憑依先の悪役将軍の立ち回りが地獄過ぎる件   作:Mind β

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【お知らせ】
不定期更新ながら更新を続けさせて頂いている本小説ですが、更新に関して少しだけお知らせがあります。というのも、この前のブルアカらいぶ!みににてアリウス自治区に関する続編のストーリー更新の予告がありまして、これによりもし新たな公式設定などが追加された場合、私のプロットが見事に爆散することとなります。
なので、一先ずは9月17日のストーリー更新までは投稿を休止して、そこからどうするか(更新を再開するか、はたまたメインストーリーの更新を更に待つか)を決めようと思います。まさか私もこんなタイムリーなタイミングでアリウスに関するメインストーリーの更新が来るとは思っておらず、申し訳ないです…笑

あと、言い忘れていましたがこの世界の先生は女性です


第11話:作戦計画

 

 さて、という訳でカイザー本社によるアリウス自治区に対する武力制裁作戦の総指揮を任されることになったのだが。

 この作戦を進める上での弊害はいくつかある。

 

 まず一つ目。

 これは何と言っても地理的な問題だろう。

 原作にもあった通り、アリウス自治区は物理的、及び概念的の双方で完全にトリニティから完全に切り離されていて、通常の手段では機甲部隊やパワーローダーは疎か、通常の部隊すらまともに派遣出来ない可能性が高い。

これが最も大きな壁であり、仮に後述する二つ目の問題を解決できたとしてもこれを解決しない限り作戦達成は困難である。

 

 そして二つ目。

 これは完全に利権の問題である。

 アリウス自治区は当然ながらトリニティ総合学園の領地内に存在し、事実上の利権は同学園の生徒会であるティーパーティーが持つ。

 いきなり余所者が自分たちの土地で軍事行動をさせろ、と言われたところでまず許可される筈はないし、何より今はエデン条約調印式前――つまりは、原作で言うところのエデン条約編1章~2章に該当する。

 原作の流れから分かる通り、この時期はティーパーティーホストのナギサの裏切り者に対する疑心暗鬼やゲヘナとの緊張の高まりなどで情勢が極めてデリケートな時期であり、そんなところにカイザーが軍事行動を起こせば何が起きるか分かったものではない。

 

 つまり俺は何らかの形でトリニティの許諾を得て――無許可で行動を起こし、トリニティ側がそれを認識した場合は何が起こるかなんて想像もしたくない――軍事作戦をアリウス自治区に仕掛け、この際に地理的な問題を解決しなければならない、ということになる。

 

 ……無理ゲーすぎないか、これ。

 

 しかもこの時期にトリニティの生徒へ接触すること自体がリスキーだ。

 ご存知の通り先生はアビドスの一件でカイザーを完全に“子供を利用する悪い大人”認定しているため、彼女が出てきた瞬間にそれだけで盤面は詰みだ。

 

 「武力制裁」という言葉を正面からぶつければ、即座に拒否されるのは目に見えていることを考えると、何かしらのカバーストーリーか、対価を与えなければ話にすらならない可能性が高い。

 

「……よし、まずは第一段階。交渉の手筈を固める」

 

 俺は深呼吸し、デスクに向かう。

 テーブルの上には、アリウス自治区周辺の地図、情報部からの資料、そしてプレジデントから渡された作戦任務書。

 赤いペンで地図に印を付け、リスク要因を横に書き出していく。

 

【地理的問題】

・進入ルート不明 → 情報部の偵察ドローンやPMCの偵察コマンドを最大限利用。

・部隊規模縮小を前提とした特殊部隊案も検討。

 

【政治的問題】

・ティーパーティーの許諾が必須 → 何かしら、トリニティにも利益がある形の情報などを提供する見返りなどが必須。

 

【リスク要因】

・先生介入の可能性 → 避けられるよう日程・接触先を限定。

・トリニティ内部の混乱 → 交渉の相手はできるだけ信頼できる人物に絞る。

 

「……まずはトリニティとの接触役を誰にするか、だな」

 

 ペン先をくるくると回しながら、俺は次のステップを思案する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 D.U.シラトリ区 連邦捜査部S.C.H.A.L.E 本部

 

"っん~~!!"

 

「お疲れ様です、先生。コーヒーでも煎れましょうか?」

 

"ん? あぁ、アコ来てたんだ。じゃあお願いしてもいいかな"

 

 シャーレの執務室。

 書類の束に囲まれたデスクで、先生は椅子に深く腰掛け、背筋を伸ばして小さく息を吐いた。

 その背後から、青髪の少女――天雨アコが声をかける。

 振り返った先生は、気づかなかったことに少し苦笑しながら頷いた。

 

(そういえば、今日はアコの当番だったな。うっかり忘れていた)

 

 先生の言葉を受けて、アコは軽く会釈し、すぐに小さなキッチンへ歩いていく。

 豆を挽く音と、湯の沸く音が静かな室内に響き、心地よい香りが広がっていく。

 

 そんな中、アコが問いかけた。

 

「……先生。最近、カイザー・コーポレーションの動きが妙に活発化していること、ご存知ですか?」

 

「……そうなの?」

 

「やはりご存知ありませんか……。ここ数日で、カイザーは大規模な部隊をゲヘナ内の研究施設に派遣しています。それだけでなく、D.U.の本社周辺が通行止め――恐らくは幹部陣が会議でもしたのでしょうか、とにかくここまで活発化したのはアビドスの一件以来です」

 

 アコの言葉に、先生は思わず眉を寄せた。

 不穏な話題と、鼻腔をくすぐるコーヒーの香り。二つが妙にちぐはぐで、かえって胸の奥に冷たい予感を落とす。

 

"……ありがとう。少し、お手洗いに行ってくるね。体調が優れないみたいだ。お願いしている仕事は、昨日モモトークで送ってあるはずだから。先に始めていて欲しい"

 

 軽く礼を言い、カップを机に置いたまま立ち上がる。

 先生は足音を響かせ、執務室を出ていった。

 

 

 

 

 トイレの洗面台に手を付き、息を荒くする先生。

 蛇口を捻って冷水を出し顔を洗うも、彼女の動悸が収まらない。

 

「……はぁ、はぁ……また、これか。何やってるんだろ、私」

 

 最近はずっとこうだ。

 ヘイローもない、大した能力も、知識もないただの一般人がいきなり知らない世界に放り出されて、シャーレの先生という立場故に尊敬され、畏怖され、信頼され。

 初めての本格的な出張――アビドスでの一件は、シッテムの箱とアロナがとても優秀だから助かった。

 だけど、次があるかは分からない。

 

 次、失敗したら。期待に応えられなかったら。

 

「今はエデン条約の仕事で忙しいのに…なんで、このタイミングで動き出すのさ……」

 

 政治の経験もなければ、まともな社会経験もない。

 外の世界ではアルバイトくらいしかしたことがない自分が、戦場で武装した大人たちと対峙したあの瞬間――。

 恐怖で胃が裏返るような感覚を、今も鮮明に覚えている。

 

 トリニティでの仕事は、まだ子供の間での政治の話だ、と自分に言い聞かせてはいたものの、カイザーがまた出てくるとなれば話は変わってくる。

 

「いつまで、取り繕えるのかな……」

 

 この“仮面”が剥がれる時が来るのが怖い。笑顔を見せても、強く見せても、全部が偽物だと知られる瞬間が

 その不安を吐き出そうと口を開いた瞬間――。

 

 ガチャッ。

 

 突然、トイレのドアが勢いよく開かれ、先生は肩を震わせた。

 

「先生、大丈夫ですか? 随分と戻るのが遅いようでしたが……」

 

 どうやら、戻るのが遅い先生を、アコが心配してくれていたようだった。

 だが、その視線が優しいほどに胸が締め付けられる。

 慕ってくれる生徒すらも、本当は怖い。期待を裏切ってしまうんじゃないか、という恐怖が。

 

"……うん、ちょっとお腹の調子が良くなかったみたいで。ごめんね。今戻るから"

 

 精一杯、笑みを作って言う。

 それが強がりだと自分でも分かっている。

 

 それでも――私は“先生”をやり続けなければならない。

 私が辛くても、皆が笑顔でいられるために。




前書きで述べた通り本編の更新は一旦ストップになるので、多分次の更新は人物設定とか諸々になると思います。
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