憑依先の悪役将軍の立ち回りが地獄過ぎる件   作:Mind β

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遅れてすみません(n回目)


第10話:黒幕

 

 プレジデントと直談判してから二週間。俺が提出した軍事改革案は即座に承認され、各部門で急ピッチに整備が進められた。

 

 指示を出すだけでは済まず、俺自身もいくつもの前線基地や研究施設に足を運んだ。完成したばかりの自爆型ドローンSD-01が編隊を組んで飛行する様子を間近で見て、爆音と共に目標へと突撃する様はまさに圧巻だった。ATACMS――滑空型短距離戦術弾道ミサイル――の試験発射にも立ち会ったが、発射音、弾道の弧、着弾時の衝撃波に至るまで、まさに戦争機械の芸術品といえた。まさに男のロマンである。

 

 しかし、俺の頭を本当に悩ませていたのは、兵器そのものではなく、その裏側だ。

 

 情報部が突き止めた事実――反乱因子に技術と物資を提供していたのは、アリウス自治区。

 トリニティ総合学園の近郊にある、封鎖された自治区。そこが供給源だった。

 

 奴らはそこから得た技術……つまりは名もなき神々の遺産でPMW-1のようなオーバーテクノロジー兵器を生み出していた。

 

 この重大な情報を受け、カイザー・コーポレーションは全子会社の幹部を本社に召集。

 緊急対策会議が開催されることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝、俺は黒塗りの防弾仕様の社用車から降り、本社の入り口前に立った。ビルは今日も無機質で巨大な存在感を放ち、鋼鉄のように冷たく、静かだった。

 

 そこで顔を合わせたのは、カイザー・インダストリーとカイザー・コンストラクションの代表たちだった。

 

「将軍、これはお疲れ様ですな。近頃は現場より、会議室の方が多いんじゃないですか?」

 

「はは、それはお互い様でしょう。インダストリーも兵器部門の生産ラインがフル稼働と聞きましたが?」

 

「ええ、正直言って現場が火を吹いてますよ。ついでに経理もです」

 

「コンストラクションも似たようなものだよ。地下シェルターの強化工事、次は砂漠にも展開だとさ」

 

「……まったく、血の臭いが絶えない世の中になったもんだ」

 

 苦笑交じりの雑談を交わしながら、俺たちは会議場へと向かった。

 

 カイザー本社の戦略会議室。

 中央が空いた円卓のような座席配置。各子会社の代表が、自社の名が刻まれたプレートの前に着席する。

 

 俺も今回は“マーセナリーズ代表”という肩書きで、指定の席へ腰を下ろした。

 まもなく室内の照明が落ち、プレジデントが姿を現す。

 中央のプロジェクターが起動し、暗い空間に資料が投影される。

 

「――こちらが、アリウス自治区との非公式な交易ルート、および押収された証拠データだ」

 

 映し出されたのは、旧トリニティ領域に存在する地下経路、取引記録、そして核融合炉部品やナノ素材などの明細。

 無言のまま、各代表が資料を見つめる。表情は苦々しく、静かに眉をひそめる者もいれば、手を組んで深くうなずく者もいた。

 

 そして、プレジデントの声が、静かに響く。

 

「今回、諸君を招集したのは、この事実に対する我々の行動方針を決定するためだ」

 

「アリウス自治区――これを、どう始末するか」

 

 沈黙を破ったのは、PMCの代表だった。

 

「カイザーPMCとしては、断固たる武力制裁を推奨する。我々に刃を向けた者に報いを与えねば、示しがつかん」

 

 続いてインダストリー代表が慎重論を述べた。

 

「アリウスは一応トリニティの自治領。下手を打てば、外交的摩擦は避けられない。制裁は慎重に進めるべきです」

 

「セキュリティ部門もPMCの意見に同意します。明確な敵に対しては、即時の行動が必要だ」

 

「ローンも同じ意見です。我々は金を貸す側であって、裏切り者を庇う義理はありません」

 

「……コンストラクションはインダストリーに同調します。現場が混乱するのは避けたい」

 

「コンビニエンスも、物流への悪影響は看過できません。やはり穏便に――」

 

 次々と代表が自分の意見を言い放っていく。

 そして、俺の番が来た。

 

「俺は――反対だ」

 

 場の空気がわずかに揺れる。

 視線が集まる中、俺はそれ以上の説明をしなかった。

 理由なんて、口には出せない。

 

(原作の流れが崩れる。ここでアリウスを叩いてしまえば、その後に何が起きるのか分かったものではない)

 

 ……が、俺の想いなど誰の知ったことか。

 その後も数名が発言を続け、最終的な投票結果が発表される。

 

 賛成:12、反対:4。

 

 アリウス自治区への武力行使が、正式に決定された。

 

 

 

 

 会議が終わった後、廊下に出た途端、数名の代表が寄ってくる。

 

「おやおや、ジェネラルらしからぬ慎重派でしたな?」

 

「将軍が戦を嫌がるなんて、珍しい話だ」

 

 俺は皮肉を笑顔で返す。

 

「慎重に壊す方が、後処理も楽ってだけですよ」

 

「ははは、そりゃ良い!」

 

 笑うインダストリー代表を尻目にそう言い残し、社用車に乗り込む。

 座席に沈み込みながら、額に手を当てる。

 

「……くそ、どうするんだこれ」

 

 原作のイベントラインが完全に逸れた。

 アリウスへの先制攻撃など、そんなイベントは存在しないはずだったのに。

 しかも今はエデン条約編前ということで、まだアリウスはベアトリーチェに支配されている頃だ。

 

 というか、そもそもアリウスはカタコンベからしか侵入できないはず。

 プレジデント達はどうアリウスを攻略するつもりなのだろうか。

 

 まぁアリウスがどう名もなき神々の遺産を得たのかなどの謎が解けるのは良いことだが、今回の作戦はあまりに不安要素が多すぎる。

 

 そう頭を悩ませていると、その時。

 車内に搭載されている通信機が鳴った。

 

『ジェネラル』

 

 プレジデントからの通信だった。直感で嫌な予感がする。

 

『君ともあろう者が、なぜ今回アリウス攻撃に慎重だったのか、聞かせてくれ』

 

 一瞬、沈黙する。

 

「情報が少なすぎます。あの自治区は封鎖され、詳細も非公開。入り口すら分からない場所に、勢いだけで突入するのは得策とは言えません」

 

『……なるほど。決定してから偵察を行う――という手もあると思うが?』

 

「ええ。ですが…慎重になって損はありません」

 

 プレジデントは一呼吸置いて、口元を緩めた気配がした。

 

『ならば、ジェネラル。君に作戦の指揮を任せてもいいか?』

 

「問題ありません」

 

『頼んだぞ』

 

 そう言って、通信が切れる。

 

 不安は残るが、俺が指揮官ならまだ何とかなる。

 根回しもできるし、最悪――軌道修正も可能だ。

 

「……さて、準備を始めるか」

 

今日は帰ってゆっくりしようと思ったが、それは叶いそうになかった。

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