憑依先の悪役将軍の立ち回りが地獄過ぎる件   作:Mind β

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正直便利屋がひたすらボコボコにされる絵面は書いてても良い気分はしないので、省かせて頂きます……


第7話:企業殲滅依頼③

 

「進捗は?」

 

「現在、スカウト1とスカウト2が施設内に突入。研究所の自律防衛兵器と交戦しているようです」

 

「……自律防衛兵器か」

 

 俺は眉をひそめ、壁に並ぶ複数のモニターへと視線を移した。

 そのうちの一つに映っていたのは、俺が前世でブルアカ本編で見たAMASとは似ても似つかない、歪なシルエットの無人機。

 虫のような関節とむき出しの武装――明らかに既存の量産型とは別物のそれが、研究所の通路でカイザーPMCの強襲偵察部隊と交戦していた。

 

「スカウト3はどうした?」

 

「研究所の裏口から侵入し、手当たり次第に部屋を捜索しています。ですが、人っ子一人見つからないようで……」

 

 本社直轄の研究所と云っても、広さは市民体育館ほどの大きさに過ぎない。

 施設のどこかで便利屋と何か未知の兵器が交戦しているならば、スカウトチームの音響探査機に反応してもおかしくはない。

 

 だが、モニターを見るに音響探査機はカイザーPMCと謎の自律防衛兵器の交戦の音を捉えるだけで、他は物音一つもしない。

 

 何かがおかしい。

 だが、遠隔で送られてくる映像だけでは現場に、そして便利屋に何が起きたのかを判断する事は難しい。

 

 それに――

 

(情報部により存在しているとされる未知の兵器やAMASっぽい謎の無人機といい、反乱因子共は資源や資金、技術をどこから手に入れているんだ?)

 

 現在確認されている反乱因子だけで、子会社が9社、研究所が1つ。

 カイザー本社から資金の流れや人員を大きく規制されている子会社がいくら集まったところで、一から新しい兵器を開発するなど難しい筈だ。

 

 それなのに、新型兵器に自律型無人機まで用意していたとなれば、背後にさらなる組織の影があるかもしれない。

 

 と、その時。

 モニターに映るスカウト3の映像に違和感を覚えた。

 

(……ん? あんな通路、研究所の見取り図にあったか?)

 

 作戦を担当するにあたって頭に叩き込んだ研究所の見取り図と、突入したスカウト3の現在位置を照らし合わせると、地図には存在しない筈の通路が出現していることに気付く。

 

 直ぐに俺はこの事実を部下に伝える。

 

「スカウト3、正面の通路は見取り図にはない空間だ。罠や秘密の部屋に繋がる手掛かりかもしれん。慎重に進め」

 

『了解』

 

 通信越しに、スカウト3のリーダーの声が応答する。

 画面では、ライフルを構えた隊員たちが静かに未知の通路を進んでいく。

 

『スカウト3‐5、音響装置を床に取り付けろ。可変ギミックや空間が無いか確認するんだ』

 

『了解しました』

 

 チームリーダーが部下にそう指示すると、黒く平べったい装置が床に取り付けられ、即座に解析が始まる。

 そして数秒後、分析を終えた隊員が声を上げた。

 

『分析が終了。この床の地下20メートルに渡って、謎の空間が確認できます』

 

 やはり、俺の見立ては当たったか。

 画面を注視していて本当に良かった。

 

 もし便利屋が罠にハマり、地下に閉じ込められていれば救助して任務は終わる。

 

「ご苦労だった。床や壁に地下空間へアクセスできるスペースがないかを確認し、あった場合は小型カメラを中へ、無い場合は主力部隊の到着を待て」

 

 俺が指示すると、画面越しに彼らが壁や床を隅々まで確認しているのが分かる。

 数分まさぐっていると、一人の部下が光学迷彩で隠蔽された通気口を発見した。

 

『隙間――いえ、地下に通ずる通気口を発見しました。光学迷彩により隠蔽が図られていたようです』

 

「光学迷彩だと?」

 

 スカウト3の隊員の報告に、俺は耳を疑った。

 

 しかし、現場の映像がそれを証明していた。

 背景に溶け込むように隠されていた、微細な格子状の通気口。

 

 光学迷彩と言えば、多くのSF作品に出てきて周りの風景と同化するアレだが、流石のキヴォトスでも開発段階にある技術だ。

 一介の会社が独自開発できるものではない。

 

「妙だが……まあ良い、小型カメラを挿入したら直ぐにその場から離れろ」

 

 俺の指示通り、隊員達はチューブ状のカメラを通気口に滑らせると、速やかその場から離脱した。

 遠隔操作された小型カメラの映像が、俺たちが居る管制室のメインモニターに映し出される。

 

 カメラが通気口内を滑る事数分、漸く地下空間の全貌が明らかになった。

 

 同時に、俺――いや、その場に居る全員が言葉を失った。

 

「な、なんだ、これは……?」

 

 モニターに映し出されていたのは、服をズタズタに引き裂かれ、傷だらけの状態でそれのアームのようなものに捕まれ、宙吊りにされているカヨコ。

 足元には、気絶したのかヘイローが消え、倒れ伏すアル、ムツキ、ハルカの3人。

 

(便利屋がやられたというのか、アレにか!?)

 

 カヨコを捕えていたのは、光沢のない黒いボディに包まれたデカい鋼鉄のサソリ。

 それを見た俺は反射的に叫んでいた。

 

「直ぐに主力部隊を施設に突入させろ!! パワーローダーも出し惜しむな、可能な限り人的資源の消耗を抑えてあのバケモノを始末するんだ!!」

 

「り、了解ですッ!! 将軍は――」

 

「俺も前線に出る。特殊作戦中隊(SOF)の出撃準備を整えさせておけ」

 

 

 

 

⬛︎

 

 

 

 

 カイザーPMC主力部隊行動開始から10分後

 研究室地下

 

「――ぁ、ぐゥ…!!」

 

 鋭い金属音とともに、カヨコの体がサソリの巨大なハサミに締め上げられた。

 冷たい鋼の力が容赦なく食い込み、肋骨の軋む感覚と共に、彼女の喉から苦しげな呻きが漏れる。

 

 視界が滲み、遠ざかっていく意識の中で、彼女は仲間たちの倒れた姿を思い浮かべる。

 ムツキは――ハルカは無事だろうか。アルは、まだ動けるのか。

 答えは返ってこない。

 意識の底が、ずるずると落ちていく。

 

 ――その時。

 

 コンクリートを踏みしめる重い足音が、遠くから響いてきた。

 複数のブーツが一糸乱れず近づいてくる。

 その音に、カヨコのかすんだ聴覚がかすかに反応する。

 

 異変を察知したのか、サソリが唐突にカヨコを放り捨てた。

 無造作に解放された彼女の身体は、地面へと真っ逆さまに背中から硬い床に叩きつけられ、肺の中の空気が一気に押し出される。

 

「ガハッ…!! だ、誰か、来たの……?」

 

 震える声が漏れた。

 時折銃声が響き、それは徐々に此方へと近づいてくる。

 サソリが機関砲の照準を音の方向へと向け、僅かな機械音が鳴った。

 

 本来なら、注意が自分から逸れたこのタイミングでサソリを背後から襲うべきなのだろうが、今のカヨコにはそれをする体力も、武器も残されていなかった。

 

 と、次の瞬間。

 

『爆薬、点火!!』

 

 鋭い声とともに、上空――つまり地下空間から見れば天井にあたる床が、閃光と衝撃を伴って爆ぜた。

 仕掛けられていたC4爆薬が一斉に炸裂し、コンクリの天井を内側から吹き飛ばす。

 破砕音と共に瓦礫が雨のように降り注ぎ、粉塵が視界を覆い尽くす。

 

 その濁流のような煙の中を、赤い閃光が走った。

 

 次々に放たれた曳光弾が煙を裂き、サソリの黒光りする装甲に突き刺さる。

 火花が弾け、表面を滑るように弾き返されるも、一部の弾丸は関節部へ喰い込んだ。

 

 直後、サソリが機関砲を回転させ、天井――いや、侵入口に向けて反撃を開始する。

 だが、命中しても手応えはなかった。

 上部のPMC兵士たちは、あらかじめ散開しつつ射撃していたからだ。

 

「敵の増援……いや、味方?」

 

 地面に倒れながらカヨコが呟く。

 爆音と火花の雨の中で、状況を完全に把握できるはずもなかった。

 だがその混沌の中でも、戦いはすでに次の段階へと移行していた。

 

 上空から再び轟音が響く。

 爆煙を突き破って降下してきたのは、パワーローダー。

 カイザーPMCが誇る、大型の戦闘用外骨格スーツだった。

 

 機体の関節から吹き出すジェットブーストの火炎と共に、3機が地面へと強襲着地する。

 その重量でコンクリ床が軋み、衝撃で周囲の瓦礫が跳ね上がった。

 

 着地と同時に、一機が両肩のガトリング砲を回転させ、弾幕を撒き散らす。

 サソリの注意を引きつけている間に、他の2機が左右へ回り込み、グレネードを牽制として発射。

 爆風と閃光でサソリの視界を塞ぎ、間合いを一気に詰める。

 

ガギィィィィィン!!

 

 突撃した2機が、左腕の強化アームを高速回転させながらサソリのハサミに飛びかかる。

 油圧による剛力が関節部に喰い込み、きしむ音と共にサソリの右のハサミがへし折られる。

 だが、その代償に――

 

バンッ!!

 

 反撃としてサソリが脚部を高速回転させ、近接した1機を蹴り飛ばす。

 パワーローダーの装甲がめり込み、油圧系統のバルブが破裂音を立てて吹き飛ぶ。

 関節部から蒸気が噴き出し、機体が一瞬バランスを崩す。

 

 それでも、パワーローダーは止まらない。

 

 姿勢を立て直し、破損した機体でなおも殴りかかる。

 鉄拳の連打がサソリの脚部を砕き、残ったハサミも機体全体で叩き潰される。

 

 高密度の火力と重機動戦闘による圧殺。

 激しい交戦の中、脚部とハサミを破壊され、鋼鉄のサソリはついに動きが鈍り始めた。

 

 それでもまだ、完全に止まったわけではない。

 わずかに残った関節を軋ませながら、殺意の籠った赤いセンサーを煌々と光らせ続けている。

 

 その時、先ほどガトリング砲をばら撒いていたパワーローダーの機体、その左腕が静かに持ち上がった。

 

 その機体は、ジェネラルが対未知兵器用に特別カスタムを施した試作型だった。

 左腕には戦車砲と同口径の大口径滑腔砲を内蔵。

 発射されるのは、装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)――装甲を貫通する為だけに設計された、最強の砲弾だ。

 

 脚を砕かれ、逃げも跳ねもできないサソリを前に、砲口がゆっくりと狙いを定める。

 

ズガァァァン!!!

 

 大口径砲が火を噴き、発射された徹甲弾が一条の閃光となってサソリの胴部を貫く。

 装弾筒が空中で分離し、切り離されたタングステン製の芯弾体が矢のように一直線に飛翔。

 その弾頭はサソリの厚い装甲すら意味をなさず、中央部のコアを貫通するようにして突き刺さった。

 

ギギ……ギュウ……

 

 サソリの赤いセンサーが、ぼんやりと瞬き、次第に光を失っていく。

 破壊された脚が折れ、崩れるようにその巨体が床へ沈んだ。

 

 辺りに残るのは、砕けた鉄屑と煙、そしてようやく訪れた静寂だった。

 

「パワー、ローダー…? なんでここに?」

 

 サソリが沈黙し、静けさが戻ったにもかかわらず、カヨコの頭はまだ現実に追いつけていなかった。

 目の前に立つ巨大なパワーローダーの姿が、まるで幻のように揺れて見える。

 

 その後ろ――瓦礫と煙の中から、呻く声が漏れた。

 

「うぅ……お腹が、お腹が痛いわ…」

 

 ぐったりと地面に転がっていたアルが、腹を押さえながらゆっくりと身体を起こす。

 唇を震わせ、痛みに眉をしかめながらも、まだ自分の足で立とうとする意思があった。

 

「ぅ……あれ? アルちゃん…?」

 

 ムツキが朦朧とした視界の中、ぼんやりとアルの姿を見つけ、声を漏らす。

 彼女もまた、薄れていた意識を手繰り寄せながら、震える指先を支えに身体を起こそうとしていた。

 

「――ハッ!? て、敵は!?」

 

 今度はハルカが跳ね起きるようにして上半身を起こし、即座に戦闘態勢を取ろうと身構える。

 血の気の引いた顔に、緊張と恐怖が浮かんでいる。

 

 その三人の様子を、パワーローダーのセンサーがじっと見据えていた。

 パワーローダーの足元で鉄屑となったサソリを見て困惑しつつも、再び便利屋は警戒態勢に移る。

 

 と、そこへ人影が現れる。

 脅威を排除したと確認し、上階からロープを伝って降下してきた特殊作戦中隊(SOF)だった。

 そして、そこに混じる一人の目立つ服装の人物。

 

「カイザーの、将軍……」

 

「便利屋68、よく耐えたな。あれを相手にして生き残ったのは見事だ……遅れてすまなかった」




今回は前回よりも描写に力を入れてみました。
前のような軽い雰囲気が良いか、戦闘時だけでも重厚感ある今回のような描写を入れた方が良いか、是非感想欄で教えてください!
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