生徒会のお仕事 その3 2019/5/13 投稿
この話はフィクションです。ええ。
帝都学習館学園は基本生徒総会というものがない。
特権階級維持の為に数で押せる生徒総会というのは相性が悪いのだ。
そのため、クラス委員会がそれぞれの生徒会での意思決定機関となる。
更に、それに継続性と正当性を与えるために、生徒会と委員会は初等部から中等部・高等部まで跨いでいるというおまけ付き。
ゲームや漫画である強大な自治権限がある生徒会運営の為には、こういう裏設定があるのだなぁと感心した覚えがある。
「桂華院さん。
ちょっと良いかしら?」
授業も終わって間の休み時間。
机でぐてーとしていた私の所に、友人である春日乃明日香さんと開法院蛍さんの二人がやって来た。
「ん?なに?」
「中等部との境目の敷地に使われていない花壇があったでしょう?
あそこの使用許可が欲しいのよ」
あったっけ?そんなの?
首をひねりながら、私は校則に則った解決方法を言う。
「それだったら、美化委員会の職分だと思うのだけど?」
「私もそう思って、行ったのよ。
そしたら、その花壇中等部の管轄になっていたのよね」
「あー。おーけい。
そういう事か」
管轄が中等部の場合、中等部の美化委員会に申請を出さないといけない。
はねられる事は無いだろうが、中等部のお兄さんお姉さん相手に事務手続きは面倒だし怖いという訳だ。
管轄を初等部に移動させて、初等部美化委員会に申請をというのが明日香さんの頼み事なのだ。
「じゃあ、初等部生徒会から花壇の管理移動申請という形で良いの?」
「おねがい。
それはクラス委員会で提案するから、その後で美化委員会に再度許可をもらいに行くつもり」
基本、日本の会議は決定する場であり、勝負はその前の事前準備という名前の根回しによって決められる。
今回のケースは、初等部生徒会副会長の私と、クラス委員の明日香さんが居た時点で初等部内ではほぼ話が固まったと言っていいだろう。
「けど、何でそんな場所の花壇を使うのよ?」
その花壇というのはこの教室から見える場所にあり、窓側に行って確認をすると石で囲われているがたしかに荒れ地みたいな感じになっているのが分かる。
窓際の席だった蛍さんが明日香さんの耳元でこそこそ。
明日香さんがそれを通訳してくれる。
「何もないのは寂しいし、花が咲くのなら楽しいかなって」
一年お世話になる教室だから、彩りはあった方がいいだろう。
で、内々で根回しをして事を決めるから後で地雷が出てきてというが日本行政あるあるであり、そういう所もその模倣である帝都学習館学園生徒会もしっかりと受け継がれて私達は頭を抱えることになる。
「え?
中等部生徒会が花壇の管理移動申請を拒否したの!?」
書面で返事がなされた中等部生徒会からの拒否に驚く私。
栄一くんがその書類を片手に、苦笑とも不満とも見えるなんとも言えない顔でその理由を告げる。
「中等部の管理施設で、移管には特段の理由がないだそうだ」
続いて裕次郎くんが地雷の中身をぶちまける。
このあたり、その手口を知っているのと知らないのでは大きくものを言う訳で、裕次郎くんはお父様の泉川副総理から、ちゃんとその手の勉強をしているというのが分かる。
「気になって調べてみたら、中等部と初等部の境目の敷地内に使われていない花壇が二十箇所もあってね。
それも荒れ地に石を並べただけで、どう見ても花壇じゃないだろうというやつも」
続いて光也くんが、中等部会計報告書を眺めながら、その裏を見抜く。
これも父親を見て覚えたのだろうかなんて思ったのは内緒。
「中等部の敷地内の花壇を管理している業者が、中等部美化委員会と深い関係らしくてな。
結構な額が払われているんだが、管理費の計算は一括では無く個別計算になっているんだよ」
この場合の『深い関係』の同義語は『癒着』である。
からくりが見えてきた。
「あー。
何も知らない初等部の敷地に花壇を水増しした訳だ」
「そのとおりだ。帝亜。
で、移管されるとそのからくりがバレるという訳だ」
栄一くんの納得に光也くんが合わせる。
唐突に私の記憶がよみがえる。
ゲームのイベントの一つで、花を植えよう運動に連動して荒れ地の花壇の整備をしようとした主人公に生徒会と美化委員会が意地悪をするというイベントで、まだその時は高等部1年だったが背後に悪役令嬢の私が暗躍なんてイベントが。
美化委員会は校内の庭園管理だけでなく、校内掃除の担当と業者選定を行う。
業者と繋がるならば、ゴミという情報を合法的に入手できるのだ。
奇しくもゲームの私の背景を察する事ができるとは。
「ん?
どうした?瑠奈?」
「なんでもない……と言いたい所なんだけど、春日乃さんと開法院さんに何ていうべきか途方に暮れていた所」
「え?
お前のことだから合法的にぶん殴り……」
栄一くんの口が閉じたのは、私がにっこりと笑ったせいではないと思う。
多分きっとメイビー。
「栄一くん。
『雉も鳴かずば撃たれまい』って言葉って良いですよね」
こくこくこくと何でか男子三人が首を縦にふる。
実に失礼な。
だから訂正しておく。
「バレなきゃ非合法でもぶん殴るわよ」
「……お前のそういう所。
本当に桂華院だなぁ」
感嘆とも苦笑ともつかない言葉をつぶやいてくれた栄一くんの声を私は聞かなかったことにした。
癒着
癒着にもいくつかケースがあって、水増し費用分の一割をキックバック(つまりこの話だと中等部生徒会か中等部美化委員会)に払っているのが一般的。
その派生系として、水増し費用どころか管理費全部負担の上にキックバックまで払う代わりに親に便宜を図ってもらい、公共事業の便宜(精々数百万の負担で狙うのは億単位)を図ってもらうケースもある。
くどいようだが、嘘話である。