりなし!

 

237:デンキウナギ ID:zzztensei02

初めてはトリガーじゃないか?

 

238:カラスメイド ID:zzztensei04

トリガー先輩の次に我々、この事実に変わりなし(泣)

どうせ素顔どころか人種すら知られてない奇怪なエージェントですよ……グスッ

 

239:サイ男 ID:zzztensei01

泣くな、泣くな

あんま時期変わらないし誤差みたいなもんだろ

 

240:サソリ薬師 ID:zzztensei03

水差すなって~、リーダーほんと空気読めないわ

 

241:デンキウナギ ID:zzztensei02

正直すまんかった

まあ、あれだ一番最初は得られなかったけど、これからだって重要だろ?

原作始まるし、俺たちは表向きにも彼らと関わっていかなきゃいけない

その点で言えばこのメンバーで、一番関わりが生まれるのはクロエじゃないか?

 

242:サイ男 ID:zzztensei01

そうだな、確かヴィクトリア家政にいるなら、もう確定でエージェントになれるって話だったよな

正直うらやましいぞ

 

243:サソリ薬師 ID:zzztensei03

確かに

ヴィクトリア家政のメイドとして、バレーツインズで実装を待つ

二度おいしいとはまさにこのこと

 

244:カラスメイド ID:zzztensei04

みんな……グスッ、そうだね、ありがとう元気出た

私はもう既定路線だもんね

つまり!古参に加えて、アンビーみたく2回実装されるエージェントになれるんだ!私は勝ち確だ!

 

245:サソリ薬師 ID:zzztensei03

元気が出て良かった、良かった

 

246:軟体エンジニア ID:zzztensei05

ボクが既に彼らと関わり合ってることは空気読んで黙った方が良い?

ちな隣のカスタムショップ勤めです

 

247:サイ男 ID:zzztensei01

絶対黙っとけ

 

248:カラスメイド ID:zzztensei04

うぅ……

 

249:デンキウナギ ID:zzztensei02

ああ!ほらもうアカンやん!

この末っ子め!

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

310:デンキウナギ ID:zzztensei02

よし、じゃあ原作開始後の俺たちの動きを説明する

短期スパンでこれから事件が起こりまくるから恐らく比にならないくらい忙しくなる

 

311:サイ男 ID:zzztensei01

忙しいって、旧都陥落時よりもか?

 

312:デンキウナギ ID:zzztensei02

あれは殿堂入りです

ほんとありがとうございます、お疲れさまでした

 

313:軟体エンジニア ID:zzztensei05

いや、草

 

314:カラスメイド ID:zzztensei04

実際ダイさんのワンオペだったもんな、流石にあれよりは余裕ありますよ

安心してください

 

315:サイ男 ID:zzztensei01

マジで良かった、正直めっちゃ怖かった

 

316:デンキウナギ ID:zzztensei02

ええ、今はもう5人全員動けるんでちゃんと役割分担します

大前提として今まで通り俺たちの正体は誰にもばれたらだめ、これまで通り2足わらじを果たして欲しい

 

317:サソリ薬師 ID:zzztensei03

まじで?もう正直私はアキラとリンには打ち明けたいんだけど

兄妹が言いふらすとは思えんし、別によくない?

 

318:カラスメイド ID:zzztensei04

まあ、気持ちは分かるけど

私、表と裏のギャップが激しいからできれば黙っときたい

メンバーの一人でも知能機械人じゃなく金属スーツってバレたら、多分身体的特徴から速攻で私も特定されそう。

 

319:軟体エンジニア ID:zzztensei05

表と裏のギャップが激しいのは完全に自業自得で草

ボクはバレるなら大々的にが良いな

お隣のカスタムショップの店員が何故かピンチに駆けつけ、スーツを身に纏い変身!颯爽と敵を殲滅し、鮮やかに救出!めっちゃロマンがあると思わない?

 

320:デンキウナギ ID:zzztensei02

アカン、アカン!

アキラ達が一番ダメなんだって

厳密にいえばアキラとリンじゃなくてこれから登場する”Fairy”にバレるのが不味い

 

321:サイ男 ID:zzztensei01

Fairy……もしかしてそいつが危険な感じか?

 

322:サソリ薬師 ID:zzztensei03

簡単に言うと超高性能の出自不明のAI、

これからパエトーンの陣営に加わるんだけどマジで性能が破格

 

323:軟体エンジニア ID:zzztensei05

うん、あれはもう正直頭がおかしいね

悔しいけどとても作れそうにないよ

 

324:サイ男 ID:zzztensei01

ドクが頭おかしいっていうなら相当じゃねえか

例えばどういう性能なんだ?

 

325:軟体エンジニア ID:zzztensei05

まあ有名どころは、今の兄妹のホロウルート算出速度が270倍になるね

しかも一切ローカルデータに頼らずに

 

326:サイ男 ID:zzztensei01

……は?今の270倍!?それはやり過ぎだろ

 

327:カラスメイド ID:zzztensei04

無制限に新エリー都に存在する知能設備の80%以上のアクセスを可能としてたよな、確か

 

328:サイ男 ID:zzztensei01

はちじゅっぱー……

 

329:デンキウナギ ID:zzztensei02

Fairyのことは人間臭くて好きだし、面白くて有能、個人的には信じたいけど『規約』とかで一方的な協力者としているから謎が多いんだよな

同格のAIがあと三体いるし

 

330:サイ男 ID:zzztensei01

あとさんたいも……

 

331:サソリ薬師 ID:zzztensei03

ああダイさんが数字を繰り返す壊れた機械になってしもうた

お労しや

 

332:カラスメイド ID:zzztensei04

確かに言われてみれば、Fairy白確じゃないのか、Fairyが白だとしても他三体が分からん

僅かな手がかりから一瞬で正体を看破されそうやな

 

333:デンキウナギ ID:zzztensei02

そう、最悪他三体のどれかを讃頌会みたいな激やば組織が利用するかもしれないからな

マジで不用意に人前でスーツを脱げん

俺の正体が知られたらTOPSの奴らに強大な弱みを見せることになる

何されるか想像に難くない

 

334:軟体エンジニア ID:zzztensei05

じゃあ、これからも知能機械人として活動するしかないの?

残念だなー、これからもスーツの改良しなきゃじゃん、もう仕方ないなー

 

335:デンキウナギ ID:zzztensei02

讃頌会みたいな作中で暗躍する奴らに対抗するためや

我慢してくれ

 

335:サソリ薬師 ID:zzztensei03

残念だけどわかった、あとドクは内心絶対喜んでるだろ

 

336:サイ男 ID:zzztensei01

これからも余計な機能が付いてないか戦々恐々しながら着ないといけないのか

理由は把握したから続けてくれ

 

337:デンキウナギ ID:zzztensei02

取り敢えず金庫に入ってるFairyは邪兎屋に任せるとしてーー

あ、ちょっと待って、なんか噂をすればアキラから連絡来た

 

338:デンキウナギ ID:zzztensei02

ーーーファッ!?まじ!?

 

339:サイ男 ID:zzztensei01

どした

 

340:サソリ薬師 ID:zzztensei03

なんか緊急事態?助けに行った方がいいか!?

 

341:軟体エンジニア ID:zzztensei05

取り敢えず隣の様子見に行ってみる!

 

342:カラスメイド ID:zzztensei04

急げ!頼んだぞ!

 

343:デンキウナギ ID:zzztensei02

いや待て違う、アキラから重要な話があるって呼び出された

場所は……まさかの『Random Play』

 

344:カラスメイド ID:zzztensei04

……は?マジで!?

 

345:サソリ薬師 ID:zzztensei03

いや何考えてんだ?

私たちは兄妹に対して絶大なる信頼を置いてるけど、向こうからしたらかなりビジネスライクな関係じゃない?

 

346:サイ男 ID:zzztensei01

ホロウ外での接触……それに自分たちの住処を送るとは

わざわざ正体を俺たちに晒すのはリスクあることじゃないか?

 

347:デンキウナギ ID:zzztensei02

取り敢えずホロウの外なのがまずいな

機械人が五人も集まったんじゃあ、目立ちすぎるし、不自然だわ

 

348:カラスメイド ID:zzztensei04

連絡来たのリーダーだけ?私来てないけど

 

349:サソリ薬師 ID:zzztensei03

私はリンから来てる

ちょっとというか、かなり心当たりがあるわ

 

350:サイ男 ID:zzztensei01

俺は来てないな

 

351:軟体エンジニア ID:zzztensei05

ボクも、ていうか先程様子見に行ったから、今ビデオ屋いるんだけど応対したリンとアキラがどこか焦ってるような、可愛い

 

352:サソリ薬師 ID:zzztensei03

判断と行動が早い

 

353:サイ男 ID:zzztensei01

まあ隣だもんな、プロキシ関係の依頼出した瞬間にパンピーが来たら動揺するだろ

 

354:カラスメイド ID:zzztensei04

腹芸はまだまだのようですな

 

355:軟体エンジニア ID:zzztensei05

取り敢えずビデオ借りに来たって誤魔化してビデオ屋を後にしたけど

結局どうするの?

 

356:デンキウナギ ID:zzztensei02

それなんだがメンバーの指定もないみたいだし、ちょっと俺一人と訳知りのマオで行ってみることにするわ

掲示板あるしわざわざ全員で行く必要もないだろうしな

 

357:カラスメイド ID:zzztensei04

うらやましいけど取り敢えず頼むわ

 

358:軟体エンジニア ID:zzztensei05

何があったか後で教えて

 

 

ーーーーーー

 

 

 

まるで世界そのものが闇に溶けていくような夜だった

店頭の光すら滲んで、活気あふれる六分街も静まり返り、出歩く者も少なくなる。

 

時間を確認しては、また画面を消す。それを繰り返すだけで、心臓の鼓動が速くなっていく。アキラとリンは店の中で待っていた。

 

ーーコンコン

 

店の扉が不意に叩かれる音が聞こえた。既に店を閉めており、照明も消えていることから本来の目的で店を訪ねてくるお客ではないのだろう。

つまり扉を叩いたのは自分たちが呼び出した()()であるということだ。

 

じっとリンと目配せをし、互いに頷く。

そして、扉を開ける。

 

果たしてそこに立っていたのは半年前のあの日に見た、ロックと名乗っていた知能機械人、エレクトロの姿であった。

金属装甲を厚手の黒いパーカーで覆い隠し、頭部にはフードを深く被っていた。

 

「やあ、こうして実際に会うのは初めましてかな。呼ばれてはせ参じた、エレクトロだ。済まないが中に入れてくれないか?この姿は恐ろしく目立つ。」

 

厳格なようでいて、どこかおどけた調子でそう言うのはいつものエレクトロだ。

そして後ろにもう一つの人影が忍んでいた。

 

「一応確認してきたが周囲に人影はなかったぞ、……初めまして、お二人さん。いつも遠隔操作したボンプと会っていたからか、なんか目線が近いと新鮮だな。スコーピオンだ。」

 

彼女も似たような格好であったが巨大な尻尾を隠せていないため、人目に触れるとまずい。

急いで二人を店内に案内し、誰も立ち入らないよう入り口に鍵をかけた。

 

 

 

「改めて、いらっしゃい二人とも、僕たちがパエトーンだ。急に呼び出してすまない。それもこんな夜遅くに訪ねてきてもらって……」

 

「一応初めまして……かな?リンだよ。なんか二人を実際に見ると映画から飛び出してきたような感動があるね」

 

「それはありがとう。実はリーダーって、結構映画の悪役に影響を受けて、雰囲気とかキャラ作りとかしてるからな。その表現はあながち間違いじゃない」

 

「おい言うな」

 

プロキシとホロウレイダー、非合法な陣営同士の会合だが、和気藹々とした雰囲気が店内に流れていた。

 

「兎に角、気にしないでくれアキラ、我々の仲だ。それに時間を指定したのは此方だ、日中に人目を避けつつ店に辿り着くなんて下手にホロウを探索するより難しいことかもしれん」

 

「そうそう、気にする必要ないんだ。それにこういう、世間の目から離れた密会ってワクワクしてこないか?」

 

「あー!ちょっとわかるかも、映画のワンシーンぽいよね!」

 

「見たところここはビデオ屋のようだな、ふむ……少し気になるビデオがあるな、これとか借りていいか?」

 

「勿論いいよ。そうだ、うちはランク式の会員制なんだけどせっかくなら二人とも会員にって、……そういえばコードネームじゃ会員にできそうにないな」

 

ヒール側は店内を見渡し、商品のビデオなどを物色する。兄妹は実際に彼らの金属装甲の感触を確かめてみたりなど、各々の時間を過ごす。

気の合う友人たちが集まって、なんてことのない会話を交わすような穏やかな時間であった。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

一通り話した後、いよいよ本題をアキラが切り出した。

 

空気が引き締まり、周囲に僅かな緊張が走る。

 

「さて本題に入ろう……、今日二人に来てもらったのは僕たちの秘密を打ち明けたかったからだ」

 

ようやく声が出た。自分の声が自分のものじゃないような、どこか遠くで聞こえているような気さえした。

何をどう言えばいいのか、どこから話せば伝わるのか。何度も頭の中で並べて、崩して、また並べて。

手のひらがじっとりと濡れているのを感じながら、視線を上げる。

 

エレクトロとスコーピオンの二人が一斉にこっちを見ている。

その目の奥にある“聞く準備”に、胸が少し痛くなった。

 

「(でも伝えなければ。機会は今しかない)」

 

彼らは静かに、此方を急かすことなく待っている。彼らの気遣いに心の奥で、何かが音を立てた。

さっきまでごちゃごちゃと渦巻いていた不安や恐れが、ふっと静まり返る。

 

「実は……」

 

アキラは話した、言葉をしぼり出すようにして、ゆっくりと今まで隠していた秘密を打ち明けた。

 

自分たちが生まれ育ったヘーリオス研究所のこと、

 

”夥しい犠牲者を出した大罪人”とされているカローレ・アルナと自分たちの関係、

 

あの日見た先生を連れ去った白い手の怪物のこと、

 

誰にも頼れず真意を明かせないまま、真相を探るため今まで日陰者として活動してきたこと、

 

「以上が僕たちの隠していた秘密だ……、信じがたいことなのは分かっている。でもこれまで僕たちは真実を探すため懸命にやってきたんだ。だから……どうか、どうかこれからも僕たちと共に戦ってほしい……!」

 

言い終わると、世界が静まり返った。

前にいる二人は何も発さず、その金属の表情からは何も読み取ることができずに恐怖を感じた。

 

長い長い沈黙であった。

 

しかし、その沈黙を破ったのは、エレクトロだった。

 

「よく……話してくれた。アキラ、リン、勇気を出したな」

 

いつも通りの機械エフェクトが掛かった声。しかし、どこか慈しむ様な温かさを感じる声であった。

 

「あの日の旧都陥落での被害者は数えきれない。君たちの正体を知ったものがどんな恐ろしい行動に出るかは想像に難くない。そんなリスク覚悟の元、我々を信じてくれてありがとう、そちらの信頼には、信頼をもって答えさせてもらう。」

 

「……信じて……くれるの?」

 

隣にいたリンはぽつりとそう零す、暗闇の中で光るかすかな希望がその眼には映っていた。

 

「勿論だとも、仲間として支える……そこのスコーピオンが言ってただろ?約束を反故するわけにもいかないだろう。」

 

エレクトロの言葉を聞き、二人が彼女に視線を向けると、俯きながらプルプル震えていた。

 

どうしたのかと尋ねようとした時、いきなり勢いよく顔を上げ此方に飛び込んできた。

 

「うわぁ!?」

 

「え、きゃっ!?」

 

彼女は大きく腕を広げ二人まとめて此方に抱き着いてきた。器用に尻尾まで使い全力の抱擁を行う。

 

「うわぁぁぁぁ!二人とも、グスッ……!本当に頑張ったなぁ……!」

 

ノイズ交じりの乱れた音声で泣き始めるスコーピオン、どうやら感極まっていつもの冷静さを失ったようだ、まるでここにはいない”ファルコン”のよう。

 

彼女の金属製の肌に触れ、胸が熱くなるように感じる。

 

ていうか力がかなり強いな!?兄妹ともども押しつぶされそうだ。あっ、骨がミシミシとーー

 

「馬鹿馬鹿馬鹿っ!?一旦、離れろボケが」

 

口調が崩れたエレクトロが慌てた様子で彼女を引き離す。

彼女の行為は嬉しいがもう少しで潰されるところであった。

 

「ちょ、おま、まじでふざけんーー……いや、二人とも!違うんです。これは正体を知ったから攻撃したとかではなくて、つい感情が暴走したとか、そんな感じのーー」

 

どうやら動揺で彼が作ったキャラが壊れてしまったようだ。

 

慌てまくる、その様子がおかしくてリンと顔を合わせて笑った。

 

「ぷ、あははは!リーダーさん焦り過ぎだって」

 

「いつもの厳格な雰囲気が完全に剝がれてしまっているよ、っふふ」

 

「~~~!!」

 

恥ずかしさのあまり声にならない悲鳴を上げた彼は元凶の彼女に掴みかかる。

秘密を打ち明けた時の思いや、受け入れてもらった感動を台無しにするひどい構図だ。

 

だが、心はどこか晴れやかで、すっと軽くなっていた。

 

「二人とも……!ありがとう……」

 

そんな二人の姿を見ながら、心からの感謝を送った。

 

 

ーーーーーー

 

 

 

「ええ、取り乱してすまないが君たちに伝えておきたいことがある」

 

お、リーダーがちゃんとモードに入ってるなんてリンが茶化せば、すっと目が細められ睨まれる。

先程の出来事は触れてほしくないようだ。

 

気を取り直して、ノイズの入った咳払いをして彼は続ける。

 

「零号ホロウに存在するヘーリオス研究所の調査、我々は全面的に協力する。ただ、以前君たちに渡した零号ホロウについての調査記録では情報不足で、調査ははっきり言って無謀だ。そこで調査に取り掛かる前に此方が絶対に手に入れなければならないものがある。」

 

「!リーダー、それは……」

 

隣のスコーピオンがぎょっとしたが、構わずに続ける。

 

「すまん、言わせてもらう。アキラ、リン今から話すのは()()()()()()()()()()()A()I()の情報だ」

 

そうして開示されたのは、現状の突破口となりえる存在についてだった。




早いところ、戦闘描写書きてぇ
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