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現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変  作者: 二日市とふろう (旧名:北部九州在住)
お嬢様モラトリアム

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剣道大会 小学生の部 その1

作者は初段が取れなかった程度の剣道経験者

 竹刀が交差する。

 先に当たったのは私の竹刀だった。


「面有り!一本!!」


 ギャラリーの歓声を耳にしつつ礼をして座る。

 剣道の都大会小学生の部個人決勝戦。

 当たり前のように私は決勝戦に進む。

 立ち上がり、礼をすると私の相手は見知った相手だった。


「決勝戦!

 帝都学習館学園 桂華院瑠奈 対 帝都学習館学園 高橋鑑子

 前へ!」




「鑑子さんは剣道をしていたのですか?」


 それはたしか昼食の席の話だったと思う。

 みんなと話していたら、薫さんが思い出したかのように話を振ってきたのだ。

 うどんを食べていた鑑子さんは、照れくそうにそれをごまかす。


「あはは。

 私の場合、親の関係からちょっと道場と付き合いがあってね。

 その縁で道場に顔を出しているだけよ。

 けど、何処でその話を知ったの?」


「今度の都大会ってゲストにうちの父が参加するのですよ。

 父も剣道をやっていて、その父のご友人から『うちの道場の切り札を世に出す時が来た』ってえらく自慢なされて」


 華族は特権階級だからこそ、この手の大会のゲストとして招かれる事が多くある。

 で、剣道や柔道や空手等の武道は警察や自衛隊が武道として取り入れており、県警本部長という警察のお偉いさんの子供である鑑子さんがそんな付き合いで剣道をやっているというのはある意味納得がいく話だ。

 けど、彼女はたしか帰宅部のはずである。


「あれ?

 鑑子さん、たしか帰宅部じゃなかったっけ?」


「そう。

 道場に顔を出すから、部活まで手が回らないのよ」


 帝都学習館学園では武道系の部活は初等部五年生からという校則がある。

 身体にダメージが及ぼすかもしれない武道系は上級生からでないと学ばせないという訳だ。

 同時に部活だからこそ、この時点では基礎しか学ばせない。

 ピンとくるものがあったので、私は鑑子さんに尋ねてみる。


「ねぇ。鑑子さん。

 貴方、竹刀を握ったの何時から?」


 箸を置いて頬に手を当てた鑑子さんはあっさりと言った。

 その意味を理解することなく。


「幼稚園の時に師匠から竹刀をプレゼントされてからだから、それぐらいかな?」


 この大会個人の部は学校によるエントリーだけでなく、道場からの推薦エントリーなんてのもある。

 道場側はこういう大会で名前を売る訳だ。

 たしか、この大会に私の所属する剣道部は団体と個人両方でエントリーしていたはずだ。

 つまり……


「だから、決勝で会いましょう。

 瑠奈さん」




 継続は力である。

 そして、継続された経験というものは、徐々に花開くケースと急に開花するケースの2つがあると私の師匠である北雲涼子さんは言い切る。


「たとえば、竹刀を振る回数なんかは徐々に開花するケースですね。

 最初は100回振るのも大変なのが110、120と増えて200回も苦にならなくなる感じです」


 その話を聞きながら私は竹刀を振り続ける。

 呼吸を乱すことなく竹刀を振れるのはチートボディのおかげなのだが、ここでそれを指摘するのも無粋だろう。


「急に開花するケースって色々あるから、説明が難しいのです。

 ただ、今までできなかった事が、ふっと視野が広がるというか……」


「涼子さんはそんな事あったの?」

「ありますよ。

 たとえば……」


 悪寒がして、私は素振りを止めて飛び下がる。

 涼子さんはまったく動いていない。

 いつの間にか息が乱れて、汗が額に浮いていた。


「こんな事とか。

 こればかりは訓練してできるような物ではないですからね。

 けど、お嬢様。

 よく今の殺気に反応できましたね?」


 にっこりと褒めてくれる涼子さんの笑顔に私は苦笑するしかなかった。

 私は素振りを再開して大会の対策を尋ねる。


「鑑子さんに私は勝てると思う?」


「幼稚園からしていたというのでしたら、六年間道場通いですからね。

 一通りの技術はお嬢様より勝っていると考えるべきでしょう。

 それよりも大事なことがあります」


 涼子さんは背筋を伸ばして、その質問を私に尋ねた。


「鑑子さんとお嬢様。

 背が高いのはどちらですか?」


「鑑子さんの方が、私より握りこぶし一つ高いかな?

 クラス女子の中でも、たしか一番後ろだったと思うけど、それがどうして?」


「技術や経験を軽く超えてくるのが体格差なんです。

 剣道は、基本3つの場所に竹刀を打ち込む事が目的になります」


「面・胴・小手よね?」


 剣道というのは、当てられることを想定する武道である。

 本物の刀ならば相打ちになる所だが、それよりも刹那早く相手より竹刀を打ち込めば勝てるというのがポイント。

 

「大雑把な言い方ですが、相手の方が拳一つ分竹刀が長いと考えてください。

 これはものすごく大きなハンデになります」


 先に打ち込む事で一本が決まるなら、この拳一つの長さは本当に強烈なハンデとなる。

 もちろん対策が無いわけでもないが、己が不利である所からのスタートだとは心に叩き込んだ。


「ある一定のレベル以上で相打ちに行くと、体格差で押し切られます。

 そうなると、相手を誘ってからの、後の先狙いの小手が一番勝ちやすいでしょうが、それを相手も読んできます。

 お嬢様には陸上部からもお声が掛かる足の速さと持久力があります。

 それを武器に、対策を組んでいきましょう。

 何人か人を雇って、お嬢様のご友人の剣道の撮影をしておきますね」


 社会主義国にとって、スポーツも国威高揚の政治であり、それは科学と情報を駆使した戦場でもある。

 涼子さんの対鑑子さんのメタを聞きながら、おそらく剣『道』から最も遠い所に私は居るなと苦笑する。

 正座をしたまま手ぬぐいを金色の髪に巻いて面を付ける。

 胴などがずれていないか確認して相手の鑑子さんを睨みつける。

 戦いは既に始まっている。

 互いに礼をして、審判の声と共に私達は刹那の剣戟を打ち合った。


「始め!」

 この話を書く前に某ソシャゲの下総の話をクリアしましてね……

 鑑子ちゃん=某剣豪ちっくなノリで書く予定

 なお、彼女の親は日本初の女性警視総監を彼女に夢見ているから、どちらかといえば幕府の剣豪大名の方になってほしいのだろうが多分彼女はそのあたりの違いをまだ分かっていない。

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― 新着の感想 ―
[一言] 鑑子さんのお父さんって、鑑種さんとか言いそうですね。 また読み返してみようかなぁ。
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