「不得意を乗り越える」なんてくだらない
どんな苦手なことでも努力で乗り越える――。そんな考えがいまだに美徳のようにあつかわれる。くだらない。限られた体力や時間をあえて苦手分野に投じる。そこに合理的な意義は1ミリもない。あるのは不毛な苦痛だけだろう。
そもそもの適性がないから苦手なのだ。100メートル走で15秒かかっていたあなたが、努力の甲斐あって14秒で走れるようになった。でも14秒は一般成人男性の平均タイムだ。あなたより速い人はわんさかいる。なんの強みにもならない。虚しい努力だ。無意味な努力だ。
先ほど「他動力」について述べた。他人の力を借りて、自分ひとりでは成し得ないことを実現するという考え方だ。この他動力のシンプルな形態のひとつが「外注」である。専門家の力を借りるわけだ。
理解に苦しむ「毎年確定申告で発狂している人」
毎年、不思議に思うことがある。3月ごろになるとSNSには確定申告にまつわる嘆きの声があふれかえる。「仕組みが複雑でぜんぜん終わらない」「忙しくて手をつけられない」という嘆きだ。なかには税務署や政府に怒り狂っている人までいる。春の風物詩である。
なぜ貴重な体力と時間をすり減らしてまで自力でやろうとするのだろうか。理解に苦しむ。世の中には税務や会計に精通した税理士というプロがいる。彼らに依頼すればあっという間に片づけてくれる。
税理士を使えるのはホリエモンが金持ちだから? そういう問題ではない。僕は起業したての資金に余裕がなかったころから、税務や経理といった専門的な作業は外部に丸投げしてきた。
外注の費用がもったいないと躊躇うのは悪手だ。考えてみてほしい。苦手な作業に費やしているその時間をあなたの得意分野に充てたとしたらどうだろう。あなたにとって有益なものをより多く生み出せるはずだ。
専門家に任せるのか。あくまで自力でやるのか。目先の出費に惑わされてはいけない。専門家に払う費用は、機会損失のコストに比べれば安いものだ。
「自分でやったほうが安心だ」と言う人もいる。本当にそうだろうか。素人が悪戦苦闘して作成した申告書。経験豊富なプロがその知識と最新のツールを駆使して作成した申告書。どちらが正確か。言うまでもないだろう。
なかには自力で提出したあと「間違いがあったらどうしよう」と心配する人もいるようだ。苦労してやったあげく、不安とリスクを背負い込むのである。あまりにバカらしい話だ。